くりきゅういんうまなとイザーと釧路太郎

釧路太郎

文字の大きさ
25 / 42
うまなちゃんのチョコレート工場

うまなちゃんのチョコレート工場 第四話

しおりを挟む
 けばけばしい色の看板を見ながら若干不安を覚えつつあった私ではあったが、イザーさんも四天王の皆さんも何も変なところは無いという感じでいたって冷静にしていた。狼狽えている私がばかみたいに思われそうだったので一応冷静を装ってみたのだけれど、どう見ても繁華街にある怪しい店が集まっているようにしか見えなかった。
「やあやあ皆さん。遠いところまでよくお越しいただきました。こんな遠いところに工場を作ったのには訳がありまして、今から順番にその理由を説明しようと思っています。と、その前に大事な事を一つだけ言わせてもらうよ。ブルーラグーン君にコープスリバイバー君にアキダクト君は残念ながらこの工場の中に入ることは許されないんだ。遠いところをわざわざやってきたのに中に入ることを許されないなんて納得出来ないとは思うんだけど、ここは私の言う事を大人しく聞いて欲しいな。これは意地悪で言ってるんじゃなくて、私は君達に優しく忠告しているって事なんだからね」
 私達の後ろにいきなり現れたうまなちゃんが四天王のうち三人にそう伝えたのだけど、そんな事を急に言われても納得なんて出来ないだろう。名指しされて工場に入ることを拒まれた三人がうまなちゃんに食って掛かるところを想像したのだが、その想像は私の頭の中だけで完結していたようだ。
「優しく忠告してくれるという事は何かあるって事ですね。私達が中に入ると良くない事が起こるか、私達の身に何か災いが降りかかるという事ですよね?」
「うん、君達は聞き分けが良くて助かるよ。申し訳ないとは思うけど今回は我慢してもらうことになるからね。また別の機会に君達に楽しんでもらえるように私も頑張るから、期待していてくれると嬉しいな。その為にも釧路太郎先生にはより良い作品を書いてもらう必要があるんだけどね」
「そうですね。俺達も釧路太郎先生の作品に期待してますよ。次は俺達が大活躍するような話をお願いしますね」
 うまなちゃんと名指しされた三人は楽しそうにしているのだけれど、私はチョコレート工場の話なんて作った覚えはないのだ。もしかしたら今まで書いてきたどれかの小説に出てきたのかもしれないけどメインとして登場させたことは無かったと思う。
 私の頭の中にはいくつもの疑問が浮かんでは増えていっていて今の状況を理解することが出来ていないのだけれど、そんな私の事なんてお構いなしに状況はどんどん変わっていっていた。
 名指しされた三人の四天王は工場内に入ることも無くバスに戻っていったのだが、バスに乗った瞬間に子供の姿から何度か見かけたような厳つい男性の姿に戻っていた。あんなに厳つくて屈強な男性たちがさっきまでバスの中で陽気に歌っていたのかと思うと少しだけ頭が痛くなってきた。私もあんな風に楽しそうに歌っていくようになってしまうのかと少し不安になっていたのだけれど、そんな私の事をイザーさんは優しい眼差しで見つめてくれていた。
 おそらくだけど、イザーさんは私が考えている事は理解せずに単純に優しく見守ってくれているだけだと思う。うまなちゃんの暴走を止めたり何か問題が起こった時には適切な対応を取ってくれるイザーさんではあるけど、自分の利にならない事にはとことん無関心な場面が見られるので私の事を本気で心配なんてしてはいないだろう。自分の事は自分でやれと言われたらそこまでなのだけど、これまでの決して長くはない付き合いの中で私が感じたのは、イザーさんはわりと私が困っている姿を見るのが好きっぽいという事だ。
 あまりネガティブな事を考えるのは良くないとは思うのだけれど、記憶に残るか微妙なラインで嫌がらせをしてくることも多いイザーさんの事を本気で信頼しても良いのかと不安になることもあるのだ。でも、これから見学に行く工場で私が不安を感じるような事はきっと起きないはずだ。そう信じている。

「みんな気になっている事があると思うから先に私から説明しておくね。どうして私の家からこんな離れた場所に工場なんて作ったんだろう。って思ってると思うんだけど、当たってるかな?」
 まあ、それはみんな思ってはいるだろう。甘味の圧倒的に少ないこの世界に置いてチョコレートがどれほど貴重なモノなのかわかっていないけれど、甘みに飢えた人達がチョコレート工場を襲う危険性を考えてあえて遠い場所にしたという事だろうか。それとも、チョコレート工場とは言え住んでいる家の近くに工場があるのを良く思わない人達がいるという事なのかもしれない。私が住んでいた世界でもわざわざ工場の近くに住む人なんていなかったと思うし、その考えも間違いではないと思う。
「うまな様の家から離れた場所に作る理由ですか。そんなのわからないですよ。理由なんてあるんですか?」
 四天王の人のその言葉にうまなちゃんが答える前に私は思っていたことを簡潔にまとめて言ってみた。我ながらうまくまとめることが出来たと思っていたのだけれど、そんな私の事をイザーさんは冷ややかな目で見てきたのだ。
「そんなドヤ顔で言うような事でもないと思うな。でも、愛華ちゃんの世界ではそうだったかもしれないですけど、この世界でそんな事を気にする人なんていないと思いますよ。大体、うまなちゃんの家の中にだっていろんな工場もあるんだし、発電所だってあるんだよ。何か問題があったとしてもうまなちゃんの力でそれを解決する事も出来るんだからね。私もその時はちゃんと協力するし。それに、この世界は確かに甘いものが極端に少なくて甘いものが食べたいなって思う事もあるけどさ、工場で作っている物を奪ってまで食べようとする人なんていないよ。そんなルール違反はこの世界ではとてつもない重罪だからね。愛華ちゃんの世界では窃盗は大した罪にならないかもしれないけどさ、この世界では窃盗なんてしたら一族郎党まで路頭に迷うことになっちゃうからね」
 最後のは本気なのか冗談なのかわからないし、私にドヤ顔で言うような事じゃないと言ってるイザーさんの方がドヤ顔になっている気がするんだけどな。
「でも、そうだったとしたらこの世界で物を盗む人がいないって事ですか?」
「うん、いないよ。盗むなんて真似はせずに力ずくで奪ってしまえばいいだけの話だからね」
「ちょっと待ってください。それって、窃盗じゃなくて強盗って事じゃないですか?」
「そうかもしれないし違うかもしれないな。強盗って言うよりも略奪って言った方があってるような気もするけど、イザーはどう思うかな?」
「さあ、私はそんなこと考えた事ないんでわからないよ。この世界に存在している物は全てうまなちゃんのモノだし、うまなちゃんのモノを盗ろうなんて人はいないと思うよ」
 イザーさんの言葉を聞いて私の中で某ジャイアンが浮かんできたのだけれど、少しだけ冷静に考えるとそれとは話が違うように思えた。イザーさんの言う通り、この世界の全てはうまなちゃんが作り出した世界なんだし、そう考えるとこの世界のモノは全てうまなちゃんのモノと言っても間違いではないような気もする。
 でも、そう考えてしまうと、今こうしている私って本当に私であるのだろうか。うまなちゃんが作り出した架空の私だったりするのだろうか。
「愛華ちゃんは愛華ちゃんのままこの世界にやって来てるからそんな心配しなくても大丈夫だよ。バスに乗った四天王の三人もそこにいる四天王の三人も私もイザーも福島まさはるが作ったキャラクターではあるけど、愛華ちゃんは愛華ちゃんのままこの世界に入って来てるんだからね。ほら、見た目だって自分の知ってる愛華ちゃんのままでしょ?」
 うまなちゃんは私の心を確実に読んでいると思うんだけど、それって私が本当の私ではなくうまなちゃんによって作り出された私って事なのかな。凄く不安になっていた私は工場の入口にある身だしなみを確認するための姿見を見ることにした。
「ちょっと待って、この鏡に映ってるのって私じゃないよ。顔は私だと思うけど、私ってもっと胸が大きいもん。この鏡に映ってるのは私じゃない」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...