【完結】人の婚約破棄を無断で利用しないでください。

buchi

文字の大きさ
18 / 21

第18話 兄が語る真相

珍しく、父が母の肩を抱いて部屋を出て行ったあと、私は兄に詰め寄った。

「お兄様、ダシに使われた私には、本当のことを教えてくださいな」

兄は絶対に何か知っていると思う。

兄はフフフと笑った。

「サラは、わかっているじゃないか」

私は黙った。

まだ、あのワンシーンは目に焼き付いている。

少し戸惑っているようなオフィーリアお姉様と、わずかにほおを染めて一緒に歩いていくマーク殿下。

私は、うまいこと使われたのかも知れなかったけど、怒りはなかった。

「お姉様は何もご存じなかったのね」

「そう。今回のお茶会は、妹のために一肌脱いだだけだ。姉上は、とてもさといお方だ。お前が、事情を知っていたら、きっとバレてしまって、出てはくださらなかったろう。だからまずお前と母上をだます必要があった」

「まあ。私、お母様と連合を組もうかしら」

「父上と僕が大変になるからやめてくれ」

お兄さまは笑った。

「姉上は、孤児院で女の子たちに読み書きを教え、将来の世話をしてやっていた。どんな子どももなんとか世の中で暮らしていけるようにと。やり甲斐を感じて、頑張っていた。あのままだったら多分、慈悲深い貴族の未亡人として名を残したろうね」

「それはそれで、悪くはなかったのではないかしら」

「もちろんそうだよ。だけど、殿下はそうはいかなかったのだろう。夫が亡くなってから二年も経つ。それでも、あきらめられなかったのだろう。チャンスがあればと見張っていたのだろう。そして、そのチャンスがやってきたのだ。見逃すはずがない」

私は思わず言った。

「お姉様がなんとおっしゃるか」

「さあ。でも、きっと殿下は一緒に子どもの教育事業を続けましょうとか、口の上手いことを言うんじゃないかな。王家が噛めば、もっと本格的にできますよとかなんとか」

昨日のお茶会の帰り、殿下がお姉様を誘い出す時の文句が、あなたの孤児院での教育事業に興味が湧いた、だった。

マーク殿下は賢いと評判を取るだけある。

「姉上も賢い人だよ。きっとしばらく時間はかかると思うけど、僕の勘では、きっと二人とも幸せになるよ」

私はジロリと兄を見回した。お兄様に何がわかると言うの? 幸せになるって、お兄様が王宮の御覚えがめでたくなって、出世すると言う意味なの?

色々と乗り越えなくては行けない壁はありそうだけど。


「お前はオーウェンと結婚することになったのかい?」

お兄様が不意に聞いた。

「それなのよ!」

私はお兄さまに向き直った。

「どうして誰も私にそのことを聞いてこないの? お姉様の話ばかりだわ!」

いくら殿下の姉へのご執心があらわになったとはいえ、私の縁談はどうなったの? どうして誰も何も聞かないの?

お兄さまはプッと吹き出した。

「だって、お前が知らない間に、クリントン公爵夫妻がここへ来て」

「え? いつの話?」

「えーと、あれ、いつだったっけ? 確か、お茶会がどうこう言い出した最初の頃かな」

だいぶ前じゃないの。

「マーク殿下が乗り出してきては、勝ち目がないと思ったんだろうな。ぜひ、息子の嫁にと所望して帰った」

「なんですって?」

「でも、マーク殿下の本当の目的はオフィーリアだ。関係ないクリントン公爵夫妻にしゃべるわけにはいかないから、一応お帰りいただくしかなかった。もし、殿下のお話がなくなったら、必ずクリントン家へと約束して」

「ええ……?」

またもや、勝手に決められる婚約……

「実は昨日のうちに、使いを立てている。お気持ちが変わらなければ、お話を進めさせていただきたいと」

なんですってええ?

「お兄さま! 私の気持ちは?」

「おや。オーウェンが嫌いなのかい?」

私は、ちょっぴり赤くなったかなと思う。

憎たらしいお兄さまが、腹を抱えて笑い出したからだ。

「オーウェンの気持ちも聞いてみないといけないな。もしかすると、サラを嫌いなのかもしれないし」

「え……」

それはない……と思う。

お兄さまは続けた。

「クリントン公爵への返事には、条件がついている。お前の意志だ。お前が嫌なら嫁がなくていいことになっている」

そ、そう言われると……

「だけど、なんでも、オーウェンと一緒にカフェに行くそうじゃないか。もう、決まっているんじゃないのか?」

お兄様が憎たらしくなってきたわ!
感想 50

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された王太子妃候補は第一王子に気に入られたようです。

永野水貴
恋愛
侯爵令嬢エヴェリーナは未来の王太子妃として育てられたが、突然に婚約破棄された。 王太子は真に愛する女性と結婚したいというのだった。 その女性はエヴェリーナとは正反対で、エヴェリーナは影で貶められるようになる。 そんなある日、王太子の兄といわれる第一王子ジルベルトが現れる。 ジルベルトは王太子を上回る素質を持つと噂される人物で、なぜかエヴェリーナに興味を示し…? ※「小説家になろう」にも載せています

「愛があれば十分だ」と私を捨てた婚約者へ――では、その婚約破棄の条件から確認いたしましょう

師走
恋愛
伯爵令嬢リディア・エーヴェルは、貴族たちの婚約や離縁、持参金や相続に関わる条件調整を陰でまとめてきた実務家だった。 だがある夜会で、婚約者である王太子側近ユリウス・グランツから「君は条件ばかりで冷たい。愛があれば契約などいらない」と一方的に婚約破棄されてしまう。 静かに婚約破棄を受理したリディアは、その場で持参金返還、贈与品、名誉回復の文言など必要事項の確認を始めるが、誰もその意味を理解しない。 けれど彼女が婚約から外れた直後から、王都では縁談、婚約、離縁の調整が次々と滞り始める。今まで多くの案件を陰でまとめていたのは、ほかでもないリディアだったのだ。 そんな中、法務局の裁定官補佐セオドア・ヴァレントから、王女ヘレナの婚姻条件を見直してほしいと依頼が舞い込む。 北方大公家との政略結婚。けれど提示された条件は、婚姻ではなく人質の引き渡しに等しいものだった。 「条件は愛の代わりではありません。ですが、愛が壊れたときに人を守ることはできます」 傷つきながらも再び交渉の場に立つリディアは、王女の未来を守るため、そして自分自身の人生を取り戻すため、契約と誠意を武器に王都最大の婚姻交渉へ挑む。 一方、自分を支えていたものの大きさに気づいた元婚約者は、今更になって復縁を望み始めるが――。 小説家になろう様でも掲載中

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

「お遊戯で子を育てるな」と追放された宮廷養育係——前世の保育士が作った遊びの教育を、王立学院が丸ごと導入した

歩人
ファンタジー
「子供に歌を教え、絵を描かせ、庭で走り回らせる——それが教育だと? ふざけるな」 侯爵令嬢マリカは婚約者にそう嘲笑され、宮廷養育係の職を解かれた。 前世で保育士だった彼女が行っていたのは、遊びに見せかけた発達支援プログラム。数を数える鬼ごっこ、言葉を覚える歌遊び、協調性を育む共同制作——子供たちは「楽しい」と笑いながら、同年代の二年先を進んでいた。 マリカが去り、旧来の家庭教師が戻った途端、子供たちは勉強を拒否し始めた。 王立学院の入学試験で辺境の子供たちが首席を独占したとき——「お遊戯」の本当の意味が明かされる。

婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!

みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。 幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、 いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。 そして――年末の舞踏会の夜。 「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」 エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、 王国の均衡は揺らぎ始める。 誇りを捨てず、誠実を貫く娘。 政の闇に挑む父。 陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。 そして――再び立ち上がる若き王女。 ――沈黙は逃げではなく、力の証。 公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。 ――荘厳で静謐な政略ロマンス。 (本作品は小説家になろう、カクヨムにも掲載中です)

『冷酷な悪役令嬢』と婚約破棄されましたが、追放先の辺境で領地経営を始めたら、いつの間にか伝説の女領主になっていました。

黒崎隼人
ファンタジー
「君のような冷たい女とは、もう一緒にいられない」 政略結婚した王太子に、そう告げられ一方的に離婚された悪役令嬢クラリス。聖女を新たな妃に迎えたいがための、理不尽な追放劇だった。 だが、彼女は涙ひとつ見せない。その胸に宿るのは、屈辱と、そして確固たる決意。 「結構ですわ。ならば見せてあげましょう。あなた方が捨てた女の、本当の価値を」 追放された先は、父亡き後の荒れ果てた辺境領地。腐敗した役人、飢える民、乾いた大地。絶望的な状況から、彼女の真の物語は始まる。 経営学、剣術、リーダーシップ――完璧すぎると疎まれたその才能のすべてを武器に、クラリスは民のため、己の誇りのために立ち上がる。 これは、悪役令嬢の汚名を着せられた一人の女性が、自らの手で運命を切り拓き、やがて伝説の“改革者”と呼ばれるまでの、華麗なる逆転の物語。

【完結】離縁したいのなら、もっと穏便な方法もありましたのに。では、徹底的にやらせて頂きますね

との
恋愛
離婚したいのですか?  喜んでお受けします。 でも、本当に大丈夫なんでしょうか? 伯爵様・・自滅の道を行ってません? まあ、徹底的にやらせて頂くだけですが。 収納スキル持ちの主人公と、錬金術師と異名をとる父親が爆走します。 (父さんの今の顔を見たらフリーカンパニーの団長も怯えるわ。ちっちゃい頃の私だったら確実に泣いてる) ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 32話、完結迄予約投稿済みです。 R15は念の為・・

夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。 三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。 だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。 レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。 イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。 「子供の親権も放棄しろ!」と言われてイリスは戸惑うことばかりで、どうすればいいのか分からなくて混乱した。