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プロローグ
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なんで今は9月なんだよ。
イタリアのアマルフィは夏が終わると暫しの閑散期に入る。
俺達の店も例年通り、三週間の休みに入った。
「三週間だ、どれだけやっても仕事には迷惑かけないな。良かったじゃないか、なあ悠」
冷蔵庫から白ワインを出しながら涼は俺に声をかけた。
「……くそっ、既に足腰……たたなくなるま……で……してるくせ……に……良く言うぜ……」
「クククッ大丈夫か? ほら身体拭くからこっちに足ひろげて」
「無理ゆーな!」
濡れタオルを手に……俺が自分からお願いするのをいやらしく待ってやがる。
「自分でやる」
なけなしのプライドで断ると、涼は悲しそうに俺の近くに顔を寄せる。
「俺の事嫌いか?」
「はぁ? 言ってないだろ」
カナッペを俺の口に運ぶあいつはさながら親鳥の様で、何も出来ない位に疲れ果てた俺に庇護欲が掻き立てられるらしかった。
「だって俺じゃ嫌なんだろ?」
「ちがう! そんな事一言も言っていないだろ」
ほら、とサーモンカナッペが口の前に止まった。
つい口を開ける。これはもはや反射神経のなせる業だ。
「うまそうだね」
あいつの作るものには、もう条件反射。そのくらい美味しいし、俺の血はあいつの作るもので構成されている。
「当たり前! 誰が作っていると思っているんだ」
涼が最高級の笑顔で『はい』と差し出してくる。
俺はサーモンカナッペを食べながら白ワインを口に含んだ。
「ツンデレ君にはきちんと途中途中、食べさせてあげるから、きちんと口を開けるんだよ」
「うるさい」
小さな声は抗議の印だったが、ドエスの旦那には逆効果だ。
「足開いて。きちんと拭けないだろう。俺に足開くのが嫌なら仕方が無い。適当に誰か拾ってくるよ」
「だから違うんだってば……」
尻窄みの話しかたは降参へのプレリュード。最初から俺が本気で嫌がっていない事なんか涼には分かっている。
「何が違うんだ? ん?」
「力……はいんないんだよ」
ここまで真っ赤だぞ。と首筋に涼の唇が食むように幾度も吸い付いた。
「しかたがないな、ちょっと待っていろ」
涼は俺をベッドの端においやると手前にタオルを丸めたものを置くと、その上に俺をうつ伏せにして乗せた。
「待てって」
「旦那が折角綺麗に拭いてやるんだ、黙って言うことがきけないのか?」
いや……そういうことじゃ。
「このカッコは恥ずかしい……」
必死に叫んだのに、ほんとに必死に、まさかの逆効果だった。
「何が恥ずかしいんだ? きちんと言わないと改善も出来ないだろう?」
————耳元で囁くバリトンボイスは、だから反則業なんだって!
「狡いよ、こんなの」
「ん? なにがだ。尻の突き出し方が足らないのか?」
言うなり高くタオルの上に乗せていた尻をさらにぱっくり割れ目が見えるように折り曲げれた。
「ちがっっ」
足を閉じようにも、涼に押さえ込まれて身動き出来ない。
「良く見えるな。拭いてやるよ」
涼は二本の指にコンドームを被せると尻の中を拭き出した。
「ンハ————ァン————ァン、ァァァン」
自然に漏れた声が、あまりに恥ずかしくて枕に顔を埋める。
「何……す……んだ!」
背中越しに睨んでやると、あいつってば、指を深いとこまで突っ込みながら耳を口に含み、ふざけた事を言いやがった。
「アーンアーンってお前ほんとエッロ。ちょっと見せびらかしたい気分になった。なぁスワッピングしねー?」
「スワッピング?」
俺は開いた口が塞がらなかった。
「あっ、でも俺以外で逝ったらお仕置きな」
「待てよ。男なんだから生理現象ってもんがあるだろう」
「ねぇよ」
「あるし」
「お前に限ってはねぇの」
「涼、横暴だ。ぜってぇやだから!」
左手は俺の顔を撫で、髪に指を絡ませながら、右手は相変わらず俺のケツの中を拭いてやると称して、這いずり回っている。ゴムを纏った二本の長い指が蠢いていて、精液を掻き出されるのもしんどいのに、逝った後でさらに感度が高まって拷問に等しい。
「大体、スワッピングとか誰とだよ!」
髪から指を抜くと、サイドテーブルの上に置いてあった携帯に手を伸ばす。左手に携帯握りしめたあいつは、俺の体を拭きながら、誰かに電話をかけていた。耳を澄ましても、中が良すぎて……どうにも集中できないが、コールオンだけは何とか聞こえる。
「ンハ……だ……れ……ン————」
喘ぎ声にかき消されたのか、愛しい男に俺の言葉は届かない。
————スワッピングって、相互チェンジだろ?
