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おパンツ戦争
第75話 毛深い女性
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熊は何度も頭を下げてから森の奥へと消えていったのだが、その姿は漫画でよく見ることのある三下のようであった。
「うちの若いのが迷惑をかけたのは謝るけど、なんであんたたちはここに入ってきたのかな?」
「それは俺が説明します。太郎さんにはこの森の番人と戦ってもらいたかった。それが理由です」
「え、ちょっと待って。あんた達って言葉を使えるの? 殴りあう事でしか会話の出来ない野蛮な奴らだったんじゃないのかい?」
「前まではそうでした。でも、この太郎さんが俺たちに言葉を教えてくれました。殴り合いだけではうまく伝えることが出来ないことも、太郎さんが教えてくれた言葉のおかげで上手く伝えられるようになりました」
「凄いね。アタシらも何年か前にあんた達との対話を試みたことがあったんだけど、全く会話の糸口も見つけることが出来ずにいて困ってたんだよ。あんたってここに来てどれくらいなのさ?」
「どれくらいなんだろう。三日くらいのような気もするけど、地球を出てから時間の感覚が狂ってるんだよね」
「三日くらいって、たったそれだけでこいつらに言葉を教えるなんて異常だよ。熊の攻撃を受けてもピクリともしないってのも異常だと思ってはいたけど、それよりもこいつらに言葉を教えたってのは異常すぎる。アタシらよりも文明が進んでいるとは思えないんだけど、いったいどんな方法を使ったって言うのさ?」
「どんな方法って、この人たちのコミュニケーションと俺が使ってる言葉の少しずつ摺り寄せて共通点を探していっただけだよ。何か共通しているものが見つかればそれをきっかけにしてより多くの共通点を見つけられるし、こいつらのコミュニケーションを一つずつ言葉に置き換えるだけの簡単な作業さ」
「あんた、異常者だ。これは悪口ではなく誉め言葉だと受け取ってほしいんだけど、あんたはちょっとおかしいよ。あの熊の攻撃だって本気であんたを壊すつもりだったのに、そよ風を受けるような感じで立ってたもんな。もしかして、あんたって神様だったりするのかい?」
「神ではない。と思うけど」
全裸の女性は工藤太郎の事を疑いの眼差しで見つめていたのだった。
工藤太郎もなぜこの女は裸なのだろうという疑問はあっただけれど、それを聞くことは野暮な気がして黙っていることにした。
「神様ってなんだ?」
若者は二人の会話を黙って聞いていたのだが、工藤太郎の事を神様と呼んでいるのが無性に気になっていた。今まで聞いたことも考えたこともない神様という言葉は工藤太郎を表すのにピッタリな言葉のように感じていたのだ。
神様という存在を全く知らない若者が神様という言葉を聞いて工藤太郎にふさわしい言葉だと感じていた。その事を聞いた全裸の女性は神様について簡単に説明をしていた。
「要約すると、君たちがこの世界で信じることの出来る唯一の存在の事を神様と呼ぶんだよ。人によってその対象は別になるかもしれないけれど、今の君たちにとってこの太郎さんは神様と呼ぶにふさわしい存在であるという事なんじゃないかな」
「そうかもしれないです。太郎さんは俺たちに新しい世界を教えてくれた人。役立たずだった俺にも出来ることがあるって教えてくれた。俺と同じ役立たずでも出来ることがあるって教えてくれた恩人。太郎さんは誰よりも素晴らしい神様です」
「あたしの所の熊ちゃんが戦意喪失しちゃう時点で普通じゃないんだもんな。一つ確認させてもらいたいんだけど、あんたが生まれた地球って場所じゃあんたはどれくらいの強さなのかな?」
「どれくらいと聞かれると答えに困ってしまうかも。実際に比べた事は無いので正確ではないかもしれないけど、俺が今まで出会った人の中で俺よりも強いなって思ったのは誰もいなかったよ。直接会ったことが無い映像でしか見たこともない人を含めても、俺よりも強い人がいるとは思えないな」
