くりきゅういんうまなとイザーと釧路太郎

釧路太郎

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うまなちゃんのチョコレート工場

うまなちゃんのチョコレート工場 第五話

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 鏡に映っている私は見慣れた顔の私なのだけど、その体はどう考えても私の体ではなかった。まるで中学生の時から成長していないような体型の私がいる。いや、じっくり見てみると、中学生の時の私そのもののような気もしてきた。
「いや、映っているのは愛華ちゃんだよ。いつもと同じ、何も変わらない愛華ちゃんそのものだよ」
 うまなちゃんもイザーさんも四天王の三人も私で間違いないというのだけれど、どう見ても私とは違う体型になっている。どう考えても、私の胸が小さくなっているのだ。中学生の時はそんなに大きくなかったのは間違いないのだけれど、この世界に来てから大人になった私は胸だってお尻だって少し成長しているんだ。それは間違いない事なんだ。
「でも、私の胸はこんなに小さくなかったです。こんなに平たくなかったですよ。ここに来たばっかりの時はそうだったかもしれないですけど、私だって少しは成長してるんですからね。こんなに小さいままじゃないはずです」
 うまなちゃんもイザーさんも四天王の皆さんもそれなりに胸は大きい。たぶん、偽福島君の趣味でそういう風に大きい胸の女性になっているんだろう。本当のうまなちゃんもイザーさんも今見ている姿と違ってそこまで大きい胸ではなかったと思う。四天王の一人もそんなに大きい胸ではなかったと思うんだけど、今は普通よりも大きい胸になっているのだ。これは偽福島君の趣味で大きい胸の女性になっているという事なんだと私は思っているのだ。
「そういうけどさ、愛華ちゃんの胸って成長してないと思うよ。ほら、初めて会った時もそんな感じだったからな。福島まさはるが撮ってくれた写真を見ても一緒だろ。ね、一緒でしょ?」
 そう言って手渡された写真に写っている私は確かに胸は小さい。小さいというか、凹凸がほとんどない。でも、それはここに来たばっかりの時の姿なので仕方ないのだ。まだまだ成長期だった私の胸は成長しようと頑張っている段階だっただけなのだ。だから、この時は小さくても仕方ない。
「うまなちゃんが見せてくれた写真の私は確かに胸は小さいけど、これって私がここに来たばっかりの写真だよね。その時と違って今では大きくなっていたのに。もしかして、その写真の姿になるようにしたって事なの?」
「いや、さっきも言ったけどさ、愛華ちゃんは何も変えてないよ。そのままの状態でこの世界に招待してるんだよ。イザーや四天王たちはそのままだとこの世界に入ることが出来ないから福島まさはるにその姿を描いてもらってるんだけど、この世界の創造主である釧路太郎先生、つまり愛華ちゃんは姿を変える必要が無いんだよ。というか、姿を変えてしまうとこの世界の影響を受けて愛華ちゃんが愛華ちゃんでなくなるかもしれないからね。そうなるとさ、色々と不都合が生じちゃうんだよね」
「あの、もう一つ気になってたことがあるんですけど、いいですか?」
「何かな。気になることがあったら早めに聞いてくれると嬉しいね」
「私の方小説の中に、チョコレート工場の話なんてありましたっけ。いまいち覚えてないんですよね」
 今までたくさん小説は書いてきたけど自分で作った作品ばかりなのだから細かくは覚えていなくても大体は覚えている物だ。完結をどうするか考えてはいるのに途中で書くのを止めてしまった作品もあるし、まだこの世に出ていない作品もある。その多くの作品の全てを完璧に覚えているとは言えないけど、さすがにチョコレート工場なんて面白そうな題材を忘れるはずが無いと思うのだ。チョコレート工場が舞台になる映画を見た事もあるしチョコレート工場が舞台になっているアニメだって見た事はある。ただ、どうしても私がチョコレート工場を舞台にした作品を書いたという記憶が無いのだ。そもそも、チョコレート工場を舞台にした作品を書こうなんて思ったことすらない。
 そんな私の考えを読んだのか、うまなちゃんは若干慌て気味にイザーさんと何か相談をしている。イザーさんだけでは答えが出ないからなのか、四天王の人達も呼ばれて五人で話し合いを始めている。私は特にやることも無いので見守ってはいるのだけれど、間違いがそろそろ訂正されているかと思って姿見をもう一度見てみたのだが、そこに映し出される私の姿は先ほどと何も変わってはいなかった。
 いつの間にか五人の中にセクシーな格好をしたお姉さんも加わって十人くらいで真剣に話し合っているようなのだが、結論が出る様子は全くないように思えた。
「えっとだね、今回のチョコレート工場の話なんだけど、愛華ちゃんが書いた話ではなかったみたいなんだ。ただ、愛華ちゃんではないけど釧路太郎先生の作品ではあるんだよね。理解は出来ないかもしれないけど、それだけは間違いじゃないんで安心して欲しい」
 安心して欲しいと言われても、一体どういうことなのか私には理解出来なかった。
 私の他にもう一人釧路太郎と名乗っている人がいて、その人の作品をうまなちゃんが気に入って世界を新しく創り出したという事なのだろうか。それはそれで面白そうではあるのだけれど、もう一人の釧路太郎が誰なのか気になってきた。
「私と同じペンネームの人がいるって事ですか?」
 うまなちゃんは申し訳なさそうな顔をいったん私から逸らすと、再びイザーさん達と話し合いを始めていた。また長くなりそうだなと思っていたのだが、私が姿見をもう一度見ようと思った時にはうまなちゃんから衝撃の一言を告げられたのだった。
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