百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎

文字の大きさ
9 / 127

第9話 転送ゲートは簡単には使えない

しおりを挟む
 工藤太郎がいる世界に行くための転送ゲートはサキュバスサイドの了承を得てから出ないと使用することが出来ない。
 異世界に行くことが出来るゲートを自由に使う事は向こう側からの侵略を容認するという事にもなりかねない。そんな理由があって使用には教員職員の過半数から利用許可を得る必要があるのだ。
 イザーが工藤太郎を助けに行くために転送ゲートを使用するという事に対して教員職員の過半数が利用許可を出すとは考えられないし、仮に過半数が利用許可を出したとしても最終的な判断を下す立場の理事長が許可を出すことはあり得ないのだ。工藤太郎が早い段階で戻ってくるという事はサキュバスにとって良いことが一つもなく、デメリットの方が大きいからそれも仕方ないと言えよう。

「だから、イザーちゃんがどれだけ頑張ったところで転送ゲートは使えません。過半数の許可を得たとしても、お父さんに頼んで不許可にしてもらうもんね。イザーちゃんが呪いに困っていてソレを助けてもらった恩があるとはいえ、私たちもはいそうですね頑張ってきてくださいね。なんて言えるわけないよね。だって、太郎ちゃんが戻ってきたら私たちが珠希ちゃんとデートする邪魔をされちゃいそうだし」
「珠希ちゃんとのデートの邪魔なんてさせないよ。私も珠希ちゃんとデートしたいけど、今回はうまなちゃんに譲ることにするよ。それに、私たちが魔王を倒しても三日間くらいは向こうの世界を観光してくると思うし。そもそもさ、魔王を倒すような人を向こうの人だってすぐには返そうとしないでしょ。うまなちゃんだって自分が倒せないような魔王を倒してくれた人がいたら感謝とか伝えて宴会とかするんじゃない?」
「それはそうだけど、イザーちゃんが太郎ちゃんの手伝いをしたら二時間以内に魔王を倒して宴会になってそうだもん」

「まあ、その可能性はあるかもしれないけどさ、私は今回に限っては本当にうまなちゃんを応援してるんだからね。珠希ちゃんと海でデートするってのを私もしてみたかったけど」
「でも、すぐに魔王を倒して帰ってきたら珠希ちゃんとデートしようとするでしょ?」
「そんなことしないよ。すぐに帰ってきたとしても、今回は私が珠希ちゃんとのデート相手に立候補しないし。次回からはちゃんと本気で挑むけどね」
「そうは言うけどさ、向こうの世界に行けないんだったら珠希ちゃんとのデートにイザーちゃんも立候補しちゃうんじゃないの?」
「だから、今回に限っては立候補しないって。私は太郎ちゃんを助けに行ってるからデートすること自体が無理なんだよ」
「でもでも、イザーちゃんは異世界に行くための転送ゲートを使うことが出来ないんだからこっちの世界に残るって事だし、そうなると珠希ちゃんとのデートに参加表明しちゃうって事になるんじゃないの?」

 何度も続くその問答はお互いに考えていることが異なっているという事もあって意見がすりあわされることはなかった。
 栗宮院うまなはイザーが転送ゲートを使って異世界に行くことは出来ないと思っているし、イザーは転送ゲートを使って工藤太郎を助けに行くと思い込んでしまっている。

「イザーちゃんがサキュバスの歴史が始まって以来最高のサキュバスで何でも出来るのは知ってるけど、そんなイザーちゃんだったとしても、異世界に行くためには転送ゲートを使わないと太郎ちゃんを助けに行けないのになんでそんなに自信を持って言えるの?」
「うまなちゃんの言う通りで、私は“転送しちゃう門”を使わないと他の世界に行くことは出来ないよ。だから、私は“転送しちゃう門”を使うってだけの話なんだけど」
「転送ゲートを使うって言ってるけどさ、それを使うための手続きは出来ないって話なんだよ。イザーちゃんがいくら強くて凄いサキュバスでも、許可なんて出すはずがないんだって。みんなサキュバスなんだし、レジスタンスの助けになるようなことはしてほしくないって思ってるんだよ」

「うまなちゃんの気持ちはわかるよ。私だってサキュバスの一員だしみんなと同じ考えなんだよ。でもね、私はちょっと前までわけのわからない呪いに怯えて何も出来ないような状態だったんだ。それを助けてくれたのはレジスタンスの人達なんだし、そのレジスタンスの人達が一番叶えて欲しい願いを叶えるお手伝いを出来るのにしないなんて、私にはとても出来ないよ。うまなちゃんだってさ、自分を助けてくれた人が困っていて、それを自分なら解決出来るって思ったら手伝おうって思うよね。そこにサキュバスとかレジスタンスとかは関係ないんじゃないかな。うまなちゃんだったら、この気持ちを理解してもらえると思うんだけど、わかってもらえないかな?」

「イザーちゃんの言ってることは理解出来るよ。あんなに弱ってるイザーちゃんを見たのは初めてだったし、本当に困ってるってのはわかってたよ。それに、私たちじゃあの時のイザーちゃんを救うことは出来ないってのも理解はしているよ。だけど、それを救ってくれたからってサキュバス全体の損失になるようなことはしてほしくないな。転送ゲートをイザーちゃんが使うための審理だってしてほしくない」
「大丈夫。うまなちゃんにも他のサキュバスにも迷惑なんてかけないよ。私が“転送しちゃう門”を使う事に許可なんて出してもらう必要ないし」

「それって、どういう意味?」

「だって、あの“転送しちゃう門”をココに持ってきたのは私だからね。と言うか、この世界に私が時からずっと私に使用の優先権があるんだけどな。うまなちゃんってそのあたりは何も聞いてなかったのかな?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

AV研は今日もハレンチ

楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo? AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて―― 薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ほのぼの学園百合小説 キタコミ!

水原渉
青春
ごくごく普通の女子高生の帰り道。 帰宅部の仲良し3人+1人が織り成す、ほのぼの学園百合小説。 ♪ 野阪 千紗都(のさか ちさと):一人称の主人公。帰宅部部長。 ♪ 猪谷 涼夏(いのや すずか):帰宅部。雑貨屋でバイトをしている。 ♪ 西畑 絢音(にしはた あやね):帰宅部。塾に行っていて成績優秀。 ♪ 今澤 奈都(いまざわ なつ):バトン部。千紗都の中学からの親友。 ※本小説は小説家になろう等、他サイトにも掲載しております。 ★Kindle情報★ 1巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B098XLYJG4 2巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B09L6RM9SP 3巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B09VTHS1W3 4巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0BNQRN12P 5巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CHFX4THL 6巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9KFRSLZ 7巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0F7FLTV8P Chit-Chat!1:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTHQX88H Chit-Chat!2:https://www.amazon.co.jp/dp/B0FP9YBQSL ★YouTube情報★ 第1話『アイス』朗読 https://www.youtube.com/watch?v=8hEfRp8JWwE 番外編『帰宅部活動 1.ホームドア』朗読 https://www.youtube.com/watch?v=98vgjHO25XI Chit-Chat!1 https://www.youtube.com/watch?v=cKZypuc0R34 イラスト:tojo様(@tojonatori)

処理中です...