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第3章 十文字槍対策
5.修業4(糸口)
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胤栄が木槍を持ち、戦闘態勢を整える。『どっからでも、打って来なさい。』と胤栄が虎之助に伝える。
『宜しくお願い致します。』と虎之助が木槍を構え、胤栄に渾身の一撃を放つ。
虎之助の巨体から放たれた豪槍は、風を切り裂く音を立て、胤栄の体の中心に向けて飛んでいく。
虎之助の一撃に対して、胤栄は自身の体を前進させ、虎之介が放った槍に握っていた槍を当てたと思うと、ほんの少し槍の軌道が逸れた。
そのずらされたスペースに胤栄が忍び込み、前進を続ける。
虎之助の槍に、胤栄が握っている槍を沿わせて、滑らすように懐に入っていく。
虎之助の槍のほぼ先端の位置にいた胤栄が、スルスルと前進し、気が付けば虎之助が握っている槍の柄の近くまで来ようとしている。
懐に入った胤栄は、槍を名人芸の様に持ち替え、左手で握っていた柄の部分で虎之助の水下に一撃を入れる。
『グォッ』と水下を打たれた虎之助は、予期していなかった痛みで呻いた。
『ワシの槍術の基本は先を取る事、相手に先を取られたら、先を取り返す・・突きつめていけば、先の取り合い。』
『攻めながら、守る、守りながら攻める。攻めは、守りの布石、守りは、攻めの布石、攻防一体が我が極意・・・。今の虎之助殿なら解るのではないか。』と、水下を抑え、胤栄を見上げる虎之助へ語りかける。
胤栄の語っている事を、頭の中でかみ砕いて、必死に理解しようと思う虎之助であったが、頭の中には、数秒前の胤栄の動きが鮮烈に残っており、考えようとしても、頭が追い付かないという状態であった。
その日は、虎之助には胤栄の語る言葉の意味を理解する余裕が無かった。攻めても、攻めても、胤栄のカウンターのような返しに手も足も出なかったのである。
攻撃の修行が始まり、5日後、僅かに虎之助の意識に小さな変化が生まれた。
それは、細い糸を通す針の口のような、正に小さな糸口の様な小さな変化だった。
虎之助は無意識に、攻撃の練習時の胤栄の動きを、才蔵との防御の練習時で真似てみたのである。
才蔵の攻撃を避ける時に、動きを最小限にし、躱すというよりも、相手の攻撃を往なして相手の懐に入る事に重点を置いたのである。
初めて、その動きを試した時、避け切れず、才蔵のするどい攻撃を痛打された。
(ものすごく痛い・・・死にそうになるぐらい痛い。)
突いた才蔵も、虎之助の変化に気が付いたが、あえて何も言わず、修業を続けた。
虎之助の修業は、午前は才蔵と防御術を学び、午後は胤栄への打ち込みの練習という流れであった。
しかし、その刻から、虎之助の心の中で、練習の種類という概念は無くなったのである。
虎之助が概念を捨て、修業を初めてから数日が経過した日、才蔵の攻撃を紙一重で往なした。
すると胤栄と同じように虎之助は前進し、才蔵の懐に入り、入ったと思った瞬間、無意識に体が動き、才蔵の水下に攻撃を入れてしまった。
ドスッという鈍い音の後に、『グファッ、』と叫び声を上げて、水下を抱えて才蔵が翻筋斗を打つ。
『アッ・・・スミマセン・・つい。』
立ち上がった才蔵が、行き止まりが無い怒りをぶつけるように槍を剣道の竹刀の様に持ったが、あまりの痛さにとびかかる事が出来ず、又うずくまってしまった。
『お前、ふざけんなよ、攻めてくるなんて聞いてねぇぞ・・・。息が吸えなくなったぞ、一瞬!。』
『それじゃよ、それ、虎之助殿。』と二人の練習を見ていた胤栄が虎之助を褒める。
虎之助も、何か自分の中で理解したモノがあって嬉しかった。
理解できたのは、2カ月ひたすら、防御の練習を繰り返し、痛い思いを数えきれないぐらいした事が大きな基礎になっていた。
『もう、虎之助とは練習したくありません、師匠代わって下さい。あんな痛い思いを2度としたくない。』
『嫌じゃ、ワシもご免じゃ!!』
『お前の仕官の為じゃ、我慢せぇ~い。』
『ヒデェー逃げやがった。このナマグサ坊主め・・・。』
という二人の会話を聞きながら、誇らしげに槍を持ち直した虎之助だった。
『虎之助、お前、何ドヤ顔してるんだよ、ちっとも反省してねぇだろ、このヤロ~!ゼッティ次殺す・・クソ!!』
その日を境に、虎之助の槍術は又一段と、加速度的に上達していった。
『宜しくお願い致します。』と虎之助が木槍を構え、胤栄に渾身の一撃を放つ。
虎之助の巨体から放たれた豪槍は、風を切り裂く音を立て、胤栄の体の中心に向けて飛んでいく。
虎之助の一撃に対して、胤栄は自身の体を前進させ、虎之介が放った槍に握っていた槍を当てたと思うと、ほんの少し槍の軌道が逸れた。
そのずらされたスペースに胤栄が忍び込み、前進を続ける。
虎之助の槍に、胤栄が握っている槍を沿わせて、滑らすように懐に入っていく。
虎之助の槍のほぼ先端の位置にいた胤栄が、スルスルと前進し、気が付けば虎之助が握っている槍の柄の近くまで来ようとしている。
懐に入った胤栄は、槍を名人芸の様に持ち替え、左手で握っていた柄の部分で虎之助の水下に一撃を入れる。
『グォッ』と水下を打たれた虎之助は、予期していなかった痛みで呻いた。
『ワシの槍術の基本は先を取る事、相手に先を取られたら、先を取り返す・・突きつめていけば、先の取り合い。』
『攻めながら、守る、守りながら攻める。攻めは、守りの布石、守りは、攻めの布石、攻防一体が我が極意・・・。今の虎之助殿なら解るのではないか。』と、水下を抑え、胤栄を見上げる虎之助へ語りかける。
胤栄の語っている事を、頭の中でかみ砕いて、必死に理解しようと思う虎之助であったが、頭の中には、数秒前の胤栄の動きが鮮烈に残っており、考えようとしても、頭が追い付かないという状態であった。
その日は、虎之助には胤栄の語る言葉の意味を理解する余裕が無かった。攻めても、攻めても、胤栄のカウンターのような返しに手も足も出なかったのである。
攻撃の修行が始まり、5日後、僅かに虎之助の意識に小さな変化が生まれた。
それは、細い糸を通す針の口のような、正に小さな糸口の様な小さな変化だった。
虎之助は無意識に、攻撃の練習時の胤栄の動きを、才蔵との防御の練習時で真似てみたのである。
才蔵の攻撃を避ける時に、動きを最小限にし、躱すというよりも、相手の攻撃を往なして相手の懐に入る事に重点を置いたのである。
初めて、その動きを試した時、避け切れず、才蔵のするどい攻撃を痛打された。
(ものすごく痛い・・・死にそうになるぐらい痛い。)
突いた才蔵も、虎之助の変化に気が付いたが、あえて何も言わず、修業を続けた。
虎之助の修業は、午前は才蔵と防御術を学び、午後は胤栄への打ち込みの練習という流れであった。
しかし、その刻から、虎之助の心の中で、練習の種類という概念は無くなったのである。
虎之助が概念を捨て、修業を初めてから数日が経過した日、才蔵の攻撃を紙一重で往なした。
すると胤栄と同じように虎之助は前進し、才蔵の懐に入り、入ったと思った瞬間、無意識に体が動き、才蔵の水下に攻撃を入れてしまった。
ドスッという鈍い音の後に、『グファッ、』と叫び声を上げて、水下を抱えて才蔵が翻筋斗を打つ。
『アッ・・・スミマセン・・つい。』
立ち上がった才蔵が、行き止まりが無い怒りをぶつけるように槍を剣道の竹刀の様に持ったが、あまりの痛さにとびかかる事が出来ず、又うずくまってしまった。
『お前、ふざけんなよ、攻めてくるなんて聞いてねぇぞ・・・。息が吸えなくなったぞ、一瞬!。』
『それじゃよ、それ、虎之助殿。』と二人の練習を見ていた胤栄が虎之助を褒める。
虎之助も、何か自分の中で理解したモノがあって嬉しかった。
理解できたのは、2カ月ひたすら、防御の練習を繰り返し、痛い思いを数えきれないぐらいした事が大きな基礎になっていた。
『もう、虎之助とは練習したくありません、師匠代わって下さい。あんな痛い思いを2度としたくない。』
『嫌じゃ、ワシもご免じゃ!!』
『お前の仕官の為じゃ、我慢せぇ~い。』
『ヒデェー逃げやがった。このナマグサ坊主め・・・。』
という二人の会話を聞きながら、誇らしげに槍を持ち直した虎之助だった。
『虎之助、お前、何ドヤ顔してるんだよ、ちっとも反省してねぇだろ、このヤロ~!ゼッティ次殺す・・クソ!!』
その日を境に、虎之助の槍術は又一段と、加速度的に上達していった。
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