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大西楓の章
第五話
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「そろそろ帰って勉強しないといけないので失礼させていただきます。小野さんもこんな人の頼みなんて聞かない方がいいですよ。この人なんて結局自分にとって都合のいいことしかしたくない人なんですから。二人がどんな関係なのか僕は知りませんが、あんまり深入りしない方が良いと思いますよ」
「帰るんだったら家まで送っていくよ。ほら、帰りにお父さんの分もケーキを買っていこうか」
「別にいいよ。俺だって一人で帰れるし。バスの時間とかも調べてるから気にしなくていいから。あんたが生きてたらまた二か月後に会わないといけないんだよな。早く大人になりたいよ」
僕は二人の関係がここまでこじれているとは思いもしなかった。僕の知っている親子は仲が悪いと言ってもこの二人のように一方的に敵対視されている人なんていなかったのだ。離婚の原因が大西さんの不倫だという事は聞いているのだけれど、ただ不倫をしただけだとしても圭司君の大西さんに対する態度は見ていて気持ちの良いものではない。
「せっかく時間を作ってもらったのにごめんね。あの子が小さい時にちょっと私が悪い事しちゃってさ、それをいまだに根に持ってるんだよね。私が悪いんで強く言えないのだけど、もう昔の事なんだから水に流してくれてもいいのにね。あんな子じゃないと思うんだけど、きっと元旦那が私の悪口を毎日言い聞かせているせいであんな風になってるんだと思うのよね。私が悪かったってのは認めるんだけどさ、そこまでネチネチしつこくされるのって男らしくないと思うんだよね。小野君はどう思うかな?」
「僕は当事者じゃないしどういった状況でそうなったのかわからないんで何とも言えないけど、他人が側にいてもあそこまで酷い態度を見せるっていうのは余程の想いがあるんだろうね。その原因をちゃんと聞いてどうすればいいか考えた方がいいんじゃないかな」
「小野君ってさ、結構堅物なんだね。同級生だから私の事を手放しで擁護してくれるかなって思ったんだけど、全然助けてくれなかったもんな。私がここを選んだ理由ってちゃんとわかってるのかな?」
「ここを選んだ理由って言われてもね。よくわからないよ」
「もう、そんなんじゃ女心を理解出来ないよ。ちゃんと女の言葉の裏を読み取らないとイイ男にはなれないんだからね。小野君の同級生である私が小野君の同席を望んだのってさ、私の味方になってほしいからに決まってるでしょ。それじゃなかったらわざわざこんな遠いところまで来ないよ。それに、バスが近くを走ってるなら先に言ってよね。ここって結構町中から離れているからタクシーじゃないとこれ無いと思ってもん。近くにバスが走ってるんだったら中学生でも一人で帰れちゃうでしょ。本当にそう言うところは抜けてるよね。帰りも私が送って行って無理やりにでも私の所に来させようとしてたのにさ。全部計画が失敗だよ。ねえ、次はちゃんと協力してくれるんでしょうね?」
「協力しろって言われてもさ、僕はどちらかの味方ってわけでもないし、場所を提供しただけなんだけどね。それに、そんな事しないでちゃんと誠実に向き合った方がいいんじゃないかな。きっと圭司君は大西さんの考えていることを見透かしているんだと思うよ。それじゃなきゃここから歩いてバス停まで向かおうとは思わないもん」
「それってどういう意味なの?」
「どういう意味って、ここからバス停までは二キロくらい離れているよ。普通に歩いていこうって思うような距離じゃないと思うけどね。それも、そのバス停からは駅まで直通なんだけど、圭司君の住んでいる家ってここから駅までの間にあるの?」
「そんなの知らないわよ。住んでる場所を知っているならそこまで行ってるし。なんでか知らないけど二人とも私に教えてくれないのよ。なんで教えてくれないのよ」
「さあ、僕にはわからないけど、何か教えたくない理由でもあるんじゃないのかな」
