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お出かけに誘われる
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「よし、ここが一番いいかな」
私はモルンが泉の底から持ってきてくれた宝石を、ドレッサーの上に飾った。
ここなら毎日見るところだし、宝物を飾るにはもってこいの場所だろう。
宝石とは言っているけれど、これが本当に宝石なのかは分からない。
現状は綺麗に磨いてきちんとカットしてもらえば宝石になりそうなキラキラのごろっとした石だ。
サファイア館に行けば宝石も鑑定してもらえるらしいのだが、あの日はドタバタ初仕事だったから、それどころではなかった。
近いうちに行ってみて、ちゃんと鑑定してもらおうかな。
それでこれが宝石じゃなかったとしてもモルンが私にくれたプレゼントなので宝物には変わりない。
「きゅるるるる」
ドレッサー上の宝物を眺めていたら、モルンの声がする。
自分のベッドで眠っていると思っていたのだが、と振り返れば、こちらを向いてきゅるきゅる言っていた。かわいい。
「どうしたの?」
「きゅるる」
モルンはのしのしと近付いてきたと思ったら、こちらにお尻を向けてちょこんと座った。
これはもしや、なでの催促か……?
「よしよし」
お尻を中心に背中あたりをわしゃわしゃとなでていると、モルンの全身の毛がボワっと逆立ってきた。
「ククク、クク」
最近やっと理解し始めたところなのだが、モルンがきゅるきゅる言ってるときは私に話しかけているときで、くくくと言っているときは甘えているときらしい。
モルンはアブルのように人の言葉を使わないけれど、じっくり観察していればなんとなく分かってきた。
「きゅー」
そんなことを考えていたら、なでる力が弱くなっていたらしく、なんとなく文句を言われた気がした。かわいい。しっかりなでさせていただきます。
「よーしよしよし、かわいいねぇ、モルン」
「ククククク」
なでなでわしゃわしゃしているうちに、ついにモルンはごろんと転がってしまった。
なでわしゃマッサージをお気に召されたようでなにより。
「モルン」
「クク」
「モルモル」
「ククク」
「モーちゃん」
「ククククク」
やっぱこの子、世界で一番かわいいな?
「リゼット姉さーん」
部屋の外からサロモンの声がした。
私もモルンもちょっとだけ我に返る。
「はーい」
とりあえず返事をすると、モルンがむくりと起き上がった。そしてぶるぶると体を震わせて逆立てていた毛並みを整えている。
「じゃあ皆のところに行こうか」
「きゅるる」
そんなわけで、いつの間にやら皆揃っていたらしい共有スペースへと向かう。
私はにっこにこのサロモンに迎えられ、モルンは待ち構えていたらしいネポスに飛びつかれた。ネポスはモルンをベッドだと思っているし乗り物だと思っている節があるな。
「今日は皆でギルド内のお店に行ってみない? って話してたんだけどどうする?」
「行くわ!」
言うと思った、と笑われる。
「じゃあ準備が出来次第玄関集合でいい?」
「分かった急いで準備してくるわね!」
今来たばかりではあるものの、私は急いで部屋へと引き返す。
するとティーモが「手伝いますー!」と言って付いてきた。
さらにはモルン号に乗ったネポスも付いて来ている。かわいい。
「お出かけの準備くらい自分で出来るのに?」
「私はリゼット様付きの侍女としてここに来たんですからね!」
「私を着せ替え人形みたいにしたいんだったかしら?」
「そうです!」
元気なお返事!
「着てもらいたい服があるんですよー!」
「ドレスとかではないなら」
「大丈夫です。ちゃんと街一番の美人な平民の少女系のワンピースですから」
いや平民に見えるならいいけのだけれども。
まぁでもお店巡りが出来る嬉しさがあるので、どんな衣装でも着ようじゃないか。
ティーモも楽しそうだしね。本人は自分の意思で私たちに付いてきたと言っていたけれど、私たちのために働いてくれているのは確かなのだから、こちらからも返せるものは返したい。
「きゃー! やっぱり可愛い! 似合う!」
……とても楽しそうである。
『クッキーーーーー!』
着替えを済ませて玄関に向かっていると、アブルの絶叫が聞こえてきた。
アブルは本当にクッキーが好きなんだな。クッキーが大好きな化け物みたいになってる。
「分かったから。アブルのクッキーを一番に買うから」
今日のお店巡りの一番めは聖獣のおやつ屋さんかな?
