5 / 18
皆で確認する
しおりを挟む
私もサロモンも、声を掛けてきた人をとりあえず全力の愛想笑いで躱し、神殿を出た。
ちなみにイヴォンの聖獣は神殿を出たところでやっと絶叫を止めていた。
「サロモンの聖獣はクロヒョウね」
神殿の敷地内にある庭園の隅っこに置いてあったベンチに四人で座ってクリスタル板を見せ合う。
家に帰っても四人なのだから家でもいいのでは? と思わなくもなかったけれど、この後冒険者登録をしに行くので、とりあえずここで見ようということになった。皆早く全員分の聖獣データが見たかったのだ。
「クロヒョウのウォルク。活動適性区域は陸上、樹上。ウォルク、この人はリゼット。俺の姉さんだ。リゼット姉さんに近付く危ない奴がいたら俺に教えてほしい」
「ぐるる」
ウォルクはとても賢いようで、サロモンの言葉に頷くようなそぶりを見せていた。かわいい。大きいけどかわいい。
性別はオスで、体長は150cm超。真っ黒で艶のある毛並みに瞳の色は青みがかった紫色。
聖獣の瞳の色は、召喚主の瞳の色とリンクするので、サロモンも同じく青みがかった紫色の瞳をしている。
ちなみに私とサロモンは姉弟だけれど先祖から受け継いだ色は被らなかったようで、私の瞳の色は深いエメラルドグリーン。サロモンは髪の色がエメラルドグリーン。私の髪の色はミルクティーベージュだ。
だから遠目に見たら姉弟だとは分かりづらい。しかし近くで見ると二人とも母親似なので顔は似ている。
「リゼット姉さんの聖獣はカピバラだね」
「ええ、世界一かわいい生き物で有名なカピバラのモルンよ。活動適性区域は陸上、水中だと書いてあるわ」
「ついさっきまでカピバラの存在知らなかったよね?」
サロモンの言葉を聞かなかったことにして、モルンの頭を撫でる。するとモルンは小さく「ククク」という鳴き声を発した。きゅるきゅるもかわいいけれど、くくくもかわいい。
そんなモルンの体長は100センチほどで、ずっしりしている。泳ぎが得意だということで、足には水かきがある。
モルンは私を見るとき、だいたい目を細めているので分かりづらいが、瞳の色は私と同じ深いエメラルドグリーン……なんだと思う。
よく見せてもらえれば……「きゅるるるる」見えないかぁ。
「ティーモの聖獣はオコジョか」
私にちらっと呆れた視線を送った後、サロモンがティーモに声を掛けた。
「はい。オコジョのネポスです。活動適性区域は陸上、樹上。泳ぐことは可能のようですが水中での活動適性はそれほどでもない、とのことですね。あと今の季節は真っ白ですが暖かくなると茶色になるそうです」
「かわいらしい顔をしているわね」
「はいっ!」
ティーモの風貌もどちらかというと小動物のような愛らしさがあるので、主従そろってかわいらしい。
ティーモの瞳は明るい茶色。だからネポスの瞳の色も茶色だ。
真っ白で小さなネポスがティーモの明るいオレンジ色の髪の毛の間からひょっこり出て来ている様子なんかはもうとんでもなくかわいい。
「それで、イヴォンの聖獣が」
「キィィィ!」
「頼むから静かにしてくれ。えっと、俺の聖獣はクルマサカオウムです。名前はアブル。活動適性区域は上空。夜明け頃や日没頃に絶叫しがちだというデータがあるそうなので……今から謝っておきますうるさかったらごめんなさい」
夜明けでも日没でもない現時点で叫びがちなんだけど大丈夫かしら?
