【完結】いつの間にか全方向から包囲されて、どうしても結婚にまで巻き込まれた気の毒な令嬢の物語

buchi

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第16話 疑問

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「エドワード・ハーヴェスト様って、どこの出身のどちらのご子息なのでしょう?」

ジュディスの紹介だから、何も考えていなかった。アリスもだ。
あの要領のいいジュディスが、変な人物を紹介してくるとは考えられなかったからだ。

「ジュディスは財務卿のアレンビー卿のご子息と婚約が決まりそうなのですって」

アリスは目が飛び出そうに驚いた。

「さすが、ジュディスさまですね! なかなかの大物ではございませんか!」

まず、ここから説明をしないとエドワード・ハーヴェスト様の説明にならない。

「その財務卿のご子息からのご紹介なのよ」

アリスはちょっとだけ顔をしかめた。立派な紹介者ではあるが、具体的な情報がないと言うのだ。

「それだけだと何もわかりません」

確かに。

「そうねえ。お母さまに聞いてみた方がいいのかも知れないわ」

社交好きの母の情報収集力はなかなかである。

一度ダンスを踊るだけの相手なのだから、そこまで細かく気にする必要はない。
結婚するわけでもないからだ。
だが、対抗馬としてエクスター殿下が出てきてしまっては、いろいろと考えざるを得ない。

それに、確かにハーヴェスト様と言う方はよくわからないところがあった。
と言うのは、校内で見かけたことがなかったし、どうも学生と言うにはずっと年上のように見えた。最初に会った時から、なんとなく違和感があった。

「お嬢様が学校に行ってらっしゃる間に、わたくしが伯爵邸に戻って伯爵夫人にお尋ねしてまいります」

アリスが真顔で言った。
「それはいいわ。行ってきてちょうだい」

私は、ほくそ笑んだ。調査期間の間、アリスは不在だ。これで明日は2時間余分に寝られる。アリスのお支度は時間がかかり過ぎる。

「もうそろそろメアリがここへ着きますから、明日のお支度も心配いりませんし」

「え?! どうして?」

乳母のメアリが来る? アリスよりも、もっと小うるさいメアリが? なぜ?

「伯爵夫人のご指示です。エクスター殿下とお話があると言うなら、こうしてはいられないと。わたくし一人では心もとないとおっしゃられまして」

「待って! 殿下とのお話は断ったのよ?」

アリスはにっこりした。

「ダンスパーティが終わっても、在学期間は続きます。チャンスをものにしなくては」

……なぜ、この人たちはこんなにまで精力的なんだろう。



そして話はまだ終わっていなかった。

昼休み、サンドイッチを買って来て、一人きりで外のテーブルで食べるのんきな恒例の行動が成り立たなくなったのだ。

なぜなら、今、私の隣には、男子生徒が二名、腰かけていらっしゃる。

「フロレンス嬢、サミュエル・ブライトンです。ほら、ピンカートン教授の神学でご一緒している?」

初めて見るクルクルの茶色の巻き毛君は、目の色も澄んだ茶色で、とてもかわいらしい。まるで、どこかの愛玩犬のようだ。

だが、全く見覚えがない。知らない。

大体、ピンカートン教授の時間はどうやって寝ないですますか、あるいは少なくとも寝てるのをばれないで済ますかが、大問題なのだ。
こんな時、私の数少ない友人のマリオン嬢は素晴らしい。彼女は機械のように眠らないし、もの凄くきっちりとノートを作って売ってくれる。彼女は地方出身の貧乏平民なので、小遣い稼ぎに余念がないのだ。結果として、マリオン嬢の成績は常に上位にある。生誕祭前の定期試験はまだだが、常にほぼ満点の小テストの結果が彼女の成績を物語る。
もっとも、今の状況で、マリオン嬢の話は関係ないだろうな。

「私はダニエル・ハーバード。騎士団長の息子です。文法の授業でご一緒でした。覚えてらっしゃるでしょう?」

反対側に座っているもう一人の男子生徒は自己紹介した。
ニコリと、でもどこかちょっと恥ずかしそうに微笑む背の高い生徒は、なにか色気を感じさせる。

だが! そう言う撃沈するような自己紹介はやめて欲しい。アダムス先生は、授業中、果てしない精力で私をおとしめ続けたので、ほかの生徒の顔を覚えるような余裕はゼロだった。

そして、この二人は、おずおずとダンスのパートナーを申し込んでいるのだ。
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