LIEF

ミナト

文字の大きさ
5 / 15

5話.すいません式には出ないでください

しおりを挟む
「すいませんが式には出ないで
 くださいませんか。」

彼女は私にそう言った。

この時、スマホ越しだが
弟の恋人凛子の声を初めて聞いた。
凛子は弟の勤める商社の後輩で、先輩である
弟が凛子の教育係りになったことが
きっかけとなり付き合い始めて
結婚へと話しが進んでいた所だった。

そして、いま凛子からの電話が突然
かかってきたのだ。

彼女の言い分は、
自分の家族含め親類も名の知られた
大学出身者ばかり。

しかも、ほとんどが医師、弁護士、会社重役が
並んでいる。

彼女の父も大手出版社の重役だと言う。

「聞けば、
姉であるあなたは中卒で
家に引きこもっているなんて
とても私の家と釣り合わない。
だから、式には出てほしくない」

と言う。

まぁ、好き勝手言ってくれる。
私は返事をせずに曖昧に電話を切った。

確かに中卒なのだ。
高校は理不尽なイジメに遭い辞めた。
さらにそんな私を心配してくれた両親が
交通事故で急死した。

必然的に私は重度の鬱に苦しんだ。
だから、引きこもった。

それを救ってくれたのが弟だった。
私に寄り添うように暮らしてくれた。
そのお陰で在宅ではあるが
パソコンとネットで働けるようになった。

弟には感謝の気持ちでいっぱいだ。
だから、弟が結婚して幸せになるのなら
邪魔はしたくない。

けれど、私が式に出ないことを
黙っていることは難しい。

だから、仕方なく話をした。

できるだけ淡々と事実だけを
誇張などせずに説明した。

弟は私の話を黙って聞いて、
やがて口を開いた。

「姉さん、ごめん。
 いい子だと思っていたんだ。
 まだまだ人を見る力ないな。」
と私に謝罪してくれた。

結局の所、話は破談となった。
ただ、相手の親は多方面に顔が効くらしい。

私は弟に何か危害がないかと
心配である手を打った。

数日後、自宅のチャイムが鳴った。
「やっぱり来たね。」と弟が笑う。

相手は凛子の父親だ。
用件はシンプルだった。

1つは娘が私にとった態度への謝罪。
もう一つは契約破棄の撤回を
願うことだった。

私は、

実は在宅仕事で、ライトノベル作家として
出版社と契約し原稿を預けている。
書くことが好きで小説投稿サイトで作品を出していた。
それが人気を経て、めぐりめぐって
今では出版社の救世主と言われるまでになった。

そして凛子の父親はその出版社で働いている。
私は出版社に突然に契約打ち切りを言い渡した。

理由は
元彼女の父親が勤めるところへは
原稿を出せないと言った。それが社長の耳に入り、
元彼女の父親を呼び出すに至った。

社長は父親に私との契約が継続できないようであれば
君の立場は保てないと言われ慌てて
私たちの家を訪れたのだ。

けれど、娘も娘なら...と言うやつで
父親はやはり中卒である私に有名大学を出た自分が
頭を下げないといけないことが不満気のようで、
それが態度から現れていた。

だから、私は言った。
「あなたは中卒の私に頭を下げることができない。
 私はそんなあなたのような人を受け入れられない。
 だからそんな人がいる出版社には不信感しかない。
 なので、今後、そちらの出版社と
契約することはないでしょう。」

そうはっきり意思を示すと、
何か言いた気に睨んでくる。

弟が力づくで外へと追いやってくれたので
話はそこで終わった。後日、あの元彼女の父親は
役職を解かれ、地方へと移動させられた。
そうなってみて、初めて私の影響力を知り、
慌てて何度もスマホに連絡をしてきたが、
もちろん着信拒否をしている。

弟は早くに相手の素性が知れて良かったといい、
今後はより人を見て恋愛するよと笑っていた。

私は...このまま1人だろうな。

自分が恋愛できるのは
自身の作品の中だけかな。
一度も恋愛経験のない私が
恋愛小説を書いているなんて、
実に、苦笑するしかない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...