皆でくすくすと笑いながら、私たちはギルドへと歩き始めた。
冒険者ギルドには、お店がたくさん並んでいるので、冒険者登録をしていない人たちも多くいる。
そのため冒険者ギルド周辺はわりと常に人が多い。
冒険者ギルドに用がある冒険者、お買い物に来た人たち、食事に来た人たち、観光目的の人……と、本当に人が多い。……なのに。
「サロモン様! 奇遇ですわねぇ!」
本当に、奇遇なのだろうか?
冒険者ギルドに足を踏み入れた瞬間キャサリンに捕まった。
……本当に奇遇なのだろうか?
「リゼットお姉様も奇遇ですわねぇ」
「そうね、奇遇……奇遇ね」
「皆さんは、何をしにいらっしゃったの? お仕事?」
キャサリンは「皆さん」と言ったけれど、顔は完全にサロモンのほうを見ている。
……やっぱりサロモンに会うために待ち伏せでもしていたのでは?
「あっ、わたくしはポヨのおやつを買いに来ましたの。たくさん買ったので皆さんにもおすそ分けしますわね」
キャサリンはサロモン、私、イヴォン、ティーモの順で、ぽいぽいと小袋を配った。
中にはパステルカラーのコロンとした星の形の何かが入っている。
「『星の欠片』というお店で買いましたの。ポヨはこちらのおやつが大好きなのですわ」
「あれ、そういえばポヨは?」
いつもはキャサリンがちょっぴり重そうに抱っこしてたと思うのだけど、と問いかければ、キャサリンは笑顔で私の足元を指さした。
「あらま」
さっきまでネポス船長が操縦するモルン号だったのに、いつの間にかモルンがポヨに捕獲されている。
ポヨは爆音でゴロゴロいいながらモルンにすりすりしている。
ちなみにモルンのほうは完全に無の顔をしていた。
私はモルンが泉の底から持ってきてくれた宝石を、ドレッサーの上に飾った。
ここなら毎日見るところだし、宝物を飾るにはもってこいの場所だろう。
宝石とは言っているけれど、これが本当に宝石なのかは分からない。
現状は綺麗に磨いてきちんとカットしてもらえば宝石になりそうなキラキラのごろっとした石だ。
サファイア館に行けば宝石も鑑定してもらえるらしいのだが、あの日はドタバタ初仕事だったから、それどころではなかった。
近いうちに行ってみて、ちゃんと鑑定してもらおうかな。
それでこれが宝石じゃなかったとしてもモルンが私にくれたプレゼントなので宝物には変わりない。
「きゅるるるる」
ドレッサー上の宝物を眺めていたら、モルンの声がする。
自分のベッドで眠っていると思っていたのだが、と振り返れば、こちらを向いてきゅるきゅる言っていた。かわいい。
「どうしたの?」
「きゅるる」
モルンはのしのしと近付いてきたと思ったら、こちらにお尻を向けてちょこんと座った。
これはもしや、なでの催促か……?
「よしよし」
お尻を中心に背中あたりをわしゃわしゃとなでていると、モルンの全身の毛がボワっと逆立ってきた。
「ククク、クク」
最近やっと理解し始めたところなのだが、モルンがきゅるきゅる言ってるときは私に話しかけているときで、くくくと言っているときは甘えているときらしい。
モルンはアブルのように人の言葉を使わないけれど、じっくり観察していればなんとなく分かってきた。
「きゅー」
そんなことを考えていたら、なでる力が弱くなっていたらしく、なんとなく文句を言われた気がした。かわいい。しっかりなでさせていただきます。
「よーしよしよし、かわいいねぇ、モルン」
「ククククク」
なでなでわしゃわしゃしているうちに、ついにモルンはごろんと転がってしまった。
なでわしゃマッサージをお気に召されたようでなにより。
「モルン」
「クク」
「モルモル」
「ククク」
「モーちゃん」
「ククククク」
やっぱこの子、世界で一番かわいいな?
「リゼット姉さーん」
部屋の外からサロモンの声がした。
私もモルンもちょっとだけ我に返る。
「はーい」
とりあえず返事をすると、モルンがむくりと起き上がった。そしてぶるぶると体を震わせて逆立てていた毛並みを整えている。
「じゃあ皆のところに行こうか」
「きゅるる」
そんなわけで、いつの間にやら皆揃っていたらしい共有スペースへと向かう。
私はにっこにこのサロモンに迎えられ、モルンは待ち構えていたらしいネポスに飛びつかれた。ネポスはモルンをベッドだと思っているし乗り物だと思っている節があるな。
「今日は皆でギルド内のお店に行ってみない? って話してたんだけどどうする?」
「行くわ!」
言うと思った、と笑われる。
「じゃあ準備が出来次第玄関集合でいい?」
「分かった急いで準備してくるわね!」
今来たばかりではあるものの、私は急いで部屋へと引き返す。
するとティーモが「手伝いますー!」と言って付いてきた。
さらにはモルン号に乗ったネポスも付いて来ている。かわいい。
「お出かけの準備くらい自分で出来るのに?」
「私はリゼット様付きの侍女としてここに来たんですからね!」
「私を着せ替え人形みたいにしたいんだったかしら?」
「そうです!」
元気なお返事!
「着てもらいたい服があるんですよー!」
「ドレスとかではないなら」
「大丈夫です。ちゃんと街一番の美人な平民の少女系のワンピースですから」
いや平民に見えるならいいけのだけれども。
まぁでもお店巡りが出来る嬉しさがあるので、どんな衣装でも着ようじゃないか。
ティーモも楽しそうだしね。本人は自分の意思で私たちに付いてきたと言っていたけれど、私たちのために働いてくれているのは確かなのだから、こちらからも返せるものは返したい。
「きゃー! やっぱり可愛い! 似合う!」
……とても楽しそうである。
『クッキーーーーー!』
着替えを済ませて玄関に向かっていると、アブルの絶叫が聞こえてきた。
アブルは本当にクッキーが好きなんだな。クッキーが大好きな化け物みたいになってる。
「分かったから。アブルのクッキーを一番に買うから」
今日のお店巡りの一番めは聖獣のおやつ屋さんかな?
皆でくすくすと笑いながら、私たちはギルドへと歩き始めた。
冒険者ギルドには、お店がたくさん並んでいるので、冒険者登録をしていない人たちも多くいる。
そのため冒険者ギルド周辺はわりと常に人が多い。
冒険者ギルドに用がある冒険者、お買い物に来た人たち、食事に来た人たち、観光目的の人……と、本当に人が多い。……なのに。
「サロモン様! 奇遇ですわねぇ!」
本当に、奇遇なのだろうか?
冒険者ギルドに足を踏み入れた瞬間キャサリンに捕まった。
……本当に奇遇なのだろうか?
「リゼットお姉様も奇遇ですわねぇ」
「そうね、奇遇……奇遇ね」
「皆さんは、何をしにいらっしゃったの? お仕事?」
キャサリンは「皆さん」と言ったけれど、顔は完全にサロモンのほうを見ている。
……やっぱりサロモンに会うために待ち伏せでもしていたのでは?
「あっ、わたくしはポヨのおやつを買いに来ましたの。たくさん買ったので皆さんにもおすそ分けしますわね」
キャサリンはサロモン、私、イヴォン、ティーモの順で、ぽいぽいと小袋を配った。
中にはパステルカラーのコロンとした星の形の何かが入っている。
「『星の欠片』というお店で買いましたの。ポヨはこちらのおやつが大好きなのですわ」
「あれ、そういえばポヨは?」
いつもはキャサリンがちょっぴり重そうに抱っこしてたと思うのだけど、と問いかければ、キャサリンは笑顔で私の足元を指さした。
「あらま」
さっきまでネポス船長が操縦するモルン号だったのに、いつの間にかモルンがポヨに捕獲されている。
ポヨは爆音でゴロゴロいいながらモルンにすりすりしている。
ちなみにモルンのほうは完全に無の顔をしていた。
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