高度10キロメートルの告白・完全版

赤井ちひろ

文字の大きさ
4 / 23
プロローグ

4

しおりを挟む
「涼止めて、後悔するから」
 涼は、悠にむしゃぶりついているアランの肩に手を回すと、ラファエルをさして言った。
「何を一人で堪能してんだよ! あいつ貸りんぜ」
「俺のもんだから痕つけんじゃねーぞ!」
 了解とばかりに手をあわす。
 アランが言うとすかさず ラファエルは口を挟んだ。
「嫉妬しないでくださいね」
 涼はベッドに括りつけられているラファエルの開ききった秘部に優しく啄(ついば)むように口づけた。 
「口にキスは禁止。恋人じゃあるまいし」
「何だ、アランに操立ててんのかよ」
「あたりまえでしょう。僕が惚れているのはアランだけだ。あんなクズでも僕はあいつがいいの。あいつが言うからあんたとセックスする。従順なんですよ」
 そんな涼とラファエルのやり取りをちらりと見ると、冷ややかな目が涼を見下ろしていた。
 自分の為に流す涙なんか、きっとこいつにはないのだろうと思うと、俺も覚悟を決めた。
「だいたい恋人でもないのに、優しいとかはいらないから」
 ラファエルが、涼の胸座を掴み、そう言い捨てる。
「恋人じゃなくたって大切な仲間だ。優しくするのは当然だろう?」
 ラファエルの秘部に甘くキスをする涼の口に、擦りつけるように腰を前に突き出し言った。
「下手くそだね。悠にそんなフェラしか出来ないの? いつもやらせてばかりで、ご奉仕は趣味じゃないのかな」
 煽りにいくラファエルにハラハラしながら、悠は快楽の奈落へ落ちないようにしがみつく。
「お前より悠の方が優しいんだ。俺の拙いテクニックにも喘いでくれるさ」
 煽られても動じない涼に、悠はちょっとだけホットしながら、なるべく快楽を逃がそうと試みる。
「ホラホラ、よそ見は駄目だよ」
 アランは悠の鎖骨にキスをする。
 鎖骨は涼の好きな場所だ。鎖骨にキスをされれば感じるように身体は作られているから、我慢しようにも乳首は立つし、涼にあわせて広げられたあそこは収縮を繰り返すようになっていた。
 アランはチロチロと穴の周りの皺を舌先で伸ばすように悠の良いとこを丹念にさがし、ビクンと跳ねた瞬間を見逃さないように、舌を尖らせて蜜壺に捻じ込ませた。
「いやー汚いから、汚……ンハ……ンハァ————」
 汚い、を繰り返す悠に「汚い? すごく綺麗だが?」そう言うと鼻を埋めるようにクンクンと匂いを嗅いだ。
「吸いだして飲めるよ」
 アランは蜜壺に口を押しあて、吸い込めるだけ吸い込んだ。
「力抜いて……いい子だ……悠君」
「恥ずかし……いんだよ……涼のバカ……」
 俺は涼を見ながらすがるような視線を送ったのに、じっと俺の目を見るだけで助け舟すら出してもらえない。
「涼……ごめんな……さい」
 俺は一言、それだけを言うとアランの与える快楽に身を任せた。
「悠、泣いているの?」
 手足を縛られた状態で、ラファエルが俺に声をかけてくれる。いつだってラファエルは俺に優しい。
 薄く開け放っていた窓の隙間からは光が漏れて、淡いグリーンのカーテンは陽の光を浴びてキラキラしていた。
「ラフ……ごめんね、アランと……しちゃって……本当にごめんなさい」
 悠はアランに腰をホールドされ、蜜壺に舌を捻じこまれている間も、一生懸命ラファエルに謝っている。
「いや、元々はこの変態野郎たちがスワッピングしようなんて言い出したからだろう? 悠が謝らなきゃならない事なんか何もないじゃないか」
 アランの下で一生懸命ラファエルに謝る俺に、アランは動きを止め、ゆっくりと蜜壺から舌を抜いた。