「まぁ防音魔法とかもあるし大丈夫じゃないかな」
じゃあ大丈夫でしょう。かわいいし。ピンクで。
瞳の色は……何色だろう? ちょっと見えない。そもそもイヴォンとはそれほど接点がなかったので、彼の瞳が何色なのかを知らない。
サロモンの隣にいるのを見ることは多かったから茶髪であるということは知っていたけれど。
ちらりと彼の顔面に視線を送ると、青……いや、藍色の瞳と目が合った。
「イアァァァァ!!」
めちゃくちゃ叫ぶじゃないのアブル。
「ふふっ」
「すみません」
私の小さく漏れてしまった笑いを聞いたイヴォンが申し訳なさそうに眉尻を下げた。
「活動適性区域が陸上、樹上、水中、上空でバランスもいい感じだな。神殿の別館に冒険者ギルド直通の移動用魔法陣があるからそれ使って行こうか」
サロモンの一声で、私たちは立ち上がる。
冒険者ギルドで冒険者登録を済ませ、完全移住の手続きまで済ませれば、この国でゆったり冒険者生活を送ることが出来る、とサロモンが言っていた。
やれ茶会だ、やれ夜会だ、金だ地位だ名声だ、そんなあちらの貴族社会と違ってこちらではゆったりのんびり生きようと四人で約束したのだ。
かわいい聖獣に囲まれてゆったりのんびり生活が出来るだなんて、夢のような話じゃないか。
「きゅるるる」
「ああかわいい」
モルンとちらっと目が合ったと思ったら「きゅるきゅる」言って目を細めてくれている。かわいい。
撫でまわしたい気持ちしかないけれど、神殿の別館に辿り着いていたので我慢するしかない。かなしい。
「さっきポロス学園の学生がワイバーンを召喚したらしいぞ」
私たちが神殿の別館に足を踏み入れたところで、そんな噂話が聞こえてきた。
サロモンもそれが聞こえていたらしく、少し驚いた顔をしている。
そして自分たちの聖獣を見て言うのだ。
「せっかく買った家を買い替えなきゃいけない大きさの聖獣を引かなくて良かった」
と。
……確かに。
ワイバーンの召喚はすごいことなのだろうけれど、さっき見たあの家にワイバーンは……きっとちょっと無理。
「こちらでは学生さんでも聖獣を召喚するのね」
「たしかポロス学園は生徒全員聖獣召喚が義務付けられてたんじゃなかったかな」
そんな私の呟きに、サロモンが答える。
生徒全員聖獣召喚が義務……ということは学園内には聖獣がたくさん……!
「私、この国に産まれたかったわ」
「確かに」
ちなみにイヴォンの聖獣は神殿を出たところでやっと絶叫を止めていた。
「サロモンの聖獣はクロヒョウね」
神殿の敷地内にある庭園の隅っこに置いてあったベンチに四人で座ってクリスタル板を見せ合う。
家に帰っても四人なのだから家でもいいのでは? と思わなくもなかったけれど、この後冒険者登録をしに行くので、とりあえずここで見ようということになった。皆早く全員分の聖獣データが見たかったのだ。
「クロヒョウのウォルク。活動適性区域は陸上、樹上。ウォルク、この人はリゼット。俺の姉さんだ。リゼット姉さんに近付く危ない奴がいたら俺に教えてほしい」
「ぐるる」
ウォルクはとても賢いようで、サロモンの言葉に頷くようなそぶりを見せていた。かわいい。大きいけどかわいい。
性別はオスで、体長は150cm超。真っ黒で艶のある毛並みに瞳の色は青みがかった紫色。
聖獣の瞳の色は、召喚主の瞳の色とリンクするので、サロモンも同じく青みがかった紫色の瞳をしている。
ちなみに私とサロモンは姉弟だけれど先祖から受け継いだ色は被らなかったようで、私の瞳の色は深いエメラルドグリーン。サロモンは髪の色がエメラルドグリーン。私の髪の色はミルクティーベージュだ。
だから遠目に見たら姉弟だとは分かりづらい。しかし近くで見ると二人とも母親似なので顔は似ている。
「リゼット姉さんの聖獣はカピバラだね」
「ええ、世界一かわいい生き物で有名なカピバラのモルンよ。活動適性区域は陸上、水中だと書いてあるわ」
「ついさっきまでカピバラの存在知らなかったよね?」
サロモンの言葉を聞かなかったことにして、モルンの頭を撫でる。するとモルンは小さく「ククク」という鳴き声を発した。きゅるきゅるもかわいいけれど、くくくもかわいい。
そんなモルンの体長は100センチほどで、ずっしりしている。泳ぎが得意だということで、足には水かきがある。
モルンは私を見るとき、だいたい目を細めているので分かりづらいが、瞳の色は私と同じ深いエメラルドグリーン……なんだと思う。
よく見せてもらえれば……「きゅるるるる」見えないかぁ。
「ティーモの聖獣はオコジョか」
私にちらっと呆れた視線を送った後、サロモンがティーモに声を掛けた。
「はい。オコジョのネポスです。活動適性区域は陸上、樹上。泳ぐことは可能のようですが水中での活動適性はそれほどでもない、とのことですね。あと今の季節は真っ白ですが暖かくなると茶色になるそうです」
「かわいらしい顔をしているわね」
「はいっ!」
ティーモの風貌もどちらかというと小動物のような愛らしさがあるので、主従そろってかわいらしい。
ティーモの瞳は明るい茶色。だからネポスの瞳の色も茶色だ。
真っ白で小さなネポスがティーモの明るいオレンジ色の髪の毛の間からひょっこり出て来ている様子なんかはもうとんでもなくかわいい。
「それで、イヴォンの聖獣が」
「キィィィ!」
「頼むから静かにしてくれ。えっと、俺の聖獣はクルマサカオウムです。名前はアブル。活動適性区域は上空。夜明け頃や日没頃に絶叫しがちだというデータがあるそうなので……今から謝っておきますうるさかったらごめんなさい」
夜明けでも日没でもない現時点で叫びがちなんだけど大丈夫かしら?
