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おパンツ戦争
第67話 幼児とカボチャの馬車
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カボチャの馬車に同乗するのはジャンケンで買った栗鳥院柘榴と鈴木愛華、それとジャンケンで負けた工藤珠希であった。
イザーと工藤太郎がいないだけでいつものメンバーなのだが、今回に限っては栗宮院うまなが幼児退行しているという事もあって普段と少し違う感じになっている。
「ずっとグルグル回ってるんだけど、学校のお外には行かないのかな?」
「どうなんだろうね。珠希ちゃんならどうしてかわかると思うよ。うまなちゃんは珠希ちゃんに聞くことが出来るかな?」
「うん、出来るよ。ねえ、この馬車はどうしてずっとココをグルグルと回ってるのかな?」
質問をされたところで工藤珠希に答えることは出来なかった。
この馬車に乗って学校に来たことには間違いないのだけれど、自分の意志でこの馬車に乗ったわけでもないし操縦をしていたわけでもない。そもそも、この馬車を動かしているのは自分ではないという事を丁寧に説明してみたのだが、その理由では幼児化している栗宮院うまなを納得させることが出来なかった。
カボチャの馬車に乗ることが出来れば栗宮院うまなも満足すると思っていた工藤珠希ではあったが、一つの望みが叶うと新しい望みが出てくるという幼児ならではの我慢が出来ない状態に悩み困惑していたタイミングで野城君から電話がかかってきた。
困った時に相談するのには野城君が適任だと思っているのだけれど、電話がかかってくるまですっかり忘れていたのである。工藤珠希は救われたという思いで電話に出たのだ。
「珠希ちゃんが困ってそうだから電話しちゃったんだけど、困ってなかったりするかな?」
「全然困ってるよ。どうしたらいいのかさっぱりわからなくて、ねえ、ボクはどうしたらいいのかな?」
「うーん、状況がいまいちよくわからないんだけど、珠希ちゃんが何に対して困っているのか教えて貰ってもいいかな?」
「うまなちゃんが我慢出来なさそうだから手短に話すけど、馬車がずっと同じところを走ってるんだよ」
「……。うん、それは教室から見て分かってるよ。ってことは、うまなちゃんは同じ場所を走ってる馬車じゃなくて他の所を走る馬車が良いって言ってるってことかな?」
「そう、それ。そうなんだけど、どうすればいいんだろう?」
「馬車を操縦している人にお願いすればいいんじゃないかな。馬車に乗りたいうまなちゃんを連れて行った時も普通に乗せてくれたんだし、どこか行きたい場所があれば行き先を告げれば連れていってくれるんじゃないかな?」
「そんなことして大丈夫かな?」
「大丈夫だと思うよ。何かあったとしてもイザーちゃんが近くにいるわけだし、困ったことにはならないんじゃないかな。心配するとしたら、珠希ちゃんの命を狙う輩に遭遇しちゃうことだと思うんだけど、柘榴ちゃんと愛華ちゃんもいるから平気平気。心配のうちに入らないと思う」
「ボクの命を狙うって、そんな人がいるの?」
「結構いるよ。この街にもそれなりにいるね。ただ、珠希ちゃんはみんなに守られてるからそんな心配することでもないんだよ。そんな感じだから安心していいんだからね」
自分の命が狙われているという衝撃の事実を知ってしまった工藤珠希だが、全く実感が無いのであまり気にしても良くないなと思っていた。
それよりも、うまなちゃんが泣きそうな顔をしているのに気付いてしまったので何とか馬車の運転手にどこか他の場所へ行ってくれるようにお願いをする事にしたのだ。
「あの、すいません」
「はい、何でしょうか?」
馬車の前方についていた小窓を開けて話しかけたところ、操縦をしていた人とその隣に座っている人が同時に答えてくれた。
まったく同じタイミングで答えてくれたことに若干の戸惑いを覚えたのだが、二人とも感じの良い笑顔で対応してくれたので少しだけ気が楽になっていた。
その二人は双子の姉妹なのではないかと思ってしまう程そっくりで息もぴったりである。そのうえ、工藤珠希に笑顔を向けてくれていた。
「乗せてもらってるだけでもありがたいんですけど、出来ればここをまわってるだけじゃなくてどこか他の場所にも言ってみたいなって思ってるんですけど、ダメですかね?」
「大丈夫ですよ。行きたい場所があればどこへでも連れていって構わないって言われてますから。どこか行きたい場所ってありますか?」
「ちょっと待ってくださいね。うまなちゃん、どこか行きたい場所はあるかな?」
すぐに答えが出てこない栗宮院うまな。コレと言っていきたい場所があるわけではなく、どこでもいいから他の場所に行きたいという事なのだろう。
栗鳥院柘榴も鈴木愛華も行きたい場所がないのか黙って栗宮院うまなを見つめているのだが、二人にじっと見られていることにプレッシャーを感じたのか栗宮院うまなは目を潤ませてしまい、今にも泣きだしてしまいそうだった。
そんな姿を見た栗鳥院柘榴と鈴木愛華は焦った様子でどこかいい場所がないかと検索を始めたのだ。
特に行きたい場所が見つからなかったのか、3人から出てきた答えは工藤珠希に任せるというものであった。
任されても困ってしまうといった感じだった工藤珠希ではあったが、ここは一つ思い出の場所へと行ってみることにしたのだ。
