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何でもありな体育祭!
65話 サリアの兄ドロール
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体育祭のプログラムは一学年につき四つと全体で一つあり、五つのプログラムを全体で五日に渡って行う。
新入生のプログラムは1日目に障害物リレーとドッヂボール。三日目にしっぽ鬼と攻城戦を行う。
それが前日に発表された。
「はぁー、終わったー!」
カイトが大きく伸びをする。現在、明日の作戦会議とを終えて、リュート、カイト、サリア、アヤメ、コアのいつものメンバーでメインストリートに訪れていた。
メインストリートとは生徒が個人で店を出してサービスやものを売っている場所である。多様性があり大体のものが揃う。もし、目的のものが無くてもオーダーメイドを頼むことが出来る店もある。
「後は、細かい買い出しだけね…げっ!」
サリアはある男と目が合い身を引いた。
男は深い緑の髪をして、スーツを着ている。そして、どこかサリアと似た印象を感じる。
「リア~!」
「来るなっー!」
サリアが抱きつこうとする男を尻尾で地面に叩きつけた。
「いたた…兄に向かってなんたる態度。だが許そう。なんだって愛し…」
ペシッ!
「愛…」
ペシッ!
「あ…」
男が口を開くたびにサリアの尻尾が頬を往復する。
ーーーー
「はぁ、紹介するわ。彼はドロール。私の兄で情報学科、の三学年よ」
とても憂鬱そうに紹介する。
「よろしく!リアの兄として仲良くさせてほしい」
ドロールはリュートに手を差し出す。
「よろしく」
この人も強いな…
リュートはドロールの強さを感じ取る。学園の上級生には戦闘学科以外の人間でも強い人間は多い。カスミの姉も創造学科に属するが現在のリュート達よりも実力がある。
「いやー、後輩は面白い人が多いね。向こう側の人間が生徒になるとは初めて知った時は目を疑ったよ」
「なっ、なんじゃ?何かするつもりならくだくぞ?」
コアは最初の印象からドロールを警戒して、軽く拳を握る。
「何もしないって。そもそも、準備期間中は後輩に手を出せない規則だよ」
ーーーそういうわけじゃ、ないのじゃが…
「それじゃあ、私はこれから忙しくなるから失礼するよ。君たちも買い出しを済ませたまえ」
ドロールはそう言って立ち去った。
「ワシはあやつ苦手じゃ!」
コアはドロールの背中が見えなくなったあたりで口を開いた。
彼いわく、自身を見る目が実験動物を見るかのような目で薄気味悪かったらしい。
「私も苦手…実は本当に愛してくれてるのかも分からないのよね」
「何で?」
「愛されてるだろうな。アレは」
「口ではそう言ってるけど、受け身取るのよねアイツ。Mなら全部受けない?」
「えっと…殺す気?」
「えっ!?いや…そんなつもりないけど。早く買うもの買って帰りましょ!」
ーーー
リュートは部屋に帰って趣味の情報集めをしていた。コンピュータで主に明日戦うことなるだろう同級生のものを集めている。公式試合の映像、挙げた功績、情報屋からの映像。目ぼしい人間を調べ上げる。
ーーーよし、いい感じに集まってきた。けど…
「なんで居るの?」
リュートは振り返りリビングのコアを見る。
「なんじゃ?お主はわしの主人じゃろ?そばに仕えるのは当たり前じゃ」
普段、主従など気にもしていないくせに都合のいい時だけ最初の頃の関係を利用する。
「まぁ、それはいいとして…なんで?」
リュートの視線の先にはカイト、サリア、アヤメの姿があった。人生ゲームをやっており、アヤメが一区画を自身の土地で染め上げたところであった。
「いいじゃない。はい、お菓子よ。リュートも食べる?他にもあるわよ?」
サリアが机の上に袋を開けた菓子を置く。さらに、彼女の足元には追加のお菓子が控えている。
「それじゃあ、喉乾くでしょ?なんか飲み物買ってくるよ」
リュートは四人を残して部屋を出た。
「待ってたよ」
寮から出た時、ドロールが話しかけて来た。
「え?」
リュートは突然現れた彼を警戒する。
「いやいや、そんなに警戒しないでほしい。”待ってた”と言っても君だけではない。誰でもよかった」
「そうですか…」
目の前の男の不気味さにゾッとする。本当に自分を待っていたのではないかと感じてさえいる。
「情報交換をしないか?君たちなら”自然公園”と言えば理解できるよね」
ーーーシルについて言っているのだろう。彼のについは口止めされているし、話す理由もない。
「僕は途中から拘束されていたからあまりよく知らないけれど……」
リュートはシルの存在を隠すためのバックストーリーをなぞって説明した。
「意外なことに、君は口が硬いみたいみたいだ。だけど情報交換と言っただろ?もっと面白い情報が手に入るかもしれない。それこそお金じゃ手に入らないような。それで、化け物の強さは私と比べてどれくらいか分かるかな?」
「新入生程度、あなたと比べれば足元にも及びませんよ」
「そうか…それじゃあ、最後にもう一つ。君の担任には私が何人いれば勝てる?」
「それなら…今のあなただと何人いても勝てないと思うよ」
「君は優秀だね。欲しいくらいだ。また近いうちに会うだろう。それじゃ…」
「待って」
リュートが去ろうとするドロールを呼び止める。
「何かね?」
「情報交換」
「あっ…(忘れてた…)」
新入生のプログラムは1日目に障害物リレーとドッヂボール。三日目にしっぽ鬼と攻城戦を行う。
それが前日に発表された。
「はぁー、終わったー!」
カイトが大きく伸びをする。現在、明日の作戦会議とを終えて、リュート、カイト、サリア、アヤメ、コアのいつものメンバーでメインストリートに訪れていた。
メインストリートとは生徒が個人で店を出してサービスやものを売っている場所である。多様性があり大体のものが揃う。もし、目的のものが無くてもオーダーメイドを頼むことが出来る店もある。
「後は、細かい買い出しだけね…げっ!」
サリアはある男と目が合い身を引いた。
男は深い緑の髪をして、スーツを着ている。そして、どこかサリアと似た印象を感じる。
「リア~!」
「来るなっー!」
サリアが抱きつこうとする男を尻尾で地面に叩きつけた。
「いたた…兄に向かってなんたる態度。だが許そう。なんだって愛し…」
ペシッ!
「愛…」
ペシッ!
「あ…」
男が口を開くたびにサリアの尻尾が頬を往復する。
ーーーー
「はぁ、紹介するわ。彼はドロール。私の兄で情報学科、の三学年よ」
とても憂鬱そうに紹介する。
「よろしく!リアの兄として仲良くさせてほしい」
ドロールはリュートに手を差し出す。
「よろしく」
この人も強いな…
リュートはドロールの強さを感じ取る。学園の上級生には戦闘学科以外の人間でも強い人間は多い。カスミの姉も創造学科に属するが現在のリュート達よりも実力がある。
「いやー、後輩は面白い人が多いね。向こう側の人間が生徒になるとは初めて知った時は目を疑ったよ」
「なっ、なんじゃ?何かするつもりならくだくぞ?」
コアは最初の印象からドロールを警戒して、軽く拳を握る。
「何もしないって。そもそも、準備期間中は後輩に手を出せない規則だよ」
ーーーそういうわけじゃ、ないのじゃが…
「それじゃあ、私はこれから忙しくなるから失礼するよ。君たちも買い出しを済ませたまえ」
ドロールはそう言って立ち去った。
「ワシはあやつ苦手じゃ!」
コアはドロールの背中が見えなくなったあたりで口を開いた。
彼いわく、自身を見る目が実験動物を見るかのような目で薄気味悪かったらしい。
「私も苦手…実は本当に愛してくれてるのかも分からないのよね」
「何で?」
「愛されてるだろうな。アレは」
「口ではそう言ってるけど、受け身取るのよねアイツ。Mなら全部受けない?」
「えっと…殺す気?」
「えっ!?いや…そんなつもりないけど。早く買うもの買って帰りましょ!」
ーーー
リュートは部屋に帰って趣味の情報集めをしていた。コンピュータで主に明日戦うことなるだろう同級生のものを集めている。公式試合の映像、挙げた功績、情報屋からの映像。目ぼしい人間を調べ上げる。
ーーーよし、いい感じに集まってきた。けど…
「なんで居るの?」
リュートは振り返りリビングのコアを見る。
「なんじゃ?お主はわしの主人じゃろ?そばに仕えるのは当たり前じゃ」
普段、主従など気にもしていないくせに都合のいい時だけ最初の頃の関係を利用する。
「まぁ、それはいいとして…なんで?」
リュートの視線の先にはカイト、サリア、アヤメの姿があった。人生ゲームをやっており、アヤメが一区画を自身の土地で染め上げたところであった。
「いいじゃない。はい、お菓子よ。リュートも食べる?他にもあるわよ?」
サリアが机の上に袋を開けた菓子を置く。さらに、彼女の足元には追加のお菓子が控えている。
「それじゃあ、喉乾くでしょ?なんか飲み物買ってくるよ」
リュートは四人を残して部屋を出た。
「待ってたよ」
寮から出た時、ドロールが話しかけて来た。
「え?」
リュートは突然現れた彼を警戒する。
「いやいや、そんなに警戒しないでほしい。”待ってた”と言っても君だけではない。誰でもよかった」
「そうですか…」
目の前の男の不気味さにゾッとする。本当に自分を待っていたのではないかと感じてさえいる。
「情報交換をしないか?君たちなら”自然公園”と言えば理解できるよね」
ーーーシルについて言っているのだろう。彼のについは口止めされているし、話す理由もない。
「僕は途中から拘束されていたからあまりよく知らないけれど……」
リュートはシルの存在を隠すためのバックストーリーをなぞって説明した。
「意外なことに、君は口が硬いみたいみたいだ。だけど情報交換と言っただろ?もっと面白い情報が手に入るかもしれない。それこそお金じゃ手に入らないような。それで、化け物の強さは私と比べてどれくらいか分かるかな?」
「新入生程度、あなたと比べれば足元にも及びませんよ」
「そうか…それじゃあ、最後にもう一つ。君の担任には私が何人いれば勝てる?」
「それなら…今のあなただと何人いても勝てないと思うよ」
「君は優秀だね。欲しいくらいだ。また近いうちに会うだろう。それじゃ…」
「待って」
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