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第6章 土岐家の名君
2.頼純という男【2】
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祝言の次の日の朝、大桑城には朝倉家から頼純と共に来た土岐家の者達と帰蝶にお供してきた十兵衛達のみとなった。
人数の割合としては、頼純の家来が9割、残り1割が十兵衛達であった。
帰蝶と十兵衛達は実質、大桑城に入場した土岐家の者達の命を保証する人質であったのである。
朝、十兵衛は帰蝶が心配になり、彼女の部屋を訪れる事を願い出て、許可が下りると真っ先に向かったのである。
『帰蝶様、昨日は、申し訳ございませぬ。この十兵衛、お供しなければと思っておりましたが、男子立ち入り禁止との事で、十兵衛一生の不覚でございまする』
『帰蝶様、昨日は特に問題はありませんでしたか?』
『頼純様は、どんな方でしたか?』
『十兵衛兄様、朝から顔をみるや、騒々しくてかないません事よ!』
『落ち着いてくださいませ!』と帰蝶は、慌てる従兄をたしなめる様に言う。
『・・・申し訳ございません』と十兵衛は謝り、幼子の従妹の正論を聞き、慌てて落ち着きを取り戻そうと深呼吸をする。
『昨日は、頼純様は饅頭というモノを持って来て下さり、私と共に食べてくれただけじゃ』
『なかなか、その饅頭という菓子が真っ事美味でして、3個も食べてしまいました。』
幼い従兄妹の、突拍子の無い報告を、何を言っているのか最初は理解できず、思わずキョトンとしてしまう十兵衛であった。
『頼純様は、どの様な方でしたか?』
帰蝶の言葉を理解する間に、聞こうと思っていた質問が勢いで出てしまう十兵衛であった。
『頼純様は、饅頭7個も食べたのじゃ』
『最初、私の為に饅頭を持ってきてくれたと感動したのだが、何のことはない、あの方は大の饅頭好きじゃった。もし、私がいなければ、私が食った饅頭3個も平らげてしまった事じゃろう!!』
帰蝶はそう言うと、昨日の事を思い出したのか、可笑しそうに笑い出したのであった。
『十兵衛兄様、話には続きがある、頼純様はな、饅頭食べた後、突然苦しみだしてのう』
『食べ過ぎたァア、ワシは厠へ行くと、そりゃもう、物凄い顔で部屋を出て行こうとされたのじゃ』
『しかし、部屋を出る直前、私に言うのじゃ、帰蝶殿、ワシの厠は長くなる。今日は、先に侍女殿と休まれよ』
『・・・と脂汗流しながら言うのじゃ、その顔が面白くて、面白くて・・・』と言い、再び笑いだす
『・・・そうですか・・・頼純様は気がつく方なのですね』
(土岐家は、室町幕府の足利家に並ぶ名門の血筋、血筋を鼻にかけ、帰蝶様に対して無礼な言動があるやも知れぬと心配していたが、そのような素振りは無かったのだな・・・良かった)と十兵衛は心の中で胸を撫でおろしたのであった。
二人が、そんな話をしていると、侍女の者が、二人に頼純が部屋に来た事を告げに来たのである。
『帰蝶殿、起きておられたか!』
『頼純様、おはようございます。昨日の饅頭美味しゅうございました。有難うございました』と帰蝶は元気な声で頼純へ挨拶をする。
十兵衛は、その場で平伏する。
『帰蝶殿、ヨリヨリで良いと言ったじゃろう、ンン、その方、帰蝶殿に付いて来た家来じゃな』
『名は何と申す?』
頼純の声は、帰蝶に話しかける様に気さくで、その言葉は親し気であった。
『頼純様、この者は私の従兄、明智の十兵衛兄様でございます』
帰蝶が頼純へ十兵衛を紹介したので、十兵衛自身、続けて頼純へ自己紹介をする。
『頼純様、某、明智十兵衛と申します。ご挨拶が遅れ申し訳ございませぬ。宜しくお願い致します!』
『帰蝶殿の従兄?明智・・・・明智十兵衛』
『オオゥ、明智家の者か?』
『十兵衛とやら、頼純じゃ、宜しく頼む!』
『そうだ、未だワシの家来達にも紹介していなかったなあ、帰蝶殿、お主の従兄殿をワシに貸してくれぬか?』
『紹介というモノは、早い内にやればやるほど、意味があるのじゃ、どうかな??』
『十兵衛兄様は、私の大事な家来ですからね、さあ、どうしましょう・・』
『連れない事を言わないで下され、昨日ワシの饅頭4個あげたじゃろうに』
『3個です・・。無事に返す事を約束して下されば・・・』
『ワシが、帰蝶殿の従兄様に怪我をさせるワケあろう筈が・・・あるまい。それでは従兄殿を借りていくぞ、十兵衛、行くぞ』
妹との会話を楽しむ兄の様に、頼純は優しい表情でそういうと部屋を出ていき、十兵衛も少し遅れてその後をついて行ったのである。
廊下に出た途端、十兵衛は一瞬で4人の男に囲まれた。
その物音ひとつ立てない彼らの動きが、彼らの目的が単純な自己紹介ではない事を十兵衛に知らせたのであった。
十兵衛は、彼らに連れられていった部屋で暫くの間無理矢理座らせられた。
暫くして、土岐頼純が数名の家来達と共に入って来た。