————お前……誰を抱くつもりだよ。
目尻からは悔し涙が流れてきた。そんな感情に流された涙を見られたくなくて、俺は必死に歯を食いしばった。
俺はあいつが誰を抱くのかに気持ちが行っていて、相互の言葉の持つ意味をすっかり忘れていた。
切れ者で通っているのに、涼のことを考え始めたら、他には何にも考えられない。そんな自分が嬉しくもあり怖くもあった。
「最悪————ぅ」
プルプル……プルプル……プルプルプ……ボンジュール?
ボンジュール? フランス語?
遠くてボソボソ話す低めの聞いたことのある声に、すぐ真上で話すバリトンボイスが笑いあい、そして電話はそうそうに切られた。
最後に涼……『じゃぁ明日な』って言わなかったか!?
「おい、涼……」
枯れた声は言葉にならず、動かない手を必死に動かし足に触る。
「出ない声を人が頑張って出しているのに……無視すんじゃ……ねーってば」
くそっっ『ァン、ンハッンハ————————』
良い所を執拗に弄ぶあいつの指が、俺の感度を正確にキャッチして、中が絞まる度に、あいつの『くくっ』って声が耳に響く。
「クソっ」
「言い方な」
「聞こえてんじゃねーか!」
涙目で睨む俺に、あいつはどこ吹く風だった。
「明日くるよ」
「誰がだよ!」
俺の問いに今度はきっちり返事が返ってきた。
「アランだ」
は————————?
「アラン? 絶対ヤダ。あんなラフを泣かしてばかりの絶倫男、俺、絶対に嫌だ。大体ラフが良いって言うわけないだろう」
何を当たり前のという顔をして、もう冷えてない白ワインを飲みながら涼は答えた。
「誰か適当に探すか、それともあいつがアランと来るかってなったら、ラファエルは来ると思うぞ」
「いや……だから。ってかそれ狡いし」
「ラファエルとお前の嬌声の共演なんか録画必須だぜ。お前が相手してくれない時のおかずになる」
「待ってよ。俺、お前のセックスの誘い断ったことないよな」
うるさいよとばかりに降りてくる唇、下唇を甘噛みされ唾液が流れる。
舌を突っ込まれ歯列の裏側をなぞるアイツの舌を感じ、唾液が溢れだし、飲み込む隙を与えないあいつの責めに、半開きの俺の口の端からは涎が垂れ流されていった。そこにふいによる影。
唾をすするいやらしい音に意識が覚醒した。
「なにしているの? 涼」
びっくりする俺に、あいつはさも当たり前だと呆れるように答えた。
「涎が垂れ流されては勿体ないだろう? お前から出るものは全て俺の物だからな」
恥ずかし過ぎて顔すら上げられない俺の顎をクイっと摘むと、そっと頬にキスが落とされた。
意地悪なくせに死ぬほど甘い旦那様に、俺は心底惚れている。
あいつの執拗な責めに意識を飛ばし、失神した俺が次に目を覚ましたのは、いつものアイツのフェラの仕方じゃない別のざらついた舌の動きを感じての事だった。
「ンァ、ンハンハァン……」
無意識に漏れる声に顔を覆い、その手を無理矢理どけられて、俺のペニスをしゃぶる人物に目線を落とすと……そこにいたのは。
————やっぱり。
「アラン」
ちらりと横を見るとベッドのポールに脚を括られ強制的に開脚させられている綺麗な男がいた。
「ラファエル……」
「起き……たのか……? 悠……」
なにかを埋め込まれたラファエルが切れ切れに話す。
「なんでこれ」
「愛しの旦那様たちに聞かないと分からないよ」
そう言った傍からまたざらつく舌がペニスを舐めあげる。
「ンハ、ラフ、やめさせて! アラン……やめて」
縄で脚をぱっくりと開かされ拘束されてるラファエルが、悠に声をかけた。
「んなこと言って聞くやつらかよ! スワッピングするつもりで涼がアランに声かけたんだ。諦めろ」
ラファエルに言われた悠はそれでも納得いかない。
「待てよ! アラン!……ンハァンッ……アホな……ことすん…な。ラファエ……ルが悲しむじゃ……な……いか……」
とっさに出た声に羞恥に泣きそうになりながら、俺は凄みをきかせた。
それでも容赦なく吸い上げるいつもと違う舌使い。だんだん感覚が鋭利に研ぎ澄まされていく。涼はいつもそこじゃない、あいつの舌はそうじゃない。
イタリアのアマルフィは夏が終わると暫しの閑散期に入る。
俺達の店も例年通り、三週間の休みに入った。
「三週間だ、どれだけやっても仕事には迷惑かけないな。良かったじゃないか、なあ悠」
冷蔵庫から白ワインを出しながら涼は俺に声をかけた。
「……くそっ、既に足腰……たたなくなるま……で……してるくせ……に……良く言うぜ……」
「クククッ大丈夫か? ほら身体拭くからこっちに足ひろげて」
「無理ゆーな!」
濡れタオルを手に……俺が自分からお願いするのをいやらしく待ってやがる。
「自分でやる」
なけなしのプライドで断ると、涼は悲しそうに俺の近くに顔を寄せる。
「俺の事嫌いか?」
「はぁ? 言ってないだろ」
カナッペを俺の口に運ぶあいつはさながら親鳥の様で、何も出来ない位に疲れ果てた俺に庇護欲が掻き立てられるらしかった。
「だって俺じゃ嫌なんだろ?」
「ちがう! そんな事一言も言っていないだろ」
ほら、とサーモンカナッペが口の前に止まった。
つい口を開ける。これはもはや反射神経のなせる業だ。
「うまそうだね」
あいつの作るものには、もう条件反射。そのくらい美味しいし、俺の血はあいつの作るもので構成されている。
「当たり前! 誰が作っていると思っているんだ」
涼が最高級の笑顔で『はい』と差し出してくる。
俺はサーモンカナッペを食べながら白ワインを口に含んだ。
「ツンデレ君にはきちんと途中途中、食べさせてあげるから、きちんと口を開けるんだよ」
「うるさい」
小さな声は抗議の印だったが、ドエスの旦那には逆効果だ。
「足開いて。きちんと拭けないだろう。俺に足開くのが嫌なら仕方が無い。適当に誰か拾ってくるよ」
「だから違うんだってば……」
尻窄みの話しかたは降参へのプレリュード。最初から俺が本気で嫌がっていない事なんか涼には分かっている。
「何が違うんだ? ん?」
「力……はいんないんだよ」
ここまで真っ赤だぞ。と首筋に涼の唇が食むように幾度も吸い付いた。
「しかたがないな、ちょっと待っていろ」
涼は俺をベッドの端においやると手前にタオルを丸めたものを置くと、その上に俺をうつ伏せにして乗せた。
「待てって」
「旦那が折角綺麗に拭いてやるんだ、黙って言うことがきけないのか?」
いや……そういうことじゃ。
「このカッコは恥ずかしい……」
必死に叫んだのに、ほんとに必死に、まさかの逆効果だった。
「何が恥ずかしいんだ? きちんと言わないと改善も出来ないだろう?」
————耳元で囁くバリトンボイスは、だから反則業なんだって!
「狡いよ、こんなの」
「ん? なにがだ。尻の突き出し方が足らないのか?」
言うなり高くタオルの上に乗せていた尻をさらにぱっくり割れ目が見えるように折り曲げれた。
「ちがっっ」
足を閉じようにも、涼に押さえ込まれて身動き出来ない。
「良く見えるな。拭いてやるよ」
涼は二本の指にコンドームを被せると尻の中を拭き出した。
「ンハ————ァン————ァン、ァァァン」
自然に漏れた声が、あまりに恥ずかしくて枕に顔を埋める。
「何……す……んだ!」
背中越しに睨んでやると、あいつってば、指を深いとこまで突っ込みながら耳を口に含み、ふざけた事を言いやがった。
「アーンアーンってお前ほんとエッロ。ちょっと見せびらかしたい気分になった。なぁスワッピングしねー?」
「スワッピング?」
俺は開いた口が塞がらなかった。
「あっ、でも俺以外で逝ったらお仕置きな」
「待てよ。男なんだから生理現象ってもんがあるだろう」
「ねぇよ」
「あるし」
「お前に限ってはねぇの」
「涼、横暴だ。ぜってぇやだから!」
左手は俺の顔を撫で、髪に指を絡ませながら、右手は相変わらず俺のケツの中を拭いてやると称して、這いずり回っている。ゴムを纏った二本の長い指が蠢いていて、精液を掻き出されるのもしんどいのに、逝った後でさらに感度が高まって拷問に等しい。
「大体、スワッピングとか誰とだよ!」
髪から指を抜くと、サイドテーブルの上に置いてあった携帯に手を伸ばす。左手に携帯握りしめたあいつは、俺の体を拭きながら、誰かに電話をかけていた。耳を澄ましても、中が良すぎて……どうにも集中できないが、コールオンだけは何とか聞こえる。
「ンハ……だ……れ……ン————」
喘ぎ声にかき消されたのか、愛しい男に俺の言葉は届かない。
————スワッピングって、相互チェンジだろ?
————お前……誰を抱くつもりだよ。
目尻からは悔し涙が流れてきた。そんな感情に流された涙を見られたくなくて、俺は必死に歯を食いしばった。
俺はあいつが誰を抱くのかに気持ちが行っていて、相互の言葉の持つ意味をすっかり忘れていた。
切れ者で通っているのに、涼のことを考え始めたら、他には何にも考えられない。そんな自分が嬉しくもあり怖くもあった。
「最悪————ぅ」
プルプル……プルプル……プルプルプ……ボンジュール?
ボンジュール? フランス語?
遠くてボソボソ話す低めの聞いたことのある声に、すぐ真上で話すバリトンボイスが笑いあい、そして電話はそうそうに切られた。
最後に涼……『じゃぁ明日な』って言わなかったか!?
「おい、涼……」
枯れた声は言葉にならず、動かない手を必死に動かし足に触る。
「出ない声を人が頑張って出しているのに……無視すんじゃ……ねーってば」
くそっっ『ァン、ンハッンハ————————』
良い所を執拗に弄ぶあいつの指が、俺の感度を正確にキャッチして、中が絞まる度に、あいつの『くくっ』って声が耳に響く。
「クソっ」
「言い方な」
「聞こえてんじゃねーか!」
涙目で睨む俺に、あいつはどこ吹く風だった。
「明日くるよ」
「誰がだよ!」
俺の問いに今度はきっちり返事が返ってきた。
「アランだ」
は————————?
「アラン? 絶対ヤダ。あんなラフを泣かしてばかりの絶倫男、俺、絶対に嫌だ。大体ラフが良いって言うわけないだろう」
何を当たり前のという顔をして、もう冷えてない白ワインを飲みながら涼は答えた。
「誰か適当に探すか、それともあいつがアランと来るかってなったら、ラファエルは来ると思うぞ」
「いや……だから。ってかそれ狡いし」
「ラファエルとお前の嬌声の共演なんか録画必須だぜ。お前が相手してくれない時のおかずになる」
「待ってよ。俺、お前のセックスの誘い断ったことないよな」
うるさいよとばかりに降りてくる唇、下唇を甘噛みされ唾液が流れる。
舌を突っ込まれ歯列の裏側をなぞるアイツの舌を感じ、唾液が溢れだし、飲み込む隙を与えないあいつの責めに、半開きの俺の口の端からは涎が垂れ流されていった。そこにふいによる影。
唾をすするいやらしい音に意識が覚醒した。
「なにしているの? 涼」
びっくりする俺に、あいつはさも当たり前だと呆れるように答えた。
「涎が垂れ流されては勿体ないだろう? お前から出るものは全て俺の物だからな」
恥ずかし過ぎて顔すら上げられない俺の顎をクイっと摘むと、そっと頬にキスが落とされた。
意地悪なくせに死ぬほど甘い旦那様に、俺は心底惚れている。
あいつの執拗な責めに意識を飛ばし、失神した俺が次に目を覚ましたのは、いつものアイツのフェラの仕方じゃない別のざらついた舌の動きを感じての事だった。
「ンァ、ンハンハァン……」
無意識に漏れる声に顔を覆い、その手を無理矢理どけられて、俺のペニスをしゃぶる人物に目線を落とすと……そこにいたのは。
————やっぱり。
「アラン」
ちらりと横を見るとベッドのポールに脚を括られ強制的に開脚させられている綺麗な男がいた。
「ラファエル……」
「起き……たのか……? 悠……」
なにかを埋め込まれたラファエルが切れ切れに話す。
「なんでこれ」
「愛しの旦那様たちに聞かないと分からないよ」
そう言った傍からまたざらつく舌がペニスを舐めあげる。
「ンハ、ラフ、やめさせて! アラン……やめて」
縄で脚をぱっくりと開かされ拘束されてるラファエルが、悠に声をかけた。
「んなこと言って聞くやつらかよ! スワッピングするつもりで涼がアランに声かけたんだ。諦めろ」
ラファエルに言われた悠はそれでも納得いかない。
「待てよ! アラン!……ンハァンッ……アホな……ことすん…な。ラファエ……ルが悲しむじゃ……な……いか……」
とっさに出た声に羞恥に泣きそうになりながら、俺は凄みをきかせた。
それでも容赦なく吸い上げるいつもと違う舌使い。だんだん感覚が鋭利に研ぎ澄まされていく。涼はいつもそこじゃない、あいつの舌はそうじゃない。
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