モンスターコア

ざっくん

文字の大きさ
76 / 94
何でもありな体育祭!

66話

しおりを挟む
 ドロールはかなりの太っ腹であった。リュートのインチキを笑って許しただけでなく。約束の履行までした。
 本人いわく約束を必ず守ることを信条としているらしい。
 受け取った情報は”お金では買えない”と言う前口上に恥じないものだった。正直、手に余る。知らない方が良かったまである。

ーーーまあ、今更、後悔しても遅いし、リークだけしておこう。

 リュートはその場で担任の教員(リオン)に手紙を書きポストへと入れた。
 検閲されればそれまでだが、学園にも数人しかいない電脳者を警戒してインターネットを避けたのだから十分であろう。

「ただいまー」

 リュートは自身の部屋に帰還する。
 そろそろゲームがひと段落ついた頃だろうか。そうならば是非、一緒に楽しみたいものである。

「おっ、おかえりー。何買ってきたんだ?」

「あっ、」

 リュートはカイトに言われて気づく。ドロールとの掛け合いで何故外に出かけていたのかをすっかりと忘れていたのだ。かなりの時間部屋を開けていたのにその手には戦利品が無かった。
 仕方ないので冷蔵庫から缶ジュースを数本取り出し、その中の一つを

「はい、飲む?」

「ん?見た事ないやつだな…ハンバーグ?」

 カイトはラベルを確認し疑問符を浮かべた。
ーーーーー
 時間が経ちそれぞれが帰路に着く。

「まだ準備期間終わってないから気おつけてね」

 現在は夜遅くであり、“拘束”の対象時間外であるが、ポイント関係なく他クラスを襲うことが出来る。
 寮内は原則として戦闘禁止である。しかし、男子寮と女子寮の間に戦闘が可能な地域がある。人通りが多く漁夫の利の危険があるため攻撃を仕掛けられることは少ないが用心する事に越したことは無い。

「わかってる。三人で帰るから心配しないで」

 サリアが玄関でスリッパを脱ぎ靴を履く。長い尻尾が邪魔になるのでは無いかと思っていたが、器用に利用して体を支えている。
 ただ、彼女にこの場所は狭すぎるのだろう。他の人を先に出して空間を広く取っている。

 ところで、勘の良い者は気づいたのではないだろうか””である。
 先程に述べた通り寮は男子寮と女子寮が別の建物となっている。サリアとアヤメは女子であり女子寮に向かうのは必然ある。だが、もう一人同行者がいる。

 コアである。モンスターの核である彼は体を得た段階で部屋を一つ与えられた。そして、体が女の子の姿であったことから女子寮の部屋を与えられたが、僕とカイトは雄だと思ってる。
ーーーーー
 ピンポーン

