75 / 127
おパンツ戦争
第75話 毛深い女性
しおりを挟む
熊は何度も頭を下げてから森の奥へと消えていったのだが、その姿は漫画でよく見ることのある三下のようであった。
「うちの若いのが迷惑をかけたのは謝るけど、なんであんたたちはここに入ってきたのかな?」
「それは俺が説明します。太郎さんにはこの森の番人と戦ってもらいたかった。それが理由です」
「え、ちょっと待って。あんた達って言葉を使えるの? 殴りあう事でしか会話の出来ない野蛮な奴らだったんじゃないのかい?」
「前まではそうでした。でも、この太郎さんが俺たちに言葉を教えてくれました。殴り合いだけではうまく伝えることが出来ないことも、太郎さんが教えてくれた言葉のおかげで上手く伝えられるようになりました」
「凄いね。アタシらも何年か前にあんた達との対話を試みたことがあったんだけど、全く会話の糸口も見つけることが出来ずにいて困ってたんだよ。あんたってここに来てどれくらいなのさ?」
「どれくらいなんだろう。三日くらいのような気もするけど、地球を出てから時間の感覚が狂ってるんだよね」
「三日くらいって、たったそれだけでこいつらに言葉を教えるなんて異常だよ。熊の攻撃を受けてもピクリともしないってのも異常だと思ってはいたけど、それよりもこいつらに言葉を教えたってのは異常すぎる。アタシらよりも文明が進んでいるとは思えないんだけど、いったいどんな方法を使ったって言うのさ?」
「どんな方法って、この人たちのコミュニケーションと俺が使ってる言葉の少しずつ摺り寄せて共通点を探していっただけだよ。何か共通しているものが見つかればそれをきっかけにしてより多くの共通点を見つけられるし、こいつらのコミュニケーションを一つずつ言葉に置き換えるだけの簡単な作業さ」
「あんた、異常者だ。これは悪口ではなく誉め言葉だと受け取ってほしいんだけど、あんたはちょっとおかしいよ。あの熊の攻撃だって本気であんたを壊すつもりだったのに、そよ風を受けるような感じで立ってたもんな。もしかして、あんたって神様だったりするのかい?」
「神ではない。と思うけど」
全裸の女性は工藤太郎の事を疑いの眼差しで見つめていたのだった。
工藤太郎もなぜこの女は裸なのだろうという疑問はあっただけれど、それを聞くことは野暮な気がして黙っていることにした。
「神様ってなんだ?」
若者は二人の会話を黙って聞いていたのだが、工藤太郎の事を神様と呼んでいるのが無性に気になっていた。今まで聞いたことも考えたこともない神様という言葉は工藤太郎を表すのにピッタリな言葉のように感じていたのだ。
神様という存在を全く知らない若者が神様という言葉を聞いて工藤太郎にふさわしい言葉だと感じていた。その事を聞いた全裸の女性は神様について簡単に説明をしていた。
「要約すると、君たちがこの世界で信じることの出来る唯一の存在の事を神様と呼ぶんだよ。人によってその対象は別になるかもしれないけれど、今の君たちにとってこの太郎さんは神様と呼ぶにふさわしい存在であるという事なんじゃないかな」
「そうかもしれないです。太郎さんは俺たちに新しい世界を教えてくれた人。役立たずだった俺にも出来ることがあるって教えてくれた。俺と同じ役立たずでも出来ることがあるって教えてくれた恩人。太郎さんは誰よりも素晴らしい神様です」
「あたしの所の熊ちゃんが戦意喪失しちゃう時点で普通じゃないんだもんな。一つ確認させてもらいたいんだけど、あんたが生まれた地球って場所じゃあんたはどれくらいの強さなのかな?」
「どれくらいと聞かれると答えに困ってしまうかも。実際に比べた事は無いので正確ではないかもしれないけど、俺が今まで出会った人の中で俺よりも強いなって思ったのは誰もいなかったよ。直接会ったことが無い映像でしか見たこともない人を含めても、俺よりも強い人がいるとは思えないな」
「そうなのかい。あんたよりも強いってやつがいたら恐ろしいなって思ってたよ」
「でも、人間に限定しなければ俺よりも強いのはいたよ。たぶん、どの世界線を見回してもそいつよりも強いやつなんて存在しないと思う。どの世界線に行ってもあの子よりも強い人はいなかったって聞いてるからね」
「さすがにそれは言い過ぎだろ。あんたらの文明がどれくらい進んでいるのか知らないけれど、他の世界線を観測することだって相当無茶なことだっていうのに、世界線を超えて存在することが出来るなんて不可能だね。世界線を超えた証拠でもあるのかい?」
「信じてもらえるかはわからないけれど、この映像を見てもらえたら納得してもらえるんじゃないかな」
工藤太郎がスマホの画面を見せたのだが、そこに映し出されていたのはイザーと戦っている工藤太郎の姿であった。
いや、正確に言うと工藤太郎によく似ている別人のようにも見える。とてもよく似ているのだが、その表情と戦い方は先ほどまで熊と戦っていた時とは別人のようであった。
「これは、いったい何なのかな?」
「イザーちゃんが別の世界線の俺と戦っていた時の映像だって。世界を支配しようとしていた俺を一人で止めた時の映像だって言ってたよ。違う世界の俺も善戦はしていたみたいなんだけど、最終的にはイザーちゃんにコテンパンにされたって話なんだ。その時の映像があっちの世界では凄い人気で、何度も何度も繰り返し見られているって事らしいんだよ。ただ、俺はこの映像の俺とは違って世界征服とか興味ないし、こんな姿を見せられても困るだけなんだけどね」
「ちょっと待て、今イザーちゃんって言ったよな?」
「言ったけど、それがどうかしたの?」
「イザーちゃんって、あたしの住んでいた星を救ってくれた英雄の名前だよ。今はもう消滅しちまってるけど、その星の伝説にイザーちゃんって人が侵略生物を根絶やしにしてくれたってのがあるんだよ」
サキュバス星にいた時にイザーから聞いた話は冗談だと思っていた工藤太郎であったが、全裸の女性の話を聞くとアレは本当だったのかもしれないと思いなおしていたのであった。
「うちの若いのが迷惑をかけたのは謝るけど、なんであんたたちはここに入ってきたのかな?」
「それは俺が説明します。太郎さんにはこの森の番人と戦ってもらいたかった。それが理由です」
「え、ちょっと待って。あんた達って言葉を使えるの? 殴りあう事でしか会話の出来ない野蛮な奴らだったんじゃないのかい?」
「前まではそうでした。でも、この太郎さんが俺たちに言葉を教えてくれました。殴り合いだけではうまく伝えることが出来ないことも、太郎さんが教えてくれた言葉のおかげで上手く伝えられるようになりました」
「凄いね。アタシらも何年か前にあんた達との対話を試みたことがあったんだけど、全く会話の糸口も見つけることが出来ずにいて困ってたんだよ。あんたってここに来てどれくらいなのさ?」
「どれくらいなんだろう。三日くらいのような気もするけど、地球を出てから時間の感覚が狂ってるんだよね」
「三日くらいって、たったそれだけでこいつらに言葉を教えるなんて異常だよ。熊の攻撃を受けてもピクリともしないってのも異常だと思ってはいたけど、それよりもこいつらに言葉を教えたってのは異常すぎる。アタシらよりも文明が進んでいるとは思えないんだけど、いったいどんな方法を使ったって言うのさ?」
「どんな方法って、この人たちのコミュニケーションと俺が使ってる言葉の少しずつ摺り寄せて共通点を探していっただけだよ。何か共通しているものが見つかればそれをきっかけにしてより多くの共通点を見つけられるし、こいつらのコミュニケーションを一つずつ言葉に置き換えるだけの簡単な作業さ」
「あんた、異常者だ。これは悪口ではなく誉め言葉だと受け取ってほしいんだけど、あんたはちょっとおかしいよ。あの熊の攻撃だって本気であんたを壊すつもりだったのに、そよ風を受けるような感じで立ってたもんな。もしかして、あんたって神様だったりするのかい?」
「神ではない。と思うけど」
全裸の女性は工藤太郎の事を疑いの眼差しで見つめていたのだった。
工藤太郎もなぜこの女は裸なのだろうという疑問はあっただけれど、それを聞くことは野暮な気がして黙っていることにした。
「神様ってなんだ?」
