【毎日連載】古魔道具屋『レリックハート』の女房と猫

丁銀 導

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010 青空古魔道具市① 【ジュナイ】

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 今日は朝から荷馬車に乗せられ、
 とある神殿の青空古魔道具市に行った。

 こういったイベントは大体週末、シナノワ内の神殿・公園・商業施設…
 とにかくいたるところで順繰りに催され、どこもそれなりに賑わうらしい。
 エイデンさんと俺は当然客としてではなく、出店する側としての参加だ。

「大半はひやかしだから、無理して売ろうとしなくていい。適当にやってくれ」
「分かった。…しかし大変だね、付き合いで参加ってのも」
「そうだな…だが気分転換になるし、同業者に顔を売っておいて損は無いさ」

 こうした古魔道具市は店を構えない業者が、古物市場(交換会とも言う)や
 地方から仕入れた物を売り捌く場としては都合がいいが、
 自分の店を構えているエイデンさんのような業者には、特に旨味はない。
 それでもやはり同業者同士の付き合いで、参加しない訳にも行かないらしい。
 エイデンさんは古魔道具屋を開業して七年目。
 完全な縦社会である古物業者内ではそこそこ中堅にあたるらしい。
 前時代の化石のような先輩方にもそれなりに気に入られているのか、
 その日宛がわれた場所は、ちょうど木陰の連なった過ごしやすいところだった。

「では、この図どおりに小物を並べてくれ。俺は挨拶回りに行って来る」

 風属性の魔石を埋め込んだ時代小箪笥やアダマン鉄製の黒い扇風機など、
 ちょっとした大物を並べ終えたエイデンさんは、
 そう言い残すとどこかに行ってしまった。
 
 とりあえず俺は言われたとおりに木箱から小物を取り出して、
 ひとつひとつの状態と値札を確認し、シートの上に並べた。
 古道具の品揃えはいつも店にあるものとはちょっと違うが、
 昨日エイデンさんからきちんと説明してもらったし、「念のために」と
 細かい情報を書き留めたメモ帳も預かったから、
 客に何か聞かれてもまぁ何とかなるだろう。金勘定も得意だしな。

 開場は十時とあるが、九時半を回った今でも、すでに客がちらほらと入り始めている。
 エイデンさんの言ったとおり大抵はひやかしだが、黙って見ているよりも
 話し掛けた方が暇つぶしになる。お客様第一号は絵皿に興味津々のご婦人だ。

「それ可愛いでしょ?30年前の絵皿。正月なんかに使われてたんだって」
「そうなんだ~。もうちょっとまからない?」
「う~ん…もう一品買ってくれたら銅貨2枚分引くけど、どう?」
「じゃあこれと、この二枚ちょうだい」
「はいどうも~!」

 客が選んだ品を雑紙で包んで、麻糸でざっくり編んだ使い捨ての手提げに入れる。
 儲けを気にしなくていいとの事なんで、値引きも自由に任されているから気楽なもんだ。
 まぁ一応これでも店員としての責任があるから、投売りみたいな真似はしないが。
 得意の営業スマイルを振り撒いて、たまたま客が見ていた古道具の説明を適当にしてやると、
 安物ばかりだが気持ちよくサクサクと売れた。…こりゃ結構楽しいな?
 気をよくして次々と接客していたら、エイデンさんが帰って来た。

「すごいな…大繁盛じゃないか」
「そお?俺才能あるのかも」
「勿論だ。人だかりの出来ている店など、市の中でここだけだったぞ」

 素直な賛辞に、俺はちょっとだけ得意になった。
 客は善良な市民で、しかも古道具に興味を持つような普通よりちょっと賢い人種ばかり。
 サツやヤクザを相手にしてきた俺からすりゃ、相手をするのは寝ているように簡単だ。
「ジュナイ、すまんがそれを取ってくれないか」

「これ?大日傘?」
「ああ、それだ」

 エイデンさんは大日傘を受け取ると、またどこかへ出掛けて行った。
 露天だから、当日宛がわれる場所によってはカンカン照りの日差しに晒される事もある。
 だから念のためいつも用意しているのだとエイデンさんは言ったが、
 木陰に配置された今日は特に日傘の出番は無かった。
 それを何に使うんだろう。

 気にはなったが、客が来たので接客に専念した。
 さあ仕事仕事!

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