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第一の神獣。死の軍勢の片鱗
54話 シル
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万軍の遥か下、巨大な地下空間で一体の魔動人形が起動した。
「マナの隆起を確認、シルの起動が完了しました。」
一面壁ばかりの何もない空間に機械的な音声が響き渡る。
ギギッ…
空間の底、大小様々なケーブルが収束する先で何かが動いた。
それは人の形をしたゴーレムであった。
起動するなり体から白いマナの光が漏れ出る。光は地面に垂れ落ち沈殿し広がる。
その構造は非常にシンプルで平らな体に板二枚ののっぺりとした顔を持ち、全体は白、関節部は黒に塗装されていた。
まるでマネキンのような見た目をしている。
彼はひとしきり身震いをした後、自身のうなじに手を伸ばした。
バキッ!
彼はある機械を握りつぶした。それは、制御装置である。体に刺されると緊急停止コードが入力されて力が抜けてしまうのである。
(コレ殺したらウィンに頭撫でてもらおう。でも、マルクが怒るんだよね…そうだ!)
シルが上空の万軍を見上げる。彼の体を包む光が淡い青に変化する。その後、一瞬にして身体を吸収し、長身の美青年を形作った。
(これならきっと喜んでくれる!それどころか襲っても許されそう!)
自身の持つスペックをフルに使用して二人を探し出した。
シルの扱う魔法に呼称は無い。正確には付けることが出来ない。彼の魔法は数だけで言うならほぼ無限に存在する。
最も正確な例えとして「色」があげられる。色は組み合わせ次第でどのような色も作ることが出来る。
シルの魔法も同様に既存の魔法の分解、統合を繰り返しあらゆる魔法の再現をすることができるのである。
「待っててね。パパ、ママ」
シルは小さく呟く。その声は見た目に相応しい色気ある声だった。
彼は魔法を発動させて浮かび上がる。
不気味さを覚えるほどに自然で一切のブレも存在しない。まるでナノ単位の精密機器が所作全てを操作しているようである。
(僕は君と戦う気はないよ。そんな事よりも他にやりたい事があるんだ)
シルは魔法で万軍に争う気がないことを伝える。
魔法は電波のように発信され彼らの感覚を刺激してシルの考えを正確に伝える。守りの硬い脳への魔法ではなく守りの薄い外的刺激に魔法を使いそう錯覚させたのである。
しかし、交渉は決裂した。万軍は壁に沿って広がりシルを包囲する。彼らは高さごとに適した駒を配置する。
地下に蟻型、地面に粘体型、そこから上に向けて鼠型、蜂型、蝙蝠型、そして天井を覆い尽くす鳥型。これらの外生生物達が綺麗な層となって臨戦態勢を取っていた。
現在の彼らは飢えた獣であった。腹を空かせ餌を欲している。
先程大量のコアを補充したが、その巨大を維持するには少しばかり心もとない。このままでは群れ内部で共食いをしなければならなくなるのも時間の問題だった。
それに、異様なものが次々と現れる状況に慣れてきだこともあり、彼らはランク外を恐れなくなっていた。
万軍は餌を取られた怒りをシルに向ける。彼らはシルに死角がないことを悟り手数の多さを利用した物量作戦を選択した。
彼らは二つの弧を描きシルを挟んだ。代わる代わる爪や牙で攻撃する。シルを左右からを挟み回転方向の違う円で上下からすり潰す。
シルは固く身を硬め攻撃のダメージを最小限に備える。
「むーー…仕方ない…」
シルは不服そうに顔をしかめた。
衝撃波を放ち万軍の攻撃から抜け出すと、少し上に飛んで体を大きく広げた。
「さぁ、餌だよ!た~んとお食べ」
自身のマナを周囲に放湿し始めた。
「……?」
万軍は動きを止めた。流石に彼らも自身の体を明け渡す行為に理解できなかった。毒を混ぜられているようにも感じず、ただただ混乱してしまう。
だが、シルの狙いは万軍とは関係ないところにあった。
(来た!)
シルの背中が爆発した。
すると、爆炎が昇るシルの背中からリオンが落下した。
「ガハッ…」
リオンは爆発をまともに受けてしまった。
「僕に同じ手は通用しないのだよ。分かるよ、非j…え?」
シルのがリオンを見下ろし罵ろうとした時、力が半分くらい抜けた。
「あっ…やばい」
シルは覚束無いながらも防御の体制を取る。
しかし、努力も虚しく攻撃を受け地面に叩きつけられてしまう。
「うあぁぁーー!」
シルはスライムの海にぽちゃりと落ちた。
「マナの隆起を確認、シルの起動が完了しました。」
一面壁ばかりの何もない空間に機械的な音声が響き渡る。
ギギッ…
空間の底、大小様々なケーブルが収束する先で何かが動いた。
それは人の形をしたゴーレムであった。
起動するなり体から白いマナの光が漏れ出る。光は地面に垂れ落ち沈殿し広がる。
その構造は非常にシンプルで平らな体に板二枚ののっぺりとした顔を持ち、全体は白、関節部は黒に塗装されていた。
まるでマネキンのような見た目をしている。
彼はひとしきり身震いをした後、自身のうなじに手を伸ばした。
バキッ!
彼はある機械を握りつぶした。それは、制御装置である。体に刺されると緊急停止コードが入力されて力が抜けてしまうのである。
(コレ殺したらウィンに頭撫でてもらおう。でも、マルクが怒るんだよね…そうだ!)
シルが上空の万軍を見上げる。彼の体を包む光が淡い青に変化する。その後、一瞬にして身体を吸収し、長身の美青年を形作った。
(これならきっと喜んでくれる!それどころか襲っても許されそう!)
自身の持つスペックをフルに使用して二人を探し出した。
シルの扱う魔法に呼称は無い。正確には付けることが出来ない。彼の魔法は数だけで言うならほぼ無限に存在する。
最も正確な例えとして「色」があげられる。色は組み合わせ次第でどのような色も作ることが出来る。
シルの魔法も同様に既存の魔法の分解、統合を繰り返しあらゆる魔法の再現をすることができるのである。
「待っててね。パパ、ママ」
シルは小さく呟く。その声は見た目に相応しい色気ある声だった。
彼は魔法を発動させて浮かび上がる。
不気味さを覚えるほどに自然で一切のブレも存在しない。まるでナノ単位の精密機器が所作全てを操作しているようである。
(僕は君と戦う気はないよ。そんな事よりも他にやりたい事があるんだ)
シルは魔法で万軍に争う気がないことを伝える。
魔法は電波のように発信され彼らの感覚を刺激してシルの考えを正確に伝える。守りの硬い脳への魔法ではなく守りの薄い外的刺激に魔法を使いそう錯覚させたのである。
しかし、交渉は決裂した。万軍は壁に沿って広がりシルを包囲する。彼らは高さごとに適した駒を配置する。
地下に蟻型、地面に粘体型、そこから上に向けて鼠型、蜂型、蝙蝠型、そして天井を覆い尽くす鳥型。これらの外生生物達が綺麗な層となって臨戦態勢を取っていた。
現在の彼らは飢えた獣であった。腹を空かせ餌を欲している。
先程大量のコアを補充したが、その巨大を維持するには少しばかり心もとない。このままでは群れ内部で共食いをしなければならなくなるのも時間の問題だった。
それに、異様なものが次々と現れる状況に慣れてきだこともあり、彼らはランク外を恐れなくなっていた。
万軍は餌を取られた怒りをシルに向ける。彼らはシルに死角がないことを悟り手数の多さを利用した物量作戦を選択した。
彼らは二つの弧を描きシルを挟んだ。代わる代わる爪や牙で攻撃する。シルを左右からを挟み回転方向の違う円で上下からすり潰す。
シルは固く身を硬め攻撃のダメージを最小限に備える。
「むーー…仕方ない…」
シルは不服そうに顔をしかめた。
衝撃波を放ち万軍の攻撃から抜け出すと、少し上に飛んで体を大きく広げた。
「さぁ、餌だよ!た~んとお食べ」
自身のマナを周囲に放湿し始めた。
「……?」
万軍は動きを止めた。流石に彼らも自身の体を明け渡す行為に理解できなかった。毒を混ぜられているようにも感じず、ただただ混乱してしまう。
だが、シルの狙いは万軍とは関係ないところにあった。
(来た!)
シルの背中が爆発した。
すると、爆炎が昇るシルの背中からリオンが落下した。
「ガハッ…」
リオンは爆発をまともに受けてしまった。
「僕に同じ手は通用しないのだよ。分かるよ、非j…え?」
シルのがリオンを見下ろし罵ろうとした時、力が半分くらい抜けた。
「あっ…やばい」
シルは覚束無いながらも防御の体制を取る。
しかし、努力も虚しく攻撃を受け地面に叩きつけられてしまう。
「うあぁぁーー!」
シルはスライムの海にぽちゃりと落ちた。
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