冒険恋愛小説ドキュメンタリー “エメラルド王、勇者の愛”

Eishi_Hayata

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第7話 アウレリアとの再会

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アウレリアの住むコスタリーカを後に日本へ帰国した僕はまっさきに九州のお袋に報告した。

「ついに理想の女性に巡り会えたような気がする」

「まーそんな遠くの人じゃなくて近くにいい娘がいっぱい居るのに」

「地球の果ての、違う世界の娘がいいんだよ」

と煙に巻いた。

それからの毎日は心の中にアウレリアへの憧憬を抱き、希望に溢れ、充実した仕事と日常生活が戻ってきた。

世界が輝くように美しく見え、何に対しても不満はなかった。

女房に捨てられて以来、大学生の弟のアパートに転がり込んで、ついひと月前まで陰鬱でうらぶれた腑抜けのような生活をしてきたことがまるで嘘みたいであった。

人間、恋に敗れただけであんなにも無気力になるものかと、無聊を囲った日々が滑稽にさえ感じられた。捨てられた女房には未練どころか、感謝さえも感じるのであった。

銀座の風景、日光の秋の紅葉、富士山等の日本の美しい絵ハガキをしばしばアウレリアへ送った。

二ヶ月経った頃再び一週間の休暇を申請してコスタリーカへ旅立った。

航空券は航空会社の特典で社員割引が75パーセントから90%もあった。スタンバイ(空席待ち)ではあるが、75%引きは無制限に利用でき、90%引きは年3回と制限があった。

それがなければ、当時とてもこんな世界を股にかけた高価なデイトは出来るはずがなかった。

また家族にもそれが適用できたので、これ迄に両親をハワイと米国本土へと二回もアメリカ旅行に連れて行って親孝行をなしていた。

一週間の休暇といえども片道の移動だけでもロスアンゼルスの泊まりで2日もかかるので、往復4日を旅程に取られて、コスタリーカ滞在が正味3日しかなかった。

前もって訪問日を知らせておき、コスタリーカへ到着すると興奮で胸が高鳴るのを抑えて、彼女の家の玄関をノックした。

ドアを開けて出てきたのは幼い弟のルイスだった。

「姉ちゃん、ス アミーゴ ハポネース(あんたの日本人の友達)が来たよ」

と大声で家の中へ叫んだ。

早足で出てきたアウレリアは溢れんばかりの笑みを浮かべ、飛びつくように僕に寄り添い頬にキスをして抱擁した。

「エイシー、長旅どうだった?」

「コスタリーカへ来て、あなたに会えるることを思えば、長旅も苦にならなかったよ」

「そう、それで今日はどういう予定?」

「あなた次第で何も決めていないけど、このいい天気でどっか行こうか?」

「そうね、それじゃオホ・デ・アグアにでも行こうかしら、とても綺麗な湖よ」

「ウオーッ」

彼女の背後からソプラノの叫び声が聞こえた。

「ゴメンなさいね、私、長女だからエルマニートス(小さい兄弟)の面倒を見なきゃならないの。一緒に連れて行ってもいい?」

「もちろんさ、一緒にボートに乗ろう」

「ウアー、最高!」

再びルイスと妹のマリアの歓声が響いた。

お母さんのグロリアと家に残っていたアウレリアの下の妹達のリヒアとネリーに嬉しい再会の挨拶をして、しばらく歓談をした後、いよいよ出かけていった。 

彼女の装いはブルーのジーンズにライトブルーのシャツといういかにも高校生らしい清楚な感じで、並んで歩くのに少なからず気が引けた。
僕も同じくブルージーンズに水玉模様の青色の長袖シャツといういでたちで色調が互いに似通っていたが、共にジーンズは当時流行りのラッパズボンであった。

