【完結】「まだ結婚なんて考えてないよ」その答じゃ困るんです!

buchi

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結婚を迫ってみる

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その後も、会うたびに私は結婚を匂わせる羽目に陥った。

牧村先輩からは、叱咤激励を受けている。


「何、気にしてんのよ? もう七年も付き合ってるんでしょ? それとも、他に周平さん、誰かいそうなの?」

そりゃいないだろう。会っている頻度から言って。

「いなさそうな気はします」

周平の趣味は潜り……ではない、スキューバダイビング。
彼のスキューバ仲間とは会ったことがあるが、彼らは皆、私を周平の彼女と認識してくれている。それに、他の女性の陰があったら咲ちゃんが教えてくれる気がする。咲ちゃんとはスキューバとは関係なく仲良しになった。

しかし、やっぱり結婚についてはどこ吹く風だった。

あんまり言うと嫌がられるかもね……それに、そこまでして結婚したいわけじゃないし……

ただ、年は取るのよ。このままだと、どんどん妊娠も出産も難しい年齢になってしまう。
式を挙げて、新居を借りてってやっていたら一年なんかあっという間。

結婚を決めた麻衣が、死に物狂いで頑張っても、今からだったら最速で来年の三月にやっと式が挙げられるらしい。

「まあ、それは式を挙げるからの話であって」

牧村先輩は、入籍、同居、それから、いつか式を挙げて、新婚旅行はまだ全然未定という順番らしい。

「妊娠は確かに二十代のうちにって言うけど、ほとんどのお母さんは三十代以降だからね。焦り過ぎよ」

既婚者が、余裕を語らないでいただきたい。

まだ、スタート時点にも立っていないのである。



「三連休、ダイビングの予定が入っちゃってさあ」

周平が申し訳なさそうに言いだした。

「スッゴクいいポイントで。芦沢さんが連れてってくれるって言うの」

芦沢さんはダイビング教室の大先輩だ。

「行き先、海辺になっちゃうんだけど」

「全然いーよ」

私はダイビングはしない。だから見物だけになってしまう。

「あ、でも、麻衣がライブのチケットが取れるかもって言ってたな。三連休の初日」

私は思い出した。

「麻衣ちゃん、結婚式の準備で忙しいって、言ってたんじゃないのか?」

うっかり口を滑らせて、周平は口をつぐんだ。

私の前で結婚という言葉は禁句だとでも思っているらしい。私の方は、もはやあきらめモードだった。

牧村先輩や、課長や係長の奥さんみたく、ものすごいオーラを醸し出すタイプにはできていなかった。



結局、私は、ライブを口実に、周平とは一緒に行かないことになってしまった。

それぞれが別々の三連休。



一週間、周平とは会わなかった。


周平も悪いと思っていたらしい。
結婚話を連発しすぎて、気まずかったのかな。戻ったというラインは来ても、会おうって話にならなかったから。


久しぶり……って言っても一週間ぶりなだけだけど、ちょっとだけ渋い顔を周平はしていた。

「結婚はさあ……いつか絶対するけど、今じゃないと思ってるだけだよ」

「する気あるの?」

「いつかはね」

「それだときびしいかもしれないなあ……五年先とかかもしれないしね……」

いつもみたいに食事をして、それだけ話して、後はダイビング仲間の話とかして、別れた。




その間中、ずっと高瀬君は店の外で待ち続けていた、らしい。

会う約束なんかしてなかったのに。





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