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何でもありな体育祭!
67話 這い寄る崩壊
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体育祭開催日の朝、リュートの部屋のチャイムが鳴った。
あれ?誰だろう
今日は誰かが来る予定も郵便物の受け取りも無い。会う約束をせずとも訪ねてくる仲の良い友人もいるが、彼らとはこの後会う予定だ。
今日は大きなイベントの当日である。できるだけ面倒ごとは避けたい。
ドアの覗き穴を確認すると、そこにはサリアの姿があった。いつもと少し違た笑顔をしている。優しさと色気が追加された様な感じだ。
もしかして集合時間を間違えたかな?だとしたら申し訳なく思う。わざわざこちらに来させてしまった。
怒ると笑顔になる人って本当に居たんだ。などと思いつつ扉を開ける。
「ご…、あれ?」
リュートはすぐに謝罪しようとしたが、言葉が途中で止まった。
サリア以外の姿が見当たらない。外で待っている可能性もあるが、僕のミスをコアが煽りに来ないはずがない。
「ご、って、どうしたの?」
声色から怒りの感情は感じ取れない。が、別の何かを感じる。それは分からない。しかし、いつもと違うのは確かだ。
「集合時間を間違えたかと思って」
「大丈夫よ。私が一緒に行きたくて来ただけだから。むしろ少し早いくらい?」
確かに…
記憶が正しければ本来の集合時間と比べかなり余裕がある。行く前に何か一仕事しても遅れることは無さそうだ。
「それで、何かするの?」
「えっ?何もしないわよ?」
「そっか、入る?」
「入る」
意外だった、サリアが何の目的もなくここに来ていて、リュートの提案を簡単に受け入れた事が。
彼女はどんな行動もそれなりの考えを持っていると思っていた。
自分と対照的で似た性格をしていたから偏った見かたをしていたのかもしれない。人は人間の頭脳で測れる様な単純な存在では無のだろう。
今は個人的な作業の最中なので茶と菓子を出してくつろいでもらう。それだけでは少し味気なかったので”オカズドリンク 焼肉味”を添えて置いたらかなり驚いてくれた。昨日カイトに渡したものと同じネタ商品である。
「何調べてるの?」
サリアがひとしきりごろごろとだらけた後、コンピュータで情報収集をするリュートに話しかけた。
「1-1。ダメ元だけどね。やっぱり…情報が少ないし、そもそもデマが多い」
一組は同学年で情報操作が群を抜いて高い。金の使い方が上手いのか、別の手段があるのか情報が全く外部に漏れ出てこない。故に一度後回しにしていた。
「何か分かった?」
「全然、指揮者が少し割れたくらい」
一年一組を指揮しているのはミリナリスと言う人物。名前、目撃情報からおそらく女性。道化の仮面に黒いローブを羽織っている。
彼女が使う魔法は、精神系の魔法と『隠蔽魔法』、さらは触れずとも魔法を掛けられるように一、二枠使っていると予想される。
準備期間中は仲間と人気のない場所で狙った相手を待ち伏せる。仲間の『付与魔法』でマナを受け取り、圧倒的物量差で一瞬で術中に嵌める。
「分かりすぎじゃない!?」
「ありがとう。でも、これしか分かってないんだよ」
結果に驚いてもらったのでは嬉しいが、それ以外のことが全く分かっていない。
彼女以外の生徒の情報が受験以降から音沙汰ない。現在の実力、功績等は全くの不明である。
それに、おそらく彼女は体育祭において精神魔法を使わない。
何故なら、効力の高い精神魔法は掛けるのが難しく、成功したところですぐに効力が失われる。
さらに、術下の人物が激しい動きや魔法の発動をする事でマナが霧散しその速度はさらに増す。真正面から戦う体育祭では効率が悪いのである。
そう考えると、相手の手の内が何一つわかっていないのだ。唯一救いがあるとすれば彼らの所持するポイントが少ない事である。
「はぁ…」
インターネットは調べ尽くした。情報屋さんに聞こうにも返信が無い。聞き込みは論外。万策が尽きた。
「あー、もう!外行きましょう、外。あなたがそんなのだと、気になってゴロゴロできないじゃ無い」