前にもまして友好的な雰囲気の中でも、彼女の楚々とした風情が初々しく、僕は初恋の初めてのデイトのように清々しい心持ちであった。

それは彼女の家からバスで一時間半ほど行ったサンターナの町外れにあり、サンホセの人々の憩いの場として人気があった。

メキシコシテイのソチミルコ湖みたいな庶民的な観光地だが規模はずうっと小
さくどんちゃん騒ぎのマリアッチ音楽もなければ屋形船も無かった。

しかし落ち着いた静寂さがあり、湖水がソチミルコよりはるかに綺麗であった。

二人の幼い兄弟はたがいにはしゃぎ回り、嬉々として飛び跳ね、このピクニックを大いに楽しんでいた。

屋台でのカルネ アサーダ(焼肉)とコーン(トウモロコシ)は子供の昼食にすれば最高で、僕の面目躍如の初日となった。

午後遅く帰宅した後、家で家族と共に談笑しているところへ、彼女の父親のヘ
ルマンが仕事から帰って来た。

僕が直立不動で緊張した面持ちをして挨拶の手を差し出すと、にこやかに握手を返し、

「エイシー、リラックス、リラックス。今日は子供が世話になった、有り難う。今から軽く、一杯やりに行くけど一緒に行くかい?」

と、僕の緊張を解くようにねぎらい、外出を誘った。

「はあ、喜んでお供致します」

僕は神妙に応えた。

ダットサンのピッカップで二人して夕暮れの歓楽街へ乗りつけた。

大衆的なカンテイーナ(酒場)や食堂が立ち並んだ通りで、至って気さくな場所であった。
とある開放感のあるだだ広いバー兼レストランに入っていった。

席に着き、頼んだビールがやってくると、インペリアール・ビールの小瓶を片手に直ぐにもヘルマンは土間の隅に置かれた箱型の遊戯台のところへ行って、投げ銭のプレイをし始めた。

僕も立ち上がって見に行くと、箱には口を開けたカエルの置物がはめ込んであり、その大小の口をめがけて2メートルばかり離れたところから硬貨を投げ入れるのである。

口の大きさによって倍率が違うが、上手く入った硬貨の三倍、五倍と店が払い戻しをしてくれるルールだ。

二人でしばらくプレイを楽
しんだ後、注文していたメニューの定食のカサードが運ばれてきた。

牛肉のステーキとフリホーレス(黒豆)の組み合わせにサラダ付きで、ポピュラーな大衆食であるが、これがとても旨かった。

暫くヘルマンと歓談した後、夜もふけ始めたので彼が僕をチョロテガ・ホテルまで送ってくれた。

彼にすっかり気に入られたようで安心した。

翌日は、ポアス火山見物に行くことになり、今度はアウレリアの2歳下の弟テデイーと彼のまた2歳下の妹ネリが同行することになった。

頂上近くまでタクシーを雇い、そこから噴火口まで徒歩で登っ
た。
噴火口の縁から下を覗くと煮えたぎる赤いラバー(溶岩)が見えた。

山頂の反対側には広大な裾野の麓に美しい姿の首都がまるで箱庭に貼り付けられたように悠然と横たわっていた。

帰路には見晴らしのいい高台にあるコテージ風のレストランで昨日と同じくカルネ アサーダの昼食をみんなで食し、デザートはナーチョであった。

昨日に続き1日がかりの遠出でアウレリアも僕も少しくたびれたけど共に気分は最高で、二人の若い兄弟も遠足と食事をを楽しみ、またも僕の面目躍進となった。

三日めの最終日は特に計画したこともなく彼女のうちを訪れると、家族のみんなと歓談した後、アウレリアが言った。

「エイシー、今日はコスタリーカ国立大学に行かない?、ちょっと調べたいことがあるの」

「そう、それは興味深いところだね、僕も是非行って見たいものだ」

両親へも信用がついたのか今日は二人だけで外出させてくれた。

もっとも出かける際にアウレリアは彼女のすぐ下の妹たちリリアとネリに厳しい顔つきをして、

「小さい兄弟たちの面倒をよく見るのよ!」

と律儀に叱咤していた。

コスタリーカの最高学府の国立大学は彼女の住んでいるデサンパラドスからタクシーで20分ほど行ったサンペドロの広い一画を占めていた。

常緑樹に覆われたキャンパスは建物も二、三階建の程よい高さと大きさで落ち着いた雰囲気を醸していた。

校内を見て回った後、彼女は教務課のあるビルに入っていき、大学受験に関する質問をした。

白い簡素なブラウスと黒いスカートを着た真面目そうな女性の職員が丁寧に受け応えをしていた。

傍に立つ僕も興味をそそられ、アウレリアが質問を終えた後、

「留学するにはどんな書類が必要ですか」

と、特に計画していた訳でもないのに、興味本位で質問してみた。

「高校を終了していますか、大学在学中ですか?」

「大卒です」

「まず、どこの国のどの大学を卒業していますか」

「日本の東京教育大学(現筑波大)で、農村経済学科を卒業しています」

教務課の女性は引き出しから一通の書類を出すと紙面に見入りながら、

「それでしたらAランクにリストされていますので、一般教養の二年間は免除されて専門学部に直接入れます。だけど専門課程についていけるだけの高度なスペイン語が必要ですよ。必要書類は卒業証明書に学科成績表です。それを日本のコスタリーカ領事館で認証して持ってきてください」

「ありがとうございます。まだ決めた訳ではありませんが、その節にはまたお伺いします」

礼を言ってオフイスを出た。

なんとはなく気分の良い高揚感と開放感を感じ、僕は自分の手を出してアウレリアと手をつないだ。

彼女は少し恥じらいを顔に浮かべたが、お互いに顔を見合わせニッコリと笑い合い、抵抗感なく互いの手を握りしめた。

しなやかな感触でなんともいえない心地よさであった。

再び日本への機上の人となった僕は座席に深く腰を下ろし物思いにふけっていた。

ふとした思いつきでなしたコスタリーカ国立大学での質問が心の隅々まで波紋を広げていた。

新しい挑戦の芽吹きを感じた。

次のコスタリーカ訪問はなんとたったの1日という極端なスケジュールになった

航空会社の勤務時間帯は昼夜を分かたずの1日三交代の年中無休であるが、時どき仲間内で勤務シフトの交換トレイドが行われていた。

子供の学校の用事や医者のアポなどでシフトを交換してくれないか、という頼みでそれをトレイドと称し会社も黙認していた。

さすがに二シフト連続勤務は許されないが、休日とシフトの交換は誰もがたまにやった。

その結果僕のスケジュールが5日連続の休日となり、うちにいても特にやることもなく思いあまって、「わずか1日のデイトでも構わぬ行っちまえ」という気になった。

そして、この超特急の短期休暇旅行を敢行した。

コスタリーカへ到着し、そのことをアウレリアに告げると、呆れ果てた彼女が、
「片道2日もかけて地球の裏側からやってきて、たったの1日しか滞在しないの?」
と言いながら、まんざらでもない笑みを浮かべた。

それほどまでに自分が慕われていることに感激して
僕の手をぎゅっと握りしめてきた。

「あなたのことをこの上もなく愛しているからだよ」

初めて彼女に対する愛の言葉を耳元で囁いた。

かすかに微笑みを残して、彼女は静かに目を閉じた。

僕は優しくアウレリアを抱き寄せて柔らかく唇を合わせた。

彼女との終生忘れない最初の接吻であった。

愛らしく軽やかな接吻は誰もいない二人だけにしてくれた居間で数秒も続いた。

甘くいとおしい永遠の契りのように感じた。

その日はたまたまアウレリアの叔母、テレシータの誕生日であったので、アベニーダ セントラル(中央通り)に面するスイス料理のレストランへお祝いのためのバースデイ デイナーをしようと三人で繰り出した。

ピンクのドレスを鮮やかに着こなしているブロンドにブルーアイ(青目)のテレシータは少し太りめの大柄の白人で北欧系に見えたがイタリア系とスペイン系の混血である。

33歳と若いが、男が寄り付き難いのかまだ独身であった。

コスタリーカの食品製造会社の大企業、ドス・ピーノスで社長秘書をやって
いた。

抜群の気品を漂わせ魅力溢れる美人であったが、アウレリアに有頂天の僕が目移りすることはなかった。

アウレリアもオレンジ色のドレスを身につけ眩いばかりの美女カップルであった。

僕もかねてより持ってきてアウレリアのうちの預けておいた薄地のスーツを取り出しネクタイを締めて、彼女らと調和をとった。

南米産チリワインで乾杯した後、チーズ・フォンデユーで舌鼓を打ったが、やはり本場アルプスのチーズは格別であった。

テレシータはすっかりご機嫌になり、ワインの杯を重ね饒舌になっていた。

「どうしてあなたみたいな美人をここの男どもはほっとくのだろう?」

という僕の質問に対し、

「コスタリーカの男はみんな怠け者で、釣り合うのが少ないのよ。それにほどほどの男でも母が厳しくてすぐに追っ払ちまうの」

「そう、テレシータのママ、私のお祖母ちゃんだけど、ヤヤはすごく厳格なのよ」

アウレリアが相槌を打った。

僕とアウレリアの仲がまだ単なる友人関係かと推測して、年齢があまり変わらない僕に興味のある質問をいろいろと投げかけてくる。

まんざらでもない僕は横目でアウレリアを見ながら適当に答えているが、アウレリの顔には嫉妬でもない苦笑いでもない、単に叔母さんを幸せにして頂戴と言わんばかりの余裕のある笑みが漂っていた。

すでに僕を信じきっているのだ。

テレシータを先に彼女の家まで送って行った後、すぐ近くのアウレリアの家の前ではタクシーを待たせ、アウレリアと一緒に家の中へ入っていった。

彼女の両親にたった1日の訪問の別れの挨拶をすると彼らは目を丸くして驚いた。

「まあ、すごい御執心なことね。そんなにあの娘を気に入ったの?」

と、手を口に当て笑いながら母のグロリアが軽口の冷やかしを発した。

「もう、とってもとっても愛しています。永遠に揺るぎない恋です」

僕は胸の中に秘めた思慕を両親に吐露した。

「ウワー、熱い暑い!」

とヘルマンが大仰に手のヒラで顔をあおぎ、おどけると、グロリアと二人して笑い合った。

両親の元を辞去した僕はアウレリアと手を繋ぎ、名残を惜しむ兄弟達に別れを告げた。

出口のドアを開け僕を送り出すときアウレリアが、
「エイシーあなたのこととても好きよ」

と告げ、強く抱擁して数秒間の熱い別れのキスをしてくれた。

身も体も溶けてしまいそうであった。

この瞬間が、たった一日のデイトのために4日間もの道のりを経た高価なランデビューの代価の清算をしてくれた。

「今度の休暇は必ず長く取ってやって来るからね」

と僕は言いのこして、切なくもつないでいた手をはなした。

かくして短くもあり長くもあった楽しい一夜は更けていき、定宿のオテル(西語でホテル)・チョロテガに戻った僕は明日の出発にそなえ安らかな眠りについた。

東京へ戻った僕は仕事にひたすら励むかたわら、アウレリアへの思慕を胸の中に秘めて、彼女との恋愛関係を進展させるためのスペイン語の学習にいそしんだ。

彼女とのどういう将来が待ち受けているか空想は際限なく膨らんだ。

東京の街角で外国人のグループとすれ違うと、まるでサンホセにいるみたいな錯覚を覚えた。

もはや足が日本の地についていないのだ、かんぜんに浮き足立っていた。

二ヶ月を待たずしてまたも会社に十日間の休暇を申請した。

週休二日を含んでいるので実質6日の休暇依頼でまだ有給休暇の範囲内であった。

今回のコスタリーカ訪問にあたり決定的な決断を下していた。

コスタリーカ移住を決心したのだ。

コスタリーカへ着くと、高校制服姿のアウレリアを伴い直ぐにもコスタリーカ国立大学を訪問した。

専門課程の将来性を尋ねた。

ラテンアメリカでは一般に工学部と法学部がエンジニア、弁護士となるための人気あるコースであった。

僕にとっては一般教養の二年間が免除されるので二年間さえまじめに勉強し
て卒業できればエンジニアとして此処で働いて暮らしていくことができる。

しかし僕はすでに決めていた。

「医学部に行きたい」

と言うと、

教務課員は、

「三年間で終了して、国家試験を受け合格すれば医師になれます」

と答えた。

最終年の一年間のインターンが免除されるのだ、これはシメたと思った。

さらに彼が付け加えた。

「三十名の卒業定員に対して初年度で、3,4百人の学部専攻者がおり、毎年数多くがこぼれ落ちていきます」

最後の三十名に残らなければならないのだ、これはすごい競争率だと思った。

こぼれ落ちた学生は再び他の学部に編入しなおすのであろう。

僕に連れ添って大学に行ったアウレリアは僕の将来に対する決意を察し、早速父のヘルマンに相談した。

すぐにも親戚筋に話が行き渡り、コスタリーカの航空会社で幹部社員として働いている叔父のエンリケ氏からオファーがもたらされた。

「うちの会社が今度コスタリーカへ入って来るアメリカの航空会社の飛行機の整備を扱うようになったので、FAAのライセンスをもったライン メカニックが必要だ、ぜひウチに来てくれ」