「そうなのかい。あんたよりも強いってやつがいたら恐ろしいなって思ってたよ」
「でも、人間に限定しなければ俺よりも強いのはいたよ。たぶん、どの世界線を見回してもそいつよりも強いやつなんて存在しないと思う。どの世界線に行ってもあの子よりも強い人はいなかったって聞いてるからね」
「さすがにそれは言い過ぎだろ。あんたらの文明がどれくらい進んでいるのか知らないけれど、他の世界線を観測することだって相当無茶なことだっていうのに、世界線を超えて存在することが出来るなんて不可能だね。世界線を超えた証拠でもあるのかい?」
「信じてもらえるかはわからないけれど、この映像を見てもらえたら納得してもらえるんじゃないかな」
工藤太郎がスマホの画面を見せたのだが、そこに映し出されていたのはイザーと戦っている工藤太郎の姿であった。
いや、正確に言うと工藤太郎によく似ている別人のようにも見える。とてもよく似ているのだが、その表情と戦い方は先ほどまで熊と戦っていた時とは別人のようであった。
「これは、いったい何なのかな?」
「イザーちゃんが別の世界線の俺と戦っていた時の映像だって。世界を支配しようとしていた俺を一人で止めた時の映像だって言ってたよ。違う世界の俺も善戦はしていたみたいなんだけど、最終的にはイザーちゃんにコテンパンにされたって話なんだ。その時の映像があっちの世界では凄い人気で、何度も何度も繰り返し見られているって事らしいんだよ。ただ、俺はこの映像の俺とは違って世界征服とか興味ないし、こんな姿を見せられても困るだけなんだけどね」
「ちょっと待て、今イザーちゃんって言ったよな?」
「言ったけど、それがどうかしたの?」
「イザーちゃんって、あたしの住んでいた星を救ってくれた英雄の名前だよ。今はもう消滅しちまってるけど、その星の伝説にイザーちゃんって人が侵略生物を根絶やしにしてくれたってのがあるんだよ」
サキュバス星にいた時にイザーから聞いた話は冗談だと思っていた工藤太郎であったが、全裸の女性の話を聞くとアレは本当だったのかもしれないと思いなおしていたのであった。
「うちの若いのが迷惑をかけたのは謝るけど、なんであんたたちはここに入ってきたのかな?」
「それは俺が説明します。太郎さんにはこの森の番人と戦ってもらいたかった。それが理由です」
「え、ちょっと待って。あんた達って言葉を使えるの? 殴りあう事でしか会話の出来ない野蛮な奴らだったんじゃないのかい?」
「前まではそうでした。でも、この太郎さんが俺たちに言葉を教えてくれました。殴り合いだけではうまく伝えることが出来ないことも、太郎さんが教えてくれた言葉のおかげで上手く伝えられるようになりました」
「凄いね。アタシらも何年か前にあんた達との対話を試みたことがあったんだけど、全く会話の糸口も見つけることが出来ずにいて困ってたんだよ。あんたってここに来てどれくらいなのさ?」
「どれくらいなんだろう。三日くらいのような気もするけど、地球を出てから時間の感覚が狂ってるんだよね」
「三日くらいって、たったそれだけでこいつらに言葉を教えるなんて異常だよ。熊の攻撃を受けてもピクリともしないってのも異常だと思ってはいたけど、それよりもこいつらに言葉を教えたってのは異常すぎる。アタシらよりも文明が進んでいるとは思えないんだけど、いったいどんな方法を使ったって言うのさ?」
「どんな方法って、この人たちのコミュニケーションと俺が使ってる言葉の少しずつ摺り寄せて共通点を探していっただけだよ。何か共通しているものが見つかればそれをきっかけにしてより多くの共通点を見つけられるし、こいつらのコミュニケーションを一つずつ言葉に置き換えるだけの簡単な作業さ」
「あんた、異常者だ。これは悪口ではなく誉め言葉だと受け取ってほしいんだけど、あんたはちょっとおかしいよ。あの熊の攻撃だって本気であんたを壊すつもりだったのに、そよ風を受けるような感じで立ってたもんな。もしかして、あんたって神様だったりするのかい?」
