ゆるゆる冒険者生活にはカピバラを添えて

蔵崎とら

文字の大きさ
6 / 18

早速登録する

しおりを挟む
「綺麗な所ね」
「うん。あと広い」

 魔法陣で移動してきたので、冒険者ギルドまでは一瞬だった。
 大きな門のそばに魔法陣用の建物があって、そこを出るとすぐに門がくぐれるようになっている。
 門をくぐると、目の前に広がる円形の広場。その中心には大きな噴水があった。
 広場の周りにぐるりと石畳の道があり、さらにその周りにいくつものお店が建っている。

「一つの街みたい」
「確かに」

 門を入ってすぐ右手にはパン屋さん。あれは看板が見えているので確実だ。
 そしてどこからか空腹を誘ういい香りがしているので他にも飲食店があるのだろう。お腹が空いてきた。
 他には服を売っている店、魔道具を売っている店、アクセサリーを売っている店、え、あれは聖獣用の服やアクセサリーを売っている店!? 行きたい! 今すぐにでも行きたい!

「リゼット姉さん、買い物は後だからね」
「……はい」

 冒険者ギルド本部は門から見て真正面、噴水の向こう側にある。
 私たちはとりあえず右回りで本部を目指すことにした。
 一軒目にパン屋さんがあって、あれはスープだろうか? 軽食が食べられそうなお店があって、なんだかいい香りがする美味しそうなものを売っているお店があって、服、魔道具、薬……あー! ここだわ聖獣用のリボンだったりスカーフだったりアクセサリーだったりを売っているお店! かわいい! 聖獣用アイテムショップ『永遠の夢』という看板がかかっている。後で来る。絶対に来る。

「着いたよ」
「あら」

 思ったより早く到着した気がする。
 冒険者ギルドは白い石造りの建物で、窓にはクリスタルと魔法石のステンドグラスが嵌め込まれている。
 今日、私たちが冒険者登録をするのは、この建物の中央。冒険者ギルド総合本部、モルガナイト館だ。
 冒険者登録等、基本的な事務仕事をしてくれるのがこのモルガナイト館の人たち、らしい。
 登録後にお世話になるのは、正面入って右手にあるジェイド館。ジェイド館では冒険者に依頼をしたり冒険者が依頼を受けたりするところ。
 そして左手にあるサファイア館。こちらは冒険者が持ってきた物を鑑定して買い取ってくれるところだそうだ。
 他にもアメジスト館、シトリン館などなど、色々と部署が分かれているとのことだったけれど、サロモンが言うには私たちが関わるのは主にモルガナイト館とジェイド館、そしてサファイア館だろうとのことだった。
 ちなみに冒険者ギルドの制服の胸元、ループタイにはそれぞれの館の名と同じ宝石があしらわれており、それを見るとどこの部署で働いている人なのかが分かるのだとか。

「こちらへどうぞ」
「はい」

 行き交う皆さんのループタイ観察をしていたところで自分の番がやってきた。多少の緊張はあるものの、聖獣召喚に比べれば大したことではない。
 冒険者登録は、基本的な個人情報と聖獣のデータをクリスタルが読み取ってくれて、それが宝石となって出てくる。
 その宝石を身に着けておけるようなアクセサリーに加工して登録完了となる。

「あわわ」

 データ読み取り用のクリスタルが「ぺっ」と吐き出すように宝石を出してくれた。
 もっとふわっと出してくれるもんだと思っていたからちょっと驚きつつも宝石を受け取る。
 その宝石を魔法の合成釜に入れて、お好みのアクセサリーを指定。
 あ、お察しの通りこのデータ読み取り用のクリスタルを創生したのもウォルミテ・ロユマノワだし、魔法の合成釜を作ったのもウォルミテ・ロユマノワである。

「どうしよう? ピアスにしておこうかしら」
「きゅるる」

 私の独り言にモルンが相槌を打ってくれている。かわいい。
 モルンの相槌が入ったことだし、やっぱりピアスにしておこう。
 指輪やネックレス、ブレスレットもいいけれど、ピアスが一番邪魔にならない気がするから。

「リゼット姉さん、登録出来た?」
「ええ、ほら」

 魔法の合成釜からピアスを受け取って、早速付けてみたところでサロモンに声を掛けられたので髪を耳にかけてピアスを見せびらかす。

「おぉ、綺麗な海みたいな青だ」

 この冒険者宝石は自分の魔力と聖獣の魔力の色が混ざって結晶化するらしいという話なので、私の魔力とモルンの魔力を混ぜると海の色になるということだ。
 あぁさっきのお店に海の色のスカーフなんかが売ってあればモルンの首に巻いてあげたい。私とお揃いだ。絶対かわいい。

「俺はブレスレットにしたよ」
「あら、なかなか素敵なブレスレットね。宝石の色は薔薇の色みたいね」

 サロモンとそんな会話をしていると、サロモンの聖獣ウォルクが頭で私の左手をグイグイと持ち上げる。
 なにごとかと思ったが、どうやらなでてほしいらしい。
 なでるくらいお安い御用だわ、ということでウォルクのつやつやで滑らかな額から後頭部に向けて数度なでる。
 するとウォルクは気持ちよさそうに目を細めた。
 しかしそれに気が付いたモルンが私とウォルクの間にのそのそと入り込み、鼻先をウォルクの脇腹に当てた。
 そしてその鼻先でウォルクを押し始めた。
 これはもしかして、モルンのヤキモチでは? え、かわいい。

「モルン」
「きゅるる」

 名を呼べば、ウォルクの脇腹から鼻先を離してこちらを向いてくれる。
 きゅるきゅると鳴きながら目を細めるモルンの額をなでれば、モルンは満足そうに「クククッ、クク」と喉を鳴らしたのだった。

「今ウォルクとモルン、小競り合いしてた?」
「してたみたい」

 サロモンと笑い合っていると遠くから「キエエェェェ」という絶叫が聞こえてきた。
 間髪入れずに「頼むから静かにしてくれ」というツッコミも聞こえる。

「イヴォンたちも戻ってきたな」
「絶叫で分かるわね」

 なんて話をしていたら大笑いするティーモと申し訳無さそうにしているイヴォンが戻ってきた。

「二人も登録は終わったの?」

 私がそう声を掛けると、ティーモがこくこくと数度頷く。

「無事登録完了です! っぷぷ、登録は無事完了したんですけど、イヴォンの聖獣が」
「笑うな……」

 私とサロモンが、何があったのかと問えば、どうやらイヴォンの聖獣アブルがよその聖獣に喧嘩を売ったらしい。

「どちらかというとアブルがキーキー言ってたくせに、喧嘩になった途端よその聖獣に向かって『頼むから静かにしてくれ』って言い出しちゃって」

 クルマサカオウムは人の言葉を操ることが出来るそうだから、きっとイヴォンがよく言っている言葉を覚えたのだろう。

「よその聖獣、確かカラスだったんですけど、その子が目を丸くしててそれがもう面白くて面白くて!」

 ティーモが腹を抱えて笑い出してしまった。
 なにはともあれ、四人とも聖獣召喚も出来たし冒険者登録も出来た。
 これからきっと、私たち四人と四匹のゆったり冒険者生活が始まる……はず!




 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

氷の精霊と忘れられた王国 〜追放された青年、消えた約束を探して〜

fuwamofu
ファンタジー
かつて「英雄」と讃えられた青年アレンは、仲間の裏切りによって王国を追放された。 雪原の果てで出会ったのは、心を閉ざした氷の精霊・リィナ。 絶望の底で交わした契約が、やがて滅びかけた王国の運命を変えていく――。 氷と炎、愛と憎しみ、真実と嘘が交錯する異世界再生ファンタジー。 彼はなぜ忘れられ、なぜ再び立ち上がるのか。 世界の記憶が凍りつく時、ひとつの約束だけが、彼らを導く。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

処理中です...