「きっと私と圭司の仲を今以上に裂こうとしているのよ。元旦那の実家に行っても家の場所は教えてくれなかったし、いつの間にか引っ越してたし。それに、なんで元旦那は私と会おうとしないのよ。元旦那のお父さんもお母さんも私には会ってくれたのに、元旦那だけは離婚してから一度も私に会おうとしないのよ。私ってそんなに責められるような事したのかな?」
「僕は本当に知らないんだけど、大西さんってそんなになるような事したの?」
「別にそこまで酷いことはしてないと思うけど。元カレと定期的に会ってただけだし、それってそんなに悪い事なのかな?」
「定期的に会ってたって、それは元旦那さんにちゃんと報告してたんだよね?」
「報告なんてするわけないでしょ。そんな事をしたら怪しまれちゃうじゃない。私は別に波風立てたくてそうしてたわけじゃないんだからね。気付かれなかったらそれでいいと思ってたのよ」
「でも、元旦那さんに言わないで会ってたって事は、やましい気持ちはあったって事だよね?」
「まあ、そうなるわね。でも、私は別れても友達でいたいタイプなのよ。別れてそれっきりってのは何か寂しいじゃない。だから、私は友達として仲良くしてたのよ」
「友達賭してって事は、男女の関係じゃないって事なんだ」
「男女の関係って言うか、肉体関係って感じかな。長年付き合っているとさ、お互いに気持ちいいところとか言わなくてもわかるって言うか、お互いに本当に楽しいのよね。誰か一人でもちゃんとした仕事をしてくれていたらさ、今とは違う形になってたんだろうね」
「誰か一人でもって、相手は複数人いるって事なの?」
「まあ、私も過去にはいろいろな人と付き合ってたからね。でも、その人達全員と繋がったままってことも無いのよ。中には本当に喧嘩別れした人もいるんだからね。そう言う人に限って上手かったりするんだけどね」
僕は何となくではあるが、大西さんがあそこまで嫌われている理由がわかったような気がする。高校生の時から自由奔放な印象は持っていたのだけれど、大人になってもそれが変わっていないというのは普通に驚いてしまった。
もしかして、圭司君と元旦那さんが血の繋がりが無いのではないかと思ってしまったのだが、それを聞く勇気は僕にはなかった。
「帰るんだったら家まで送っていくよ。ほら、帰りにお父さんの分もケーキを買っていこうか」
「別にいいよ。俺だって一人で帰れるし。バスの時間とかも調べてるから気にしなくていいから。あんたが生きてたらまた二か月後に会わないといけないんだよな。早く大人になりたいよ」
僕は二人の関係がここまでこじれているとは思いもしなかった。僕の知っている親子は仲が悪いと言ってもこの二人のように一方的に敵対視されている人なんていなかったのだ。離婚の原因が大西さんの不倫だという事は聞いているのだけれど、ただ不倫をしただけだとしても圭司君の大西さんに対する態度は見ていて気持ちの良いものではない。
「せっかく時間を作ってもらったのにごめんね。あの子が小さい時にちょっと私が悪い事しちゃってさ、それをいまだに根に持ってるんだよね。私が悪いんで強く言えないのだけど、もう昔の事なんだから水に流してくれてもいいのにね。あんな子じゃないと思うんだけど、きっと元旦那が私の悪口を毎日言い聞かせているせいであんな風になってるんだと思うのよね。私が悪かったってのは認めるんだけどさ、そこまでネチネチしつこくされるのって男らしくないと思うんだよね。小野君はどう思うかな?」
「僕は当事者じゃないしどういった状況でそうなったのかわからないんで何とも言えないけど、他人が側にいてもあそこまで酷い態度を見せるっていうのは余程の想いがあるんだろうね。その原因をちゃんと聞いてどうすればいいか考えた方がいいんじゃないかな」
「小野君ってさ、結構堅物なんだね。同級生だから私の事を手放しで擁護してくれるかなって思ったんだけど、全然助けてくれなかったもんな。私がここを選んだ理由ってちゃんとわかってるのかな?」
「ここを選んだ理由って言われてもね。よくわからないよ」
