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第15話 新たな悩み
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「こんないい場所が空いていてよかったね。あっちの方の席は船が見えて良いと思うんだけど、日向になっちゃってるからご飯を食べるのは大変そうだよね」
「だろうね。でも、船が好きな人にとっては最高の席なんじゃないかな?」
「確かにそうかも。私はこういう船を見たのが初めてだったから感動ってよりも驚きの方が大きかったけど、大きい船が好きな人にはたまらないかもね」
「ボクの知り合いにもこういった船が好きな人がいるからね。今日も家に帰ったら写真を送ってあげるって約束してるんだよ」
「そうなんだ。船とか電車とか飛行機とかって見ても何とも思わなかったけど、実際に今日みたいに近くで見れると格好いいな思っちゃうよね。何となくだけど、船とか乗り物を好きになる気持ちってわかったかも」
たこ焼きも焼きそばも美味しくシェアして食べることが出来た栗宮院うまなと工藤珠希は食事を終えた後もしばらくの間船を観察していた。
船の中は開放されていないので乗船することは出来ないのだが、外から見るだけでもいい経験をしたと思える体験であった。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか。うまなちゃんは友達がいるみたいだしボクは先に帰ってるね」
「ちょっと待って、友達なんていないけど?」
「あれ、そうなの。さっき仲良く話してた二人組って友達だと思ったんだけど、ボクの勘違いなのかな?」
「ああ、さっきの二人はイザーちゃんの知り合いなんだって。私の事も知っててくれたみたいなんで話してたんだけど、あの二人がイザーちゃんにお願いしたいことがあるって言ってたんでそれを聞いてただけだよ」
「へえ、そうだったんだ。でもさ、イザーちゃんは今太郎と一緒に違う世界に行ってるからお願いもすぐには聞けないんじゃないかな?」
「そうなんだよね。なので、私と残ってる子たちで何か協力できることがあれば手伝ってあげたいなって思ってるところなんだよ。何でも、あの子たちの住んでいる国が神様によって滅ぼされそうになってるんでどうにかしてほしいって事みたいなんだよ」
「神様が国を滅ぼすなんて、それって絶対に悪い神様だよね。あの二人は悪い人に見えなかったし、何か理由があるんだろうね」
「どうだろうね。私もあんまり詳しく知らないんだけど、イザーちゃんが前に言ってたことがあるんだ。この世界みたいに私達サキュバスが人間と変わらずに暮らしている世界もあれば完全に済む世界を分けている場所もあるんだって。神様が人に富を与える世界もあれば人に試練を与える世界もあって、自分たちで強く育てた人間と戦う事が趣味の神様がいる世界もあるみたいだよ」
「イザーちゃんに助けを求めてる国もそんな感じで神様が人間を試してるって事なのかな?」
「たぶん、そうじゃないと思うよ。私の推測でしかないけど、あの子たちって戦う訓練なんて受けてないと思うんだよ。あの子たちの世界の神様ってのは暇潰し感覚で人類を滅ぼそうとしてるんじゃないかなって思うんだ。ほら、ゲームとかでも育ち切った街を破壊してもう一度街を作り直したりするでしょ?」
「そう言ったゲームはやらないんでよくわからないけど、一度完成したものを壊してもう一度作り直すってのはやったことあるかも。ボクの場合は粘土とか積み木だったと思うけど」
自分で作った物を壊してもう一度新しく作り直す。誰もが経験したことがあるとは思うのだが、それを生きている人間で行うのは神だけの特権なのだろうか。
いや、人類もそれと同じようなことを今まで何度も繰り返してきた。戦争であったり事故であったり、時には人知を超えた災害であったり、今まで人が生きていた痕跡を全て消し去って新たに痕跡を残している。それの繰り返しなのかもしれないが、その経験を積み重ねることで新たに良いものを生み出すことも出来ているのだ。
だからと言って、神が直接人間に手を出しても良いものなのだろうか。人間とサキュバスと言う異なる立場の二人ではあるが、その点は同じように疑問に感じていたのであった。
「ボクはみんなと違って戦うことが出来ない普通の女の子なんで協力は出来そうもないけれど、イザーちゃんと太郎が戻ってきたらどうにかしてあげたらいいんじゃないかな?」
「そうしたいところではあるんだけど、二人が戻ってくるのがいつになるかわからないから困ってるんだよね。助けに行くにしても、向こうにつくまで凄い時間がかかるみたいなんでイザーちゃんが帰ってくるのを待ってもいいのかなとは思うんだけど、何もしないで待ってるだけってのは精神衛生上も良くないんだよね。やっぱり、あの子たちの仲間が危ない目に遭ってるってのがわかってるのに行動出来ていないってのはストレスだったりするんだよ」
「うまなちゃんってやっぱり優しいよね。最初は危ない変な人かと思ってたんだけど、困ってる人を見捨てたりしないもんね。ボクもみんなみたいに戦うことが出来れば力になれたのにね」
「珠希ちゃんは戦う必要なんてないんだよ。私たちは珠希ちゃんがいてくれるから頑張れてるんだし。珠希ちゃんがいるだけで私たちはいつもよりも大きい力を出すことが出来てるんだからね。太郎ちゃんがなんであんなに強いのかは謎なんだけど」
「ボクもそれは疑問に思ってる。太郎が誰かと喧嘩しているところとかも見たことなかったし、あんなに強いとは思わなかったよ。スポーツは何でも出来るってイメージだったけど、戦う事も出来るってのは意外過ぎて驚くことも出来なかったよ」
「それはイザーちゃんも驚いていたよ。どこをどう調べても太郎ちゃんって普通の人間でしかないのに、アレってどう考えても人間の限界をはるかに超えた強さなんだよね」
