加藤虎之助(後の清正、15歳)、姉さん女房をもらいました!

野松 彦秋

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第4章 御前試合

6.御前試合【2】(助太刀と仁王立ち)

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二人の槍がぶつかる音が鳴り響く、観戦者は、唾を飲むのも忘れ、二人の戦いに釘付けになっていた。

『ガキッ』と突然鈍い音が聞こえたと思うと、長可の動きが止まった。

誰もが、最初何が起こったか分からない状況であった。

一瞬世界が止まったかの様な静寂が、訪れた様な中で、長可が自分の陣営に走り出していた。

それを鬼の様に追う虎之助。皆が言葉を失い、状況を全部理解したのは、折れた槍を投げ捨て、予備の槍として置いていた十文字槍を握った長可の姿を見た時だった。

逃げ惑い、やっと武器を手にした人間が、トラに立ち向かう様な場面を見て、観衆になった猛者たちは熱狂した。

虎之助の渾身の攻撃を何とか受け切った長可は、復讐の攻撃を開始する。長可の十文字槍は、容赦なく、虎之助を襲う。

避けても、避けても、躱したとおもっても、十字の刃先が虎之助をジワジワと切り刻んでいくようであったが、虎之助はまるで痛みを感じていないかのように、負けじと応戦する。

虎之助の最後の咆哮の様な鋭い一撃が、長可の頭を捉えたと思った瞬間、今度は虎之助の槍の刃がバキッと音を鳴らして折れたのである。

虎之助も、槍が折れた事を直ぐに気がつき、長可同様、自分の陣営に向けて走しる。

しかし、長可の陣営の方に攻め込み過ぎていた為、距離が遠い。試合場の真ん中に到達する頃には、後ろから長可が槍で串刺しにしようとした。

もう駄目だと、虎之助が目を瞑った瞬間、ビッシュと才蔵が長可の槍を予備の槍で受け虎之助を守ったのであった。

才蔵は、続け様に長可を攻撃し、長可の十文字槍を地面に叩き落とした。

次から次へと変わる、試合場の展開に観戦者は、言葉を失い、見守るしかなかった。

その中で二つの影が2人と信長の前に現れた。

秀吉と秀長である。秀吉は、試合場の砂に頭を擦りつけ、その後ろで秀長は、虎之助達を守る様に両手を広げて仁王立ちである。

顔は正に鬼の形相で、虎之助を守って信長を睨みつけているようだった。

『信長様、虎之助は初陣前の青二才でございまする、勝負は虎之助の負けでございます。御前試合は、これにて終わらせて頂きますよう平に平にお願い致します。』と秀吉は信長に寛大な措置をお願いするように泣いて頼んだのである。

気がつけば、虎之助は血だらけで倒れていた。

才蔵に槍を落とされた長可も、同じような状況であった。

信長が、秀吉の申し出を聞いて暫く黙っていると、森長可が大きな声で信長に訴えたのである。

『信長様、本日の御前試合は、私の負けでございます。青二才に、いいようにやられてしまい、頭に来て十文字槍を握ってしまった時点で私の負けでした。不甲斐ない自分をお許し下さい。』と服を脱ぎ、切腹をしようと準備を始める。

『このウツケ者が、御前試合で生死をかける者がどこにおる、よいよい、今日は良いモノを見せてもらった。』

『二人とも、大義であった、今日の試合の様に今後ともここにいる皆が敵と戦えば良し、皆の者達も大義であった。』

『ケガした二人を、早く介抱してやれ』と言葉を残し、信長と信忠は小姓と共に館に帰っていったのである。

信長が居なくなった後、腰が抜けたようにその場に座り込む秀長、気がつけば羽柴家の周りには、熱狂した観戦者達が集まっていた。

コイツはすげぇ奴だと、森長可も秀吉に虎之助の事を褒める言葉を残し、帰っていった。

こうして、御前試合は終了したのである。虎之助が全身全霊で戦い、運を味方にして、生き延びたのであった。
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