【完結】婚約者の真実の愛探しのお手伝い。私たち、愛のキューピッドなんです?

buchi

文字の大きさ
48 / 58

第48話 カオスパーティ当日 3

しおりを挟む
ダンスは終わったけれど、私はショックで息も絶え絶えだった。



ハゲタカ令嬢か……。ケネスの方を見ると、彼はジェーン・マクローン嬢とミランダ・カーチス嬢のセットに接着されていた。



ケネスは二人の令嬢に囲まれたまま、席を移動できなかった。動こうとすると、どちらから、クネクネと腕が伸ばされてくるのだ。ルシンダとアーノルドは呆れていた。





オスカーがニヤリと笑うと迎えに来た。



「今度は僕の番だと思うけど、踊るのは目立つからね。それに話をしたいし」



彼は私をソファまで連れて行くと、適度に間を空けて横に座った。そこは紳士である。



「聞きたかったの、バーカムステッド様」



「オスカー」



オスカー様は訂正した。



「オスカー様。モンフォール家からバーカムステッド家に申し入れはあったのですか?」



「ありましたよ」



ショックだった。



「それで?」



「返事はまだ出していない」



「どうせ断るなら、早めに断ってくださらない?」



私は必死に頼んだ。



「なぜ?」



私はあっけにとられた。



「なぜ……って、あなたはケネスの友人でしょう?」



「もちろん。でも、断る理由もないのでね」



私はまじまじとオスカー様の顔を見た。断らないの?



「受ける理由なんか、ないでしょう?」



「断らない理由もたくさんあるんですよ」



「どのような理由が?」



「最も大きな理由は、ケネスとあなたの結婚がご両親に認められないかもしれないと言うことです。主にお母さまからの反対で」



「それは……」



「あなた方は未成年ですしね。決定権はない」



私は言葉を失った。



「でも、それは受ける理由にはならないわ」



オスカー様はふふふと笑った。



「あなたとしてはね。でも、私としては断らない理由になるのですよ」



全く訳が分からない。



「だけど、断ってくださらないと」



「このまま婚約することになるかもしれませんね」



「オスカー様、あなたにお好きな方は?」



オスカー様は黙ってしまった。



これは……肯定?



オスカー様が子供の頃に婚約を決めた令嬢とはあまり親しくなかったと言う話は聞いていた。その後、令嬢の家の都合で立ち消えになってしまったらしいことも。



でも、もしかしたら、実はその方のことを愛しておられるのかもしれない。



家の都合で無理やり引き裂かれたけれど、思いを寄せ合う二人……。黙って、耐えるオスカー様。



なんだか、ぴったりだわ。ちょっとシニカルな性格はそのせいなのかもしれないわ。





そう思うとしっくりくる。公爵家の御曹司然なのだから、まるで恋愛には疎うとい筈はずなのに、興味津々で口をはさんでくるところとか。ご自分の思うようにならない恋を思うと、他人事とは言え、きっと、ほっておけないのだわ。





私はオスカー様の顔を一生懸命見た。

ほんの少し困った表情になっている。



その顔は今まで見たことのない表情だった。わずかばかり赤くなっているような気さえする。あのいつも冷静で批判的なオスカー様が!



やっぱり!



オスカー様の婚約解消は表沙汰になっていないが、彼の家はうち以上に、縁談が来ると思う。何しろ、公爵家の嫡子なんだから。



誰かと婚約するように相当な圧力がかかっているのだろう。別な人を愛しているのに。気の毒だわ。



「オスカー様、あなたに好きな人がいるのだったら……そうだったら、その方と一緒になれないとしたら、それがどんな気持ちなのかご存じだと思うわ」



彼は黙っている。



「あなたは褒めてくださったじゃありませんか。オズボーン家の園遊会の時、がんばったって。私、母を説得しますわ。それしか出来ないのですけど。ウィリアムは、私の元々の性格と違うからムリって言ってましたけど」



「ウィリアム?」



オスカー様の目が光ったような気がした。



「ああ、あなたのファンのですね」



みんながみんな、なぜかウィリアムの話になると毛を逆立てるの?

