高度10キロメートルの告白・完全版

赤井ちひろ

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第一章・イージスの盾・

13

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「そんなもの愛じゃない」
「頼む。どうしたら信じてくれるんだ」
 大和から幾度も発せられる愛という言葉に、千景は耳を疑った。
 と同時に、一縷の望みが生まれる。
「僕は都合の良い夢を見ている? それとも本当に? 涼さん……、大ちゃんが……」
「やめておけ。あんな最低な男。俺の二番が嫌なら、他の男を紹介してやる。景ほど一途な男なら、お前を一番に思ってくれる奴が必ず現れる」
「でも、大ちゃんが……」
「景、もっと自分を大切にして。また傷つくぞ。また陰で泣くことになるんだぞ。大体てめえも都合の良いことばかり言ってんなよ」
 涼はこの言葉は自分への戒めの為でもあった。
 ————俺だってこの男と変わらない。俺だって散々悠を陰で泣かせてきた。最低野郎は俺だって一緒だ。だからこそわかる、もっと真剣に望んでくれ。本当に大切なものにもっと必死になってくれ。相手の気持ちをきっちり引き出せよ! 大和大介。
 三人を見ていた悠が、ゆっくりと大和に歩み寄り片手で肩をドンと押し、そのまま腰に跨った。
「俺の疼いたままのここ、どうしてくれんだよ。お前が挿れねえならこっちから乗ってやるよ」
 悠は大介に跨がると、乾いた蜜壺にペニスを宛がった。
 先端を無理やりねじ込む。皮膚が乾いて、めり込む痛みが半端ない。
 ————切れる。
「ん、お前のデカすぎてちょっとキツイ、そこのチューブとれよ」
「やめろ……」
「は? やめねーよ」
 悠は左手を大きく伸ばすと香り付きのチューブのふたを開けた。
蓋の音がピンと響く。
 音に敏感になっている涼が苦しそうな顔で悠をちらりと見る。
「んふ」
 ————俺、前世悪魔だったかも……。
 くだらないことを考えながら自分の尻にチューブを宛がった。
 ぶちゅぶちゅぶちゅー。
 凄い音がする。
「やべー、音だけで逝けそうだよ」
 悠の声はもうセックスの時にしか聞けない特別な音になっている。
 涼が凄い色の目をして睨んでいた事なんか、二人とも気が付いていなくて、逃げる大和を悠は咥え込もうと必死にペニスを掴んだ。
 グググっと押し込み始める。
 肉を割り、入り込む質量に悠の顔が苦痛に歪む。
「悠君、やめてくれ」
 大和は懇願した。
「悠君? さっきまでは呼び捨てにしてたくせに。誰に遠慮してるの? それにもう気持ちいいのに、今更やめられない。よく見るとお前の腹筋、凄く綺麗なんだな」
 もし相愛の男なら、きっと胸筋から腹筋、内ももの大腿筋まで見てるだけで逝けるだろうくらいには均整がとれている。
「んあぁぁぁぁぁぁぁ」
 無理矢理半分まで埋め込んで、大きく腰を振りながらゆっくりと上下を繰り返し届かない奥に向かって、更に埋め込んでいく。
「悠さん、待って……」
 その瞬間、何かが邪魔をする。
 うっすらと片目を開けると、そこにはこれ以上入れないでと、悠の蜜壺と大和の腹の間にペニスをつかむように千景の手があった。
「あ? 手ぇ離せよ。ンナトコ……邪魔」
 はぁ。
 はぁ。
 はぁ。
 切れ切れに肩で息をし、どけと凄む悠がいた。
「手ぇあったら……これ以上入れらんねぇ……だろ……」
 肩で息を吸う。
「離せ!」
「嫌だ」
 千景は、悠には力では敵わないと分かっているのか、引きはがしに行くではなく、ただこれ以上挿れられないように恋人のペニスを必死に掴んでいた。
「悠」
 涼に声をかけられ、息を吐き周りの様子を確認する。
「景」
 冷静に下を見た悠は千景に声をかける。
「そんな男よりも涼のがイイ男なのに、あいつじゃ不満?」
「違うの、違うんだ。不満なんて……、そうじゃない、だって僕分かってる。だってこれは————、だってあなたたちは————」
「何を分かっているの」
 見た目に反して低い悠の声が、わずかな圧をかけるように言った。
 割って入る千景の存在に、頭がついてこない大和はオウム返しの様に言う。
「なにを……分かって……るんだ?……景」
 爆発しそうなペニスを我慢しながら……落ち着かせようと深呼吸して大和は聞いた。
「何でもない。ねえ挿れないで」
「適当なこと言っているなら、ほら、邪魔するな。お前だってこんな意地悪な最低な男より、涼に可愛がって貰っていたら幸せだろう」
 悠は無理矢理引きはがすと、そのまま深く座り込み、大和を無視して腰を上下に動かし始めた。
「悠君、やめてくれ。逝ってしまう」
「逝けよ、ほらほら、動いてやんよ。あぁぁぁ。もっともっと奥まで、もっとデカくしろよ。こんなんじゃ奥までこない、足らない。もっと————————」
 ————涼————————————。
「やめてくれ。景を愛しているんだ」
 騎乗位のまま腰を振りつづける悠は口を半開きにして涎を盛大に垂らしまくった。
「来て来てよ。中に出せよ! 大和ぉ」
「やめろって。本当に逝っちまう、もう出る、駄目、駄目だ。んぁぁぁぁぁぁぁ」
 大和が悠の中に果てそうになったその瞬間、悠の体が宙に舞い、ずるりとペニスが抜け、いっきに天をめがけて白濁としたものが宙を舞った。
「俺だって嫉妬位するんだぞ……お人好しにもほどがある!」
 耳に注がれる声と共に悠の体を引き剥がしたのは、我慢のきかない恋人だった。
「俺を殺す気か……」
 床に押し付けた男に馬乗りになっていたはずの悠は何十センチも持ち上がり、誰にも見せないとばかりに乳首もパイパンのペニスも隠されて、小さな子供を抱く母親の様だと悠は思った。
「お前何やってくれちゃってんの」
そのすきを縫って大和は千景を抱きしめた。
 悠はむっとする涼の鼻を摘まみ、ベロリと舐める。
「捕獲だ捕獲!」
 唾でも飛ぶんじゃない? と思うような勢いで言い放つ恋人の執着心が、何だか滅茶苦茶可愛いと悠は思った。
 ————ヤバい、笑いが止まらない。
 小さくクククっと笑っていた悠は、肩を震わせて笑い続けた。
「笑うならしっかり笑えよ」
 真っ赤になって怒るこいつは、それでも世界でも五本の指に入るシェフなのだから笑える。
 不貞腐れた涼はハーパンの水着を手に取り、近場にあったバスタオルを悠に巻き付けた。
 狼の腕から逃れると、ふかふかのバスタオルで前だけ隠し、高めのスツールに腰掛け、そこからニューっと長い脚を伸ばし、サラサラの砂が足の裏についたのをぱんぱんと叩き落した。
「ごめんごめん、でもなぁ、このでくの坊が、可愛い子羊を愛していることに気が付いたからいいけど……もし気が付いてなかったらお前死刑もんだぜ」
 肝の据わった恋人は、助けてもらって『ありがとう』すらないのだから、本当にかわいげがない。
「かわいくねーぞ」
 涼がそういうと、人の計画邪魔しやがって、勝手に助けて恩着せるんじゃないと横にあったペットボトルを投げられた。
「ギリギリ邪魔ではないだろう? セーフだろう? 我慢しただろう。少しくらい褒めたらどうだ」
「悠さん、ありがとう」
 一人だけ声質の違う子羊は、声変わりって知ってるか? ってくらいのテノールで、頭一つ分下から覗き込むように首を傾(かし)げる。
「涼さんも……ありがと」
 鼻の下を指で擦り、んふふっと嬉しそうに笑いながら、大和大介ならぬでくの坊に指を絡めていた。
 涼は大和の肩を掴み強引にこちらに向ける。
「大切なもんはきちんと理解出来たのかよ」
「ああ……できたさ」
 小さな声でバツが悪そうな顔をしながら砂浜のマットに放り投げられた海パンを穿いた。
「なぁ、一つ聞いていいか」
「なんだ」
 これ以上関わらせたくなかったのか、答えたのは涼だった。
「普通ならシカトするような事に何で首突っ込んだんだ?」
 大和は、どうしても理解の範疇を超える悠の提案に、なぜお前までも付き合ったのかと……聞きたかった。
 どうにもさっぱりだ。
 理屈解明できないような不可思議な感情に俺は二人の答えを待った。
「ん? 別に理由はネーナ、ただ悠が景を気にしていたからな」
「全く意味がわからないんだが」
 涼は大和の背中をポンと叩いてやる。
「意味はないと思うぞ? ただのお人よしさ」
 そう言うと、可愛い恋人の唇を貪った。
「皆が見てるだろ! やめろよ。恥ずかしい」
 耳まで真っ赤な俺の恋人。
「皆が見ているとか、お前今更だろ? キスどころか悠、お前の縦割れアナルまでしっかりムービーにも映ってんぜ。この浜辺の人たちの今日のおかず」
 涼はいやらしい笑いをしながら、指でアナルの形なんか描きやがる。
「人をヤリチンみたいに言わないでくれる? これでも貴方達より貞操観念はあるつもりですから」
 そんなことより、とじろりと目線が悠を見る。
「俺は凄い怒っているんだけど」
 大好きな人のこれまた大好きなバリトンボイス。
「やべー、勃っ……た……かも」
 尻の穴がヒクひくして、濡れるはずのない場所がちょっとだけ濡れている感じがする。
「舌……頂戴」
 みんなの見ている前で恥ずかしげもなく性感帯の一つである舌を先端まで伸ばした。
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