2 / 7
結婚を迫ってみる
しおりを挟む
その後も、会うたびに私は結婚を匂わせる羽目に陥った。
牧村先輩からは、叱咤激励を受けている。
「何、気にしてんのよ? もう七年も付き合ってるんでしょ? それとも、他に周平さん、誰かいそうなの?」
そりゃいないだろう。会っている頻度から言って。
「いなさそうな気はします」
周平の趣味は潜り……ではない、スキューバダイビング。
彼のスキューバ仲間とは会ったことがあるが、彼らは皆、私を周平の彼女と認識してくれている。それに、他の女性の陰があったら咲ちゃんが教えてくれる気がする。咲ちゃんとはスキューバとは関係なく仲良しになった。
しかし、やっぱり結婚についてはどこ吹く風だった。
あんまり言うと嫌がられるかもね……それに、そこまでして結婚したいわけじゃないし……
ただ、年は取るのよ。このままだと、どんどん妊娠も出産も難しい年齢になってしまう。
式を挙げて、新居を借りてってやっていたら一年なんかあっという間。
結婚を決めた麻衣が、死に物狂いで頑張っても、今からだったら最速で来年の三月にやっと式が挙げられるらしい。
「まあ、それは式を挙げるからの話であって」
牧村先輩は、入籍、同居、それから、いつか式を挙げて、新婚旅行はまだ全然未定という順番らしい。
「妊娠は確かに二十代のうちにって言うけど、ほとんどのお母さんは三十代以降だからね。焦り過ぎよ」
既婚者が、余裕を語らないでいただきたい。
まだ、スタート時点にも立っていないのである。
「三連休、ダイビングの予定が入っちゃってさあ」
周平が申し訳なさそうに言いだした。
「スッゴクいいポイントで。芦沢さんが連れてってくれるって言うの」
芦沢さんはダイビング教室の大先輩だ。
「行き先、海辺になっちゃうんだけど」
「全然いーよ」
私はダイビングはしない。だから見物だけになってしまう。
「あ、でも、麻衣がライブのチケットが取れるかもって言ってたな。三連休の初日」
私は思い出した。
「麻衣ちゃん、結婚式の準備で忙しいって、言ってたんじゃないのか?」
うっかり口を滑らせて、周平は口をつぐんだ。
私の前で結婚という言葉は禁句だとでも思っているらしい。私の方は、もはやあきらめモードだった。
牧村先輩や、課長や係長の奥さんみたく、ものすごいオーラを醸し出すタイプにはできていなかった。
結局、私は、ライブを口実に、周平とは一緒に行かないことになってしまった。
それぞれが別々の三連休。
一週間、周平とは会わなかった。
周平も悪いと思っていたらしい。
結婚話を連発しすぎて、気まずかったのかな。戻ったというラインは来ても、会おうって話にならなかったから。
久しぶり……って言っても一週間ぶりなだけだけど、ちょっとだけ渋い顔を周平はしていた。
「結婚はさあ……いつか絶対するけど、今じゃないと思ってるだけだよ」
「する気あるの?」
「いつかはね」
「それだときびしいかもしれないなあ……五年先とかかもしれないしね……」
いつもみたいに食事をして、それだけ話して、後はダイビング仲間の話とかして、別れた。
その間中、ずっと高瀬君は店の外で待ち続けていた、らしい。
会う約束なんかしてなかったのに。
牧村先輩からは、叱咤激励を受けている。
「何、気にしてんのよ? もう七年も付き合ってるんでしょ? それとも、他に周平さん、誰かいそうなの?」
そりゃいないだろう。会っている頻度から言って。
「いなさそうな気はします」
周平の趣味は潜り……ではない、スキューバダイビング。
彼のスキューバ仲間とは会ったことがあるが、彼らは皆、私を周平の彼女と認識してくれている。それに、他の女性の陰があったら咲ちゃんが教えてくれる気がする。咲ちゃんとはスキューバとは関係なく仲良しになった。
しかし、やっぱり結婚についてはどこ吹く風だった。
あんまり言うと嫌がられるかもね……それに、そこまでして結婚したいわけじゃないし……
ただ、年は取るのよ。このままだと、どんどん妊娠も出産も難しい年齢になってしまう。
式を挙げて、新居を借りてってやっていたら一年なんかあっという間。
結婚を決めた麻衣が、死に物狂いで頑張っても、今からだったら最速で来年の三月にやっと式が挙げられるらしい。
「まあ、それは式を挙げるからの話であって」
牧村先輩は、入籍、同居、それから、いつか式を挙げて、新婚旅行はまだ全然未定という順番らしい。
「妊娠は確かに二十代のうちにって言うけど、ほとんどのお母さんは三十代以降だからね。焦り過ぎよ」
既婚者が、余裕を語らないでいただきたい。
まだ、スタート時点にも立っていないのである。
「三連休、ダイビングの予定が入っちゃってさあ」
周平が申し訳なさそうに言いだした。
「スッゴクいいポイントで。芦沢さんが連れてってくれるって言うの」
芦沢さんはダイビング教室の大先輩だ。
「行き先、海辺になっちゃうんだけど」
「全然いーよ」
私はダイビングはしない。だから見物だけになってしまう。
「あ、でも、麻衣がライブのチケットが取れるかもって言ってたな。三連休の初日」
私は思い出した。
「麻衣ちゃん、結婚式の準備で忙しいって、言ってたんじゃないのか?」
うっかり口を滑らせて、周平は口をつぐんだ。
私の前で結婚という言葉は禁句だとでも思っているらしい。私の方は、もはやあきらめモードだった。
牧村先輩や、課長や係長の奥さんみたく、ものすごいオーラを醸し出すタイプにはできていなかった。
結局、私は、ライブを口実に、周平とは一緒に行かないことになってしまった。
それぞれが別々の三連休。
一週間、周平とは会わなかった。
周平も悪いと思っていたらしい。
結婚話を連発しすぎて、気まずかったのかな。戻ったというラインは来ても、会おうって話にならなかったから。
久しぶり……って言っても一週間ぶりなだけだけど、ちょっとだけ渋い顔を周平はしていた。
「結婚はさあ……いつか絶対するけど、今じゃないと思ってるだけだよ」
「する気あるの?」
「いつかはね」
「それだときびしいかもしれないなあ……五年先とかかもしれないしね……」
いつもみたいに食事をして、それだけ話して、後はダイビング仲間の話とかして、別れた。
その間中、ずっと高瀬君は店の外で待ち続けていた、らしい。
会う約束なんかしてなかったのに。
17
あなたにおすすめの小説
ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件
ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。
スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。
しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。
一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。
「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。
これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。
不愛想な婚約者のメガネをこっそりかけたら
柳葉うら
恋愛
男爵令嬢のアダリーシアは、婚約者で伯爵家の令息のエディングと上手くいっていない。ある日、エディングに会いに行ったアダリーシアは、エディングが置いていったメガネを出来心でかけてみることに。そんなアダリーシアの姿を見たエディングは――。
「か・わ・い・い~っ!!」
これまでの態度から一変して、アダリーシアのギャップにメロメロになるのだった。
出来心でメガネをかけたヒロインのギャップに、本当は溺愛しているのに不器用であるがゆえにぶっきらぼうに接してしまったヒーローがノックアウトされるお話。
【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました
雨宮羽那
恋愛
結婚して5年。リディアは悩んでいた。
夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。
ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。
どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。
そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。
すると、あら不思議。
いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。
「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」
(誰ですかあなた)
◇◇◇◇
※全3話。
※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜
笑わない妻を娶りました
mios
恋愛
伯爵家嫡男であるスタン・タイロンは、伯爵家を継ぐ際に妻を娶ることにした。
同じ伯爵位で、友人であるオリバー・クレンズの従姉妹で笑わないことから氷の女神とも呼ばれているミスティア・ドゥーラ嬢。
彼女は美しく、スタンは一目惚れをし、トントン拍子に婚約・結婚することになったのだが。
【完結】公爵子息は私のことをずっと好いていたようです
果実果音
恋愛
私はしがない伯爵令嬢だけれど、両親同士が仲が良いということもあって、公爵子息であるラディネリアン・コールズ様と婚約関係にある。
幸い、小さい頃から話があったので、意地悪な元婚約者がいるわけでもなく、普通に婚約関係を続けている。それに、ラディネリアン様の両親はどちらも私を可愛がってくださっているし、幸せな方であると思う。
ただ、どうも好かれているということは無さそうだ。
月に数回ある顔合わせの時でさえ、仏頂面だ。
パーティではなんの関係もない令嬢にだって笑顔を作るのに.....。
これでは、結婚した後は別居かしら。
お父様とお母様はとても仲が良くて、憧れていた。もちろん、ラディネリアン様の両親も。
だから、ちょっと、別居になるのは悲しいかな。なんて、私のわがままかしらね。
【完結】救ってくれたのはあなたでした
ベル
恋愛
伯爵令嬢であるアリアは、父に告げられて女癖が悪いことで有名な侯爵家へと嫁ぐことになった。いわゆる政略結婚だ。
アリアの両親は愛らしい妹ばかりを可愛がり、アリアは除け者のように扱われていた。
ようやくこの家から解放されるのね。
良い噂は聞かない方だけれど、ここから出られるだけ感謝しなければ。
そして結婚式当日、そこで待っていたのは予想もしないお方だった。
顔も知らない旦那様に間違えて手紙を送ったら、溺愛が返ってきました
ラム猫
恋愛
セシリアは、政略結婚でアシュレイ・ハンベルク侯爵に嫁いで三年になる。しかし夫であるアシュレイは稀代の軍略家として戦争で前線に立ち続けており、二人は一度も顔を合わせたことがなかった。セシリアは孤独な日々を送り、周囲からは「忘れられた花嫁」として扱われていた。
ある日、セシリアは親友宛てに夫への不満と愚痴を書き連ねた手紙を、誤ってアシュレイ侯爵本人宛てで送ってしまう。とんでもない過ちを犯したと震えるセシリアの元へ、数週間後、夫から返信が届いた。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
※全部で四話になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる