高度10キロメートルの告白・完全版

赤井ちひろ

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第一章・イージスの盾・

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「アイツ、上手いから。あの子どうなっても知らないよ」
「あいつはマグロなんだ。感度もそこそこ。あんたの彼氏だってさっさと飽きるさ。誰にも相手にされないから、仕方がなく俺が一緒に居てやるんだ」
「なにあんたあの子の事好きなの?」
「なんでそうなるんだよ」
「それなら悪いことしたなと思って」
「意味が分からん。そんな事より、俺のテクでお前をアンアン言わせてやるよ」
「アンアン?」
 悠がバカにしたように言うと目の前の簡単君はムッとするように言った。
「俺だって逝かせの大介って呼ばれてんぜ!」
 ————逝かせの大介?
「またまた凄いこと自分で言うんだな」
「本当の事だからな」
実力もともなわねーくせにと思ったが、それはそれ。俺の与えられたミッションはこの場にこの簡単君をつなぎ止め、見える位置で繰り広げられる、てめぇの恋人の可愛さに気づかせるって ものだ。
「じゃあ早く気持ち良いことしよう」
 ————あの泣き虫の子羊の為じゃなきゃ……だれがこんなタイプじゃない男に触らせるもんか。
 ————嫌いなんだ!
————こういう優しくないやつ!
 それでも悠はその辺の大根役者とは違う。一枚も二枚も上手だ。
ポーカーフェイス歴は地球の裏側に到達するほどに長い。悠はさぞあなたが好きよと言わんばかりに、愛しそうに手をだした。
すぐそばでは涼がとろけるばかりの甘さで、泣き虫の子羊をかわいがっている。
嫉妬しないと言えば嘘になる。
それでも企画立案は自分で、涼は俺の我儘に付き合ってくれているだけだと思えば、この一瞬は我慢も出来る。
「ほら、景おいで。ここに座って……」
 涼は胡座をかいて、その隙間に呼んだ。
「ここ?」 
 おずおずと進み言われるがまま、涼が作った胡座の窪みにスポンとはまった。
「いい子だ。なあ景……ここにチュウってしてくれないか?」
 鎖骨を指す。
「鎖骨?」
 おずおずと聞く景に、涼は頬を手で包むように優しく触ると、大切な宝物の紐を結ぶかの様に、近くにあった自分のシャツをそっとかけてやる。
「えっ」
「ほーら、恥ずかしくないよ。俺の鎖骨にキスをして……。今まで恋人にしか触らせた事のない俺の急所だ」
 耳元で誰にも聞かれないように、弱いとこをさらす涼に、景は絡まった心の糸がほどけていくのを感じていた。
 決して強く吸い付く訳ではなく 何度も啄むようにその場所を確める。
「俺もしていい?」
 涼はシャツを着せたまま、マットの上に優しくころがした。
「髪を撫でてあげる」
 わざわざ言われるとどうしても意識がそこに行くのだろう。千景は染まるピンクの頬を隠す様に、大和を見た。
「よそ見はダメだよ。景」
「ごめんなさい」
「謝らないでいいから。俺のことを読んでくれないか」
「えっと」
「涼だ」
「涼さん……」
 涼は髪にキスをした。
 決して乳首やペニスに触られている訳では無いのに、千景の乳首は可愛くピンとたち、小ぶりのペニスは天を仰いでいた。
「なんだよ。あれ」
 大和は怪訝そうに眉をしかめた。
 髪を撫でるだけでみるみる変わる自分の恋人の身体の変化に、大和にも感情の変化が訪れる。今まで感じた事のない嫉妬のようなものが沸き上がってきていたのだ。
「何、他のやつに気をとられてるんだよ。俺に挿れんじゃねーの? なぁ……」
 殊更甘く、身体の芯からあえて出した声は、簡単君のペニスを更に固くする。
 簡単君の目の前でわざとらしく唾を飲み込み喉の嚥下する様をみせつけた。
 悠がエッチの時によくやる煽りは、そこらの男には一発だ。
