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第4章 御前試合
5.御前試合【1】(一番怖いもの)
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試合前に、対戦相手同士槍をあわせ、礼をして試合は始まる。
森長可も十文字槍では無く、通常の槍を持って試合場中央まで来たのを見て、才蔵は内心ホッとした。
それは至極当たり前の事なのだが、試合が始まるまで、相手が何をしてくるか分からないので、才蔵は注意して見ていたのである。
これで、致死率は大幅に落ちた、十文字槍を知り尽くしている才蔵ならではの、冷静な分析だった。
直ぐに槍を併せて、試合が始まると思っていたが、長可が虎之助に何かを言っている。
言われた内容は分からないが、虎之助の動きが何時もと微妙に違うように才蔵には感じられた。
どうした・・と思っている矢先、二人が槍を合わせた。
二人が槍を合わせると確認すると、直ぐに『はじめ~』と重臣筆頭の柴田勝家の大きな声での号令で御前試合が始まった。
先ずは、虎之助がその巨体を生かすかのように、槍を高い位置から振り落とす。
長可は、最初それを槍で受けようとしたが、虎之助の豪槍はそれを許さず、長可の体を50㎝程吹き飛ばした。
見ている者総て虎之助の怪力を印象付けた一撃であった。
(虎之助の奴、力任せに攻撃したな、相手の後手に回るよりは良いが、下手をすると相手の反撃にあい、今の一撃でやられていたぞ・・)と才蔵は自分の事の様にヒヤッとしたのである。
長可は、観戦者に余裕を見せる必要もあり、最初の一撃はあえて受け止める事を決めていた。
不用意に、先制攻撃をしてきた虎之助にカウンター攻撃を入れる事はできたが、ワザと受けたのである。
但し、長可が予想していた以上で、虎之助が撃ち落とした槍は、速くそして重かった為、受けきれず、弾かれて後ろに飛ばされたのである。
長可の槍を握っている腕も、軽く痺れている。驚くべき腕力であった。
(やるじゃねぇか、この青二才が、調子に乗るなよ・・・)と長可は、次は俺が攻撃してやると思い、槍を持ち直し、虎之助に再度近づいて行ったのである。
長可は、小兵だが彼の腕力も非常に強い。彼が人を槍で刺す時、人の身体がコンニャクの様に感じられるくらい簡単に突き抜ける。
彼の槍が人の骨が有無関係無く貫く様から無骨という呼び名がついたとされているが、そもそもこの男の腕力が常人離れしていたのである。
その長可が吹っ飛んだのである。長可を知っている観戦者は、初っ端から虎之助の腕力に度肝を抜かれた理由である。
長可は、今度は俺の番だという様に殺気を込めた一撃を虎之助に打ち込む、虎之助は其れを簡単に払いのける。
長可は、払いのけられても想定済みという様子で続けて3連突きをする、するつもりであったが、3連突きの初手を、虎之助に往なされて、自分の槍に沿って懐に入られそうになった。
長可の動物的な勘で、危機を察した長可は、槍が往なされる方向に前進したのである。二人は交錯し、互いにすれ違う形になり、クルリと方向転換し、再び向き合う。
(長可とかいうアイツ、やるな、普通、咄嗟にできんぞ、あんなこと。)と才蔵は長可の動きから、彼の非凡さを見抜いた。
向き合うと、今度は虎之助が、長可の胴へ槍を打ち込んだ。薙刀で薙ぎ払うかのように、鋭い一撃が長可に向かっていく。
受けた長可の槍が折れるのではないかというぐらいの音が聞こえたが、今度は吹っ飛ばされず、長可は踏みとどまったが、腕が痺れる程の痛み走る。(力任せにこの野郎、生意気な・・・ぶっ殺してやる。)
ウォウッと会場が一瞬湧く。
長可は、自分も攻撃を返そうと考えたが、虎之助が許さない。
基本を忘れたかのように、再び槍を高い位置から振り落とす虎之助の攻撃を、長可は受ける事は出来ず、躱すのがやっとであった。
観戦者からみると、試合は虎之助の一方的な優勢に見えていた。
(オカシイ、あれは何時もの虎之助ではない、怒りに飲みこまれているようだ。)と、普段の虎之助を知っている秀吉、秀長、才蔵は虎之助の異常に気がついた。
長可も、虎之助の殺気に触発されるかのように、試合である事を忘れ、既に相手と殺し合いをしている状態になっていた。
長可は、戦場で培った人殺しの殺法で、虎之助に襲いかかる。相手の急所を狙い、躱されても受けられても、執拗に追い続ける攻撃である。
その鋭く、執拗な攻撃を虎之助は半年間の修行で身につけた技で躱す、躱す、受けると、見てる者が感嘆のため息を漏らしながら試合が続いた。
長可の攻撃は、鋭く、直撃はしないが、虎之助の身体に少しづつ近づいていく、気がつくと、虎之助の腕、足、脇は、かすり傷を受け、出血をしている状態であった。
しかし、出血をすればするほど、手負いの猛獣の様に殺気を漲らせる虎之助だった。
その姿をみて秀吉は直感するモノがあった。
(長可め、虎之助を怒らしたな、あの試合前に虎之助に何を言ったか分からないが、其れが虎之助を凶暴なトラに変えてしまったんだ。)
(馬鹿な奴、温和な優しい虎之助を怒らせるなんて、アイツは知らんらしい、温和で優しい男を怒らせるのが一番怖いという事を・・・)と考えながら秀長から殴られた自分の顔を秀吉は摩ったのである。
勝負は、いつまで続くか分からない程、白熱した殺し合いの様相を呈していた。
森長可も十文字槍では無く、通常の槍を持って試合場中央まで来たのを見て、才蔵は内心ホッとした。
それは至極当たり前の事なのだが、試合が始まるまで、相手が何をしてくるか分からないので、才蔵は注意して見ていたのである。
これで、致死率は大幅に落ちた、十文字槍を知り尽くしている才蔵ならではの、冷静な分析だった。
直ぐに槍を併せて、試合が始まると思っていたが、長可が虎之助に何かを言っている。
言われた内容は分からないが、虎之助の動きが何時もと微妙に違うように才蔵には感じられた。
どうした・・と思っている矢先、二人が槍を合わせた。
二人が槍を合わせると確認すると、直ぐに『はじめ~』と重臣筆頭の柴田勝家の大きな声での号令で御前試合が始まった。
先ずは、虎之助がその巨体を生かすかのように、槍を高い位置から振り落とす。
長可は、最初それを槍で受けようとしたが、虎之助の豪槍はそれを許さず、長可の体を50㎝程吹き飛ばした。
見ている者総て虎之助の怪力を印象付けた一撃であった。
(虎之助の奴、力任せに攻撃したな、相手の後手に回るよりは良いが、下手をすると相手の反撃にあい、今の一撃でやられていたぞ・・)と才蔵は自分の事の様にヒヤッとしたのである。
長可は、観戦者に余裕を見せる必要もあり、最初の一撃はあえて受け止める事を決めていた。
不用意に、先制攻撃をしてきた虎之助にカウンター攻撃を入れる事はできたが、ワザと受けたのである。
但し、長可が予想していた以上で、虎之助が撃ち落とした槍は、速くそして重かった為、受けきれず、弾かれて後ろに飛ばされたのである。
長可の槍を握っている腕も、軽く痺れている。驚くべき腕力であった。
(やるじゃねぇか、この青二才が、調子に乗るなよ・・・)と長可は、次は俺が攻撃してやると思い、槍を持ち直し、虎之助に再度近づいて行ったのである。
長可は、小兵だが彼の腕力も非常に強い。彼が人を槍で刺す時、人の身体がコンニャクの様に感じられるくらい簡単に突き抜ける。
彼の槍が人の骨が有無関係無く貫く様から無骨という呼び名がついたとされているが、そもそもこの男の腕力が常人離れしていたのである。
その長可が吹っ飛んだのである。長可を知っている観戦者は、初っ端から虎之助の腕力に度肝を抜かれた理由である。
長可は、今度は俺の番だという様に殺気を込めた一撃を虎之助に打ち込む、虎之助は其れを簡単に払いのける。
長可は、払いのけられても想定済みという様子で続けて3連突きをする、するつもりであったが、3連突きの初手を、虎之助に往なされて、自分の槍に沿って懐に入られそうになった。
長可の動物的な勘で、危機を察した長可は、槍が往なされる方向に前進したのである。二人は交錯し、互いにすれ違う形になり、クルリと方向転換し、再び向き合う。
(長可とかいうアイツ、やるな、普通、咄嗟にできんぞ、あんなこと。)と才蔵は長可の動きから、彼の非凡さを見抜いた。
向き合うと、今度は虎之助が、長可の胴へ槍を打ち込んだ。薙刀で薙ぎ払うかのように、鋭い一撃が長可に向かっていく。
受けた長可の槍が折れるのではないかというぐらいの音が聞こえたが、今度は吹っ飛ばされず、長可は踏みとどまったが、腕が痺れる程の痛み走る。(力任せにこの野郎、生意気な・・・ぶっ殺してやる。)
ウォウッと会場が一瞬湧く。
長可は、自分も攻撃を返そうと考えたが、虎之助が許さない。
基本を忘れたかのように、再び槍を高い位置から振り落とす虎之助の攻撃を、長可は受ける事は出来ず、躱すのがやっとであった。
観戦者からみると、試合は虎之助の一方的な優勢に見えていた。
(オカシイ、あれは何時もの虎之助ではない、怒りに飲みこまれているようだ。)と、普段の虎之助を知っている秀吉、秀長、才蔵は虎之助の異常に気がついた。
長可も、虎之助の殺気に触発されるかのように、試合である事を忘れ、既に相手と殺し合いをしている状態になっていた。
長可は、戦場で培った人殺しの殺法で、虎之助に襲いかかる。相手の急所を狙い、躱されても受けられても、執拗に追い続ける攻撃である。
その鋭く、執拗な攻撃を虎之助は半年間の修行で身につけた技で躱す、躱す、受けると、見てる者が感嘆のため息を漏らしながら試合が続いた。
長可の攻撃は、鋭く、直撃はしないが、虎之助の身体に少しづつ近づいていく、気がつくと、虎之助の腕、足、脇は、かすり傷を受け、出血をしている状態であった。
しかし、出血をすればするほど、手負いの猛獣の様に殺気を漲らせる虎之助だった。
その姿をみて秀吉は直感するモノがあった。
(長可め、虎之助を怒らしたな、あの試合前に虎之助に何を言ったか分からないが、其れが虎之助を凶暴なトラに変えてしまったんだ。)
(馬鹿な奴、温和な優しい虎之助を怒らせるなんて、アイツは知らんらしい、温和で優しい男を怒らせるのが一番怖いという事を・・・)と考えながら秀長から殴られた自分の顔を秀吉は摩ったのである。
勝負は、いつまで続くか分からない程、白熱した殺し合いの様相を呈していた。
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