「神ではない。と思うけど」
全裸の女性は工藤太郎の事を疑いの眼差しで見つめていたのだった。
工藤太郎もなぜこの女は裸なのだろうという疑問はあっただけれど、それを聞くことは野暮な気がして黙っていることにした。
「神様ってなんだ?」
若者は二人の会話を黙って聞いていたのだが、工藤太郎の事を神様と呼んでいるのが無性に気になっていた。今まで聞いたことも考えたこともない神様という言葉は工藤太郎を表すのにピッタリな言葉のように感じていたのだ。
神様という存在を全く知らない若者が神様という言葉を聞いて工藤太郎にふさわしい言葉だと感じていた。その事を聞いた全裸の女性は神様について簡単に説明をしていた。
「要約すると、君たちがこの世界で信じることの出来る唯一の存在の事を神様と呼ぶんだよ。人によってその対象は別になるかもしれないけれど、今の君たちにとってこの太郎さんは神様と呼ぶにふさわしい存在であるという事なんじゃないかな」
「そうかもしれないです。太郎さんは俺たちに新しい世界を教えてくれた人。役立たずだった俺にも出来ることがあるって教えてくれた。俺と同じ役立たずでも出来ることがあるって教えてくれた恩人。太郎さんは誰よりも素晴らしい神様です」
「あたしの所の熊ちゃんが戦意喪失しちゃう時点で普通じゃないんだもんな。一つ確認させてもらいたいんだけど、あんたが生まれた地球って場所じゃあんたはどれくらいの強さなのかな?」
「どれくらいと聞かれると答えに困ってしまうかも。実際に比べた事は無いので正確ではないかもしれないけど、俺が今まで出会った人の中で俺よりも強いなって思ったのは誰もいなかったよ。直接会ったことが無い映像でしか見たこともない人を含めても、俺よりも強い人がいるとは思えないな」
「そうなのかい。あんたよりも強いってやつがいたら恐ろしいなって思ってたよ」
「でも、人間に限定しなければ俺よりも強いのはいたよ。たぶん、どの世界線を見回してもそいつよりも強いやつなんて存在しないと思う。どの世界線に行ってもあの子よりも強い人はいなかったって聞いてるからね」
「さすがにそれは言い過ぎだろ。あんたらの文明がどれくらい進んでいるのか知らないけれど、他の世界線を観測することだって相当無茶なことだっていうのに、世界線を超えて存在することが出来るなんて不可能だね。世界線を超えた証拠でもあるのかい?」
「信じてもらえるかはわからないけれど、この映像を見てもらえたら納得してもらえるんじゃないかな」
工藤太郎がスマホの画面を見せたのだが、そこに映し出されていたのはイザーと戦っている工藤太郎の姿であった。
いや、正確に言うと工藤太郎によく似ている別人のようにも見える。とてもよく似ているのだが、その表情と戦い方は先ほどまで熊と戦っていた時とは別人のようであった。
「これは、いったい何なのかな?」
「イザーちゃんが別の世界線の俺と戦っていた時の映像だって。世界を支配しようとしていた俺を一人で止めた時の映像だって言ってたよ。違う世界の俺も善戦はしていたみたいなんだけど、最終的にはイザーちゃんにコテンパンにされたって話なんだ。その時の映像があっちの世界では凄い人気で、何度も何度も繰り返し見られているって事らしいんだよ。ただ、俺はこの映像の俺とは違って世界征服とか興味ないし、こんな姿を見せられても困るだけなんだけどね」
「ちょっと待て、今イザーちゃんって言ったよな?」
「言ったけど、それがどうかしたの?」
「イザーちゃんって、あたしの住んでいた星を救ってくれた英雄の名前だよ。今はもう消滅しちまってるけど、その星の伝説にイザーちゃんって人が侵略生物を根絶やしにしてくれたってのがあるんだよ」
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イラスト:tojo様(@tojonatori)
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