「それでは、軍艦が泊まっていた港に行ってください」
「軍艦と言いますと、珠希さんとうまなさんがデートで行った場所ですね。そこへのルートは登録されているので大丈夫です。ちょっと時間はかかるかもしれませんが、ゆっくり景色でも楽しんでくださいね」
どうしてルートが登録されているのだろうと思った三人ではあったが、あえてその事には触れずに流れる景色を見ていた。
見慣れた景色のはずだったのに、馬車の中から見る街の様子はいつもと違うように感じていた。
イザーと工藤太郎がいないだけでいつものメンバーなのだが、今回に限っては栗宮院うまなが幼児退行しているという事もあって普段と少し違う感じになっている。
「ずっとグルグル回ってるんだけど、学校のお外には行かないのかな?」
「どうなんだろうね。珠希ちゃんならどうしてかわかると思うよ。うまなちゃんは珠希ちゃんに聞くことが出来るかな?」
「うん、出来るよ。ねえ、この馬車はどうしてずっとココをグルグルと回ってるのかな?」
質問をされたところで工藤珠希に答えることは出来なかった。
この馬車に乗って学校に来たことには間違いないのだけれど、自分の意志でこの馬車に乗ったわけでもないし操縦をしていたわけでもない。そもそも、この馬車を動かしているのは自分ではないという事を丁寧に説明してみたのだが、その理由では幼児化している栗宮院うまなを納得させることが出来なかった。
カボチャの馬車に乗ることが出来れば栗宮院うまなも満足すると思っていた工藤珠希ではあったが、一つの望みが叶うと新しい望みが出てくるという幼児ならではの我慢が出来ない状態に悩み困惑していたタイミングで野城君から電話がかかってきた。
困った時に相談するのには野城君が適任だと思っているのだけれど、電話がかかってくるまですっかり忘れていたのである。工藤珠希は救われたという思いで電話に出たのだ。
「珠希ちゃんが困ってそうだから電話しちゃったんだけど、困ってなかったりするかな?」
「全然困ってるよ。どうしたらいいのかさっぱりわからなくて、ねえ、ボクはどうしたらいいのかな?」
「うーん、状況がいまいちよくわからないんだけど、珠希ちゃんが何に対して困っているのか教えて貰ってもいいかな?」
「うまなちゃんが我慢出来なさそうだから手短に話すけど、馬車がずっと同じところを走ってるんだよ」
「……。うん、それは教室から見て分かってるよ。ってことは、うまなちゃんは同じ場所を走ってる馬車じゃなくて他の所を走る馬車が良いって言ってるってことかな?」
「そう、それ。そうなんだけど、どうすればいいんだろう?」
「馬車を操縦している人にお願いすればいいんじゃないかな。馬車に乗りたいうまなちゃんを連れて行った時も普通に乗せてくれたんだし、どこか行きたい場所があれば行き先を告げれば連れていってくれるんじゃないかな?」
「そんなことして大丈夫かな?」
「大丈夫だと思うよ。何かあったとしてもイザーちゃんが近くにいるわけだし、困ったことにはならないんじゃないかな。心配するとしたら、珠希ちゃんの命を狙う輩に遭遇しちゃうことだと思うんだけど、柘榴ちゃんと愛華ちゃんもいるから平気平気。心配のうちに入らないと思う」
「ボクの命を狙うって、そんな人がいるの?」
「結構いるよ。この街にもそれなりにいるね。ただ、珠希ちゃんはみんなに守られてるからそんな心配することでもないんだよ。そんな感じだから安心していいんだからね」
自分の命が狙われているという衝撃の事実を知ってしまった工藤珠希だが、全く実感が無いのであまり気にしても良くないなと思っていた。
それよりも、うまなちゃんが泣きそうな顔をしているのに気付いてしまったので何とか馬車の運転手にどこか他の場所へ行ってくれるようにお願いをする事にしたのだ。
「あの、すいません」
「はい、何でしょうか?」
馬車の前方についていた小窓を開けて話しかけたところ、操縦をしていた人とその隣に座っている人が同時に答えてくれた。
まったく同じタイミングで答えてくれたことに若干の戸惑いを覚えたのだが、二人とも感じの良い笑顔で対応してくれたので少しだけ気が楽になっていた。
その二人は双子の姉妹なのではないかと思ってしまう程そっくりで息もぴったりである。そのうえ、工藤珠希に笑顔を向けてくれていた。
「乗せてもらってるだけでもありがたいんですけど、出来ればここをまわってるだけじゃなくてどこか他の場所にも言ってみたいなって思ってるんですけど、ダメですかね?」
「大丈夫ですよ。行きたい場所があればどこへでも連れていって構わないって言われてますから。どこか行きたい場所ってありますか?」
「ちょっと待ってくださいね。うまなちゃん、どこか行きたい場所はあるかな?」
すぐに答えが出てこない栗宮院うまな。コレと言っていきたい場所があるわけではなく、どこでもいいから他の場所に行きたいという事なのだろう。
栗鳥院柘榴も鈴木愛華も行きたい場所がないのか黙って栗宮院うまなを見つめているのだが、二人にじっと見られていることにプレッシャーを感じたのか栗宮院うまなは目を潤ませてしまい、今にも泣きだしてしまいそうだった。
そんな姿を見た栗鳥院柘榴と鈴木愛華は焦った様子でどこかいい場所がないかと検索を始めたのだ。
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