 簡単君の手を、悠は自身の張りつめたペニスに持っていき、手に手を重ね軽く扱く(しごく)。
 ぬるぬるっと生暖かい透明な液体に、耳を噛みながら息を吹き掛けた。
「…なああんた、名前なんてーの?」
 可愛くねだればギャップ萌えって奴だ。
「大和だよ」
「誰が名字って言ったぁ。なぁ、下の名前……教えてくれよ」
 悠は乳首をちゅうちゅう吸うと、自分の指で同時に後ろの穴をほぐし始めた。
 その瞬間辺りが凍りつく様なピリリとした空気が流れた。
 視線を感じる。
 涼の視線だった。
 ————やり過ぎた。
涼の心底怒ってる時のあの纏わりつく視線。
————お仕置き確定かぁ。
 乳首を舐めながらチラリと涼を横目でみると、景にはばれないように自分の胸に抱きながら……やはり凄い目で睨んでいた。
 涼の口が動く……。
 読唇術の得意な悠は、涼の言葉に、やり過ぎたと反省するものの、今さら後には引けない。
【泣いても許さねーからな】
 ————わかっているよ。
 でも今は待って。今は景を恋人みたいに抱いて……。
「なあ、下のな・ま・え」
 目尻に涙が溜まり、綺麗な黒目が更にウルウルとしている。
 いくら人工ビーチとは言え、一応外だ。軒はあっても汗ばむ程には暑く、喉から胸に汗が垂れている。
それでも流れる汗からいい香りが漂っているのは悠だからだろうか……。
 脇の下を下からねぶるように舐めまくる。
 悠のテクニックなら簡単君程度、落とすのは容易い。
「大介……だよ」
 首筋に抱きついて、自分の尻に指をクプッと挿れながら、うわ言のように大介……大介と呼ぶ。
 知らないやつが見たら浮気どころかおそらく本気に見えるくらいには情熱的だった。
 千景にばれないようにそっと悠を見た。そんな涼のわずかな動きに千景が気が付き、抱きつく腕に力が入る。
「どうしたの?」
「ん? いや、何でもないぞ」
「鎖骨……じゃないとこにもしていい?」
「何をだ」
「意地悪……」
「きちんとおねだりしないと伝わらないだろう」
「キス、お口にキスしたい」
 景は耳元で小さく呟いた。
 空を存外低く飛ぶ飛行機の音に、何も聞こえなかった涼は、より聞こえるように景を抱き寄せる。
「もう一度言ってくれ」
「涼さん、あなたの口にキスしたい」
 ドクン
 ドクン
 心臓が跳ねた。
 目は悠を追いたい。
 きっとアイツの心臓に俺の心臓が共鳴したんだろう。
 傷ついている……そんな気がした。
 俺が景を抱き締め抱き寄せ……腕の中にいれた行為に、おそらく、悠の心は傷ついている。
 それでも俺は今、アイツを見れない。
 多分……アイツも、俺をみれない。
「大丈夫だ……」
 小さな独り言だった。
 言い聞かせるようにもう一度。
「何が大丈夫なの? 涼さ……ん」
 顎をあげ、千景の問いかけには答えず、全身を慈しむように愛撫をした。
 足の指は初めての経験なのか、すこしばかりくすぐったいようで、指をクイクイ逃げるように動かしていたが、俺が殊更強く足の裏を舐めるさまに景は反応するようになった。
「あんっん————」 
 小さな我慢するような声が捕食者の征服欲をかりたてる。
 親指と人差し指の間の窪みを吸い上げ、指を咥える。
 加え易い様に脚を高く持ち上げ、その持ち上げかたすら、小ぶりのペニスがよく見えるようにするもんだから、指を十本舐められ終わる頃には景のペニスは腹に付く程になっていた。
「エレクトしても可愛いんだな」
 いやらしい顔して笑う涼は体臭からすでに獣のそれだった。
「いくらあいつの頼みでも……さすがにキツイぜ……」
 そんな果てから俺を煽るなと涼はほかの男に抱かれている悠に視線を絡ませる。
————涼……いいから早く子ネコちゃんを鳴かせろ。
————そうでもしないと、俺がこの最低野郎にルールも守らず中出しされちまうぜ?
 悠に習った読唇術で必死に読むと、涼は眉を寄せた。
「ほら景、気持ちいい? 指の間ぴくぴく動いてるよ」
「お願い、やめて。涼さん……。そんなところ汚いから……」
「汚いわけがあるか、ならここはどうだ」
 お尻の穴に顔を近づけチロリと舐めた。
「あっいやっっ」
「いや? なんでだ?」
 小さな声で小さな体がもじもじしている。
 ピンと立った乳首は乳輪も小さく、舐め上げるたびに身体が仰け反っていく。羽織らせているシャツの上から乳首を触る。あえて絹一枚を間に居れ、爪で引っ搔くことで感覚が鋭敏になる。尻の穴はキュッとつぼまり、チンコなんか入れたら壊れてしまうんじゃないのかってくらい小さかったそこは、うっすらとピンクだったものがさらに赤みを帯びて男を誘っているかの様だった。
「もっと足開いて、俺にお尻の穴を見せてごらん」
「涼さん……」
「景、下を向くなよ。感じている顔が俺に見えなくなっちゃうだろう? かわいい顔を隠しちゃだめだよ」
 涼は景を四つん這いにさせ、顎を持ち上げる。
 観客からうっとりとエロチックに薫る景の可愛さがよく見えるようにと、内緒で涼はさらに顔を引き上げた。
「ほらほら、俺を見て。舐めてあげるよ」
「いや、本当に汚いよ……。涼さん……」
 一生懸命かぶりを振る景のいやいやがそれはもう純情(うぶ)すぎて、涼としては何とも言えない罪悪感にかられる。
「汚くないよ。舌入れるね」
 くぷっと入れられた舌先が蜜壺の中を奥へ奥へと侵入してくる。
 内壁を擦るように入り込む感触に景は背中を大きく反らし、びくびくと足のつま先までピーンとはる。
 涼の手によって大きく広げられた下半身は、内股の敏感なところを露わにし、キスをねだる。
「ん? ここにチュウして欲しいの?」
「ン——ンンンン——アッ————アンンンハッ」
「エッチな子だなー。ペニスを咥えられて泣くならいざ知らず、内股にキスしただけでここをこんなにしちゃうんだ」
 涼の舌は蜜壺を抜け、チュっと何回もキスをして甘嚙みされた内股が赤く火照っていくのをクスクスと見ていた。
「お願い、舌だけじゃ足らない……」
「何がだい、もっときちんと言って」
「涼さんのこれを……ここに……欲しいの」
「俺のこれってなーに?」
 涼は自身のペニスを手に持ち、はっきり言ってと顔を近づけた。
「涼さんのおちんちん……」
 ————おちんちん?
————言い方が可愛すぎだろう。んなの、流してやらねーよ。
「ん? 涼のチンコって言ってごらん」
 千景の顔が一気に火照る。
「言えないの? ならもうお終いにしようか」
 身体を離そうとする涼にしがみつく景を、悠を組み敷きながら大介は嫉妬のまなざしで見ていた。
 自分に気持ちが来ていないことを感じた悠は、もうひと押しとばかりに大介に脚を開いておねだりした。
「よそ見……? 俺のここ、そんなに魅力ない?」
 自分の指を三本も一気に突っ込み、ローションを指に絡めぐちょぐちょと音をさせて淫靡な穴を演出した。
大和の嚥下に反応するように、悠の体が固く緊張する。
 その瞬間大介は悠の足首を掴み、大きく広げて自身の一物をグチョグチョに濡れている蜜壺にあてがった。
「大きい」
「気持ちよくなるぞ」
「あなた凄いよ」
 涼のものには遠く及ばないそれを、悠はさも最高級かのように煽る。
ずぶずぶと腰を押し進め、自分勝手な抽挿を繰り返した。
「悠、って言ったっけ? マジかよ、この締まり……ヤベー」
「もっと、ねぇ、もっと————」
 ただ、この悠の喘ぎ声に煽られたのは大介だけではなかった……。
「あぁぁぁぁ」
「んあぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 腰をのけぞらせ、せめていいとこに中てようと悠は大和にばれないように動いた。
「擦れちゃう、浅いとこ擦らないでぇ」
 悠は大和の体に組み敷かれるように、四つん這いになっていた。
「悠、お前最高過ぎる。俺のもなれよ。毎日奥までツキまくって中だししまくって孕ませてやる」
 ————下手くそ! クッソいてぇ。
痛みに歪む顔を快感に歪む顔だと勘違いした大和は、さらに腰を打ち付けた。
「なに、気持ちいいの?」
 ————鈍い男……ほんと嫌いだよ。こういうやつ……
 悠は頭でそんなことを考えながら、思ってもないことを言った。
「気持ちいい、お前のチンコ、最高だよ」
「もっと奥まで入れてやろうか」
 ————届きもしねえくせに。
「ああ、奥まで頂戴」
 隣では涼が愛おしむように千景を抱いている。
 自分から言い出した事とはいえ、涼の手が恋しくて仕方がない。伸ばせば届くだろうその場所に、今はまだ手を伸ばす事は出来ない。
 切なくて涙が漏れた。
「気持ちよすぎて泣いてんのか。最高だよ。恋人変えたいな。お前もそう思うだろ」
 ————冗談。
「……」
「聞いてるか?」
「そんなことよりもっと大和が欲しい」
 冗談でも言いたくはなかった。それ以外なら何でもい言ってやるとばかりに、甘い言葉を次々にかけ続ける。
 涼も悠の痛みが良く分かる。だからこそ今はまだ駄目だと、あえて悠を見なかった。
「涼さん……もう、も……いいって……ば……」
 涼は景のかわいいペニスを丁寧になめながら乳首を片手でつねりあげた。
「まだだよ、もっと気持ちよくなって」
 千景の身体は今まで感じたことのない、ふわふわとした海の中にいるみたいな……そんな気分だった。
「頭がふわふわする」
 くちゅ
 ちゅぷ
 尻の穴から出る水音のいやらしい響きは涼にも聞こえている。
「あんっ、あっ」
 脚の痙攣が止まらない。
 ちゅぷ
 くぷ
 ぶちゅ
「頭の中がなんにも考えられないよ……」
「景、お前はかわいいやつだな」
 悠は、涼が景に言う言葉を……アンアン言ってるふりをして、一言一句聞き逃さないようにしていた。
 涼は本当に丁寧に恋人を抱く。
 それが涼の本質だ。
 ゆっくりする時、もうぐちょぐちょで中が痒くてしょうがない時、激しくする時でさえ、やはり悠の事を一番に考えていた。
 ————俺がこいつを恋人のように抱いてやれって思っている以上……涼はキッチリとその役目を果たすだろう。
 ————それでも一番大切なのは俺だ。
 ————多分今この時も。
 ————俺が助けてって涼を呼んだら、きっと景をほって俺の事を助けに来てしまう。
 ————絶対にうぬぼれなんかじゃなく……本気で俺の事を誰より大切に思ってくれている。
 ————だから俺は感じるふりをする。
【最っ高】
【もっと……】
【お願い、一緒にいこ……】
【抜いちゃいや……】
 ————少なくとも……陰でひっそり泣いていた子羊を、このでくの坊が大切だと気が付くまで……。
 ————せめてもう少し大和が上手ければ、こんなにも演技なんかしなくていいものを。
 ————ホント……【情熱ランデブー、サニーデイズ セックスビーチ】みたいな三流タイトルの映画だったら、主演男優賞ものだったと思う。
「涼さん、中がおかしくなってるよ。痒いの……ねぇもっと搔いて、お願いもっとおちんちんで……中搔いてぇ———————」
「ほら景、やってやるよ。だからこのまま逝っていいよ。俺の腕の中で安心して逝って良いんだ」
 二の腕に抱きつき、自分で腰を振る。
「一緒に逝きたい。一人は嫌(イヤ)……一人は嫌い」
 悠の上に居るはずの男のチンコは景の変貌ぶりを見て、今度こそ執着という名の嫉妬の色に変わっていく。
 中では質量を増したそいつが今にも動き出しそうだった。
 ん? 抜きそうだ……。俺は直感で今だと思った。
「んんんんんん」
 鼻から抜ける声を……眉間にしわを寄せ眉毛を下げて唇を噛みしめながら、涼に届かせる。
「逝くぞ、一緒に。景、可愛い景」
「待ってくれ。お願いだ」
 あっけに取られる観客をよそに事態は動いていった。
 大和は悠の体を放り投げ、涼に抱かれている恋人(ちかげ)めがけて、足がもつれながらも懸命に抱きついた。
 今まで見たことのない大和の一生懸命な姿は、景にはこの世のものとは思えない、まさに珠玉の宝石のように見えただろう。
