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本編
8 複雑な思い
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それにしても、こんな一室を貸切るとは、余程の身分を持っている大層な金持ちなのだろう。なにからなにまで日常からかけ離れた別世界だ。自分のような贅沢に慣れていない人間にとっては、落ち着かないことこの上もない。
「これ、飲んでも良いのか」
居心地の悪さを感じながら、渋い顔で目に入った小さなグラスを手に取る。ちょうど喉が渇いていたこともあって、飲み物が欲しかったところだ。軽く匂いを嗅いでみると、甘くて良い匂いがした。これはきっと美味い。
「好きなだけ飲んで良いよ。あ、ちなみに果実酒だよ。度数は低めだから飲みやすいと思う」
「へぇ……。酒なのかこれ」
「お酒は苦手? それなら果実水を頼むけど」
「いや、別に苦手じゃねぇよ」
飲めない年齢ではない。ただ、普段は飲まないだけで。
軽く中身を口に含むと、舌先から口内へと広がる甘やかで優しい味わいが広がる。美味い。余りの美味さに一息に飲み干してしまい、リィは思わず「美味いな」と、呟いた。
「気に入ったのならばお代わりすると良いよ」
「そうする。もう一杯頼む」
テーブルに置いた空のグラスに、給仕の手によって二杯目が注がれた。
「要らない時には注がれる前に手を上げてね」
身振りも交えて説明しながら、シアも手元のグラスを手にして果実酒を一口飲む。
「では、食事にしようか」
シアの言葉を合図に、料理が運ばれ始める。
「気兼ねなく食べられる盛り付けにして貰ったから、作法は気にせずに食べてね」
「作法なぁ……」
運ばれてくる彩り鮮やかな料理は全て単純な盛り付けで、確かに作法など気にしなくて良さそうだ。
「リィ、もしかして知っていたりする?」
「作法がある事自体知らねぇよ。めんどくせぇな金持ちの来る店ってのは」
「あはは! 確かに面倒だよ。立場があると周囲の目も気にするし、慣れない人には大変かな」
「めんどくせぇ。俺には関係ねぇな」と、鼻で笑いながら遠慮なく手を付け始めると、シアはなにが楽しいのか溢れんばかりの笑顔で「うん。それでいいと思うよ。楽しく食べられるのが一番だもの」と、言ってから料理に手を付ける。
……シアは見たこともない優雅な手付きで、器用に食事を進めていく。これが作法というやつなのだろう。仕草の一つ一つに育ちの違いを感じた。
無邪気でうるさい青年だが、近しい立場ではないのだ。それが少し、面白くないような、寂しいような……、なんともいえない複雑な思いがした。
「これ、飲んでも良いのか」
居心地の悪さを感じながら、渋い顔で目に入った小さなグラスを手に取る。ちょうど喉が渇いていたこともあって、飲み物が欲しかったところだ。軽く匂いを嗅いでみると、甘くて良い匂いがした。これはきっと美味い。
「好きなだけ飲んで良いよ。あ、ちなみに果実酒だよ。度数は低めだから飲みやすいと思う」
「へぇ……。酒なのかこれ」
「お酒は苦手? それなら果実水を頼むけど」
「いや、別に苦手じゃねぇよ」
飲めない年齢ではない。ただ、普段は飲まないだけで。
軽く中身を口に含むと、舌先から口内へと広がる甘やかで優しい味わいが広がる。美味い。余りの美味さに一息に飲み干してしまい、リィは思わず「美味いな」と、呟いた。
「気に入ったのならばお代わりすると良いよ」
「そうする。もう一杯頼む」
テーブルに置いた空のグラスに、給仕の手によって二杯目が注がれた。
「要らない時には注がれる前に手を上げてね」
身振りも交えて説明しながら、シアも手元のグラスを手にして果実酒を一口飲む。
「では、食事にしようか」
シアの言葉を合図に、料理が運ばれ始める。
「気兼ねなく食べられる盛り付けにして貰ったから、作法は気にせずに食べてね」
「作法なぁ……」
運ばれてくる彩り鮮やかな料理は全て単純な盛り付けで、確かに作法など気にしなくて良さそうだ。
「リィ、もしかして知っていたりする?」
「作法がある事自体知らねぇよ。めんどくせぇな金持ちの来る店ってのは」
「あはは! 確かに面倒だよ。立場があると周囲の目も気にするし、慣れない人には大変かな」
「めんどくせぇ。俺には関係ねぇな」と、鼻で笑いながら遠慮なく手を付け始めると、シアはなにが楽しいのか溢れんばかりの笑顔で「うん。それでいいと思うよ。楽しく食べられるのが一番だもの」と、言ってから料理に手を付ける。
……シアは見たこともない優雅な手付きで、器用に食事を進めていく。これが作法というやつなのだろう。仕草の一つ一つに育ちの違いを感じた。
無邪気でうるさい青年だが、近しい立場ではないのだ。それが少し、面白くないような、寂しいような……、なんともいえない複雑な思いがした。
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