 少し時間が経ち部屋のインターホンが鳴った。
 ノートを閉じて玄関に向かう。覗き穴を確認するとそこにはサリアがいた。

「忘れ物?」

「いや、違うんだけど…泊めてくれる?」

 彼女は申し訳なさそうに両手の指を合わせてもじもじしとている。

「嫌だけど、理由は教えて」

 正直、いや、普通に泊めたくない。めんどくさい。でも理由は気になる。

「兄がね、居るのよ多分…絶対いるわ!だから泊めて!」

「昼はちょっと異常だってけど、後で話してみたらそこまでおかしな人じゃなかったよ」

「え…?話したの…?入っていい?」

 サリアの声が急に深刻な声色に変わる。

「話したけど…いいよ」

 深刻そうなので取り敢えずサリアを中に入れた。

「いい?アイツは普段、身内ですら姿を見せることは無いの。で、いざ現れたら一言で身内にとんでもない厄災を爆撃してくとんでもない奴よ!」

「えっと、そんなに?」

ーーーそんな、災害みたいに…
 昼に見た彼のサリアに対する態度を考えると、普通の妹大好きな兄ってだけに思える。それなのにこの嫌われようは可哀想に思えてくる。

「はぁ…何話されたの?私は聞きたくないけど。近いうちに死にかけるから覚悟したほうがいいわ」

「あー…」

 そういえば、今さっきとんでもない爆弾を落とされていた。さっきのは撤回する。飛んだ疫病神だ。

「耐えられなくなったら遠慮なく言いなさい。責任は取るから」

「わ、分かった」

 その後、彼女はドロールのかなり愚痴を吐き出して、自身の部屋に帰って行った。
 兄と出会ってしまう可能性については、
「もう、遅いわよ」
 だそうである。災害から逃れる術はもう無いらしい。

ーーーーーー
 女子寮に帰るサリア。その前にある人影が立ち塞がった。
 道化の仮面をつけて、ローブで全身を覆っている。後方には同じローブを着た人間が二人控えており、なんとも物々しい感じである。

「誰?」

ーーー少なくても兄じゃないわね。やり方が違う

「ミリナリス。一年一組のまとめ役です」

「それは、迂闊じゃない?仮面の意味ないわよ」

 敵から目を離さぬように戦闘用のコアをセットする。自然公園の時と同じ構成である。

「いいえ、必要なことです」

「そう、すぅー、さ…」

 息を大きく吸ってブレスを放とうとする。しかし、

「黙りなさい」

「…ッ!」

 ミリナリスの言葉を皮切りにサリアの口が噤がれる。声を出そうにも口を動かすことができない。

ーーー精神魔法!?何故!?

 これは通常あり得ないことである。戦闘において効力の高い精神魔法は使用されない。相手の意思を捻じ曲げるほどの魔法は遥か格下にしか通用しないからである。そして、格下ならば普通に制圧したほうが早い。

「…ッ!」

 ブレスによる攻撃を諦めて、『炎魔法』で大剣を形成し襲い掛かる。

「止

パシン!

…い」

 サリアは地面に尻尾を叩きつけ、ミリナリスの声を掻き消した。しかし、サリアの体は動きを止めた。

「その場に座りなさい。私の魔法は服従魔法。反射的に命令を受け入れるようになるわ。」

「敵に手の内バラしてもいいの?」

 追い詰められたサリアの精一杯の強がりである。ほぼ負けが確定している絶望的な状況であるが諦めない。だが、彼女に出来ることはもう何もなかった。

「これは必要なことよ。このローブも仮面も、この会話でさえも同じ。でも、鬱陶から従順になりなさい。そして、あなたに最も必要なものがコレ」

カチャ

 ミリナリスは紫色のコアが嵌められたチョーカーをサリアの首に取り付けた。

「その魔法を常に発動させなさい。そして、あなたに魔法を掛けた主人は私。この顔と声を覚えなさい。私以外の存在からの命令を受け入れることは許可しないわ」

「………」

 サリアは話す事なく従順に話を聞いている。そして、座り込んだまま虚な瞳で次の指示を待っていた。

「あなたは自分で考え、切り捨て可能な工作員としてクラスを崩壊に導きなさい。返事は”はい”よ」

「……はい」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる

ケイちゃん
ファンタジー
ゲームに熱中していた彼は、シナリオで現れたラスボスを好きになってしまう。 彼はその好意にラスボスを倒さず何度もリトライを重ねて会いに行くという狂気の推し活をしていた。 だがある日、ストーリーのエンディングが気になりラスボスを倒してしまう。 結果、ラスボスのいない平和な世界というエンドで幕を閉じ、推しのいない世界の悲しみから倒れて死んでしまう。 そんな彼が次に目を開けるとゲームの中の主人公に転生していた! 主人公となれば必ず最後にはラスボスに辿り着く、ラスボスを倒すという未来を変えて救いだす事を目的に彼は冒険者達と旅に出る。 ラスボスを倒し世界を救うという定められたストーリーをねじ曲げ、彼はラスボスを救う事が出来るのか…?

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

処理中です...