「悠君? 君はなぜラフに謝るんだい?」
 アランは純粋な疑問を俺にぶつけた。
「あんたは黙って。だいたいアランや涼には、悠の様な人間の気持ちは分からないよ」
 ラファエルに優しい眼差しを向けられ……俺の不安定な心から決壊するかのように、涙が零れていく。
「おい、涼。俺の足の拘束を外してよ。悠が泣いてる」
 ラファエルは言った。
 ふんわりとした甘い外見とは裏腹に、良く響く低い声が特徴で、どちらかと言うと悠の方が優しい穏やかな声色をしている。
「ごめんなさい」
 謝り続ける事をやめない悠に手が止まっていたアランだったが、何を思ったのか「ならお前も楽しめばいいだろう」と、言うなり腰を掴みカリをそこに充てがった。
「いや………………止めて」
「おい、縄をはずせって、涼聞いてるのか?」
 アランは悠の口にタオルを突っ込み一気に奥まで挿入した。
 ドライで逝く事には慣れているものの、やはりいつもと違う場所を探して蠢く、アランのペニスの予期せぬ快楽に、悠の心が悲鳴を上げた。
「ンハッッンンンンン————」
 悠の腰を掴んだアランの律動はグラインドしながらも奥を執拗に責め、その速さは一気に増し口が閉められない悠は、涎を垂らしながらも目は涼を見ていた。
「いいぞ、おまえ、最っ高の器だぞ」
 激しさを増す凶暴なペニスは中で更に質量を増し、ぎゅうぎゅうの蜜壺をこすり続けた。
 鼻から抜ける悠の快楽の声は、聞くものを天国に連れて行くような淫靡で官能的なものだった。
「ンンンンンンンン————————」
「アランやめろって」
 ラファエルが恋人(アラン)の制御は無理だと悟ったのか、力技で縄をほどこうともがきだした。
「ラフ、肌が傷ついてしまうだろ。やめろ!」
「ごめん……なさい、ンン……ンァハン」
 俺は大きく揺らしながらペニスをゆっくりと引かれ、ぞくぞくするなんともいえない絶頂を迎える。
「ぁぁぁぁぁぁ……ごめん……なさい」
 その瞬間、四つん這いにされて後ろから突かれていた悠の顔を抱きしめる男がいた。
「わりー、アラン。自分勝手なことは分かっているんだが、頼む。抜いてやってくれないか」
「 涼、ごめんなさい。気持ち……良いって……身体が答えてる。あなただけって……こんなにも思っているのに」
 俺はただひたすらに謝った。 
「どういうことだ? スワッピングの提案はお前からだろう」
 アランはそう言いながら、さっきぎりぎりまで抜いたペニスを涼の静止も聞かず更に一気に突っ込んだ。
 ビクンと跳ね上がる悠は四つん這いのまま胸をのけぞらせ乳首をあらわに天を仰いだ。
 捕食者たる二人の男の目の前に、縦長に立った乳首はアランによって痛いほど摘まみ上げられた。
「いたッッンハ――」
「やめろってアラン!」
 ラファエルにちらりと目をやると、何事もなかったかのようにそのまま摘まんでいた指先に、さらに力を入れた。
「ヒ————痛い、痛い、アランやめて……お願い……だから」
 言葉とは裏腹に俺の乳首は感じて肥大していった。
「すまない」
 涼はアランに床につくほどに頭を下げた。
 それでも乳首を引っ張って悠をいたぶる手は止めず、腰に突っ込んだペニスをゆらゆらと抜き差し、悠の耳元で全員に聞こえるようにハッキリと言った。
「気持ちよさそうだな。涼に見られてどうだ。く突き出せよ! 欲しいならな」
 俺は自分の意思とは関係なく、下半身に血流が集中するのがわかる。快楽が尻を上げさせた。
 ラファエルは俺を助けられない事が悔しいのか、ぎゅっと唇を嚙んでいた。滲む血がラファエルの唇を淡くピンクに染めていく。俺はそれを横目で見ても、もはや冷静な思考は働いていなかった。
「ラフ、いくら自分自身でも、お前を傷つけることはこの俺が許さん。やめろ」
 俺達が知っているおちゃらけたアランのいつもの声ではなかった。本気でアランが言ったのならラファエルにはとても止められない。
「アラン、こんな提案をした俺が悪かった」
 涼はアランをはっきり見て言った。
「俺にしてくれよ」
 悠もラファエルも何が起きたのかわからず涼を見る。
「なぁアラン、俺に挿れてくれ」
「本気で言ってるのか?」
 嘲るように笑い、憐れむように聞いた。
「挿れられた事は?」
「あるわけないだろ?」
「裂けて痛いぞ?」
「構わん」
   アランは呆れたようにため息をつくと、もっと自分の性格考えろよと言って、悠の頭をポンと叩き、中からズルっとペニスを抜いた。
 抜かれる瞬間にペニスを捕まえるようにぎゅっと締まったのには、おそらく気が付いただろうアランは、何一つ触れなかった。
「ごめんな、悠。可愛いお前を見せびらかしたかったんだ。でも嫌だよな……。悲しかったんだな」
「嫌なのはお前じゃん」
「違いない……」
「感じちゃった。ごめんね」
 他の男に突っ込まれて嬌声を上げさせられる。
 その羞恥が悠のプライドを崩していく。
「俺がお前の痛みも悲しみも同じ様に受けるから……だから謝るのは俺だ。ほら入れてくれ」
 涼はそういうと、アランの前に大きく足を広げた。
 部屋の中に静かに流れるCaribbean  Blue……。言葉を失った世界の様に音楽だけが鳴り響いていた。
「顔見えねぇ方がいいか」
 涼が四つん這いになって尻を高く上げ覚悟を決めたように微動だにしなかった。
 その現状に流れていた涙はびっくりして止まり、俺はただ愛しい人を見つめ固唾をのんだ。
 アランの手が涼の腰を掴む。見ていられなくて目を背けた。その瞬間、跳ねるように声がした。
「アラン、悪ふざけもいい加減にしろよ。涼に入れたら二度と俺には挿れさせない!」
 ラファエルの叫びにアランの手が止まる。
「Oh(オー) mon(マイ) Dieu(ガー)」
「冗談じゃねーからぁ、あいつと穴兄弟とか絶対に嫌だね」
 この後、涼とアランがラファエルにこっぴどく怒られたのは言うまでもない。
『詫びは何がいいか』と問われた二人は、顔を見合わせ頬杖をついて言った。
「寿司ぃ、本気で旨いやつ」
「そんなのここにあるか?アマルフィに行くか?」
「流石に……、うまい魚はたくさんあるが、
 二人が困って言うと綺麗どころは声を揃えていった。
「日本に食いに行けばいいじゃないか。アランの奢りな」
「Oh(オー) mon(マイ) Dieu(ガー)」
 その二十時間後には俺たちは【ナポリ・カポディキーノ国際空港】を飛び立った。




次回    イージスの盾
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

過保護な義兄ふたりのお嫁さん

ユーリ
BL
念願だった三人での暮らしをスタートさせた板垣三兄弟。双子の義兄×義弟の歳の差ラブの日常は甘いのです。

染まらない花

煙々茸
BL
――六年前、突然兄弟が増えた。 その中で、四歳年上のあなたに恋をした。 戸籍上では兄だったとしても、 俺の中では赤の他人で、 好きになった人。 かわいくて、綺麗で、優しくて、 その辺にいる女より魅力的に映る。 どんなにライバルがいても、 あなたが他の色に染まることはない。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

処理中です...