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63 ふたりの想い
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――ハイレリウスが去ってしまうと、急に部屋の中がしんと静かになった。
「……私が、どうしてお前を犯したか、知りたいのか」
抱すくめた姿勢のままで、ラズラウドが聞いてくる。
「う、うん……」
なんとはなしに腹の前に回されたしなやかな腕にそっと触れてみると、強ばっているのが分かる。怖いものなどなさそうな堂々とした男だと思っていたラズラウドが、緊張しているらしい。
「お前は、私が女であったのなら嫁にしたかったと言っていた。男の私など……、まして、こんな無骨な姿になった男など、到底受け入れてはくれないと思ったからだ」
確かに、ラズが女の子だったらお嫁さんに……と、言った記憶はある。それがどうして強姦することにつながるのか。それに、受け入れてはくれない……とは、どういう意味だろうか。
「えっと、ラズを嫁にはできないだろ。女の子だったらって、お前だって俺に言ってたし」
「お前は私をそういう目では見ていなかったのは理解している。だが、私は違った」
「へっ?」
「男女のそれのように、お前が欲しいと思ってしまった……」
それはつまり……そういうことなのか。心臓が口から飛び出しそうな勢いで、鳴り始めた。背中に感じるラズラウドの心臓の鼓動も、強く、早くなっている。
「どう足掻いても、お前が私を望んでくれないのならば、体だけでも手に入れてしまおうとした。お前を犯し、快楽に溺れさせて……、男である私に抱かれずにはいられない体にして、誰にも触れさせないように閉じ込めておきたかった」
「そ、そんな……」
「お前が嫁を貰っていたのなら諦めもついたが、今だに独り身だと知って手を出さずにいられなかった」
「だっ、だからって、強姦することないだろぉ……。こ、怖くて、苦しかったんだぞ……!」
触れていたラズラウドの腕をぐっと掴む。あの時は本当に死ぬかと思った。あんな苦しくて怖い思いはもう二度としたくない。
「すまなかった……。お前が辺境から姿を消して、やっと目が醒めた」
小さな声で謝られた。そして、腹に回されていた腕が離れてしまう。背後から離れていく温もりが、酷く惜しい。そのままでいてくれても良かったのにと、急に寂しくなってしまった。
「私を好きなように裁け。腕を斬り落とせと言うのなら、この場で斬り落として見せよう」
「ばっ、ばかっ! そんなことして欲しくないよっ!」
なんて恐ろしいことを言うのか。焦りながら振り返って、自分よりも少し高い位置にあるラズラウドの瞳をじっと見上げる。
「それ程のことをしていた自覚はある。何もかも……私が悪い」
やつれた顔をしているのは、自分が逃げたからだと今更になって気付く。こんなになるまで心配してくれたのだろうか。白く端正な顔に落ちる陰りに、ちくりと胸が痛む。
「どうすれば、お前に許しを得ることができるのか、わからない」
また泣きだしてしまいそうな、潤んだ瞳が哀れなものに見えた。こんなに想われていただなんて、知らなかった。振り返れば、いつもラズラウドはシタンを求めていた。執拗なまでに体に痕を残し、名を呼んで、強く抱き締めてきた。ただの慰みとは思えないほどの熱だった。
「ゆ、許すも何もないよ。もうとっくにお前のこと、き、嫌じゃ…ないから。ただ……、か……、体だけなのが嫌だったんだよ」
「本当にいいのか。こんな私を、許してくれるのなら、なんでもする」
「ほんとだよ。だから、そんなふうに言うなよ。なにもしなくていいったら……!」
幼く見えるほどに不安そうな顔をしている。思わず涙の乾いた頬を撫でると、嬉しそうに目を細めてすり寄ってくるのが凄く可愛い。
思わず「ラズ、可愛い……」と、言ってしまうとラズラウドが「ふ……。お前に言われると、悪い気はしないな……」と、甘く微笑む。それは花が綻ぶような綺麗な笑顔だった。
「泣いてる顔も綺麗だけど、ラズは笑ってる方がずっと良いよ。俺、もうそれだけで十分だから」
「そうか……。ありがとうシタン」
これ以上なく嬉しそうで華やかな表情になったラズラウドの顔を見ていると、ぽかぽかと胸の奥が温かくなって、シタンもまた自然と笑顔になる。もう片方の手も添えて両頬を包み込むと、その手にラズラウドの手が重ねられた。
「今更こんなことを言うのは遅いが、お前を愛している。ずっと一緒に、この辺境でお前と生きていきたい」
愛しているという言葉が、体に染みわたっていく。
嬉しくて、照れくさくて、幸せな気分で胸が一杯になる。慰みではないのだ。体だけではなく、心も求められている。胸の中に巣食っていた苦しさが、欠片も残さずに消えていくのを感じた。
「……私が、どうしてお前を犯したか、知りたいのか」
抱すくめた姿勢のままで、ラズラウドが聞いてくる。
「う、うん……」
なんとはなしに腹の前に回されたしなやかな腕にそっと触れてみると、強ばっているのが分かる。怖いものなどなさそうな堂々とした男だと思っていたラズラウドが、緊張しているらしい。
「お前は、私が女であったのなら嫁にしたかったと言っていた。男の私など……、まして、こんな無骨な姿になった男など、到底受け入れてはくれないと思ったからだ」
確かに、ラズが女の子だったらお嫁さんに……と、言った記憶はある。それがどうして強姦することにつながるのか。それに、受け入れてはくれない……とは、どういう意味だろうか。
「えっと、ラズを嫁にはできないだろ。女の子だったらって、お前だって俺に言ってたし」
「お前は私をそういう目では見ていなかったのは理解している。だが、私は違った」
「へっ?」
「男女のそれのように、お前が欲しいと思ってしまった……」
それはつまり……そういうことなのか。心臓が口から飛び出しそうな勢いで、鳴り始めた。背中に感じるラズラウドの心臓の鼓動も、強く、早くなっている。
「どう足掻いても、お前が私を望んでくれないのならば、体だけでも手に入れてしまおうとした。お前を犯し、快楽に溺れさせて……、男である私に抱かれずにはいられない体にして、誰にも触れさせないように閉じ込めておきたかった」
「そ、そんな……」
「お前が嫁を貰っていたのなら諦めもついたが、今だに独り身だと知って手を出さずにいられなかった」
「だっ、だからって、強姦することないだろぉ……。こ、怖くて、苦しかったんだぞ……!」
触れていたラズラウドの腕をぐっと掴む。あの時は本当に死ぬかと思った。あんな苦しくて怖い思いはもう二度としたくない。
「すまなかった……。お前が辺境から姿を消して、やっと目が醒めた」
小さな声で謝られた。そして、腹に回されていた腕が離れてしまう。背後から離れていく温もりが、酷く惜しい。そのままでいてくれても良かったのにと、急に寂しくなってしまった。
「私を好きなように裁け。腕を斬り落とせと言うのなら、この場で斬り落として見せよう」
「ばっ、ばかっ! そんなことして欲しくないよっ!」
なんて恐ろしいことを言うのか。焦りながら振り返って、自分よりも少し高い位置にあるラズラウドの瞳をじっと見上げる。
「それ程のことをしていた自覚はある。何もかも……私が悪い」
やつれた顔をしているのは、自分が逃げたからだと今更になって気付く。こんなになるまで心配してくれたのだろうか。白く端正な顔に落ちる陰りに、ちくりと胸が痛む。
「どうすれば、お前に許しを得ることができるのか、わからない」
また泣きだしてしまいそうな、潤んだ瞳が哀れなものに見えた。こんなに想われていただなんて、知らなかった。振り返れば、いつもラズラウドはシタンを求めていた。執拗なまでに体に痕を残し、名を呼んで、強く抱き締めてきた。ただの慰みとは思えないほどの熱だった。
「ゆ、許すも何もないよ。もうとっくにお前のこと、き、嫌じゃ…ないから。ただ……、か……、体だけなのが嫌だったんだよ」
「本当にいいのか。こんな私を、許してくれるのなら、なんでもする」
「ほんとだよ。だから、そんなふうに言うなよ。なにもしなくていいったら……!」
幼く見えるほどに不安そうな顔をしている。思わず涙の乾いた頬を撫でると、嬉しそうに目を細めてすり寄ってくるのが凄く可愛い。
思わず「ラズ、可愛い……」と、言ってしまうとラズラウドが「ふ……。お前に言われると、悪い気はしないな……」と、甘く微笑む。それは花が綻ぶような綺麗な笑顔だった。
「泣いてる顔も綺麗だけど、ラズは笑ってる方がずっと良いよ。俺、もうそれだけで十分だから」
「そうか……。ありがとうシタン」
これ以上なく嬉しそうで華やかな表情になったラズラウドの顔を見ていると、ぽかぽかと胸の奥が温かくなって、シタンもまた自然と笑顔になる。もう片方の手も添えて両頬を包み込むと、その手にラズラウドの手が重ねられた。
「今更こんなことを言うのは遅いが、お前を愛している。ずっと一緒に、この辺境でお前と生きていきたい」
愛しているという言葉が、体に染みわたっていく。
嬉しくて、照れくさくて、幸せな気分で胸が一杯になる。慰みではないのだ。体だけではなく、心も求められている。胸の中に巣食っていた苦しさが、欠片も残さずに消えていくのを感じた。
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