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第6話 少しでもいい縁談を
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「ねえ、ちょっと、昨日、ケネス・レミントンと二人きりで、お昼をしていたんですって?」
なんで知ってるんだろう。
ローザはうつろな目でキャサリンを見つめた。
「だって、一部始終を見ていた人がいるのよ。あなたが大勢の男子生徒を誘ってたって。そして、ケネス・レミントンの手を取って、一人だけ残したって言ってたわ」
そんなことはない。ものすごい曲解だ。
「そんなことないわ」
ローザは憤然として答えた。
「最初に声をかけてきたのは、名前の覚えられない3人組よ。(ローザはそのころまでには全員の名前をきれいに忘れていた)そして、どうしてだか、ケネス・レミントンだけを残して、みんな勝手に行ってしまったのよ」
どうしてだか、ではない。
ケネスは突然、訳の分からない嘘をついたのだ。約束なんかしていなかった。突然あんなことを言いだすなんて、意味が分からない。
だが、ケネスの訳の分からない嘘は説明すると、もっとややこしい誤解を呼びそうな気がした。
「あら」
ナタリーは面白そうに目を光らせた。
「じゃあ、ケネスがあなたのところに自主的に残ったってことかしら?」
「そりゃ……」
ケネスは一応婚約者だ。だが、家族間での単なる話し合いだけであって、正式と言うにはどうかと思う。
この辺の事情は、人にはなかなか説明しにくい。
そもそも、婚約者の地位は揺らいでいる。妹がケネスを気に入ったのだ。
「ケネスはレミントン伯爵の嫡子だもの。みんなが狙ってると思うわ。あなたもケネスを狙って、声をかけたと言われているのよ」
キャサリンが親切にも解説してくれた。
「この話の出どころはジョアンナよ。ずっと見てたそうよ」
「ジョアンナが?」
ローザは驚いた。いつも大勢の男子生徒を誘って、周りに侍らせているのは、ジョアンナの方だ。自分は、たまたま男子生徒に押しかけられていただけだ。
「ジョアンナらしいわね」
「どういうこと?」
「ジョアンナは貧乏男爵家の娘ですもの。少しでもいい縁談を探しにきてるのよ。必死なのよ」
ナタリーが解説した。
「だから伯爵家の嫡子とは、ぜひともお知り合いになりたいのよ」
「ケネスを好きだってこと?」
大変だ。ヴァイオレットに恋敵が現れた。
だが、ナタリーは首を振った。
「そりゃ、ケネスはかっこいいけど。でも、好きかどうかより、嫡子かどうかが大問題でしょ。嫡子なら、領地や財産があるもの。次男なら、自分で官僚になるなり、騎士になるなり、生活の道を考えなくてはいけないわ」
「何処かの伯爵家と同様の収入を得ようとするなら、それぞれ、かなり才能や努力が必要よ」
キャサリンも冷静に付け加えた。
その通りだ。ナタリーの解説はいつでも説得力があった。キャサリンも実際的な娘だ。
ジョアンナの行動の理由をしっかり説明してくれたのだ。
ローザはぐったりした。そう言うことかー。ジョアンナはケネスを狙っていたのか。
なんだか昼食の間中、ちらちらと不穏な視線を感じたのだ。
「私、知らなかった」
「ケネス・レミントンは伯爵家の嫡子、ルイ・ヘイワードは財務大臣の息子、オスカー・リーは騎士団長の息子で、フレッド・カールトンは国一番の大富豪の息子よ」
キャサリンは、すらすらと並べ立てた。
「よく知っているわね?」
ローザは仰天した。
「入学時に、同学年にどんな人がいるか調べておくことは当たり前でしょう」
ナタリーは厳しく指摘した。
「だって、王族だって混ざってるかもしれないのよ? さすがに偽名で入学してるらしいけど。1学年上のアレク様って知ってる?」
もちろんローザは知らなかった。同じクラスですでに手一杯だ。1学年上だなんて守備範囲外だ。
「エドワードって名前のどう見ても年上の人といつでも一緒なの。おかしいと思わない?」
「おかしいって何が?」
ナタリーは、察しの悪いローザにちょっとイラついたらしかった。
「だから、何時も一緒っておかしいでしょ? 側近兼護衛じゃないかって言われているのよ。王太子殿下が1歳年上だって知ってるでしょう?」
知らなかった。
「アレク様は黒い髪と青い目のイケメンで、エドワード様はたぶんずっと年上じゃないかしら。同じように黒髪だけどずっとがっちりしていてグレーの目をしているの。王太子殿下はさわやかな印象の方よ。でも、ガードが固くて、誰もまだ声をかけられないらしいわ」
キャサリンがうっとりしたように言いだした。
ふと、ローザは思い出した。そう言えば、そんなような二人組に覚えがある。
なんで知ってるんだろう。
ローザはうつろな目でキャサリンを見つめた。
「だって、一部始終を見ていた人がいるのよ。あなたが大勢の男子生徒を誘ってたって。そして、ケネス・レミントンの手を取って、一人だけ残したって言ってたわ」
そんなことはない。ものすごい曲解だ。
「そんなことないわ」
ローザは憤然として答えた。
「最初に声をかけてきたのは、名前の覚えられない3人組よ。(ローザはそのころまでには全員の名前をきれいに忘れていた)そして、どうしてだか、ケネス・レミントンだけを残して、みんな勝手に行ってしまったのよ」
どうしてだか、ではない。
ケネスは突然、訳の分からない嘘をついたのだ。約束なんかしていなかった。突然あんなことを言いだすなんて、意味が分からない。
だが、ケネスの訳の分からない嘘は説明すると、もっとややこしい誤解を呼びそうな気がした。
「あら」
ナタリーは面白そうに目を光らせた。
「じゃあ、ケネスがあなたのところに自主的に残ったってことかしら?」
「そりゃ……」
ケネスは一応婚約者だ。だが、家族間での単なる話し合いだけであって、正式と言うにはどうかと思う。
この辺の事情は、人にはなかなか説明しにくい。
そもそも、婚約者の地位は揺らいでいる。妹がケネスを気に入ったのだ。
「ケネスはレミントン伯爵の嫡子だもの。みんなが狙ってると思うわ。あなたもケネスを狙って、声をかけたと言われているのよ」
キャサリンが親切にも解説してくれた。
「この話の出どころはジョアンナよ。ずっと見てたそうよ」
「ジョアンナが?」
ローザは驚いた。いつも大勢の男子生徒を誘って、周りに侍らせているのは、ジョアンナの方だ。自分は、たまたま男子生徒に押しかけられていただけだ。
「ジョアンナらしいわね」
「どういうこと?」
「ジョアンナは貧乏男爵家の娘ですもの。少しでもいい縁談を探しにきてるのよ。必死なのよ」
ナタリーが解説した。
「だから伯爵家の嫡子とは、ぜひともお知り合いになりたいのよ」
「ケネスを好きだってこと?」
大変だ。ヴァイオレットに恋敵が現れた。
だが、ナタリーは首を振った。
「そりゃ、ケネスはかっこいいけど。でも、好きかどうかより、嫡子かどうかが大問題でしょ。嫡子なら、領地や財産があるもの。次男なら、自分で官僚になるなり、騎士になるなり、生活の道を考えなくてはいけないわ」
「何処かの伯爵家と同様の収入を得ようとするなら、それぞれ、かなり才能や努力が必要よ」
キャサリンも冷静に付け加えた。
その通りだ。ナタリーの解説はいつでも説得力があった。キャサリンも実際的な娘だ。
ジョアンナの行動の理由をしっかり説明してくれたのだ。
ローザはぐったりした。そう言うことかー。ジョアンナはケネスを狙っていたのか。
なんだか昼食の間中、ちらちらと不穏な視線を感じたのだ。
「私、知らなかった」
「ケネス・レミントンは伯爵家の嫡子、ルイ・ヘイワードは財務大臣の息子、オスカー・リーは騎士団長の息子で、フレッド・カールトンは国一番の大富豪の息子よ」
キャサリンは、すらすらと並べ立てた。
「よく知っているわね?」
ローザは仰天した。
「入学時に、同学年にどんな人がいるか調べておくことは当たり前でしょう」
ナタリーは厳しく指摘した。
「だって、王族だって混ざってるかもしれないのよ? さすがに偽名で入学してるらしいけど。1学年上のアレク様って知ってる?」
もちろんローザは知らなかった。同じクラスですでに手一杯だ。1学年上だなんて守備範囲外だ。
「エドワードって名前のどう見ても年上の人といつでも一緒なの。おかしいと思わない?」
「おかしいって何が?」
ナタリーは、察しの悪いローザにちょっとイラついたらしかった。
「だから、何時も一緒っておかしいでしょ? 側近兼護衛じゃないかって言われているのよ。王太子殿下が1歳年上だって知ってるでしょう?」
知らなかった。
「アレク様は黒い髪と青い目のイケメンで、エドワード様はたぶんずっと年上じゃないかしら。同じように黒髪だけどずっとがっちりしていてグレーの目をしているの。王太子殿下はさわやかな印象の方よ。でも、ガードが固くて、誰もまだ声をかけられないらしいわ」
キャサリンがうっとりしたように言いだした。
ふと、ローザは思い出した。そう言えば、そんなような二人組に覚えがある。
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