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おパンツ戦争
第66話 幼児と板チョコ
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担任の片岡瑠璃先生が教室に入ってくるのを待っていたかのように栗宮院うまなが駆け寄って抱き着いていた。
講堂だけを見ていると、母親が帰ってくるのを待っていた子供のようにも見えるのだが、栗宮院うまなと片岡瑠璃先生の身長差はほとんどない。ヒールの高さがある分を差し引くと片岡瑠璃先生の方が小さいくらいであった。
「先生あのね、うまなちゃんは一人でも大丈夫だよ。みんな忙しそうだから、うまなちゃんは一人でも平気なの。だから、うまなちゃんは平気なの」
「そうなんだ。うまなちゃんは偉いね。そんな偉いうまなちゃんはあそこに座ってコレを食べながら待っててね」
片岡瑠璃先生から板チョコを渡された栗宮院うまなは教室の一番後ろの日当たりの良い席に座った。窓の外を見ながらご機嫌な感じで板チョコを少しずつ食べている姿はとても微笑ましい。
誰もがそう思っていたのだが、片岡瑠璃先生は少し困ったような感じで生徒一人一人の事を見ていた。
「うまなちゃんがあんな事を言い出した理由はいったい何なのかな?」
最初はみんなキョロキョロと教室内を見ていたのだが、誰かが指し示したかのように視線は工藤珠希に集中していた。自分に視線が集中していることは自覚していた工藤珠希であったが、それに気付かなかったかのように辺りをキョロキョロと眺めていた。ただ、その姿は明らかに不自然なものであった。
「みんなが珠希ちゃんを見てるという事は、珠希ちゃんに何か原因があるという事。ではないんだろうね。おそらく、サキュバスの子たちもレジスタンスの子たちも今のうまなちゃんの面倒を見ることが出来ないって事で、サキュバスでもレジスタンスでもない珠希ちゃんに頼もうとしたってところだろうね。どうなのかな?」
実際そうなので片岡瑠璃先生の言ったことを肯定したいと思った工藤珠希ではあったが、少し考えてみると一日くらいだったら栗宮院うまなのお世話をしても良いのではないかと思い始めていた。
嬉しそうに板チョコを食べている姿を見て、普段とは違う一面が見れて可愛いなと思っていたのだ。
「先生の言う通りです。私たちは子供みたいになってるうまなちゃんのお世話なんて出来ないって思い込んでました。レジスタンスの子たちに頼りたくないけど、自分たちではお世話も出来ないしどうしようって思ってて、レジスタンスじゃない珠希ちゃんにならお願い出来るんじゃないかって勝手に盛り上がってました」
「私達レジスタンスにも悪いところはあったと思います。子守り自体は全然嫌じゃないしやってもいいかなって思ってたんですけど、サキュバスとレジスタンスには越えてはいけない壁があるって思ってました。子供になっているうまなちゃんにレジスタンスに対する敵対心を無くして味方にするんじゃないかって思われるんだったら手を出さない方がいいんじゃないかなって決めつけてました。でも、女子高生のうまなちゃんは私たちに対して敵対心とか持ってなかったんじゃないかなって思ってたんです。だから、本当はそういう事を理由にして珠希ちゃんに押し付けようと思ったのかもしれないです」
「そうなのか。君たちはサキュバスとレジスタンスと言う関係ではあるけれど、このクラスに選ばれた君たちにはそんな些細な事で別れてほしくなかったな。このクラスにいる限りでは、サキュバスもレジスタンスも関係なく仲良くしてくれると嬉しいよ。その事はこの学校にいる生徒も教職員もみんな知ってることなんだし、君たちが仲良くしてくれているのを見て文句を言う者はいないんじゃないかな。だから、君たちには協力してうまなちゃんのお世話をしてもらえるといいんじゃないかなって先生は思うんだよ」
「私もそう思います」
「私たちもそう思います」
元々一つだったクラスがほんの少しの間だけ別れてしまっていたけれど、すぐに元の状態に戻ることが出来た。
それは、みんなが本当は気付いていたから出来たことなのだが、誰もがソレに気付いていないふりをしていたのだ。種族や派閥を超えた何かを持っているこのクラスにはどんな障壁も乗り越えることが出来る。そう思わせるだけの力があるのだ。
「あのね、うまなちゃんはあのカボチャの馬車に乗ってみたいの。ちょっと乗ってみたいな」
校庭を延々を走り続けているカボチャの馬車を見た栗宮院うまなは突然大きな声で叫んだ。
しんみりとしつつあった教室内の空気が一瞬のうちに騒然とし、カボチャの馬車が原因だという事を理解したクラスメイトと片岡瑠璃先生は真っすぐに工藤珠希の事を見ていた。
この場でどう答えるのが正解なのか工藤珠希は考えていた。
確かにあの馬車は自分が乗ってきたものであることは間違いないのだが、あの馬車は自分のモノではなく勝手に乗って良いものなのかもわかっていない。
そもそも、あの馬車に乗ろうと思っても走り続けている馬車を止めることなんて出来るわけがないのだ。
なので、あの馬車に栗宮院うまなを乗せてあげることは工藤珠希には出来ないのである。
ど
「そんなに乗りたいんだったらどうぞ。うまなちゃんでしたらいつでも大歓迎ですよ。ただ、彼女一人を乗せるのは皆さんも心配だと思いますし、誰か付き添いの方がいればいいですよね。多くても三人ほどになると思いますが、どなたが同乗されますか?」
サキュバスのお姉さんが馬車を回収しに来たのだが、カボチャの馬車をじっと見つめていた栗宮院うまなの事が気になって教室まで入ってきたのだ。