と、いうものだった。

もうこの数ヶ月間十分に考えて結論を出していたので、迷うことなく断わった。

「ライセンスは持っているけど経験不足でまだあんまり仕事はできません、とてもメインテナンスチーフとしてやっていく能力はありません」

「心配しなくていい、仕事のできるメカニックはウチにいっぱいいる。ライセンス持ちがいないのだ、君を三ヶ月間ニューヨークへトレーニングに出すよ」

「ありがたい話ですが、やっぱり医学部へ行こうと思っています」

と、辞退した。

アウレリアとの将来の結婚生活のことだけを考えれば、それも一つの選択技であったが、メカニック仲間内でライセンスを持っているからというだけでベテラン整備士の彼らの上に立ち仕事を指示するマネなど僕にはとうてい出来ない相談であった。

かといって新米整備士クラスの給料では生活が成り立たない。

いずれにせよ、このコスタリーカ移住計画には新たな試練がつぎつぎと待ち受けていた。

しかし躊躇することなく、またも新たな挑戦の道を選んだ。

思えば高校卒業のとき以来、将来の人生計画のために何度挑戦を繰り返してきたことか。

海の男、外国航路の船長に憧れ、いずれもハードルの高い商船大学か水産大学か農林省水産講習所のいずれかを大学受験で目指して、学費寮費が無料、おまけに小遣いまで支給してくれるという水産講習所に運良く合格できた。

しかし年中大海原の船中生活に嫌気がさして大半の船乗りは後年辞めてしまう、という従兄の忠告を聞き、考えあぐねた末、船乗りになるのを断念した。

僕の叔父さんは大阪商船で長いこと船長をやりとうしたが、その従兄は外国航路の一等航海士の時、長い海上生活にうんざりして辞めてしまった。

大学卒業の頃には英会話を特訓するために、一年半もアメリカやメキシコ中米を放浪して回り、アリゾナのインデイアン リザベイション(居留地)ではアパッチやナバホ族の若者とつき会い、酒場での喧嘩や留置所での警官とのやりとりで強烈な会話表現も学んだ。

アメリカの航空会社の運行部で実践の専門用語の習得、更にはライン メインテナンスでの技術用語の習得と絶え間なく英語学を研鑽してきた。

再度の大学受験を経て、遂には高いハードルのFAAライセンスへのチャレンジと、連続の挑戦を重ねてきたが、それらを全てフイにして、今また新たに医学部に挑戦するという難題を自己に課したのである。

しかも日本語でもない英語でもない、スペイン語という違う言語を通してである。

今の僕のスペイン話などメキシコで半年近く日常会話を学んだとはいえ、大学の
授業レベルにおいてはほとんど役に立たず、この一、二年は大特訓しなければならなかった。

今度の課題だけは人生最大の超難関に見えた。

しかしアウレリアとの将来にそなえ絶対に成功させなければならなかった。

彼女への愛がこれを支えてくれると信じた。日本に彼女を連れて帰り、新たに就
職活動をすることなど、全く選択技になかった。

今回の少し長いバケイションではアウレリアとの愛もかなり育まれた。

何回かデイスコに行きロックを踊り、ラテンアメリカ特有のサロンデバイレ(踊り会場)ではクンビアやメレンゲを踊った。

幼い兄弟を連れて公園へ行き、童心に帰りブランコやスベリ台の遊戯に興じ、彼女との会話を楽しんだ。

そしてしばらくぶりにアメリカ人の友人ジョーを訪ね、アウレリアを紹介した。

気に入ったブルーマウンテンの味を思い出し、AAクラブへ三人で出かけた。

ジョーとの久しぶりの再会で話しが弾んだ。

英語西語の混合であるが彼女も会話の仲間に入った。

英語の素養が学校教育並みにあればスペイン人種には英語はかなり理解でき、会話も駆使できるのである。

面白おかしく談笑してひとときを過ごした。

彼女の聡明にして謙虚な、相手を思い遣る大人びいた気性に感心して、
「若いのに出来た娘だ。こんな素晴らしい女性を恋人に持っていたのか」
とジョーはしきりに感嘆していた。
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