ウィリアムの話をしているんじゃないのよ。



「私、元々の自分の性格と反することでも、出来ることは頑張ろうと思いますの」



「おや、レディ、あなたがケネスと一夜を共にすれば済む話だ」



一瞬、私はオスカー様の言った言葉の意味が理解できずに、オスカー様の顔を見た。



なんですって?



私はオスカー様をにらみつけた。



「ちがうわ。そんなことを言ってるんじゃないわ」



「でも、簡単で、ケネスも欲しているはずだ」



「なんて失礼なことを言うのかしら」



これくらいは非難されても当然だろう。失礼過ぎるわ。



ああ、だけど、もしかすると、この態度が原因で、意中の令嬢に婚約を辞退されてしまったと言う可能性もあるわね。



これは修正してあげないと。



「正攻法が正しいとは思わない。その方が賢いのかもしれませんよ?」



「女性に失礼だわ! そもそも、私には無理ですわ」



「なぜ? ケネスが教えてくれるでしょう」



?……!!!



なんて下品なのかしら?!

公爵家のご子息で、見た目この上なく上品なのに!



「ケネスはそんな人じゃないわ!」



私はこんな会話には制限いっぱいになって、オスカー様に刃向った。



「いや、そんな人だと僕は思いますがね?」



オスカー様はニヤリと笑っていた。



「オスカー様、私、あなたが嫌い」



途端に彼は傷ついたようだった。

なぜ、傷つくの?



「あなたは優しいようで、いろいろ親身なようで、それなのに、どうしてこんなことばかり言うの? 正しくないわ」





「あなたが……玉砕するあなたが愛しくて」



私は訳の分からない単語に戸惑った。



「愛しい?」



「言い間違えました。かわいそうで」



「かわいそう? そんなことありませんわ!」



「また、言葉を間違えてしまった。あなたが苦労して傷つくのが心配で」



心配なの?



「でも、オスカー様、あなたが私をほめてくださったのは、私がオズボーン侯爵夫妻にお願いした時だけですわ。私が必死になって勇気を振り絞った時。きっとあなたは勇敢な人間が嫌いじゃないのよ」



オスカー様は、はっと驚いたかのように私を見つめた。



「あのあと、あなたは、声を立てて愉快そうに笑ってらしたわ。傷つくのが心配だったら、いつまでたっても勇敢になれないわ」



オスカー様は私を眺めていた。

時間が止まったように感じるくらい、彼は真剣だった。



「そうでしたね。あの時、私はうっかりあなたを尊敬してしまった。私にとって、あなたが一番魅力的に見えた時です」



私はまた、機嫌を損ねた。

オスカー様。うっかりって、どういうこと? 普通に尊敬して欲しいんですけど!
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された侯爵令嬢ですが、帝国の次席秘書官になりました ――王の隣ではなく、判断を誤らせない場所へ

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として王宮に仕える侯爵令嬢ゼクレテァ。 彼女は華やかな場に立つことはなく、ただ静かに、しかし確実に政務と外交を支えていた。 ――その役割が、突然奪われるまでは。 公の場で告げられた一方的な婚約破棄。 理由はただひとつ、「愛している相手がいるから」。 ゼクレテァは感情を見せることなく、その決定を受け入れる。 だが彼女が王宮を去った後、王国には小さな歪みが生じ始めた。 些細な行き違い、遅れる判断、噛み合わない政策。 それらはやがて、国家全体を揺るがす事態へと発展していく。 一方、行き場を失ったゼクレテァの前に、思いもよらぬ「選択肢」が差し出される。 求められたのは、身分でも立場でもない。 彼女自身の能力だった。 婚約破棄から始まる、 静かで冷静な逆転劇。 王の隣に立つことを拒んだ令嬢は、 やがて「世界を動かす場所」へと歩み出す――。 -

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~

キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。 両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。 ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。 全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。 エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。 ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。 こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。

4人の女

猫枕
恋愛
カトリーヌ・スタール侯爵令嬢、セリーヌ・ラルミナ伯爵令嬢、イネス・フーリエ伯爵令嬢、ミレーユ・リオンヌ子爵令息夫人。 うららかな春の日の午後、4人の見目麗しき女性達の優雅なティータイム。 このご婦人方には共通点がある。 かつて4人共が、ある一人の男性の妻であった。 『氷の貴公子』の異名を持つ男。 ジルベール・タレーラン公爵令息。 絶対的権力と富を有するタレーラン公爵家の唯一の後継者で絶世の美貌を持つ男。 しかしてその本性は冷酷無慈悲の女嫌い。 この国きっての選りすぐりの4人のご令嬢達は揃いも揃ってタレーラン家を叩き出された仲間なのだ。 こうやって集まるのはこれで2回目なのだが、やはり、話は自然と共通の話題、あの男のことになるわけで・・・。

別れたいようなので、別れることにします

天宮有
恋愛
伯爵令嬢のアリザは、両親が優秀な魔法使いという理由でルグド王子の婚約者になる。 魔法学園の入学前、ルグド王子は自分より優秀なアリザが嫌で「力を抑えろ」と命令していた。 命令のせいでアリザの成績は悪く、ルグドはクラスメイトに「アリザと別れたい」と何度も話している。 王子が婚約者でも別れてしまった方がいいと、アリザは考えるようになっていた。

良いものは全部ヒトのもの

猫枕
恋愛
会うたびにミリアム容姿のことを貶しまくる婚約者のクロード。 ある日我慢の限界に達したミリアムはクロードを顔面グーパンして婚約破棄となる。 翌日からは学園でブスゴリラと渾名されるようになる。 一人っ子のミリアムは婿養子を探さなければならない。 『またすぐ別の婚約者候補が現れて、私の顔を見た瞬間にがっかりされるんだろうな』 憂鬱な気分のミリアムに両親は無理に結婚しなくても好きに生きていい、と言う。 自分の望む人生のあり方を模索しはじめるミリアムであったが。

あの、初夜の延期はできますか?

木嶋うめ香
恋愛
「申し訳ないが、延期をお願いできないだろうか。その、いつまでとは今はいえないのだが」 私シュテフイーナ・バウワーは今日ギュスターヴ・エリンケスと結婚し、シュテフイーナ・エリンケスになった。 結婚祝の宴を終え、侍女とメイド達に準備された私は、ベッドの端に座り緊張しつつ夫のギュスターヴが来るのを待っていた。 けれど、夜も更け体が冷え切っても夫は寝室には姿を見せず、明け方朝告げ鶏が鳴く頃に漸く現れたと思ったら、私の前に跪き、彼は泣きそうな顔でそう言ったのだ。 「私と夫婦になるつもりが無いから永久に延期するということですか? それとも何か理由があり延期するだけでしょうか?」  なぜこの人私に求婚したのだろう。  困惑と悲しみを隠し尋ねる。  婚約期間は三ヶ月と短かったが、それでも頻繁に会っていたし、会えない時は手紙や花束が送られてきた。  関係は良好だと感じていたのは、私だけだったのだろうか。 ボツネタ供養の短編です。 十話程度で終わります。

【完結】3度婚約を破棄された皇女は護衛の騎士とともに隣国へ嫁ぐ

七瀬菜々
恋愛
 先日、3度目の婚約が破談となったモニカは父である皇帝から呼び出しをくらう。  また皇帝から理不尽なお叱りを受けると嫌々謁見に向かうと、今度はまさかの1回目の元婚約者と再婚約しろと言われて----!?  これは、宮中でも難しい立場にある嫌われ者の第四皇女モニカと、彼女に仕える素行不良の一途な騎士、そして新たにもう一度婚約者となった隣国の王弟公爵との三角関係?のお話。

【完結】瑠璃色の薬草師

シマセイ
恋愛
瑠璃色の瞳を持つ公爵夫人アリアドネは、信じていた夫と親友の裏切りによって全てを奪われ、雨の夜に屋敷を追放される。 絶望の淵で彼女が見出したのは、忘れかけていた薬草への深い知識と、薬師としての秘めたる才能だった。 持ち前の気丈さと聡明さで困難を乗り越え、新たな街で薬草師として人々の信頼を得ていくアリアドネ。 しかし、胸に刻まれた裏切りの傷と復讐の誓いは消えない。 これは、偽りの愛に裁きを下し、真実の幸福と自らの手で築き上げる未来を掴むため、一人の女性が力強く再生していく物語。

処理中です...