【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり

文字の大きさ
56 / 59
番外編 

手合わせくじ引き・2「可能な限り全力で」

しおりを挟む
「ここでは手狭だな。演習場へ行こう」

「了解した」

 全力ともなれば、術式による周囲の損壊は避けられない。セディウスはネウクレアや他の騎士の面々を引き連れて屋外の演習場へと向かった。


 数十名の騎士たちが戦闘を繰り広げても十分に動き回れる広さの演習場の真ん中で、二人は刃を潰した訓練用の剣を携えて対峙した。

「よし! じゃあ、手合わせ始めるぞ。魔導術式も体術も剣術もなんでもありだ! はじめっ!」

 審判役を受け持つファイスが興奮もあらわな声と共に、片手を振り下ろした。


「……まさか、お前と手合わせをすることになるとは」

「貴方の力を知りたい。可能な限り全力での手合わせを希望する」


 ネウクレアは感情の凪いだ口調で、なんとも大胆な発言をした。


 前線部隊に馴染んでいるところからも知れる通り、存外に男らしく戦闘狂的な気質を持ち合わせていることを、セディウスは改めて認識した。

「あ、ああ、わかった。できるだけ全力を出そう。怪我をしない程度にな」と、承諾の返事を返した。


 手加減をしては、きっとネウクレアの心に傷と不満を残す。


「来い。全力で受け止める」

「承知した」


 ぐらりと、ネウクレアの体が前方に大きく傾ぐ。

「接敵開始」

 倒れ込みそうなほどの急角度で地面を蹴り、前方へ飛ぶことで瞬時に距離を詰めた。


 ――ドウッ!


 鈍い破砕音。

 腹部に衝撃が走り、拳と共に爆発術式を叩き込まれたと気付いたときには吹き飛ばされていた。

「……っ!」

 低く宙を舞った長躯を、青みを帯びた黒い鎧が追いかける。叩き落とそうとせんばかりに振り上げられた腕を、セディウスの防壁術式が阻み、体ごと弾き飛ばす。

「ぐっ……」

 追撃を防いだものの、セディウスは背中を強かに地面に叩きつけられた。衝撃に息が詰まるが、怯まず瞬時に身を起こし、同じように地面に叩きつけられたネウクレアを視界に入れる。

「これほどとは……!」

 土くれを飛ばして駆け出しながら剣を抜き放ち、跳ねるように起き上がったネウクレアへ接近する。


「術式展開」


 その動きよりも早くネウクレアが小さく呟く。


 ――キイィンッ!


 振り下ろされた鋭い剣を、防壁がけたたましい音を立てて退けた。


「迎撃」


 静かな声とともにネウクレアも剣を抜き、斬り掛かってきた。

 あらゆる方向から襲い来る剣の軌跡をことごとく受け止め、受け流し、躱しながら、セディウスは激しい一撃をいくつも返していく。

 ネウクレアも負けてはいない。

 防壁と剣撃を織り交ぜながら、セディウスの反撃をひとつひとつ確実に受け止めた。


 紛い者でない、実力者同士の戦いだ。


 立て続けに繰り出される妙技。激しい剣戟の音と共に繰り広げられる、攻防のすべてが美しい。


 途切れることのない応酬に、騎士たちの歓声は熱を帯びて高まっていった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

猫を追いかけて異世界に来たら、拾ってくれたのは優しい貴族様でした

水無瀬 蒼
BL
清石拓也はある日飼い猫の黒猫・ルナを追って古びた神社に紛れ込んだ。 そこで、御神木の根に足をひっかけて転んでしまう。 倒れる瞬間、大きな光に飲み込まれる。 そして目を覚ましたのは、遺跡の中だった。 体調の悪い拓也を助けてくれたのは貴族のレオニス・アーゼンハイツだった。 2026.1.5〜

異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた

k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
 病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。  言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。  小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。  しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。  湊の生活は以前のような日に戻った。  一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。  ただ、明らかに成長スピードが早い。  どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。  弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。  お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。  あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。  後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。  気づけば少年の住む異世界に来ていた。  二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。  序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

【連載版あり】「頭をなでてほしい」と、部下に要求された騎士団長の苦悩

ゆらり
BL
「頭をなでてほしい」と、人外レベルに強い無表情な新人騎士に要求されて、断り切れずに頭を撫で回したあげくに、深淵にはまり込んでしまう騎士団長のお話。リハビリ自家発電小説。一話完結です。 ※加筆修正が加えられています。投稿初日とは誤差があります。ご了承ください。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

異世界で孵化したので全力で推しを守ります

のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精

処理中です...