負け=死

JOKER

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 一瞬の出来事だった。

 強い風が吹き荒れる、広い野原を俺は急いで走っていた。俺の仲間が横隊を作り全身していた。木の葉が揺れる音が辺りを包んでる。その音の至る所から男の絶叫や呻き声が響いていた。

 後頭部に強い衝撃を受けた俺は、前方へうつ伏せに倒れた。世界から音が消え、倒れた時の感覚も消えていた。木の葉の音も、吹き荒れる風の感覚も消えた。残っているのは視覚のみ。ただ倒れた視界の先に仲間の姿が映っていた。仲間は銃を乱射していた。そして次々と仲間が倒れていく。

ああ——俺は撃たれたんだ——

 意識が薄れていく中、俺は今、自分が死にかけている理由を見つける。立っている仲間は急ぐように走って行き、俺の視界から消えていった。残ったのは自然の緑と数台の死体。唯一残っていた五感の視覚も徐々に消えかかっていた。立ちくらみのように視界が白い靄で埋め尽くされていく。全身の力も弱くなっていくのを感じた。

 俺は全てを諦めて目を閉じる。その時、既に消えていた感覚から、体が浮き上がるのを感じた。ゆっくり目を開ける。そこには死んだ俺がいた。視界が少しずつその俺から離れていった。

 視界の右下に白い枠が現れる。「キルカメラ」。そう表示された枠は、点滅を繰り返していた。

 再び視界が切り替わる。現れたのは一人の軍人。服からして、その軍人は敵国だ。手には長いスナイパーライフルを構え、大きなスコープを覗き込んでいる。その銃が火を噴くと、視界は軍人から銃弾に切り替わった。ズームでスロー再生されながら、銃弾が回転し、俺の後頭部へと進んでいく。その銃弾が頭を貫通した。

 ああ—— 無様な死に方だな。

 再び死んだ俺を見て、がっかりする。あまりにもあっけない死に方だった。キルカメラを見て後悔する。少し苛立ちも感じた。

 今更、後悔してもしょうがないと思い、コントローラーを握り直す。画面にランキングが表示された。チーム内3位。あと5キルは必要そうだ。
 
 死んだ俺が映った画面の左下に赤い枠が浮かび上がる。「リスタート」。そのボタンを押すと再び、視界に戦場が映し出された。

 俺は銃を構えて走り出す。
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