くりきゅういんうまなとイザーと釧路太郎

釧路太郎

文字の大きさ
39 / 42
うまなちゃんと愛玩機械人形

うまなちゃんと愛玩機械人形 第四話

しおりを挟む
 お姉さんはどうやって持っていたのかわからない人達と私の事を交互に見て困っているようだった。なぜお姉さんが困っているのかわからないけれど、お姉さんは私の質問にどうやって答えようか考えているみたいだ。
「あの、変な事を聞いてすいません。でも、気になっちゃって」
「そうだよね。気になるよね。私も片手で三人も持ち上げてるのを見たらどうやってるんだろうって思うもん。簡単に説明する事は出来るんだけどさ、先生はきっと納得してくれないんだよな。私が先生の立場だったらたぶん納得出来ない理由だと思うんだよね。でも、それでしか説明なんて出来ないし、難しいところだよね」
 今の状況を見て私は何を言われたとしても、たとえそれが納得出来ないような事だったとしてもお姉さんの事を否定したりなんてしないだろう。私がまだ知らない機械だってあるんだろうし、目に見えないくらい細いのに耐久力が異常に高いものだってあるかもしれない。そんな凄いものを持っている可能性だってあるはずなのだ。
「あのね、私が使ってる魔法は」
「ちょっと待ってください。魔法なんてあるはずないじゃないですか。科学によって超能力や心霊現象が否定されてもう三世紀以上経ってるんですよ。それなのに、魔法だなんてありえないでしょ。三人を持ち上げても一切ブレないのに視認することが出来ないような機械を隠したいって気持ちはわかりますよ。でも、魔法なんて非科学的なものを持ち出すのはちょっと違うと思うんですよね。今時そんなの子供だって騙されないですよ」
「そんな風に思われるのは仕方ないけどさ、本当に魔法なんだから他に言いようがないんだよね」
「またまた、そんな冗談言ったって信じないですよ。それに、私は人に触れることでその人がどんな機械を使っているかわかっちゃうんです。お姉さんに触れてこの目で見ただけでどんな機械を使ってるかすぐに分かっちゃうんですから。そんな冗談を言うお姉さんに触れても文句言わないでくださいよ。どんなに凄い機械だったとしても私は人に伝えるのが苦手なんで言いふらしたりとかしないですから、そこだけは安心してくださいね」
 こんな事を言ってしまっては誰も触らせてくれたりなんてしないのだけど、この力を完璧に使うためには相手の同意が必要になるのだ。まあ、同意をしてくれなかったとしてもこの説明をすれば多少は私に見られるという意識が向くので完璧に近い形で覗くことが出来るようになるのだ。
「別にいいけど。先生にそんな力があるなんて知らなかったな。戦う以外の機械もあるって聞いてたんだけど、そんなのを選ぶなんて先生らしいね」
 お姉さんは私に向かって何のためらいもなく右手を差し出してきた。何の疑いも持たずにスッと差し出されたその手を見て私は逆に何か裏があるのではないかと思ってしまい躊躇していたのだが、お姉さんの手が私を誘うように何度も何度も手招きをしてきていたのだ。自分から言った手前無視するわけにもいかず、私は恐る恐るお姉さんの手を握ってゆっくりとお姉さんの事を見ていた。
「どうかな。何か変わったモノでも見えるかな?」
「いえ、何も見えないです。というか、お姉さんの体に機械が全然ないんですけど。私の目で見えないなんて、どれだけステルス性能が高いんですか。さっきだって物音一つ立てずに森の中に消えていってたし、うまなちゃんって人はとんでもない科学者でお姉さんはその機能を確かめるテストパイロットみたいな関係だったりするんですか?」
 私は心の底から困っている。今までこの手で触れて機械が見えなかったことは一度も無いのだ。この力を宣言せずに触れたとしても機械の部分くらいは感じ取ることが出来るのだけど、お姉さんに対しては私のこの力の事をちゃんと説明して納得してもらったうえで行っているので機械の部分が見えないなんてことは無いと思うんだけど、お姉さんの事をいくら見ても肝心の機械はどこにも見当たらなかった。
「ねえ、私の体に何かヘンなところでもあったのかな。そんなに見つめられちゃうと、ちょっと意識しちゃうかも」
 私はお姉さんの事を何度も何度も見ていた。お姉さんの体にはどこにも機械なんて無かった。お姉さんが持っている人達に触れてみたんだけど、この人達はどこからどう見ても頭と眼球以外は機械で出来ているし、私にもそう見えている。私の力は正常に働いているという事だと思う。
 このことから、考えられることはいくつかあるのだけど、その中で一番可能性が高いことは、お姉さんが使っている機械が私のよりもずっとずっと高性能で能力を無効化しているって事だろう。でも、それはちょっと現実的ではないんだよね。
 その次に考えられるのは、私みたいに人の対策としてステルス機能を極限まで高めているという事だ。これも限りなく無理な話だとは思うけれど、普段は機械を隠すために機能の全てを使っていていざという時だけ戦闘用に変化させるパターンを今まで何度か見た事があるのでソレに近いのかもしれない。でも、それもちょっとありえないんだよね。あれだけ静かに行動出来るような性能のモノを全く痕跡も感じさせないくらい綺麗に隠すことが出来るのだろうか。普通に考えて無理だとは思うんだけど、このお姉さんくらい強ければそれも可能なのかもしれないな。栗鳥院燦の字に殴られても微動だにしなかったくらいだし、それくらい凄い機械を使っている気もする。
「どうしちゃったのかな。私の体についてる機械って見つかったかな?」
「いえ、全然見つからないです。この人達を見ても壊れていないというのは確実なんですけど、お姉さんのは見つからないんです」
「そりゃそうよね。だって、私って生身の人間だからね」
 生身の人間だと言われても納得するしかない状況ではあるんだけど、私はその言葉を完全に信用する事は出来なかった。生身の人間なんて極少数しかいない訳だし、その人達だって危ない人達から命を狙われないように完全に隔離されているはずなのだ。
 危ない人達から命を狙われている。その言葉が私の中で引っかかっているのだけど、それは目の前に浮いている三人の体がうまなちゃんの命を狙っていたという事と結びついてしまうのではないだろうか。
 でも、そうなると命を狙われているうまなちゃんが生身の人間であることになると思うのだが、お姉さんが生身の人間であるという事の説明にはならないのではないだろうか。
 私の脳はいつにもましてフル回転しているのだけど、当然その答えなんて出るはずも無いのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...