「もう、そんなんじゃ女心を理解出来ないよ。ちゃんと女の言葉の裏を読み取らないとイイ男にはなれないんだからね。小野君の同級生である私が小野君の同席を望んだのってさ、私の味方になってほしいからに決まってるでしょ。それじゃなかったらわざわざこんな遠いところまで来ないよ。それに、バスが近くを走ってるなら先に言ってよね。ここって結構町中から離れているからタクシーじゃないとこれ無いと思ってもん。近くにバスが走ってるんだったら中学生でも一人で帰れちゃうでしょ。本当にそう言うところは抜けてるよね。帰りも私が送って行って無理やりにでも私の所に来させようとしてたのにさ。全部計画が失敗だよ。ねえ、次はちゃんと協力してくれるんでしょうね?」
「協力しろって言われてもさ、僕はどちらかの味方ってわけでもないし、場所を提供しただけなんだけどね。それに、そんな事しないでちゃんと誠実に向き合った方がいいんじゃないかな。きっと圭司君は大西さんの考えていることを見透かしているんだと思うよ。それじゃなきゃここから歩いてバス停まで向かおうとは思わないもん」
「それってどういう意味なの?」
「どういう意味って、ここからバス停までは二キロくらい離れているよ。普通に歩いていこうって思うような距離じゃないと思うけどね。それも、そのバス停からは駅まで直通なんだけど、圭司君の住んでいる家ってここから駅までの間にあるの?」
「そんなの知らないわよ。住んでる場所を知っているならそこまで行ってるし。なんでか知らないけど二人とも私に教えてくれないのよ。なんで教えてくれないのよ」
「さあ、僕にはわからないけど、何か教えたくない理由でもあるんじゃないのかな」
「きっと私と圭司の仲を今以上に裂こうとしているのよ。元旦那の実家に行っても家の場所は教えてくれなかったし、いつの間にか引っ越してたし。それに、なんで元旦那は私と会おうとしないのよ。元旦那のお父さんもお母さんも私には会ってくれたのに、元旦那だけは離婚してから一度も私に会おうとしないのよ。私ってそんなに責められるような事したのかな?」
「僕は本当に知らないんだけど、大西さんってそんなになるような事したの?」
「別にそこまで酷いことはしてないと思うけど。元カレと定期的に会ってただけだし、それってそんなに悪い事なのかな?」
「定期的に会ってたって、それは元旦那さんにちゃんと報告してたんだよね?」
「報告なんてするわけないでしょ。そんな事をしたら怪しまれちゃうじゃない。私は別に波風立てたくてそうしてたわけじゃないんだからね。気付かれなかったらそれでいいと思ってたのよ」
「でも、元旦那さんに言わないで会ってたって事は、やましい気持ちはあったって事だよね?」
「まあ、そうなるわね。でも、私は別れても友達でいたいタイプなのよ。別れてそれっきりってのは何か寂しいじゃない。だから、私は友達として仲良くしてたのよ」
「友達賭してって事は、男女の関係じゃないって事なんだ」
「男女の関係って言うか、肉体関係って感じかな。長年付き合っているとさ、お互いに気持ちいいところとか言わなくてもわかるって言うか、お互いに本当に楽しいのよね。誰か一人でもちゃんとした仕事をしてくれていたらさ、今とは違う形になってたんだろうね」
「誰か一人でもって、相手は複数人いるって事なの?」
「まあ、私も過去にはいろいろな人と付き合ってたからね。でも、その人達全員と繋がったままってことも無いのよ。中には本当に喧嘩別れした人もいるんだからね。そう言う人に限って上手かったりするんだけどね」
僕は何となくではあるが、大西さんがあそこまで嫌われている理由がわかったような気がする。高校生の時から自由奔放な印象は持っていたのだけれど、大人になってもそれが変わっていないというのは普通に驚いてしまった。
もしかして、圭司君と元旦那さんが血の繋がりが無いのではないかと思ってしまったのだが、それを聞く勇気は僕にはなかった。
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