『明智十兵衛、土岐の血を継ぐ家の者が、道三の犬になるとは情けなし』
『死ぬ覚悟はできておるのだろうな?』
それは、土岐頼純の声であったが、帰蝶の部屋で聞いたあの人懐っこい声の響きはなく、冷酷な尋問者の声であった。
人数の割合としては、頼純の家来が9割、残り1割が十兵衛達であった。
帰蝶と十兵衛達は実質、大桑城に入場した土岐家の者達の命を保証する人質であったのである。
朝、十兵衛は帰蝶が心配になり、彼女の部屋を訪れる事を願い出て、許可が下りると真っ先に向かったのである。
『帰蝶様、昨日は、申し訳ございませぬ。この十兵衛、お供しなければと思っておりましたが、男子立ち入り禁止との事で、十兵衛一生の不覚でございまする』
『帰蝶様、昨日は特に問題はありませんでしたか?』
『頼純様は、どんな方でしたか?』
『十兵衛兄様、朝から顔をみるや、騒々しくてかないません事よ!』
『落ち着いてくださいませ!』と帰蝶は、慌てる従兄をたしなめる様に言う。
『・・・申し訳ございません』と十兵衛は謝り、幼子の従妹の正論を聞き、慌てて落ち着きを取り戻そうと深呼吸をする。
『昨日は、頼純様は饅頭というモノを持って来て下さり、私と共に食べてくれただけじゃ』
『なかなか、その饅頭という菓子が真っ事美味でして、3個も食べてしまいました。』
幼い従兄妹の、突拍子の無い報告を、何を言っているのか最初は理解できず、思わずキョトンとしてしまう十兵衛であった。
『頼純様は、どの様な方でしたか?』
帰蝶の言葉を理解する間に、聞こうと思っていた質問が勢いで出てしまう十兵衛であった。
『頼純様は、饅頭7個も食べたのじゃ』
『最初、私の為に饅頭を持ってきてくれたと感動したのだが、何のことはない、あの方は大の饅頭好きじゃった。もし、私がいなければ、私が食った饅頭3個も平らげてしまった事じゃろう!!』
帰蝶はそう言うと、昨日の事を思い出したのか、可笑しそうに笑い出したのであった。
『十兵衛兄様、話には続きがある、頼純様はな、饅頭食べた後、突然苦しみだしてのう』
『食べ過ぎたァア、ワシは厠へ行くと、そりゃもう、物凄い顔で部屋を出て行こうとされたのじゃ』
『しかし、部屋を出る直前、私に言うのじゃ、帰蝶殿、ワシの厠は長くなる。今日は、先に侍女殿と休まれよ』
『・・・と脂汗流しながら言うのじゃ、その顔が面白くて、面白くて・・・』と言い、再び笑いだす
『・・・そうですか・・・頼純様は気がつく方なのですね』
(土岐家は、室町幕府の足利家に並ぶ名門の血筋、血筋を鼻にかけ、帰蝶様に対して無礼な言動があるやも知れぬと心配していたが、そのような素振りは無かったのだな・・・良かった)と十兵衛は心の中で胸を撫でおろしたのであった。
二人が、そんな話をしていると、侍女の者が、二人に頼純が部屋に来た事を告げに来たのである。
『帰蝶殿、起きておられたか!』
『頼純様、おはようございます。昨日の饅頭美味しゅうございました。有難うございました』と帰蝶は元気な声で頼純へ挨拶をする。
十兵衛は、その場で平伏する。
『帰蝶殿、ヨリヨリで良いと言ったじゃろう、ンン、その方、帰蝶殿に付いて来た家来じゃな』
『名は何と申す?』
頼純の声は、帰蝶に話しかける様に気さくで、その言葉は親し気であった。
『頼純様、この者は私の従兄、明智の十兵衛兄様でございます』
帰蝶が頼純へ十兵衛を紹介したので、十兵衛自身、続けて頼純へ自己紹介をする。
『頼純様、某、明智十兵衛と申します。ご挨拶が遅れ申し訳ございませぬ。宜しくお願い致します!』
『帰蝶殿の従兄?明智・・・・明智十兵衛』
『オオゥ、明智家の者か?』
『十兵衛とやら、頼純じゃ、宜しく頼む!』
『そうだ、未だワシの家来達にも紹介していなかったなあ、帰蝶殿、お主の従兄殿をワシに貸してくれぬか?』
『紹介というモノは、早い内にやればやるほど、意味があるのじゃ、どうかな??』
『十兵衛兄様は、私の大事な家来ですからね、さあ、どうしましょう・・』
『連れない事を言わないで下され、昨日ワシの饅頭4個あげたじゃろうに』
『3個です・・。無事に返す事を約束して下されば・・・』
『ワシが、帰蝶殿の従兄様に怪我をさせるワケあろう筈が・・・あるまい。それでは従兄殿を借りていくぞ、十兵衛、行くぞ』
妹との会話を楽しむ兄の様に、頼純は優しい表情でそういうと部屋を出ていき、十兵衛も少し遅れてその後をついて行ったのである。
廊下に出た途端、十兵衛は一瞬で4人の男に囲まれた。
その物音ひとつ立てない彼らの動きが、彼らの目的が単純な自己紹介ではない事を十兵衛に知らせたのであった。
十兵衛は、彼らに連れられていった部屋で暫くの間無理矢理座らせられた。
暫くして、土岐頼純が数名の家来達と共に入って来た。
『明智十兵衛、土岐の血を継ぐ家の者が、道三の犬になるとは情けなし』
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