もちろん、校内に入るのに必要な正規の手続きは行っているので入場許可証もちゃんと持っていた。そう言ったところはしっかりとしているサキュバスのお姉さんであった。
講堂だけを見ていると、母親が帰ってくるのを待っていた子供のようにも見えるのだが、栗宮院うまなと片岡瑠璃先生の身長差はほとんどない。ヒールの高さがある分を差し引くと片岡瑠璃先生の方が小さいくらいであった。
「先生あのね、うまなちゃんは一人でも大丈夫だよ。みんな忙しそうだから、うまなちゃんは一人でも平気なの。だから、うまなちゃんは平気なの」
「そうなんだ。うまなちゃんは偉いね。そんな偉いうまなちゃんはあそこに座ってコレを食べながら待っててね」
片岡瑠璃先生から板チョコを渡された栗宮院うまなは教室の一番後ろの日当たりの良い席に座った。窓の外を見ながらご機嫌な感じで板チョコを少しずつ食べている姿はとても微笑ましい。
誰もがそう思っていたのだが、片岡瑠璃先生は少し困ったような感じで生徒一人一人の事を見ていた。
「うまなちゃんがあんな事を言い出した理由はいったい何なのかな?」
最初はみんなキョロキョロと教室内を見ていたのだが、誰かが指し示したかのように視線は工藤珠希に集中していた。自分に視線が集中していることは自覚していた工藤珠希であったが、それに気付かなかったかのように辺りをキョロキョロと眺めていた。ただ、その姿は明らかに不自然なものであった。
「みんなが珠希ちゃんを見てるという事は、珠希ちゃんに何か原因があるという事。ではないんだろうね。おそらく、サキュバスの子たちもレジスタンスの子たちも今のうまなちゃんの面倒を見ることが出来ないって事で、サキュバスでもレジスタンスでもない珠希ちゃんに頼もうとしたってところだろうね。どうなのかな?」
実際そうなので片岡瑠璃先生の言ったことを肯定したいと思った工藤珠希ではあったが、少し考えてみると一日くらいだったら栗宮院うまなのお世話をしても良いのではないかと思い始めていた。
嬉しそうに板チョコを食べている姿を見て、普段とは違う一面が見れて可愛いなと思っていたのだ。
「先生の言う通りです。私たちは子供みたいになってるうまなちゃんのお世話なんて出来ないって思い込んでました。レジスタンスの子たちに頼りたくないけど、自分たちではお世話も出来ないしどうしようって思ってて、レジスタンスじゃない珠希ちゃんにならお願い出来るんじゃないかって勝手に盛り上がってました」
「私達レジスタンスにも悪いところはあったと思います。子守り自体は全然嫌じゃないしやってもいいかなって思ってたんですけど、サキュバスとレジスタンスには越えてはいけない壁があるって思ってました。子供になっているうまなちゃんにレジスタンスに対する敵対心を無くして味方にするんじゃないかって思われるんだったら手を出さない方がいいんじゃないかなって決めつけてました。でも、女子高生のうまなちゃんは私たちに対して敵対心とか持ってなかったんじゃないかなって思ってたんです。だから、本当はそういう事を理由にして珠希ちゃんに押し付けようと思ったのかもしれないです」
「そうなのか。君たちはサキュバスとレジスタンスと言う関係ではあるけれど、このクラスに選ばれた君たちにはそんな些細な事で別れてほしくなかったな。このクラスにいる限りでは、サキュバスもレジスタンスも関係なく仲良くしてくれると嬉しいよ。その事はこの学校にいる生徒も教職員もみんな知ってることなんだし、君たちが仲良くしてくれているのを見て文句を言う者はいないんじゃないかな。だから、君たちには協力してうまなちゃんのお世話をしてもらえるといいんじゃないかなって先生は思うんだよ」
「私もそう思います」
「私たちもそう思います」
元々一つだったクラスがほんの少しの間だけ別れてしまっていたけれど、すぐに元の状態に戻ることが出来た。
それは、みんなが本当は気付いていたから出来たことなのだが、誰もがソレに気付いていないふりをしていたのだ。種族や派閥を超えた何かを持っているこのクラスにはどんな障壁も乗り越えることが出来る。そう思わせるだけの力があるのだ。
「あのね、うまなちゃんはあのカボチャの馬車に乗ってみたいの。ちょっと乗ってみたいな」
校庭を延々を走り続けているカボチャの馬車を見た栗宮院うまなは突然大きな声で叫んだ。
しんみりとしつつあった教室内の空気が一瞬のうちに騒然とし、カボチャの馬車が原因だという事を理解したクラスメイトと片岡瑠璃先生は真っすぐに工藤珠希の事を見ていた。
この場でどう答えるのが正解なのか工藤珠希は考えていた。
確かにあの馬車は自分が乗ってきたものであることは間違いないのだが、あの馬車は自分のモノではなく勝手に乗って良いものなのかもわかっていない。
そもそも、あの馬車に乗ろうと思っても走り続けている馬車を止めることなんて出来るわけがないのだ。
なので、あの馬車に栗宮院うまなを乗せてあげることは工藤珠希には出来ないのである。
ど
「そんなに乗りたいんだったらどうぞ。うまなちゃんでしたらいつでも大歓迎ですよ。ただ、彼女一人を乗せるのは皆さんも心配だと思いますし、誰か付き添いの方がいればいいですよね。多くても三人ほどになると思いますが、どなたが同乗されますか?」
サキュバスのお姉さんが馬車を回収しに来たのだが、カボチャの馬車をじっと見つめていた栗宮院うまなの事が気になって教室まで入ってきたのだ。
もちろん、校内に入るのに必要な正規の手続きは行っているので入場許可証もちゃんと持っていた。そう言ったところはしっかりとしているサキュバスのお姉さんであった。
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