工藤太郎の強さの秘密は誰も知らない。
なぜあそこまで頭も良く体も強いのか。
その理由は工藤太郎自身もわかっていないのであった。
「だろうね。でも、船が好きな人にとっては最高の席なんじゃないかな?」
「確かにそうかも。私はこういう船を見たのが初めてだったから感動ってよりも驚きの方が大きかったけど、大きい船が好きな人にはたまらないかもね」
「ボクの知り合いにもこういった船が好きな人がいるからね。今日も家に帰ったら写真を送ってあげるって約束してるんだよ」
「そうなんだ。船とか電車とか飛行機とかって見ても何とも思わなかったけど、実際に今日みたいに近くで見れると格好いいな思っちゃうよね。何となくだけど、船とか乗り物を好きになる気持ちってわかったかも」
たこ焼きも焼きそばも美味しくシェアして食べることが出来た栗宮院うまなと工藤珠希は食事を終えた後もしばらくの間船を観察していた。
船の中は開放されていないので乗船することは出来ないのだが、外から見るだけでもいい経験をしたと思える体験であった。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか。うまなちゃんは友達がいるみたいだしボクは先に帰ってるね」
「ちょっと待って、友達なんていないけど?」
「あれ、そうなの。さっき仲良く話してた二人組って友達だと思ったんだけど、ボクの勘違いなのかな?」
「ああ、さっきの二人はイザーちゃんの知り合いなんだって。私の事も知っててくれたみたいなんで話してたんだけど、あの二人がイザーちゃんにお願いしたいことがあるって言ってたんでそれを聞いてただけだよ」
「へえ、そうだったんだ。でもさ、イザーちゃんは今太郎と一緒に違う世界に行ってるからお願いもすぐには聞けないんじゃないかな?」
「そうなんだよね。なので、私と残ってる子たちで何か協力できることがあれば手伝ってあげたいなって思ってるところなんだよ。何でも、あの子たちの住んでいる国が神様によって滅ぼされそうになってるんでどうにかしてほしいって事みたいなんだよ」
「神様が国を滅ぼすなんて、それって絶対に悪い神様だよね。あの二人は悪い人に見えなかったし、何か理由があるんだろうね」
「どうだろうね。私もあんまり詳しく知らないんだけど、イザーちゃんが前に言ってたことがあるんだ。この世界みたいに私達サキュバスが人間と変わらずに暮らしている世界もあれば完全に済む世界を分けている場所もあるんだって。神様が人に富を与える世界もあれば人に試練を与える世界もあって、自分たちで強く育てた人間と戦う事が趣味の神様がいる世界もあるみたいだよ」
「イザーちゃんに助けを求めてる国もそんな感じで神様が人間を試してるって事なのかな?」
「たぶん、そうじゃないと思うよ。私の推測でしかないけど、あの子たちって戦う訓練なんて受けてないと思うんだよ。あの子たちの世界の神様ってのは暇潰し感覚で人類を滅ぼそうとしてるんじゃないかなって思うんだ。ほら、ゲームとかでも育ち切った街を破壊してもう一度街を作り直したりするでしょ?」
「そう言ったゲームはやらないんでよくわからないけど、一度完成したものを壊してもう一度作り直すってのはやったことあるかも。ボクの場合は粘土とか積み木だったと思うけど」
自分で作った物を壊してもう一度新しく作り直す。誰もが経験したことがあるとは思うのだが、それを生きている人間で行うのは神だけの特権なのだろうか。
いや、人類もそれと同じようなことを今まで何度も繰り返してきた。戦争であったり事故であったり、時には人知を超えた災害であったり、今まで人が生きていた痕跡を全て消し去って新たに痕跡を残している。それの繰り返しなのかもしれないが、その経験を積み重ねることで新たに良いものを生み出すことも出来ているのだ。
だからと言って、神が直接人間に手を出しても良いものなのだろうか。人間とサキュバスと言う異なる立場の二人ではあるが、その点は同じように疑問に感じていたのであった。
「ボクはみんなと違って戦うことが出来ない普通の女の子なんで協力は出来そうもないけれど、イザーちゃんと太郎が戻ってきたらどうにかしてあげたらいいんじゃないかな?」
「そうしたいところではあるんだけど、二人が戻ってくるのがいつになるかわからないから困ってるんだよね。助けに行くにしても、向こうにつくまで凄い時間がかかるみたいなんでイザーちゃんが帰ってくるのを待ってもいいのかなとは思うんだけど、何もしないで待ってるだけってのは精神衛生上も良くないんだよね。やっぱり、あの子たちの仲間が危ない目に遭ってるってのがわかってるのに行動出来ていないってのはストレスだったりするんだよ」
「うまなちゃんってやっぱり優しいよね。最初は危ない変な人かと思ってたんだけど、困ってる人を見捨てたりしないもんね。ボクもみんなみたいに戦うことが出来れば力になれたのにね」
「珠希ちゃんは戦う必要なんてないんだよ。私たちは珠希ちゃんがいてくれるから頑張れてるんだし。珠希ちゃんがいるだけで私たちはいつもよりも大きい力を出すことが出来てるんだからね。太郎ちゃんがなんであんなに強いのかは謎なんだけど」
「ボクもそれは疑問に思ってる。太郎が誰かと喧嘩しているところとかも見たことなかったし、あんなに強いとは思わなかったよ。スポーツは何でも出来るってイメージだったけど、戦う事も出来るってのは意外過ぎて驚くことも出来なかったよ」
「それはイザーちゃんも驚いていたよ。どこをどう調べても太郎ちゃんって普通の人間でしかないのに、アレってどう考えても人間の限界をはるかに超えた強さなんだよね」
工藤太郎の強さの秘密は誰も知らない。
なぜあそこまで頭も良く体も強いのか。
その理由は工藤太郎自身もわかっていないのであった。
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