どうやら、相当追い詰められた顔をしていたらしい。気分転換をしろと外へ連れ出された。
ーーーーー
二人は一緒に闘技場へと向かっていた。
そこは受験時にバトルロワイアルをした場所である。観戦席にて全生徒とクラスを受け持つ担任を集めた開会式を行われる予定である。
ーーーやはり、おかしい
リュートはサリアについて悶々と思考を巡らせていた。昨日の夜は普段と変わらなかった。好奇心が高くて活発、誰に対しても平等に接していた。
しかし、今はどうだろうか。彼女はリュートをぬいぐるみのように抱きかかえている。さらに、背中に胸を押し当て頭に自身の顎を乗せるようなことまでした。
普段の彼女とはかけ離れている。少なくてもこれ程まで異性と密着する姿は見たことない。
何故そうなったのかと聞かれれば、サリアが持ち上げてリュートが抵抗しなかったという事になる。
リュートは彼女がどうしてそんな事をしたのかは分からないが、楽しそうな顔をしているので抵抗せずされるがままに手足を投げ出す。
ただ、早い時間に出たとはいえ人は居る。すれ違う人々の目線を受けるのは少々恥ずかしい。
「あなた、思ったより可愛い顔してるわね」
「…そう?」
確かに他の人に比べ成長が遅く童顔である。別に気にしていないし、利用することも多々ある。しかし、思いの外”可愛い”という言葉が男のプライドに突き刺さった。
「下ろして」
「ダメ」
「え?ダメなの!?」
下ろしてもらえなかった…あの後、数分ぐずってみたのだが押しても引いてもびくともしなかった。
無理矢理抜け出すこと出来る。しかし、悲しまれそうで人口までは至らなかった。
「降りていいわよ」
リュートは唐突に地面に下ろされた。彼女は頑なに動かなかったのだが最後は呆気なかった。
「ん?ありが…グッ!」
瞬間、右半身に強力な衝撃が襲った。そのまま、吹き飛ばされて路地裏の奥へと押し込まれてしまった。
ーーー今のは…!何故!?
一瞬であったが彼は見逃さなかった。攻撃の正体はサリアの尻尾。体をうまく使い死角を作り出していた。
だか、今はそんな事を考えている暇はない。
「ミリナリス。一年一組のまとめ役です。」
道化の仮面に黒いローブ。確実に本人である。
あれ?誰だろう
今日は誰かが来る予定も郵便物の受け取りも無い。会う約束をせずとも訪ねてくる仲の良い友人もいるが、彼らとはこの後会う予定だ。
今日は大きなイベントの当日である。できるだけ面倒ごとは避けたい。
ドアの覗き穴を確認すると、そこにはサリアの姿があった。いつもと少し違た笑顔をしている。優しさと色気が追加された様な感じだ。
もしかして集合時間を間違えたかな?だとしたら申し訳なく思う。わざわざこちらに来させてしまった。
怒ると笑顔になる人って本当に居たんだ。などと思いつつ扉を開ける。
「ご…、あれ?」
リュートはすぐに謝罪しようとしたが、言葉が途中で止まった。
サリア以外の姿が見当たらない。外で待っている可能性もあるが、僕のミスをコアが煽りに来ないはずがない。
「ご、って、どうしたの?」
声色から怒りの感情は感じ取れない。が、別の何かを感じる。それは分からない。しかし、いつもと違うのは確かだ。
「集合時間を間違えたかと思って」
「大丈夫よ。私が一緒に行きたくて来ただけだから。むしろ少し早いくらい?」
確かに…
記憶が正しければ本来の集合時間と比べかなり余裕がある。行く前に何か一仕事しても遅れることは無さそうだ。
「それで、何かするの?」
「えっ?何もしないわよ?」
「そっか、入る?」
「入る」
意外だった、サリアが何の目的もなくここに来ていて、リュートの提案を簡単に受け入れた事が。
彼女はどんな行動もそれなりの考えを持っていると思っていた。
自分と対照的で似た性格をしていたから偏った見かたをしていたのかもしれない。人は人間の頭脳で測れる様な単純な存在では無のだろう。
今は個人的な作業の最中なので茶と菓子を出してくつろいでもらう。それだけでは少し味気なかったので”オカズドリンク 焼肉味”を添えて置いたらかなり驚いてくれた。昨日カイトに渡したものと同じネタ商品である。
