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053 ぼくのかぞく【リアム】
しおりを挟むぼくは『りあむ』といいます。しょうがくいちねんせいです。
ほんとうの名前は『りあもるど』ですが、おかあさんはそうよんでいました。
えいでんさんとじゅないさんにも、おなじく『りあむ』とよばれています。
こちらのほうが、よびやすいのだそうです。
ぼくも、こちらのなまえのほうがきにいっています。
このはるから『しょうがっこう』にかようことになり、
ぼくはえいでんさんとじゅないさんのおうちから、
がっこうにかよっています。
『こんらっどくん』というしんゆうもでき、まいにちがとてもたのしいです。
えいでんさんとじゅないさんはおとなですが、おさけをひどくのまないし、
なぐったり、どなったりしない、やさしいおとなです。
えいでんさんは、『れりっくはーと』という
ふるまどうぐやさんをしています。
どこかのおうちで「いらない」といわれた、ふるくてこわれたまどうぐも、
えいでんさんがなおしてきれいにしておみせにならべると、
あたらしいもちぬしにかわれていきます。
すごいなぁとおもいます。
ぼくもときどきおてつだいをします。
ふるぼけたまどうぐがぴかぴかになるのは、とてもたのしいです。
じゅないさんは、かいしゃではたらいています。
よくわかりませんが
『ませきしょうしゃのえいぎょう』のおしごとだそうです。
あさはぼくといっしょにいえをでて、よるかえってきます。
まいにち、おいしいごはんをつくってくれます。
おふろにはいったあと、かならずえほんをよんでくれます。
さいごまできいていたいのですが、
ぼくはいつも、とちゅうでねてしまいます。
えいでんさんとじゅないさんがおしごとでいないときは、
りゅうさんとおるすばんをします。
りゅうさんは、くろくてながいけの、きれいなねこです。
そして、とてもかしこいのです。
よく、りゅうさんはませきばんをつかって、えいがをみせてくれます。
こどものぼくにはむつかしいところもありますが、
しらないせかいのことをしるのは、とてもおもしろいです。
『れりっくはーと』にくるまえ、
ぼくはおとうさんとおかあさんとくらしていました。
おかあさんはずっとまえににゅういんして、それきりかえってきません。
おとうさんはずっといえでおさけをのんでいました。
おさけがなくなるとぼくをたくさんぶつのできらいです。
いつも、おうちにかえりたくありませんでした。
『りあもるど、おまえは、ははおやとおなじ『へんじん』だ』
そういって、おとうさんはぼくをぶったり、けったり、
たくさんのいたいことをしました。
おかあさんのことは、あまりおぼえていませんが、
いつもにこにこしていたとおもいます。
『かんごふ』というおしごとで、ほんがすきで、
ぼくによみかきをおしえてくれました。
そしてやっぱりおとうさんに、まいにちたくさんぶたれていました。
だから、あたまがへんになってしまったのだとおもいます。
…『へんじん』とは、なんでしょうか。
おかあさんのようなひとがそうならば、
ぼくも『へんじん』になりたいと、いつしかおもうようになりました。
どうしようもないおとうさんですが、
ぼくが『おてつだい』をするときだけは、ほめてくれました。
『おてつだい』というのは、おかあさんがのこしていったほんを、
おとうさんのおともだちにわたすことです。
おとうさんのおともだちは、ほんをうけとるとおかねをくれました。
それをおとうさんにわたすときだけ
「えらいぞ、りあもるど」とにこにこほめてくれました。
とくにうれしくありませんでしたが、
なぐられるよりましなので、ぼくもわらいました。
でも、ほんとうは、おかあさんのほんが
『おてつだい』のたびにへるのが、いやでした。
そしておてつだいはほぼまいにちで、ぼくはくたくたでした。
なぜならおとなのほんは、えほんよりもおもくておおきいので、
はこぶのがたいへんなのです。
ごはんは、ゆうがたにかたいぱんをひとつだけ
たべてよいときまっていました。
いつもおなかがぺこぺこなのに、ちからしごとはつらいです。
そんなまいにちにも、すこしはなぐさめがありました。
こうえんで、きれいなねこさんとあそぶことです。
そのねこさんが、れりっくはーとのりゅうさんなのです。
りゅうさんはぴかぴかにきれいで、こんなにうつくしいいきものが
いるのかと、こころからかんどうしたものです。
ぼくなりにれいをつくすと、りゅうさんはそのきれいなけがわを
なでさせてくれました。
きたならしいぼくのそばになど、ちかよりたくないでしょうに…。
それから『おてつだい』のまえは、こうえんにいって
りゅうさんとあそぶようになりました。
あるひ、こうえんのべんちでりゅうさんをまっていると、
みたことのないかっこいいおとながあらわれました。
しかしぼくにとって、おとなはこわいそんざいでしかないのです。
あわててにげようとしたのに、ほんがおもくて、よろけてころんでしまいました。
いけない。ほんをわたしておかねをもらわないと、おとうさんになぐられる。
じめんにおちたほんにてをのばすと、さきにひろわれました。
「へえ、いいほんもってるんだな」
ほんをひろってくれた、そのかっこいいおとなが、
じゅないさんでした。
そのときのぼくは、おとなはみんなぶつものとおもっていましたので、
こわくなってにげようとしましたが
「ひざ、すりむいてるぞ」といわれるや、
いろいろなことをきかれましたが、きょうふのあまり、よくおぼえていません。
やがてぼくは、こむぎこのふくろのようにかつがれて
『れりっくはーと』につれていかれました。
こわくてあたまがおかしくなりそうでしたが、さわぐげんきもなく。
ただ、りゅうさんがそのおとなについてくるので、
だいじょうぶだろうとしんじました。
『れりっくはーと』には、やさしいめをした、
おおきなおとこのひとがいました。
えいでんさんです。
えいでんさんが、ていねいにぼくのひざのてあてをしてくれました。
おくすりがしみていたかったけれど、
おとうさんになぐられるほどではありません。
がまんすると、えいでんさんはやさしくあたまをなでてくれました。
そのご、ふかしたおいもをたくさんいただきました。
ほくほくであまいおいもは、ほっぺたがとろけてしまうのでは
というほど、おいしかったのです。
がつがつとたべるぼくをみて、
じゅないさんとえいでんさんは、にこにこしていました。
なんにちかぶりでおなかいっぱいになったぼくは、
そのままねむってしまいました。
はじめてあったしらないおとなのいえでも、
なぜか、なにもこわくなかったのです。
うまれたときから、ずっとこのおうちにすんでいたかのように…。
そのひからいままで、ぼくのおうちは『れりっくはーと』で、
ぼくのかぞくは、えいでんさんと、じゅないさんと、りゅうさんです。
なぐられることも、けられることもなく、
まいにちおなかいっぱいごはんをいただいて、おふろにはいって、
あたたかいおふとんでねむって…ほんとうに、ゆめのようでした。
しかしそれでも、まえのおうちとおとうさんが、
どうなってしまったのかきになり、
いちどじゅないさんにききましたが
「もう、わすれろ」と、きびしいかおでいわれました。
えいでんさんも、おなじでした。
ですので、それきりきいていません。
まえのじごくのようなくらしにもどるなど、ごめんなのです。
ゆめでもまぼろしでも、このまま、やさしいえいでんさんと、
じゅないさんと、りゅうさんとくらしていたかったのです。
そんなあるひ、えいでんさんがいいました。
「おかねもちの、とてもやさしいごふうふがね、
りあむをひきとりたいといってるよ」
ぼくはぞっとして
「いやです!いやです!」とあわててなんどもいいました。
えいでんさんとじゅないさんと、
りゅうさんをおわかれするなんていやです。
ここよりいいおうちなんか、きっとどこにもありません。
みんながいないのですから。
なんでもするから、よいこになるから、
ぼくをここのおうちのこにしてください。
もうぼくはごさいですのに、
あかちゃんのように、みっともなくなきわめきました。
えいでんさんは、わあわあなくぼくを、やさしくだっこしてくれました。
そして「そうだね、りあむのおうちはここだね」といってくれました。
それいらい、ぼくはむかしのことをきくことはかんぜんにやめ、
じゅないさんもえいでんさんも、かわらず、なにもいいませんでした。
あるひ
「おまえがおとなになったら、ぜんぶはなすよ」と、
じゅないさんは、そういってくれました。
ぼくはただ、うなずきました。
いまのぼくには、りかいできないはなしなのでしょう。
いまのぼくは、なにのちからもちえもない、ただのこどもにすぎません。
けれど、えいでんさんとじゅないさんという、ふたりのおとなが、
ひっしでぼくをまもってくれたのだということだけは、なんとなくわかりました。
ちのつながりがなかろうと、
ぼくがかぞくとよべるのは、このひとたちだけなのです。
こんやは、じゅないさんのかえりが、すこしおそくなるそうなので
ばんごはんをそとでたべよう、ということになりました。
りゅうさんは、おともだちとでかけてしまいました。
えいでんさんとてをつないで、えきまえひろばまでいくと
ちょうどじゅないさんがえきからでてくるところでした。
まほういをきたじゅないさんは、すごくかっこいいです。
「りあむ、なにがくいたい?」
じゅないさんにきかれ、ぼくは「おにく」とこたえました。
そして、えいでんさんとじゅないさんとてをつないで、
れすとらんにいきました。
はんばーぐと、ちょこれーとけーきをたべました。
おいしかったので、またいきたいです。
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