「まぁ防音魔法とかもあるし大丈夫じゃないかな」
じゃあ大丈夫でしょう。かわいいし。ピンクで。
瞳の色は……何色だろう? ちょっと見えない。そもそもイヴォンとはそれほど接点がなかったので、彼の瞳が何色なのかを知らない。
サロモンの隣にいるのを見ることは多かったから茶髪であるということは知っていたけれど。
ちらりと彼の顔面に視線を送ると、青……いや、藍色の瞳と目が合った。
「イアァァァァ!!」
めちゃくちゃ叫ぶじゃないのアブル。
「ふふっ」
「すみません」
私の小さく漏れてしまった笑いを聞いたイヴォンが申し訳なさそうに眉尻を下げた。
「活動適性区域が陸上、樹上、水中、上空でバランスもいい感じだな。神殿の別館に冒険者ギルド直通の移動用魔法陣があるからそれ使って行こうか」
サロモンの一声で、私たちは立ち上がる。
冒険者ギルドで冒険者登録を済ませ、完全移住の手続きまで済ませれば、この国でゆったり冒険者生活を送ることが出来る、とサロモンが言っていた。
やれ茶会だ、やれ夜会だ、金だ地位だ名声だ、そんなあちらの貴族社会と違ってこちらではゆったりのんびり生きようと四人で約束したのだ。
かわいい聖獣に囲まれてゆったりのんびり生活が出来るだなんて、夢のような話じゃないか。
「きゅるるる」
「ああかわいい」
モルンとちらっと目が合ったと思ったら「きゅるきゅる」言って目を細めてくれている。かわいい。
撫でまわしたい気持ちしかないけれど、神殿の別館に辿り着いていたので我慢するしかない。かなしい。
「さっきポロス学園の学生がワイバーンを召喚したらしいぞ」
私たちが神殿の別館に足を踏み入れたところで、そんな噂話が聞こえてきた。
サロモンもそれが聞こえていたらしく、少し驚いた顔をしている。
そして自分たちの聖獣を見て言うのだ。
「せっかく買った家を買い替えなきゃいけない大きさの聖獣を引かなくて良かった」
と。
……確かに。
ワイバーンの召喚はすごいことなのだろうけれど、さっき見たあの家にワイバーンは……きっとちょっと無理。
「こちらでは学生さんでも聖獣を召喚するのね」
「たしかポロス学園は生徒全員聖獣召喚が義務付けられてたんじゃなかったかな」
そんな私の呟きに、サロモンが答える。
生徒全員聖獣召喚が義務……ということは学園内には聖獣がたくさん……!
「私、この国に産まれたかったわ」
「確かに」
12
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
義弟の婚約者が私の婚約者の番でした
五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」
金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。
自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。
視界の先には
私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
ブックマーク・評価、宜しくお願いします。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
魔法使いとして頑張りますわ!
まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。
そこからは家族ごっこの毎日。
私が継ぐはずだった伯爵家。
花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね?
これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。
2025年に改編しました。
いつも通り、ふんわり設定です。
ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m
Copyright©︎2020-まるねこ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる