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恋愛コレクション

第九話

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 どういうわけなのかわからないが、山口が俺と宮崎を残して先に帰ってしまった。せっかく隣に座ったというのに俺は山口とろくに会話をすることも出来なかったのだった。宮崎がいなければこの場にいることも無かったとは思うのだけれど、山口が帰ってしまった後に宮崎と二人でいるのは何となく気まずい感じがしていた。

「奥谷君も恋愛アプリって使ってるの?」
「ああ、使ったことはあるけど、最初の一回以外は何もいじってないかも」
「私もそうだったんだけどさ、奥谷君って白岩君とかとメッセージのやり取りとかしないの?」
「え、もしかして、宮崎は俺の事をホモだと思ってて好きな相手が頼之だと思ってるのか?」
「違う違う、違うよ。あのアプリってさ、両想いじゃなくてもポイント貰えるサービスがあって、それに私が奥谷君を招待したんだけど覚えてないかな?」
「そう言えばそんな事があったかもしれないな。すっかり忘れてたよ。ごめんな」
「大丈夫、気にしてないからさ。でさ、そのサービスを使ってやり取りすると結構ポイント貰えたりするんだよね。貯まったポイントで買い物とかも出来ちゃうし、結構使える店も多いから奥谷君も試してみたらいいんじゃないかな」
「試してみたらいいんじゃないかなっていうけどさ、俺はLINEも面倒であまり使ってないんだよ。そんな奴でもポイント貯まったりするのか?」
「結構貯まるよ。知らないうちにお小遣いくらい貯まってたりするからね。でも、男子ってあんまりやり取りとかしたりしないもんなのかな」
「どうだろうな。人によると思うんだけどさ、俺は頼之とも朋英とも学校で会った時くらいしかやり取りしてないんだよね。なんか、文章にして送るのって面倒でさ。俺はあんまり国語の成績もよくないし作文が苦手ってのもあるんだけど、そもそも携帯をいじってる時間ってあんまりないかもな」
「うーん、それじゃあポイントはあまり貯まらないかもね。でもさ、何気ないやり取りでもポイントが貯まっていくのって結構楽しかったりするよ。ポイントが貯まって交換出来ますよって連絡が来たらちょっと嬉しいからね。それにさ、言葉だけじゃ忘れちゃうこともあるからメッセージでやり取りするのもいいと思うよ」
「そうだな。でもさ、何となくメッセージをやり取りするのって面倒なんだよな。言葉で伝えるのって難しいって思うんだよな」
「じゃあさ、私が奥谷君に色々とメッセージを送ってもいいかな。ほら、山口さんの事とか協力出来ることあるかもしれないからさ」
「それなら俺も使うかもしれないな。幼馴染としても山口の事が気になるし、やっぱり宮崎っていいやつなんだな。昔から困ってる人を見捨てられないいやつだと思ってたよ」
「今は何にもないけど、これからどうなるかわからないしね。亜梨沙ちゃんたちは何もしないと思うけど、何かあったらちゃんと教えるよ」
「ありがとうな。何もないのが一番とは思うけどさ、万が一って事もあり得るから頼むわ。俺も信太たちが変な事をしないか見張ることにしているからな。お互いに情報を共有しような」

 いつも思っていたけれど、女子は本当におしゃべりが好きなんだと思う。俺は頼之や朋英と話すことはあっても他の奴と話すことはほとんどなかった。たまに山口に話しかけても相手にされていなかったりするんだけど、山口がもう少し社交的な人間だったら俺も他の人に話しかけていたりしたのかもしれないな。
 正直に言ってしまえば、俺は宮崎の事をあまり知らないのだ。ずっと同じ学校で過ごしてきた同級生ってだけで、お互いの事を話し合ったり知る機会というものは今まで無かったのだ。もしかしたら、宮崎と山口に何か共通点があるかもしれないし、それを見付けることが出来たら山口がもっと俺と仲良くなってくれるかもしれない。

 そう考えると、俺が宮崎と仲良くする事にもメリットがあるのかもしれないな。
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