転生したってリセット癖は治らない

佐倉 奏

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#13 クロード、苦労する

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   我が主の想い人は…破天荒だ。
レベル1で魔物の討伐依頼を受けたり、フラフラと森へ入った挙げ句案の定迷って、ションボリと座り込んだり。
   何故か魔王に気に入られていたり。さっきも何やら魔王にされたらしく、仕事しろと言われたが無理だ。相手は魔王だぞ?
   魔王を相手に出来るのはこの世界でレイト様位しか居ない。自分が魔王に斬りかかった所で確実に死ぬのは目に見えている。

   容姿はレイト様と並んでも遜色ない位の美しさだが…何というか中身が残念すぎる。
   もっと落ち着いた令嬢をお勧めしたいのだが、聞き入れては貰えないだろう。

   今も何故こうなった…と頭を抱えている私にジェイクが冷やかな目線を投げ付けている。

「クロード…」

「それ以上言うな…」

   原因である目の前の女はニコニコとこちらを見ている。呑気なものだ。一体誰のせいでこうなってると思っているんだ。

「と、言う訳で今回ヘルハウンド討伐の為、一時的に貴方達2人を雇いたいと思います。勿論レイト様の許可は頂いてます。え~と、お給金に関してですが中銀貨5枚、後は無事コンロが完成した際にはバーベキューにお誘いしますね」

「バカも休み休み言え!ヘルハウンド討伐で中銀貨5枚だと!?もっと世の中の常識を勉強してから物を言うんだな!」

   ジェイクが声を荒げるのも無理はない。ヘルハウンド討伐報酬は小金貨5枚が妥当だ。ルナが提示したのは1/10の価格だ。

「ああ、その件なのですが貴方達を雇いたいと言った時にレイト様は給金はいらないとおっしゃっていたんですよ。私の護衛としてつけるのだからと。
   でもそれでは悪いのでお気持ちだけでも受け取って頂きたく、この金額にしたのです」

   案外したたかな女だなとクロードは感心した。ただの向こう見ずな女ではないようだ。

「そのバーベキューにはレイト様も呼ばれていますか?」

   自分達だけバーベキューに誘われてたとしたら、バレたら後が恐ろしい。

「あ、はい。勿論。元々貴方達のお給金を支払っているのはレイト様ですからね。そのお礼を兼ねてます。貴方達レベルの方を雇うとなると…今の私の手持ちでは到底無理ですから」

   クロードはルナの台詞にレイトがバーベキューで懐柔されたなと察する。

「そんな訳で明日出発しますので各自用意をお願いしますね~」

   のほほんとした口調にジェイクの苛立ちは最高潮に達しようとしているのを、クロードが何とか宥めジェイクを引摺りその場を後にした。

「何なんだ!あの女は!!」

「レイト様の大切なお方だ。あまりそのような口をきくと問題になるから控えろ」

   チッと舌打ちをするジェイク。

   ジェイクは腕も立つし、レイト様への忠誠も申し分ない。が、いかんせん短気すぎる。クロードは明日の事を考えると頭が痛くなるのだった。

   翌日、天候も良く三人はサース火山へと向かう。
普段行っている森と正反対の位置にあるその火山の標高は低めだ。

「ヘルハウンドは頂上付近に居ると聞きました。私は戦闘経験が少ないので今日は色々な魔物を倒しつつ三人の連携を練習、山の中腹辺りで泊まって朝になったら頂上を目指すという感じで考えています。何か意見はありますか?」

「いや、それで大丈夫だ」

   クロードはそう答え、ジェイクは   ふん、と顔を逸らす。

「では、よろしくお願いします」

   ジェイクの態度を気にする訳でもなくルナは歩いていく。勿論気配察知は怠らず常に周囲を警戒している。

「…前方に少し大きめの気配が3つ。私は見た事のない魔物です」

「ふむ…ワーウルフですね。」

「クロードさん魔物の種類まで分かるんですか!?」

「一度遭遇すれば貴女にも分かるようになると思いますよ」

「そんなもんなんですか」

   コッソリと背後に回って見れば確かに狼っぽい魔物が三匹。

「おい。この程度の魔物一人でやれないようじゃ冒険者になんてなれねぇ。一人一匹ノルマだ」

   ジェイクはそう言うとザッとワーウルフの前に飛び出し、そのまま剣で真っ二つに切り裂いた。
   クロードも、やれやれといった感じではあるがジェイクの考えには賛同しているのか手早く2匹目のワーウルフを退治する。

「さぁ、後は貴女の番ですよ」

   クロードに促され、ルナはワーウルフの前に立つ。

   試してみたい事があるんだよね。風魔法で空を飛べるなら移動速度を早くする事も出来るんじゃない?
   ルナはそう考えると自らの体が速くなるイメージを作り出す。

「おい!何ボーッとしてんだ!!」

   ジェイクの言葉にハッとし前を見るとワーウルフの牙がルナの顔面直前まで迫っている。
   咄嗟に横へ移動するルナ。隠密での足の速さに風魔法の速さが加わって、かなりのスピードで移動した。

「出来た…」

「な…んだあの速さは…」

   魔法が成功してホッとするルナ。一方クロードとジェイクはルナの速さに眼を見開いていた。

   さて、避ける事は出来た。あとは攻撃なんだけど、多分素早いから逃げられないよう囲うようにしたいな。
   火の壁で囲う?う~ん、ジャンプして上から出られそうだな。
   素材も取りたいしあまり原型を留めない状態にするのはダメだな。

   ああ、そうか。窒息死させよう。
ルナはワーウルフの頭を水で出来た球体で被うイメージをする。
   するとイメージ通りワーウルフを窒息死させる事が出来た。

「…エグッ!!」

   クロードは思わず顔を顰める。ジェイクに至っては意味が分からないといった風で口をパクパクさせた。

「お前…意外と残虐だな…」

「だって素材が欲しかったから…」

   ジェイクの言葉にルナは頬を膨らませた。


   早朝から登山を開始して現在は少しだけ日が西へ傾いた所だ。体感的には午後1時位か。
   ワーウルフ以外にもゴブリン等、ルナが初めて対峙する魔物も沢山居た。クロードとジェイクが居てくれて良かった…と心から思うルナ。
   彼等の指示は的確で、対魔物への知識も豊富だ。
彼等から弱点等を聞いて自分で倒すプロセスを組み立てる。

   しかしどうしても苦手な事がある。それは人型の魔物だ。近寄るのも恐ろしくて、と言うか気持ち悪くて見つけ次第消し炭にしてしまっている。
   戦略も何もあったものではない。魔石は残るようにしているが、敵が強くなってきた時にこの戦法が通用するとは思えない。要課題だ。

「ここら辺が拓けていて広いので今日はここで休みましょう」

「もう休むのですか?」

「はい。クロードさん、先程狩った魔物の素材とかを剥ぎ取りたいので教えてもらえますか?」

「ああ、その時間を加味して早めに休みにしたんですね」

「ええ。テントも張らないといけないですし」

「俺は物足りないから少し魔物を狩ってくる」

「ジェイク、逃げたな…」

   ジェイクはそう言うと素早くその場を去った。
残されたルナとクロードは倒した多くの魔物の剥ぎ取りにかなりの時間を費やしたのだった。

   町で買い足したジャガイモ、人参にハーブの練り込まれたウインナー。それらを水と共にコッヘルに投入。コッヘルは武器屋レヴィンの所で更に大きいのを購入していた。これなら4人分までは対応出来る。
   そう考えてルナは、ふ…と笑う。あれだけ逃げ癖、人間関係をリセットしまくっていた自分がのだから。

「でも…多分そのうちリセットするんだろうな」

「何か言ったか?」

「いえ。ひとり言です」

   ワーウルフの肉は食べられるとの事で塩コショウを強めに振る。魔物の肉は下味を濃くしないと獣臭さが出てしまいそうなイメージだ。

   小麦粉に水と少しの塩を入れて良くまぜる。気持ちゆるめに溶いた小麦粉をお玉で掬い鉄板で焼く。
   早くコンロ作って貰わないとなぁ。石集めるのも大変だし。

   そんな事を考えながらキャベツを刻む。焼いている小麦粉で出来た生地の隣に下味をつけたワーウルフの肉を並べて焼いていく。
   コッヘルの中の野菜に火が通ったら食品雑貨屋で購入した液体を投入。そこにバジルを少々。この液体は味見をしたらブイヨンっぽかったので迷わず購入した。
   これでポトフもどき?の出来上り。すっかり日も落ち丁度ジェイクも戻ってきたので、夕食にする。


「この生地にキャベツとお肉を乗せたら、このドレッシングを掛けてクルッと巻いて食べて下さい」

   ルナはポトフをクロードとジェイクに渡しながら、なんちゃってトルティーヤの食べ方を説明する。
   ドレッシングはブイヨンと同じ店で購入した、ちょっとピリ辛なドレッシングだ。

   クロードはポトフを、ジェイクはトルティーヤを一口食べる。

「「美味い…」」

   二人同時に声を出しルナは思わず笑う。

「良かったです。おかわりは沢山あるので、どんどん食べて下さいね」

   そう言ってルナも食事へとありついた。



「クロードさん、ここら辺に温泉とかってありますかね?」

「いや、サース火山には温泉は無いな」

「そうですか…」

   火山なら温泉があってもおかしくないんだけどなぁとルナはガックリと肩を落とす。

「何だ?体を洗いたいのか?それならクリーンすればいいだろ?」

ジェイクの言葉にルナは首を傾げる。

「クリーン?」

「体や服についた汚れを綺麗にする魔法だ」

「そんな便利な魔法あったんですね!!」

   一通りクリーンの説明を受けてルナは早速試してみる。成る程、汗も汚れも綺麗サッパリと落ちた。
   それでも温泉に浸かりたかったと思うのは元日本人だからだろうか。

   そんなこんなで何とか初日を乗り切ったルナは翌日のヘルハウンド戦に向けて鋭気を養う為に早めに寝具へと身を包むのだった。

ルナ(神崎瑠菜 守秘により改竄されています)  
 18歳   女性   レベル9

HP   800/800
MP   900/900        (1000000/1000000)守秘により改竄されています
 
  取得魔法

  火属性   守秘により改竄されています
  風属性   守秘により改竄されています
  水属性   守秘により改竄されています
  土属性   守秘により改竄されています
  聖属性   守秘により改竄されています
  闇属性   守秘により改竄されています
  空間属性 守秘により改竄されています

      ※各属性魔法はレベルアップにより***へと統合されました(守秘に本人以外には見えません)
取得スキル   隠密/中級


 
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