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第1章 1度目の人生での反省点と今後の人生プラン

ロベインという男

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ロベイン・ミュート・ベルウィルという男は、王として相応しい器を持った男だった。王家の姓であるベルウィルと、王家の次に強い力を持つミュート公爵家の姓を持つ、血統も何もかも完璧な王であった。王家の象徴である銀髪を輝かせ、深い青色の瞳は国の先をいつも見据えていた。

王という役目を誰よりも果していた。

国のためならば誰よりも冷酷になれる男でもあった。


ロベインと初めて出会ったのはエンヴィが10歳の時だった。自分より4歳も年下の婚約者を前に、彼はとても優しかった。家や政治が絡む愛のない婚約だと10歳のエンヴィですらなんとなく理解はしていたのに。
だから、本当はロベインも愛する人と結婚したかっただろうと、自分に冷たく当たると予想していたが、その予想を裏切り彼はエンヴィを大切に扱った。

エンヴィは初めから愛のない婚約でも、お互いを尊重し合い、愛し合うことはできずともこの人とは支え合うことができるだろうと思った。

11歳から始まった厳しい妃教育も、ロベインを将来支えるためだと思って頑張った。黒持ちの能力も、自分の評価が上がればその婚約者のロベインの評判も上がると思い、多くの人の傷や病を治した。

ロベインが21歳、エンヴィが17歳の時、ボアラー侯爵家の読み通りロベインと腹違いであった第一王子が亡くなった。

当然、繰上げ式に第二王子であったロベインが王位継承権第一位になり、将来王になることが確実になった。
エンヴィは国母となり、2人で国の安寧を守ることになると、エンヴィは思っていたのだ。

ある問題が浮上するまでは。

いくら同性婚が認められているとはいえ、子ができる確率が低い同性同士の結婚に疑問を投げかけるものが多く出てきたのだ。王とは子をつくり、次の世代で国を率いる者を残すのも義務である、と。

この話題が王宮で出た時、エンヴィは焦りも何も無かった。王妃教育で散々言われたことだったからだ。

『王の妻であるということは、王の義務を理解し、ただただ国の安寧を支えることですよ。』

教育係に言われたことをエンヴィは理解し、納得した。
だから、ロベインが新たな妃を迎えて子を成すことにも賛成だった。
しかし、ロベインは新しい妃を迎えることを頑なに拒否したのだ。拒否をした理由は様々だった。
『兄上が亡くなってからまだ数ヶ月も経っていないのに、子を作るとは兄の死を軽んじているようではないか?』

『私は王に就いてからまだ年月もたっていない。子を作るよりもまず先にやらなければならないことが多くあるだろう』

『子を多くつくり、王位継承権争いの火種となり国を混乱に陥らせるのを避けたいのだ』

その理由のどれもが納得できるものであったため、早く御子を!とロベインに進言した家臣も口を閉ざした。


のらりくらりと、しかしはっきりと子はまだ早い、次の妃はいらないと断言するロベインにエンヴィは、

(ご自分の立場が盤石になるまで子は作らないおつもりなんだろう)

と考えた。
第一王子の死により繰り上げで王になったため、第一王子の母の生家、派閥などはロベイン失脚を望んでいる。そんな中で子ができたら、その子を祭り上げてロベインを退位に追い込むかもしれない。

王になったからと言って安心できるわけではないのだ。
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