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本編
9 こういうのも悪くはない
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――リィが複雑な気分になったのは、柄の間のことだった。
「全部、美味いな……。こんなもん食ってたら舌が肥えちまう」
安さと量を優先している日頃の飯とは比べ物にならない味わいが、リィの舌を驚かせる。なんともいえない鬱屈とした気分は、たちまち吹き飛んでいく。
野菜の盛り合わせは甘く風味豊かで苦みなどなく、籠に盛られたパンは軟らかくもサクリと歯触り良く、贅沢に使われたバターの香りが口から鼻へと抜けて行く。とろりと飴色をしたスープは濃厚で喉越しが滑らかだ。
「口に合ったのなら良かったよ。まだまだ料理は出てくるから楽しんでね」
焼きたての大きな魚の塩包み焼きが、給仕の鮮やかな手捌きで瞬く間に身を解されて取り分けられた。ホクホクとした純白の身は臭みなどなく程良い塩加減だ。大きな身を切り分けもせずに豪快に一口で食べていくリィを、シアが目細めて微笑まし気に見つめる。
「割と細身なのに良い食べっぷりだね。見ていて楽しいよ。君は沢山食べる方?」
「食わねぇと体が持たない」
「それが強さの秘訣かな。僕の知ってる元闘士には、凄く小食の人がいるけど」
「ろくに食わねぇで闘えるのかよ。強い奴なのか」
「うん、とてもね。それに人外みたいな酒豪」
「なんだそいつ……」
食欲旺盛で豪快な食べ方をするリィとは対照的に優雅な所作でゆったりと食事を進めながら、シアは他愛の無い質問を投げかけてくる。
「ねぇ、リィは普段何してるの? 試合のない日とかはやっぱり修行していたりするのかな」
「……は? 何でそんな事聞くんだ。面白い話なんかねぇぞ」
「ありのままで良いよ。リィの事を知りたい」
「後でつまんねぇ話だとか文句言うなよ」
「言わないよ!」
気乗りしないながらもポツポツと話し始めたが、相槌を打ちながら熱心に話に聞き入るシアを見るうちに少しずつ気分が上向いていく。食後の果物や焼き菓子を摘まむ頃には、リィは随分と饒舌になっていた。
「……アンタと話していると、何だか話が上手くなった気がするな」
「あはは。人の話を聞くのは得意だよ。リィ、もっと色々聞かせてよ」
出された酒や料理はどれも美味くて、目の前には至極嬉しそうに微笑みながら話を聞いてくれる気の良い相手がいる。これ以上の贅沢な晩餐など無いだろう。
……自然と顔が緩んでしまうのを感じながら、こういうのも悪くないなとリィは思った。
「全部、美味いな……。こんなもん食ってたら舌が肥えちまう」
安さと量を優先している日頃の飯とは比べ物にならない味わいが、リィの舌を驚かせる。なんともいえない鬱屈とした気分は、たちまち吹き飛んでいく。
野菜の盛り合わせは甘く風味豊かで苦みなどなく、籠に盛られたパンは軟らかくもサクリと歯触り良く、贅沢に使われたバターの香りが口から鼻へと抜けて行く。とろりと飴色をしたスープは濃厚で喉越しが滑らかだ。
「口に合ったのなら良かったよ。まだまだ料理は出てくるから楽しんでね」
焼きたての大きな魚の塩包み焼きが、給仕の鮮やかな手捌きで瞬く間に身を解されて取り分けられた。ホクホクとした純白の身は臭みなどなく程良い塩加減だ。大きな身を切り分けもせずに豪快に一口で食べていくリィを、シアが目細めて微笑まし気に見つめる。
「割と細身なのに良い食べっぷりだね。見ていて楽しいよ。君は沢山食べる方?」
「食わねぇと体が持たない」
「それが強さの秘訣かな。僕の知ってる元闘士には、凄く小食の人がいるけど」
「ろくに食わねぇで闘えるのかよ。強い奴なのか」
「うん、とてもね。それに人外みたいな酒豪」
「なんだそいつ……」
食欲旺盛で豪快な食べ方をするリィとは対照的に優雅な所作でゆったりと食事を進めながら、シアは他愛の無い質問を投げかけてくる。
「ねぇ、リィは普段何してるの? 試合のない日とかはやっぱり修行していたりするのかな」
「……は? 何でそんな事聞くんだ。面白い話なんかねぇぞ」
「ありのままで良いよ。リィの事を知りたい」
「後でつまんねぇ話だとか文句言うなよ」
「言わないよ!」
気乗りしないながらもポツポツと話し始めたが、相槌を打ちながら熱心に話に聞き入るシアを見るうちに少しずつ気分が上向いていく。食後の果物や焼き菓子を摘まむ頃には、リィは随分と饒舌になっていた。
「……アンタと話していると、何だか話が上手くなった気がするな」
「あはは。人の話を聞くのは得意だよ。リィ、もっと色々聞かせてよ」
出された酒や料理はどれも美味くて、目の前には至極嬉しそうに微笑みながら話を聞いてくれる気の良い相手がいる。これ以上の贅沢な晩餐など無いだろう。
……自然と顔が緩んでしまうのを感じながら、こういうのも悪くないなとリィは思った。
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