「何調べてるの?」
サリアがひとしきりごろごろとだらけた後、コンピュータで情報収集をするリュートに話しかけた。
「1-1。ダメ元だけどね。やっぱり…情報が少ないし、そもそもデマが多い」
一組は同学年で情報操作が群を抜いて高い。金の使い方が上手いのか、別の手段があるのか情報が全く外部に漏れ出てこない。故に一度後回しにしていた。
「何か分かった?」
「全然、指揮者が少し割れたくらい」
一年一組を指揮しているのはミリナリスと言う人物。名前、目撃情報からおそらく女性。道化の仮面に黒いローブを羽織っている。
彼女が使う魔法は、精神系の魔法と『隠蔽魔法』、さらは触れずとも魔法を掛けられるように一、二枠使っていると予想される。
準備期間中は仲間と人気のない場所で狙った相手を待ち伏せる。仲間の『付与魔法』でマナを受け取り、圧倒的物量差で一瞬で術中に嵌める。
「分かりすぎじゃない!?」
「ありがとう。でも、これしか分かってないんだよ」
結果に驚いてもらったのでは嬉しいが、それ以外のことが全く分かっていない。
彼女以外の生徒の情報が受験以降から音沙汰ない。現在の実力、功績等は全くの不明である。
それに、おそらく彼女は体育祭において精神魔法を使わない。
何故なら、効力の高い精神魔法は掛けるのが難しく、成功したところですぐに効力が失われる。
さらに、術下の人物が激しい動きや魔法の発動をする事でマナが霧散しその速度はさらに増す。真正面から戦う体育祭では効率が悪いのである。
そう考えると、相手の手の内が何一つわかっていないのだ。唯一救いがあるとすれば彼らの所持するポイントが少ない事である。
「はぁ…」
インターネットは調べ尽くした。情報屋さんに聞こうにも返信が無い。聞き込みは論外。万策が尽きた。
「あー、もう!外行きましょう、外。あなたがそんなのだと、気になってゴロゴロできないじゃ無い」
どうやら、相当追い詰められた顔をしていたらしい。気分転換をしろと外へ連れ出された。
ーーーーー
二人は一緒に闘技場へと向かっていた。
そこは受験時にバトルロワイアルをした場所である。観戦席にて全生徒とクラスを受け持つ担任を集めた開会式を行われる予定である。
ーーーやはり、おかしい
リュートはサリアについて悶々と思考を巡らせていた。昨日の夜は普段と変わらなかった。好奇心が高くて活発、誰に対しても平等に接していた。
しかし、今はどうだろうか。彼女はリュートをぬいぐるみのように抱きかかえている。さらに、背中に胸を押し当て頭に自身の顎を乗せるようなことまでした。
普段の彼女とはかけ離れている。少なくてもこれ程まで異性と密着する姿は見たことない。
何故そうなったのかと聞かれれば、サリアが持ち上げてリュートが抵抗しなかったという事になる。
リュートは彼女がどうしてそんな事をしたのかは分からないが、楽しそうな顔をしているので抵抗せずされるがままに手足を投げ出す。
ただ、早い時間に出たとはいえ人は居る。すれ違う人々の目線を受けるのは少々恥ずかしい。
「あなた、思ったより可愛い顔してるわね」
「…そう?」
確かに他の人に比べ成長が遅く童顔である。別に気にしていないし、利用することも多々ある。しかし、思いの外”可愛い”という言葉が男のプライドに突き刺さった。
「下ろして」
「ダメ」
「え?ダメなの!?」
下ろしてもらえなかった…あの後、数分ぐずってみたのだが押しても引いてもびくともしなかった。
無理矢理抜け出すこと出来る。しかし、悲しまれそうで人口までは至らなかった。
「降りていいわよ」
リュートは唐突に地面に下ろされた。彼女は頑なに動かなかったのだが最後は呆気なかった。
「ん?ありが…グッ!」
瞬間、右半身に強力な衝撃が襲った。そのまま、吹き飛ばされて路地裏の奥へと押し込まれてしまった。
ーーー今のは…!何故!?
一瞬であったが彼は見逃さなかった。攻撃の正体はサリアの尻尾。体をうまく使い死角を作り出していた。
だか、今はそんな事を考えている暇はない。
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