 涼は悠の気持ちを組み、最後の仕上げにかかった。
「景を抱いているのは俺だ。俺が抱いた後にしろ!」
「頼む、待ってくれ。ほら、彼は返す。悠くんは恋人なんだろう?」
 大和はなりふり構わず千景を返してくれと三枝に懇願した。
 千景は二人の会話を黙って聞いていた。
「悠の事は今は関係ない。とりあえずは、悠を抱いていればいいだろう? あいつを抱かせてやって、いったいなんの不満があるんだ。もしそうなら聞き捨てならん」
 涼は憮然とした態度で言っていた。
「待って、ねぇ……悠は本当にそれで良いの?」
 大和は悠に助けを求めた。
「良いって、なにが?」
 意味が解らないとばかりに言う悠は、そもそも肝が座っている。
「俺に抱かれて良いのかって事だ」
「別に良いけど? そんな事よりしようぜ。ほら、ひくひくしてんのに、お前チンコ抜きやがって。早く結腸の奥まで突っ込んでくれよぉ。それとも俺なんか要らない?」
「ほら悠もそう言っている。可哀そうだろ。慰めてやれよ。それに感度悪いって思ってんだろ? てめえの恋人をさ……」
 大和は景を見た。
 訴えるような視線に心が痛む。
 大和は心が痛むと感じている自分の変化に驚いた。
「今迄そんな事あったか?」
 独り言のように口から言葉が漏れる。
「ブツブツ言ってないで、はやく来て」
 あっちでは悠が大和を呼んでいた。
「あいつが濡れてようと無かろうと、どうでも良かったんじゃないのか?」
 涼に煽られ、そうだよ! と大声で言い返す大和は、今までより不安そうに見えた。
「俺が突っ込めりゃ良かった。ただのオナホールだったんだ」
「最低な発言。どうもありがとう」
 涼はこういう男が心底嫌いだった。
いつも近くに居たのは悠だったから、気高くも優しい孤高の男だったから。仲間もこんなゲスは居なかったから。
「不愉快すぎる。指をくわえて黙ってみてろ」
そう言うと、景の首筋にキスを落とし、太ももの付け根にキスマークを付けた。
甘いその行為に景からは自然と声が漏れる。
「間違っていたのか? なぁ千景、俺は間違っていたのか」
 大和の切ないほどの訴えに、千景の目線が寂しそうに見つめた。それをやんわりと遮るように涼はキスをした。
 佳境だ。こんな重要な訴えを涼は聞き漏らさなかったし、涼が聞けるくらいだ。勿論悠が聞き漏らすはずがない。
「さあ挿れるよ。お尻を向けて、ハニー」
 景は自分からゆっくりと四つん這いになり、尻の穴を自分の指でおもいっきり開いた。涼にいわれて断れる訳がない。可愛いメス猫になっても誰もお前を責めたりしないさ。
「俺のこいつをお前の中に埋めてあげるよ。ほ―らもうとろっとろだ。良い感度をしているよ。この中に入れたらもう手放せなくなっちゃうな。悠と仲良く俺の恋人におなり。一番は悠でも、遜色無いくらいに毎日愛してあげるよ。悠だって許してくれるさ」
 その瞬間、砂浜に頭を擦り付ける男がいた。
 涼はそれを見て呆れて大笑いしたが、景の目は大きく見開かれたままだった。
 自分のために頭を下げている恋人を見て嬉しくない奴などいないだろう。ひどい仕打ちをされていたのなら尚更。
 今まで一度も人に頭なんか下げたことの無い大介が、自分のために砂浜に頭を擦り付けている。
「お願い、大ちゃん……。僕の為に頭なんか下げないで。僕……感度よくなるように開発して貰うから。大ちゃんの気に入るように変わるから」
「違うんだ! 違うんだ景! 三枝さん、お願いします。そのままで良いから……景を返してください」
「今更調子いいことを言うな。オナホールなんだろ。新しいのをまた買え!」
「頼む。愛しているんだ」
「ただ惜しくなっただけだ。おもちゃを取られて悔しいだけだ。それは愛じゃない」
 昔、そういえば俺も同じことを言ったと、思い出していた。
「愛しているんだ……景を」
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