百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎

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おパンツ戦争

第124話 緊急の学校集会を開催します

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 ブルマを穿いていることもあっていつもよりも気を付けていない工藤珠希だったが、いつものように覗こうとしているサキュバス達はあまりにも無防備な行動をとる工藤珠希に対して見てはいけないのではないかという思いが芽生えていた。
 見えそうで見えないものを見たいという気持ちがあるのは人間もサキュバスも同じなのだろうが、堂々と見せてこられると逆に目を逸らしてしまうという事も人間とサキュバスでは反応に大差がないのかもしれない。

 いつもよりに活動的になっている工藤珠希の姿を見て多くの者たちが違和感を覚えていたのだが、その理由はとても単純で工藤太郎が戻ってきたという事だった。

「珠希ちゃんに似合うおパンツの話なんだけど、やっぱり水色の可愛らしいおパンツだと思うんだ。珠希ちゃんが昨日穿いていたブルマが水色だったのを見てそれを確信したよ。あんなに可愛らしい珠希ちゃんには水色のおパンツが似合うんだってね」
「確かに水色のブルマは似合ってはいたけれど、それとおパンツが似合うかは別問題だよね。可愛らしい珠希ちゃんがセクシーなおパンツを穿いているというギャップの方がいいと思うよ。それはイザーちゃんだって認めてることだと思うんだけど」
「セクシーなおパンツも似合うんじゃないかって言ったことはあるけど、それを言ったらうまなちゃんだって可愛らしいおパンツが似合うって言ってたでしょ。忘れたとは言わせないよ」

 最初のうちは工藤珠希も両陣営に配慮して水色とピンクのブルマを穿かないようにはしていたのだけれど、自分に似合うおパンツの話をいつまでも延々とされるのも嫌なので思い切って水色とピンクのブルマを交互に穿くことにしたのだ。
 それによって両陣営による議論も加速していく事になったのだけれど、その話は工藤珠希の耳には入らないようにされていたので工藤珠希自身は平和に過ごすことが出来ていたのであった。

 ブルマを穿くことを提案した工藤太郎はその功績を認められ、本来であれば遠方に課外授業に行くはずだった予定を免除されることになったのだ。
 それも工藤珠希の機嫌が良かった理由の一つではあった。

「珠希ちゃんのおかげで俺はもう少しここに残れることになったみたいだよ。本当だったら今月の中旬には遠方に行く予定だったみたいなんだよね。今度は一人でゴミ拾いをする予定だったんだって」
「ゴミ拾いか。それも大切なことだよね。でも、宇宙に行くことに比べたらまだマシなんじゃないかな。まさか、エベレストとか行くわけじゃないよね?」
「エベレストみたいなところは一人で行けないんじゃないかな。あそこは入るだけでも許可がいるとか聞いたことがあるし。俺が行く予定だったところは、誰もいないポイントネモって場所らしいよ。珠希ちゃんはどこにあるか知ってる?」
「全然知らないかも。太郎が知らないことをボクが知ってるはずないでしょ。でも、なんかポイントネモって可愛らしい名前だね」
「行く事になったら調べればいいしね。なんか、今回は地球から出ないって言ってたから、転送ゲートを使って珠希ちゃんも時々遊びに来てよ」
「苛酷な場所じゃなかったら遊びに行くわ。お父さんに行ってパスポート取っておかないとね」

 そんな和やかな会話を楽しんでいた二人ではあったが、その日の放課後に事態は急変するのであった。
 当然ではあるが、その事を二人は全く知る由もなかった。


「緊急の学校集会を開催します。本日は午後の授業をすべて取りやめになりますが、教室の自分の席について担任からの指示に従ってください」

 お昼休みに突然入った校内放送に驚いた工藤珠希ではあったが、他の生徒たちは皆平然としていた。
 まるで、この時が来るのを待っていたとでも言わんばかりの落ち着きようだったが、工藤珠希だけは何が起きるのか想像もつかずに周りをキョロキョロと見まわしていたのであった。

 工藤太郎は珍しく目を閉じて何か考え事をしている。
 その姿を見た工藤珠希はきっと何か知っているのだろうと思ってはいたけれど、それを工藤太郎に尋ねることは出来なかった。
 聞いてしまうと、今の愉しい時間が全て無かったことになってしまうのではないかと感じてしまったのだ。

 栗宮院うまなもイザーもみんな何も話さずに黙ったままで、誰も工藤珠希の事を見ようとはしていない。
 無言のプレッシャーに押しつぶされそうになった工藤珠希はそっと教室を出て、一人になれる唯一の場所である自分専用の更衣室へと逃げ込んだ。
 誰も入ることが出来ない自分だけの場所。
 自分が許可している者だけが入ることを赦されている特別な場所。




 ボクが許可している太郎だけが入ることが出来る、とっても大切な場所





 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴っても学校内にはそれ以外の音が聞こえなかった。
 廊下を歩く自分の足音だけが響く不思議な現象。
 他の教室を横目で見ても生徒はみなそろっているし、外を見ると野生のサキュバスや宇宙人たちも綺麗に整列している。

 ただ、話し声はおろか物音ひとつ聞こえない、そんな不思議な状況が工藤珠希の頭では処理しきれずに怖くなって、泣きそうになっていた。

 いつもよりも大きな音を立てて扉が開いたような気がしていたが、誰一人として自分を見ていないことに違和感を抱き、自分の席にこのまま座っていいのか戸惑っていた。

「珠希ちゃん、学校集会が始まるので席についてもらっていいかな。先生からお話があるのでお願いね」

 片岡瑠璃先生の言葉に従い自分の席に座ると、時々授業で使ったことのあるタブレット端末が机に置かれていることに気が付いた。
 隣を見ても誰もそのタブレット端末を見ようとはしておらず、工藤珠希も何をすればいいのかわからなかったのでそのまま黙って座ることにした。

「全員揃ったので学校集会についての説明をします。皆さんの机に置かれた投票用タブレットでアンケートに答えてもらいたいんだけど、今回は記名式になっていないので皆さんの本音で答えてください。派閥があることも先生は知っています。でも、そんな事にこだわらずに今の思いを素直に書いてくれてかまいません。例え、その派閥のリーダーであったとしても、別の立場になることだってあり得るでしょうからね。それと、今回のアンケートは零楼館高校の生徒だけではなく、中学校と小学校でも行われていますし、外部のサキュバスやこの学校に関係している宇宙人たちも答えてもらう事になっています。全員の投票が終わり次第、うまなちゃんとイザーちゃんと太郎ちゃん、そして、珠希ちゃんには放送室へ移動してもらいます。珠希ちゃんは先に行っててもいいんだけど、アンケートに答えてからにするかな?」

「えっと、放送室がどこにあるのか知らないのでアンケートに答えてみます。いやな予感しかしないけど、答えることにします」

 工藤珠希の予感は的中した。
 当然、まともに答える気のない工藤珠希は解答欄に顔文字を二つほど書いて投票を終えたのだ。

 笑顔に戻った工藤太郎と一緒に教室を出て放送室へと向かう事になったのだが、その少し後を落ち着きのない栗宮院うまなとイザーが付いてきているのが少しだけ気になってしまった。
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