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第32話 蘇生する事に代償があるのかもしれない
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サキュバスと普通の人間の違いは見た目だけではわかりにくいのだが、頭の中身はそこまで似ているとは言えないようだ。
レジスタンスと戦うサキュバスが何の策も持たずに特攻を仕掛けて返り討ちにあっている。そんな場面を幾度となく見てきた工藤珠希ではあったが、サキュバスが自分の命に執着がまったくないとは思わなかったのでその理由に気が付かなかったのも無理はない話だ。
「でも、私の心配をしてくれてありがとうね。次にあいつがやってきた時はもっと上手にやるからね」
「無理に戦わなくてもいいんじゃないかな。あの人は普通に話が通じる感じだったと思うよ」
「そうかもしれないけどさ、やられっぱなしじゃ私も気がおさまらないんだよね。だから、私が勝ち越せるようになる迄は戦いたいかな。なんて思っちゃうんだ」
「うまなちゃんの気持ちは何となくわかるけど、ボクとしてはこれ以上無理をしてほしくないって思うよ」
「無理なんてしてないんだけどね。でも、珠希ちゃんがそう言ってくれるんだったら私も考え方を変えちゃうかも」
怪我の治りが早くて死んでしまったとしても元の状態になるように生き返らせてもらえる。そんな状況なら工藤珠希もサキュバス達と同じような行動をとってしまうかもしれない。ただ、それは今と違って工藤珠希にもちゃんと戦うだけの力と知識を持っていた場合の話になると思われる。
「久しぶりに死んじゃったからハッキリとは覚えていないんだけど、死んだ時ってそれなりにペナルティがあったりするんだね。前までは死ぬ前の姿を出来るだけ忠実に再現しているって聞いていたんだけど、私の場合ってちょっと死ぬ前とは違うんじゃないかなって思うんだよね」
生き返らせることに何のリスクも無いというのもおかしな話だとは思うのだけど、ドクターポンピーノの手にかかれば全く何のリスクもなく生き返ることが出来るはずなのに栗宮院うまなは何かが違うと言い出したのだ。
工藤珠希には栗宮院うまなのどこが違うのか見当もつかなかったのだが、それは栗鳥院柘榴と鈴木愛華も同じだった。
「ボクには違いなんて分からないけど」
「そうだね、私にもうまなちゃんのどこが違うのか全然わからないね。ドクターポンピーノは優秀な方であるし、うまなちゃんは以前の姿と何も変わってないと思うんだが」
「私にもうまなちゃんのどこが変わったのかわからないです。前よりも明るい感じになったなって思うけど、どう見ても生前の姿のままにしか見えないですね。ポンピーノ先生はいつもと変わらず最高の仕事をしたと思いますよ。うまなちゃん相手に失敗なんてしたら大変なことになるのがわかってるし、変なことはしないと思うんですけど」
「本当にそんな風に思ってるのかな。私が以前と違う姿になってるっていうのに、みんなはそんなんでいいのかな?」
「そうは言われてもね。私たちにもうまなちゃんのどこが変化してるのかわからないんだよ。変わっている感じはしないんだけど、正解を教えてほしいな」
「教えることに関しては構わないんだけど、珠希ちゃんと愛華も知りたいって思ってるのかな?」
「うん、ボクもうまなちゃんのどこが変わったのか知りたいよ」
「私も知りたいです。全然違いが判らないくらいポンピーノ先生の仕事は完璧だと思ってるんで、どこが違うのか興味あります」
「そこまで言うんだったら教えてあげよう。みんな心して聞くんだよ」
誰がどう見てもドクターポンピーノの仕事は完璧だと思う。
他人から見れば完璧な蘇生であっても、当の本人からしてみると違和感があるという事もあるのだろうか。毎日見ている自分の姿だからこそ感じる微妙な違いというものがあるのかもしれない。
「生き返らせてもらったのはとても感謝しているし、この事を責めるつもりは全然無いって言うのをわかったうえで聞いてもらいたいんだけどね。私の事を綺麗な姿で生き返らせてくれたのは凄くありがたいと思うんだけど、わざわざ胸を小さくする必要はなかったんじゃないかなって思うんだよね」
「いや、胸の大きさなんて変わってないよ」
「胸は何も変わってないよ」
「死ぬ前と胸の大きさに変化なんてしてないよ」
「どう見てもその小さい胸は以前のままだよ」
「そもそもクラスでも小さい方だったし」
「うまなちゃんの胸があるって思ったことないかも」
普段はあまりツッコミをしない工藤珠希も思わずツッコミを入れてしまったのだが、それにかぶせるように栗鳥院柘榴と鈴木愛華もツッコミを入れていた。三人の他にもクラスメートのサキュバスやレジスタンスも次々とツッコミを入れていたのである。
今まで完璧な仕事をしていたドクターポンピーノがどんなミスをしてしまったのだろうかと少しだけ期待したところもあったと思っていたのに、栗宮院うまなが言い出したことがあまりにも的外れなことだったこともあってみんな我慢が出来なかったのであろう。
「ごめん、気になって様子を見に来たんだけど、私のせいで困らせちゃったみたいだね」
普段は処置室にいるドクターポンピーノが自分たちの教室に入ってきたことに驚いたのだが、私のせいで困らせちゃっているという言葉を聞いてさらに驚いてしまった。
自分のせいで困らせたという事は、栗宮院うまなの言う通りの事が起こっていた可能性があるという事なのか。誰もがドクターポンピーノの言葉を待っていた。
レジスタンスと戦うサキュバスが何の策も持たずに特攻を仕掛けて返り討ちにあっている。そんな場面を幾度となく見てきた工藤珠希ではあったが、サキュバスが自分の命に執着がまったくないとは思わなかったのでその理由に気が付かなかったのも無理はない話だ。
「でも、私の心配をしてくれてありがとうね。次にあいつがやってきた時はもっと上手にやるからね」
「無理に戦わなくてもいいんじゃないかな。あの人は普通に話が通じる感じだったと思うよ」
「そうかもしれないけどさ、やられっぱなしじゃ私も気がおさまらないんだよね。だから、私が勝ち越せるようになる迄は戦いたいかな。なんて思っちゃうんだ」
「うまなちゃんの気持ちは何となくわかるけど、ボクとしてはこれ以上無理をしてほしくないって思うよ」
「無理なんてしてないんだけどね。でも、珠希ちゃんがそう言ってくれるんだったら私も考え方を変えちゃうかも」
怪我の治りが早くて死んでしまったとしても元の状態になるように生き返らせてもらえる。そんな状況なら工藤珠希もサキュバス達と同じような行動をとってしまうかもしれない。ただ、それは今と違って工藤珠希にもちゃんと戦うだけの力と知識を持っていた場合の話になると思われる。
「久しぶりに死んじゃったからハッキリとは覚えていないんだけど、死んだ時ってそれなりにペナルティがあったりするんだね。前までは死ぬ前の姿を出来るだけ忠実に再現しているって聞いていたんだけど、私の場合ってちょっと死ぬ前とは違うんじゃないかなって思うんだよね」
生き返らせることに何のリスクも無いというのもおかしな話だとは思うのだけど、ドクターポンピーノの手にかかれば全く何のリスクもなく生き返ることが出来るはずなのに栗宮院うまなは何かが違うと言い出したのだ。
工藤珠希には栗宮院うまなのどこが違うのか見当もつかなかったのだが、それは栗鳥院柘榴と鈴木愛華も同じだった。
「ボクには違いなんて分からないけど」
「そうだね、私にもうまなちゃんのどこが違うのか全然わからないね。ドクターポンピーノは優秀な方であるし、うまなちゃんは以前の姿と何も変わってないと思うんだが」
「私にもうまなちゃんのどこが変わったのかわからないです。前よりも明るい感じになったなって思うけど、どう見ても生前の姿のままにしか見えないですね。ポンピーノ先生はいつもと変わらず最高の仕事をしたと思いますよ。うまなちゃん相手に失敗なんてしたら大変なことになるのがわかってるし、変なことはしないと思うんですけど」
「本当にそんな風に思ってるのかな。私が以前と違う姿になってるっていうのに、みんなはそんなんでいいのかな?」
「そうは言われてもね。私たちにもうまなちゃんのどこが変化してるのかわからないんだよ。変わっている感じはしないんだけど、正解を教えてほしいな」
「教えることに関しては構わないんだけど、珠希ちゃんと愛華も知りたいって思ってるのかな?」
「うん、ボクもうまなちゃんのどこが変わったのか知りたいよ」
「私も知りたいです。全然違いが判らないくらいポンピーノ先生の仕事は完璧だと思ってるんで、どこが違うのか興味あります」
「そこまで言うんだったら教えてあげよう。みんな心して聞くんだよ」
誰がどう見てもドクターポンピーノの仕事は完璧だと思う。
他人から見れば完璧な蘇生であっても、当の本人からしてみると違和感があるという事もあるのだろうか。毎日見ている自分の姿だからこそ感じる微妙な違いというものがあるのかもしれない。
「生き返らせてもらったのはとても感謝しているし、この事を責めるつもりは全然無いって言うのをわかったうえで聞いてもらいたいんだけどね。私の事を綺麗な姿で生き返らせてくれたのは凄くありがたいと思うんだけど、わざわざ胸を小さくする必要はなかったんじゃないかなって思うんだよね」
「いや、胸の大きさなんて変わってないよ」
「胸は何も変わってないよ」
「死ぬ前と胸の大きさに変化なんてしてないよ」
「どう見てもその小さい胸は以前のままだよ」
「そもそもクラスでも小さい方だったし」
「うまなちゃんの胸があるって思ったことないかも」
普段はあまりツッコミをしない工藤珠希も思わずツッコミを入れてしまったのだが、それにかぶせるように栗鳥院柘榴と鈴木愛華もツッコミを入れていた。三人の他にもクラスメートのサキュバスやレジスタンスも次々とツッコミを入れていたのである。
今まで完璧な仕事をしていたドクターポンピーノがどんなミスをしてしまったのだろうかと少しだけ期待したところもあったと思っていたのに、栗宮院うまなが言い出したことがあまりにも的外れなことだったこともあってみんな我慢が出来なかったのであろう。
「ごめん、気になって様子を見に来たんだけど、私のせいで困らせちゃったみたいだね」
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自分のせいで困らせたという事は、栗宮院うまなの言う通りの事が起こっていた可能性があるという事なのか。誰もがドクターポンピーノの言葉を待っていた。
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