31 / 34
第4章 御前試合
6.御前試合【2】(助太刀と仁王立ち)
しおりを挟む
二人の槍がぶつかる音が鳴り響く、観戦者は、唾を飲むのも忘れ、二人の戦いに釘付けになっていた。
『ガキッ』と突然鈍い音が聞こえたと思うと、長可の動きが止まった。
誰もが、最初何が起こったか分からない状況であった。
一瞬世界が止まったかの様な静寂が、訪れた様な中で、長可が自分の陣営に走り出していた。
それを鬼の様に追う虎之助。皆が言葉を失い、状況を全部理解したのは、折れた槍を投げ捨て、予備の槍として置いていた十文字槍を握った長可の姿を見た時だった。
逃げ惑い、やっと武器を手にした人間が、トラに立ち向かう様な場面を見て、観衆になった猛者たちは熱狂した。
虎之助の渾身の攻撃を何とか受け切った長可は、復讐の攻撃を開始する。長可の十文字槍は、容赦なく、虎之助を襲う。
避けても、避けても、躱したとおもっても、十字の刃先が虎之助をジワジワと切り刻んでいくようであったが、虎之助はまるで痛みを感じていないかのように、負けじと応戦する。
虎之助の最後の咆哮の様な鋭い一撃が、長可の頭を捉えたと思った瞬間、今度は虎之助の槍の刃がバキッと音を鳴らして折れたのである。
虎之助も、槍が折れた事を直ぐに気がつき、長可同様、自分の陣営に向けて走しる。
しかし、長可の陣営の方に攻め込み過ぎていた為、距離が遠い。試合場の真ん中に到達する頃には、後ろから長可が槍で串刺しにしようとした。
もう駄目だと、虎之助が目を瞑った瞬間、ビッシュと才蔵が長可の槍を予備の槍で受け虎之助を守ったのであった。
才蔵は、続け様に長可を攻撃し、長可の十文字槍を地面に叩き落とした。
次から次へと変わる、試合場の展開に観戦者は、言葉を失い、見守るしかなかった。
その中で二つの影が2人と信長の前に現れた。
秀吉と秀長である。秀吉は、試合場の砂に頭を擦りつけ、その後ろで秀長は、虎之助達を守る様に両手を広げて仁王立ちである。
顔は正に鬼の形相で、虎之助を守って信長を睨みつけているようだった。
『信長様、虎之助は初陣前の青二才でございまする、勝負は虎之助の負けでございます。御前試合は、これにて終わらせて頂きますよう平に平にお願い致します。』と秀吉は信長に寛大な措置をお願いするように泣いて頼んだのである。
気がつけば、虎之助は血だらけで倒れていた。
才蔵に槍を落とされた長可も、同じような状況であった。
信長が、秀吉の申し出を聞いて暫く黙っていると、森長可が大きな声で信長に訴えたのである。
『信長様、本日の御前試合は、私の負けでございます。青二才に、いいようにやられてしまい、頭に来て十文字槍を握ってしまった時点で私の負けでした。不甲斐ない自分をお許し下さい。』と服を脱ぎ、切腹をしようと準備を始める。
『このウツケ者が、御前試合で生死をかける者がどこにおる、よいよい、今日は良いモノを見せてもらった。』
『二人とも、大義であった、今日の試合の様に今後ともここにいる皆が敵と戦えば良し、皆の者達も大義であった。』
『ケガした二人を、早く介抱してやれ』と言葉を残し、信長と信忠は小姓と共に館に帰っていったのである。
信長が居なくなった後、腰が抜けたようにその場に座り込む秀長、気がつけば羽柴家の周りには、熱狂した観戦者達が集まっていた。
コイツはすげぇ奴だと、森長可も秀吉に虎之助の事を褒める言葉を残し、帰っていった。
こうして、御前試合は終了したのである。虎之助が全身全霊で戦い、運を味方にして、生き延びたのであった。
『ガキッ』と突然鈍い音が聞こえたと思うと、長可の動きが止まった。
誰もが、最初何が起こったか分からない状況であった。
一瞬世界が止まったかの様な静寂が、訪れた様な中で、長可が自分の陣営に走り出していた。
それを鬼の様に追う虎之助。皆が言葉を失い、状況を全部理解したのは、折れた槍を投げ捨て、予備の槍として置いていた十文字槍を握った長可の姿を見た時だった。
逃げ惑い、やっと武器を手にした人間が、トラに立ち向かう様な場面を見て、観衆になった猛者たちは熱狂した。
虎之助の渾身の攻撃を何とか受け切った長可は、復讐の攻撃を開始する。長可の十文字槍は、容赦なく、虎之助を襲う。
避けても、避けても、躱したとおもっても、十字の刃先が虎之助をジワジワと切り刻んでいくようであったが、虎之助はまるで痛みを感じていないかのように、負けじと応戦する。
虎之助の最後の咆哮の様な鋭い一撃が、長可の頭を捉えたと思った瞬間、今度は虎之助の槍の刃がバキッと音を鳴らして折れたのである。
虎之助も、槍が折れた事を直ぐに気がつき、長可同様、自分の陣営に向けて走しる。
しかし、長可の陣営の方に攻め込み過ぎていた為、距離が遠い。試合場の真ん中に到達する頃には、後ろから長可が槍で串刺しにしようとした。
もう駄目だと、虎之助が目を瞑った瞬間、ビッシュと才蔵が長可の槍を予備の槍で受け虎之助を守ったのであった。
才蔵は、続け様に長可を攻撃し、長可の十文字槍を地面に叩き落とした。
次から次へと変わる、試合場の展開に観戦者は、言葉を失い、見守るしかなかった。
その中で二つの影が2人と信長の前に現れた。
秀吉と秀長である。秀吉は、試合場の砂に頭を擦りつけ、その後ろで秀長は、虎之助達を守る様に両手を広げて仁王立ちである。
顔は正に鬼の形相で、虎之助を守って信長を睨みつけているようだった。
『信長様、虎之助は初陣前の青二才でございまする、勝負は虎之助の負けでございます。御前試合は、これにて終わらせて頂きますよう平に平にお願い致します。』と秀吉は信長に寛大な措置をお願いするように泣いて頼んだのである。
気がつけば、虎之助は血だらけで倒れていた。
才蔵に槍を落とされた長可も、同じような状況であった。
信長が、秀吉の申し出を聞いて暫く黙っていると、森長可が大きな声で信長に訴えたのである。
『信長様、本日の御前試合は、私の負けでございます。青二才に、いいようにやられてしまい、頭に来て十文字槍を握ってしまった時点で私の負けでした。不甲斐ない自分をお許し下さい。』と服を脱ぎ、切腹をしようと準備を始める。
『このウツケ者が、御前試合で生死をかける者がどこにおる、よいよい、今日は良いモノを見せてもらった。』
『二人とも、大義であった、今日の試合の様に今後ともここにいる皆が敵と戦えば良し、皆の者達も大義であった。』
『ケガした二人を、早く介抱してやれ』と言葉を残し、信長と信忠は小姓と共に館に帰っていったのである。
信長が居なくなった後、腰が抜けたようにその場に座り込む秀長、気がつけば羽柴家の周りには、熱狂した観戦者達が集まっていた。
コイツはすげぇ奴だと、森長可も秀吉に虎之助の事を褒める言葉を残し、帰っていった。
こうして、御前試合は終了したのである。虎之助が全身全霊で戦い、運を味方にして、生き延びたのであった。
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天竜川で逢いましょう 〜日本史教師が石田三成とか無理なので平和な世界を目指します〜
岩 大志
歴史・時代
ごくありふれた高校教師津久見裕太は、ひょんなことから頭を打ち、気を失う。
けたたましい轟音に気付き目を覚ますと多数の軍旗。
髭もじゃの男に「いよいよですな。」と、言われ混乱する津久見。
戦国時代の大きな分かれ道のド真ん中に転生した津久見はどうするのか!!???
そもそも現代人が生首とか無理なので、平和な世の中を目指そうと思います。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末
松風勇水(松 勇)
歴史・時代
旧題:剣客居酒屋 草間の陰
第9回歴史・時代小説大賞「読めばお腹がすく江戸グルメ賞」受賞作。
本作は『剣客居酒屋 草間の陰』から『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』と改題いたしました。
2025年11月28書籍刊行。
なお、レンタル部分は修正した書籍と同様のものとなっておりますが、一部の描写が割愛されたため、後続の話とは繋がりが悪くなっております。ご了承ください。
酒と肴と剣と闇
江戸情緒を添えて
江戸は本所にある居酒屋『草間』。
美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。
自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。
多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。
その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。
店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。
【読者賞】江戸の飯屋『やわらぎ亭』〜元武家娘が一膳でほぐす人と心〜
旅する書斎(☆ほしい)
歴史・時代
【第11回歴史・時代小説大賞 読者賞(読者投票1位)受賞】
文化文政の江戸・深川。
人知れず佇む一軒の飯屋――『やわらぎ亭』。
暖簾を掲げるのは、元武家の娘・おし乃。
家も家族も失い、父の形見の包丁一つで町に飛び込んだ彼女は、
「旨い飯で人の心をほどく」を信条に、今日も竈に火を入れる。
常連は、職人、火消し、子どもたち、そして──町奉行・遠山金四郎!?
変装してまで通い詰めるその理由は、一膳に込められた想いと味。
鯛茶漬け、芋がらの煮物、あんこう鍋……
その料理の奥に、江戸の暮らしと誇りが宿る。
涙も笑いも、湯気とともに立ち上る。
これは、舌と心を温める、江戸人情グルメ劇。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる