高度10キロメートルの告白・完全版

赤井ちひろ

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第一章・イージスの盾・

14

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このショーはこれでおしまいだ。涼は見ていた観客に大切な物を隠すようにモフモフでくるんでホールドだ。
「ちょっと待って」
 俺は景に声をかけた。
「ごめんね……」
 フルフルと首を振り、そうじゃないと繰り返す。
 あたりの空気は少しばかりひんやりして、潮の香りが漂っていた。
「謝らないで……、あなたのおかけで……僕は今、幸せなんだから」
「違うよ。俺は何にもしてない。全部涼がしてくれたんだ。大和を嫉妬させることもなにもかも……。良かったね」
「それは違うよ。悠さんがそう言わなきゃ涼さんは動かなかったから……だからありがとうは悠さんにでしょ」
「俺は……最後嫌がるお前引き剥がして、お前の恋人に無理矢理跨がった最低なやつだけど?」  
「確かに。そこだけ切り取れば、そう見えるけど……でもあれは僕が、大ちゃんに見世物にされてビービー泣いていたからでしょ……」
「さぁね」
 喉を押さえる悠の仕草に、すかさず横からペットボトルがわたされる。
 勿論キャップをあけた状態で……。
 見ている外野が恥ずかしくなるくらいの堂々っぷりだ。
「だって涼さん、一番最初、悠さんに手を伸ばしたから……。きっと悠さんを抱く気だったよね」
 案外見ているものだと、俺は千景の認識を改めながら、自身の恋人(おとこ)の軽率さに眉を寄せた。
「ばか……」
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