くりきゅういんうまなとイザーと釧路太郎

釧路太郎

文字の大きさ
16 / 42
プロローグ

第十五話 現実世界のクラスメイト

しおりを挟む
 偽福島君と言われるのが気に入らいない偽福島君は本物の福島君を見てみたいと言っていたのだが、あっちの世界に行くことが出来ない私達にそれを実現させるのは不可能かと思われた。
「向こうに行けないんだったらさ、行かないで覗いちゃえばいいんじゃないか。ほら、うまなはそいつのいた町に行ったんだし、今なら繋がりも出来てるんだから覗くことも出来るだろ。俺の描いたこのテレビはこいつの友達が何してるか見ることが出来る機能があるテレビなんだからさ」
「なるほど。それは良い案だな。福島まさはるはいつも私が思いつかないような奇抜なアイデアで驚かせてくるな」
「全くですね。なんでそんなに奇抜なアイデアが思い浮かぶのに小説が書けないんでしょうね。ちょっと不思議ですよ」
「俺はイラストが描けても漫画は無理なタイプなんだよ。そいつだって小説は書けても俳句や短歌は無理だって口だろ?」
「いえ、私は俳句とか川柳も投稿してました。そんなに評価はされていなかったですけど」
「うん、私もこいつの俳句は見たぞ。短歌に近いものもあったし詩もいくつかあったと思うぞ」
「私は見てないですけど、福島君のその例えって間違ってるような気がするな」
「そんなのはどうでもいいんだ。さっさとこいつの友達の様子を見るぞ。ほら、さっさとこれを創れって」
 この時私はうまなさんの能力を始めて目の当たりにしたのだが、何か特別な儀式を行うのでもなく何か特別な呪文を唱えるのでもなかった。そっと指で絵をなぞっていくと、いつの間にか目の前にテレビが現れていたのだ。
「じゃあ、お前の友達が何をしているのか見てみることにしようか」

 見慣れた光景が画面の中に広がっているのはとても不思議な気持ちになっていた。約三年ぶりに見る故郷の光景は特に変わった様子も無いのだけれど、学校の近くにあった商店がコンビニに変わっていたのは意外だった。
「でもさ、私達も無事に卒業出来て高校に入れるってのも不思議なもんだよね」
「そうだよね。あれから趣味に走らず勉強を頑張ったおかげだったかもね」
「だね。鈴木さんがあの時転校しなかったら私達も勉強しないでずっとアレ続けてたかもしれないんだよね。そうなったら今の高校に受からなかったかもしれないな」
「そうかもしれないね。今頃鈴木さんって何してるんだろうね。全く話も聞かないし、どこに行ったのかも誰も知らないもんね」
 久しぶりに見た伊藤さんと石原さんは少し背が伸びたように見える。髪型もちょっとおしゃれになってるけど、二人とも凄く大人っぽくなってるな。私もあんな風に変われてたら良かったな。
「何だ、お前の友達か?」
「はい、私と一緒にオリジナルアニメを作ってた伊藤さんと石原さんです。二人ともちょっと大人っぽくなってますね」
「そうなのか。お前の友達はお前の話をしてるんだな」
「そんな事よりさ、俺の偽物はどこにもいないじゃないか。もしかして、死んでるのか?」
「ちょっと、縁起でもないこと言わないでください。これって場所移動とか出来るんですか?」
「出来るんじゃないか。そのリモコンのボタンで操作できると思うぞ」
 私はうまなさんから手渡されたリモコンを適当に操作してみた。チャンネルを変えるたびに見慣れた風景が次々と映し出されているのだけれど、そのどれにも福島君の姿は映し出されることが無かった。偽福島君の言ってることが本当だって可能性もあるんだろうか。でも、そんなことは無いと思って私は必死になってチャンネルを変え続けた。
「イチカってさ、福島君と付き合ってないの?」
「付き合ってないよ。そういう関係じゃないって、ただの友達だよ」
「でもさ、二人は本当にお似合いだと思うよ。あの時だって鈴木さんにイチカと福島君の小説を書いてもらって喜んでたでしょ」
 あれは松本さんのために書いた小説じゃないんだよ。本当は私と福島君の物語だったんだけど、あれをそのままみんなに見せるのが怖くて私を松本さんに変えちゃったんだよね。そんな事はみんな知らないわけだから私が福島君と松本さんの小説を書いたと思ってたみたいんだけど、本当はそうじゃなかったって松本さんには言っておいた方が良かったかな。でも、そんなことを言ったところで何にも変る事なんて無いと思うけどね。
「小説って、私と福島君の名前が使われてるやつだよね。私も読んだけど凄く感動したよ。で、アレってリオンちゃんが書いてくれたんだっけ?」
「ちょっと何言ってるのよ。私にあんな小説書けるわけないでしょ。国語の成績だって良くないんだよ。私が休んでた時に仲良くなった鈴木さんがイチカとマサハル君のために書いてくれたって言ってたじゃない。あ、わかった。私が休んでた時の話だから気付かないと思って騙そうとしてるんでしょ。そんな簡単に騙されたりしないって。ミオも私の事騙そうとしてるの?」
「そんな事しないって。でも、イチカって鈴木さんと仲良くなりたいって言ってなかったっけ?」
「ちょっと、二人して何言ってるのよ。私そんなこと言った覚えも無いし、大体鈴木さんって知らないんだけど。小学校の時に他のクラスにいたような気もするけど、別に仲良くしたいとか思ったことは無かったけどな。リオンちゃんが私の事騙そうとしてそれにミオも一緒に私の事騙そうとしてるんでしょ。意地悪過ぎるって」
「え、イチカは本当に鈴木さんの事忘れちゃったって事?」
「忘れるも何も、私はそんな人知らないって。みんなどうしちゃったの?」
「それはこっちのセリフだって。急に学校に来なくなったと思ったら転校しちゃってたってのを知ったからってさ、そんな風にいなかった人扱いするのは良くないと思うな。イチカはそういう事する人じゃないと思ってたから、ちょっとショックかも」
 あのことが原因で学校に行かなくなったのは私が悪いのであって松本さんには何の落ち度もない。私一人が悪いわけなのだから嫌われたとしても仕方ないとは思っていたけれど、こんな風に忘れられてしまっているという事を知ったのは普通にショックだった。
「え、鈴木さんの事を覚えてないとか本気で言ってるの。鈴木さんと楽しそうに給食食べてたのも見てたし、その後に鈴木さんの小説を嬉しそうに読んでたじゃないか。自分を主役にしてもらえたって喜んでたのに、それも覚えてないって事なのか?」
「給食を食べていた後に小説を読ませてもらったことはわかるよ。でもね、その小説を書いてくれた人が誰だったか思い出せないの。なんで私だけその鈴木さんって人の事がわかってないの。ねえ、どうしてみんなは鈴木さんの事を知ってるの?」
 松本さんが私の事を完全に忘れているという事はショックだったけど、みんなの中心にいるべき松本さんがみんなの輪の中から外されそうになっている場面を見るのはそれ以上にショックだった。
 伊藤さんも石原さんも石川さんも泉さんも福島君も岡田君もお父さんもお母さんも私の事を覚えていてくれているのに、松本さんは私の事を何も覚えていないというのは逆に私が悪いんじゃないかと思えていた。あの時私に声をかけてくれなければ今みたいに松本さんがみんなから責められることも無かったかと思う。それは本当に申し訳ない気持ちになってしまう。あの時、私も伊藤さんや石原さんと一緒に休んでいれば、こんなにつらそうな松本さんの姿を見ることも無かったんじゃないかな。
 これ以上見ていられないと思った私は、そっとテレビの電源を消したのだ。何も映っていない画面に反射していた私の顔は、画面の中で見た松本さんと同じような表情をしていたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...