若者は二人の会話を黙って聞いていたのだが、工藤太郎の事を神様と呼んでいるのが無性に気になっていた。今まで聞いたことも考えたこともない神様という言葉は工藤太郎を表すのにピッタリな言葉のように感じていたのだ。
神様という存在を全く知らない若者が神様という言葉を聞いて工藤太郎にふさわしい言葉だと感じていた。その事を聞いた全裸の女性は神様について簡単に説明をしていた。
「要約すると、君たちがこの世界で信じることの出来る唯一の存在の事を神様と呼ぶんだよ。人によってその対象は別になるかもしれないけれど、今の君たちにとってこの太郎さんは神様と呼ぶにふさわしい存在であるという事なんじゃないかな」
「そうかもしれないです。太郎さんは俺たちに新しい世界を教えてくれた人。役立たずだった俺にも出来ることがあるって教えてくれた。俺と同じ役立たずでも出来ることがあるって教えてくれた恩人。太郎さんは誰よりも素晴らしい神様です」
「あたしの所の熊ちゃんが戦意喪失しちゃう時点で普通じゃないんだもんな。一つ確認させてもらいたいんだけど、あんたが生まれた地球って場所じゃあんたはどれくらいの強さなのかな?」
「どれくらいと聞かれると答えに困ってしまうかも。実際に比べた事は無いので正確ではないかもしれないけど、俺が今まで出会った人の中で俺よりも強いなって思ったのは誰もいなかったよ。直接会ったことが無い映像でしか見たこともない人を含めても、俺よりも強い人がいるとは思えないな」
「そうなのかい。あんたよりも強いってやつがいたら恐ろしいなって思ってたよ」
「でも、人間に限定しなければ俺よりも強いのはいたよ。たぶん、どの世界線を見回してもそいつよりも強いやつなんて存在しないと思う。どの世界線に行ってもあの子よりも強い人はいなかったって聞いてるからね」
「さすがにそれは言い過ぎだろ。あんたらの文明がどれくらい進んでいるのか知らないけれど、他の世界線を観測することだって相当無茶なことだっていうのに、世界線を超えて存在することが出来るなんて不可能だね。世界線を超えた証拠でもあるのかい?」
「信じてもらえるかはわからないけれど、この映像を見てもらえたら納得してもらえるんじゃないかな」
工藤太郎がスマホの画面を見せたのだが、そこに映し出されていたのはイザーと戦っている工藤太郎の姿であった。
いや、正確に言うと工藤太郎によく似ている別人のようにも見える。とてもよく似ているのだが、その表情と戦い方は先ほどまで熊と戦っていた時とは別人のようであった。
「これは、いったい何なのかな?」
「イザーちゃんが別の世界線の俺と戦っていた時の映像だって。世界を支配しようとしていた俺を一人で止めた時の映像だって言ってたよ。違う世界の俺も善戦はしていたみたいなんだけど、最終的にはイザーちゃんにコテンパンにされたって話なんだ。その時の映像があっちの世界では凄い人気で、何度も何度も繰り返し見られているって事らしいんだよ。ただ、俺はこの映像の俺とは違って世界征服とか興味ないし、こんな姿を見せられても困るだけなんだけどね」
「ちょっと待て、今イザーちゃんって言ったよな?」
「言ったけど、それがどうかしたの?」
「イザーちゃんって、あたしの住んでいた星を救ってくれた英雄の名前だよ。今はもう消滅しちまってるけど、その星の伝説にイザーちゃんって人が侵略生物を根絶やしにしてくれたってのがあるんだよ」
サキュバス星にいた時にイザーから聞いた話は冗談だと思っていた工藤太郎であったが、全裸の女性の話を聞くとアレは本当だったのかもしれないと思いなおしていたのであった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
AV研は今日もハレンチ
楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo?
AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて――
薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる