31 / 127
第31話 何事も無かったかのように生き返っているうまなちゃん
しおりを挟む
目の前で殺される栗宮院うまなを助けることが出来なかった。自分に戦う力があれば違った展開になったのかもしれないけれど、工藤珠希には戦う力などないのだ。
みんなは仕方ないと言ってくれたのは本心からなのはわかっているが、工藤珠希は何も出来ないなりに何かすることが出来たのではないかと一晩中考えていた。何も出来なかったとしても、動くことは出来たのではないかと後悔していた。
助けることが出来なかったのは仕方ないにしても、何も出来ずにただ立ち尽くしていたという事実を自分の中で受け止めきれないでいる工藤珠希はいつもよりも暗い気持ちで教室に入っていった。
「もう、昨日は変なのに絡まれて大変だったよね。珠希ちゃんは怪我とかしてなかったかな?」
工藤珠希を迎え入れたのは昨日殺された栗宮院うまなであった。
いつもよりも少しだけ高いテンションのように感じられたのだが、生き返らせてもらったものは死んだことの現実を受け入れてテンションが下がるものと生き返ることが出来たことに幸せを感じてテンションが上がるものがいるらしい。栗宮院うまなは今まで見たことが無いくらいテンションが高くなっていた。
「もう少しどうにか出来ると思ってたんだけどさ、向こうの方が一枚も二枚も上手だったって事だね。私もそれなりに強いはずなんだけど、考えも行動も全て先を読まれていたみたいでどうすることも出来なかったよ」
「昨日はごめんなさい」
「ええ、なんで珠希ちゃんが謝るのさ。謝るのは何も出来ずに殺されちゃった私の方だよ。あの後に変なコトされてないか心配だったんだけど、みんなに聞いても何もなかったって言うんだよね。それって、私を安心させるためにそう言ってるってコトじゃないよね?」
「うん、ボクは何もされてないよ。それよりも、うまなちゃんが殺されるところを黙って見ていただけで助けることも出来なかった」
「それは仕方ないよ。珠希ちゃんは戦う人じゃないから。私たちの女神であり生きる希望だからね。珠希ちゃんを守るためだったら私たちは命を何度失ったって構わないからね」
「そんな事言わないで。ボクはみんなにも死んでもらいたくないから」
工藤珠希が落ち込んでいる姿を見た栗宮院うまなも少しずつテンションが下がっていっていた。生き返ってすぐの高揚感も薄れていき、少しずつ現実を感じてきた栗宮院うまなは目の前で悲しんでいる工藤珠希の姿を見たことで生まれて初めて死んだことを申し訳ないと思い始めていた。
そんな二人の姿を見てクラスメイト達にも少しずつ工藤珠希の気持ちが伝播していっているのを感じた栗鳥院柘榴は工藤珠希の頭を軽く叩いていた。頭を上げた工藤珠希と目が合った栗鳥院柘榴は小さい子供に言い聞かせるような優しい声でそのまま話し始めたのだ。
「珠希ちゃんがそんなに落ち込む必要はないんだよ。この子たちは自分の命をその辺に落ちているゴミと同じくらいの価値しかないって思ってるんだよ。まあ、それはこの学校にいる間だけの話なんだけど、それってどうしてかわかるかな?」
「どうしてって、死んでもドクターポンピーノが生き返らせてくれるから?」
「そう、その通り。それがわかってるんだったら珠希ちゃんは何も落ち込む必要なんてないんだよ。この子たちサキュバスは自分の命を捨て駒にしても問題ないって意識なんだけど、それは私たち普通の人間と価値観が違っているからなんだ。どう価値観が違うのか珠希ちゃんはわかるかな?」
栗宮院うまなだけでなくイザーも他のサキュバス達も普通にしている分には人間にしか見えない。それどころか、学校の外にいる一般サキュバス達も外見だけであれば普通の人間と何も変わらないのだ。翼や尻尾なども無く、外見から人間とサキュバスを区別する方法があるのか工藤珠希は前々から疑問に感じていた。
「わからなくて当然だよね。珠希ちゃんがこの子たちとの付き合いって高校に入学してからなんだし、それまで人間とサキュバスが殺しあってるなんて想像もしていなかったでしょ?」
「全く想像もしてませんでした。サキュバスがいるってのもここに通うまで知らなかったくらいですから」
「意外と気付かないもんだよね。私たちは昔から付き合いがあるからある程度は見わけもつくんだけど、普通に生きていたら区別なんてつくわけないんだよね。でも、簡単に見分ける方法が一つあるんだよ」
「それって何ですか?」
「この子たちって、程度の差はあれ怪我をしても普通の人間よりも早く治っちゃうの。骨折したとしても寝て起きたら治っちゃうくらい治癒力が高いんだよ。それを利用してなのかなのか、戦闘になると自分が傷つくことも恐れずにどんどんと向かって行っちゃう傾向にあるんだよね。この学校みたいに生き返らせてくれる人がいる場所じゃなくても腕や足が切断されるくらいの怪我は怪我と思ってないみたいで、戦い方は肉を切らせて骨を断つって感じになってるんだよ。戦い以外でも、普通の人だったら危ないって思うような場所も平気で進んで行ったりするし、高いところからも平気で落ちていったりするからね。まあ、不死ってわけではないんで普通に死ぬこともあるんだけど、死ななければどうなっても平気って思ってるのがこの子たちなんだよ」
普通の人間であれば躊躇するようなこともサキュバスの人達は何のためらいもなく進んで行っているのを見ていた。
それはドクターポンピーノの手によって無事に生き返らせてもらえるという確信があるからなのかと思っていただが、それ以前にサキュバスは治癒力が高いので死なない程度の怪我が怖くないという理由だったようだ。
自分の肉体もサキュバスと同じくらい高い治癒力があったとしても怪我なんてしたくないと思うし、命を粗末にするような戦い方なんて出来ないと思う工藤珠希であった。
みんなは仕方ないと言ってくれたのは本心からなのはわかっているが、工藤珠希は何も出来ないなりに何かすることが出来たのではないかと一晩中考えていた。何も出来なかったとしても、動くことは出来たのではないかと後悔していた。
助けることが出来なかったのは仕方ないにしても、何も出来ずにただ立ち尽くしていたという事実を自分の中で受け止めきれないでいる工藤珠希はいつもよりも暗い気持ちで教室に入っていった。
「もう、昨日は変なのに絡まれて大変だったよね。珠希ちゃんは怪我とかしてなかったかな?」
工藤珠希を迎え入れたのは昨日殺された栗宮院うまなであった。
いつもよりも少しだけ高いテンションのように感じられたのだが、生き返らせてもらったものは死んだことの現実を受け入れてテンションが下がるものと生き返ることが出来たことに幸せを感じてテンションが上がるものがいるらしい。栗宮院うまなは今まで見たことが無いくらいテンションが高くなっていた。
「もう少しどうにか出来ると思ってたんだけどさ、向こうの方が一枚も二枚も上手だったって事だね。私もそれなりに強いはずなんだけど、考えも行動も全て先を読まれていたみたいでどうすることも出来なかったよ」
「昨日はごめんなさい」
「ええ、なんで珠希ちゃんが謝るのさ。謝るのは何も出来ずに殺されちゃった私の方だよ。あの後に変なコトされてないか心配だったんだけど、みんなに聞いても何もなかったって言うんだよね。それって、私を安心させるためにそう言ってるってコトじゃないよね?」
「うん、ボクは何もされてないよ。それよりも、うまなちゃんが殺されるところを黙って見ていただけで助けることも出来なかった」
「それは仕方ないよ。珠希ちゃんは戦う人じゃないから。私たちの女神であり生きる希望だからね。珠希ちゃんを守るためだったら私たちは命を何度失ったって構わないからね」
「そんな事言わないで。ボクはみんなにも死んでもらいたくないから」
工藤珠希が落ち込んでいる姿を見た栗宮院うまなも少しずつテンションが下がっていっていた。生き返ってすぐの高揚感も薄れていき、少しずつ現実を感じてきた栗宮院うまなは目の前で悲しんでいる工藤珠希の姿を見たことで生まれて初めて死んだことを申し訳ないと思い始めていた。
そんな二人の姿を見てクラスメイト達にも少しずつ工藤珠希の気持ちが伝播していっているのを感じた栗鳥院柘榴は工藤珠希の頭を軽く叩いていた。頭を上げた工藤珠希と目が合った栗鳥院柘榴は小さい子供に言い聞かせるような優しい声でそのまま話し始めたのだ。
「珠希ちゃんがそんなに落ち込む必要はないんだよ。この子たちは自分の命をその辺に落ちているゴミと同じくらいの価値しかないって思ってるんだよ。まあ、それはこの学校にいる間だけの話なんだけど、それってどうしてかわかるかな?」
「どうしてって、死んでもドクターポンピーノが生き返らせてくれるから?」
「そう、その通り。それがわかってるんだったら珠希ちゃんは何も落ち込む必要なんてないんだよ。この子たちサキュバスは自分の命を捨て駒にしても問題ないって意識なんだけど、それは私たち普通の人間と価値観が違っているからなんだ。どう価値観が違うのか珠希ちゃんはわかるかな?」
栗宮院うまなだけでなくイザーも他のサキュバス達も普通にしている分には人間にしか見えない。それどころか、学校の外にいる一般サキュバス達も外見だけであれば普通の人間と何も変わらないのだ。翼や尻尾なども無く、外見から人間とサキュバスを区別する方法があるのか工藤珠希は前々から疑問に感じていた。
「わからなくて当然だよね。珠希ちゃんがこの子たちとの付き合いって高校に入学してからなんだし、それまで人間とサキュバスが殺しあってるなんて想像もしていなかったでしょ?」
「全く想像もしてませんでした。サキュバスがいるってのもここに通うまで知らなかったくらいですから」
「意外と気付かないもんだよね。私たちは昔から付き合いがあるからある程度は見わけもつくんだけど、普通に生きていたら区別なんてつくわけないんだよね。でも、簡単に見分ける方法が一つあるんだよ」
「それって何ですか?」
「この子たちって、程度の差はあれ怪我をしても普通の人間よりも早く治っちゃうの。骨折したとしても寝て起きたら治っちゃうくらい治癒力が高いんだよ。それを利用してなのかなのか、戦闘になると自分が傷つくことも恐れずにどんどんと向かって行っちゃう傾向にあるんだよね。この学校みたいに生き返らせてくれる人がいる場所じゃなくても腕や足が切断されるくらいの怪我は怪我と思ってないみたいで、戦い方は肉を切らせて骨を断つって感じになってるんだよ。戦い以外でも、普通の人だったら危ないって思うような場所も平気で進んで行ったりするし、高いところからも平気で落ちていったりするからね。まあ、不死ってわけではないんで普通に死ぬこともあるんだけど、死ななければどうなっても平気って思ってるのがこの子たちなんだよ」
普通の人間であれば躊躇するようなこともサキュバスの人達は何のためらいもなく進んで行っているのを見ていた。
それはドクターポンピーノの手によって無事に生き返らせてもらえるという確信があるからなのかと思っていただが、それ以前にサキュバスは治癒力が高いので死なない程度の怪我が怖くないという理由だったようだ。
自分の肉体もサキュバスと同じくらい高い治癒力があったとしても怪我なんてしたくないと思うし、命を粗末にするような戦い方なんて出来ないと思う工藤珠希であった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
AV研は今日もハレンチ
楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo?
AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて――
薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる