じばく男と肉欲処女

釧路太郎

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淫欲八姫

第31話 君にとって都合がイイ女とは限らないからね。

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 言われるがままにサキュバスの顔に触れようとした。
 ソレだけだったはずなのに、俺の指は今まで感じたことが無いような感触に包まれていた。
 あまりの出来事に自分の脳が理解するまで間が空いてしまったのだが、俺の指をくわえたサキュバスのお姉さんは何故かウットリとした瞳で俺を見つめてきていた。その瞳に映っている俺の姿は見たことが無いくらい間の抜けた顔をしていたように見えたが、それを正すことは出来なかった。

 俺の指を弄ったサキュバスのお姉さんはどこか不満そうな顔をしていたのだが、俺の顔を見て機嫌を直したみたいで真っすぐに俺を見つめてきた。

「君がそのベッドから出てくれたら、もっと気持ちいいことしてあげるんだけどな。今の君はそれを望んではいないんだろうけど、どうしても我慢出来なくなったらいつでもアタシを呼んでくれていいんだよ。他のサキュバスなんかに頼ったりしちゃダメだからね。君の事を一番最初に見つけたサキュバスは、アタシなんだよ」

 言葉は聞いて理解出来ているのだけれど、何を言っているのかなかなか理解出来ずにいた。
 サキュバスのお姉さんの言葉を聞いて理解した時、俺はこのベッドから降りてしまいそうだ。それだけは良くないとわかっているのだけれど、これ以上続けられると自分の理性が失われてしまいそうだ。
 それなのにもかかわらず、俺はまた指を伸ばしてしまいそうになっていた。

「我慢することはイイコトじゃないよ。君にとってのこの世界はどうせ大した思い入れも無いんだし、好き勝手に振舞っちゃえばいいんじゃないかな。だって、君はこの世界で活躍するためには自分の命を犠牲にしないといけないんだからね。そんな役割を持った君は、もっともっと自分に素直になっていいと思うよ。君は自分の命をこの世界のために投げ出すんだし、ちょっとはイイ思いをしておいた方が良いんじゃない。君は自分から望んでこの世界で犠牲になるってわけでもないんだし、この世界の平和のために犠牲になるって言うんだから、この世界に対してわがままを言う資格はあると思うよ」
「そうは言っても、俺がこの世界のために命を捨てるとは限らないし。それに、君が言ってるみたいに俺の能力が自爆だなんて信じたくないよ。そんな攻撃しかないとかダサすぎるでしょ。今まで異世界に転移した人でそんな残酷な攻撃方法しか持ってないような人なんていたのかな?」

「他の世界の事なんてアタシは全然知らないけど、違う世界に行ってまで自爆攻撃をすることになる人なんていないんじゃないかな。何で君がそうなってるのかはわからないけど、君の命を懸けた爆発はこの世界にとって大きな影響を与えるんだと思うよ。でもね、この世界には君が命をかけるほどの価値なんて無いと思うよ。君が好きなイザーちゃんは本当に君の事が好きなのか考えた方が良いのかもしれないね。もしかしたら、君の事が好きだというのは嘘で、君のその特別な攻撃方法が目当てなだけかもしれないよ」
「そんなはずはない。イザーちゃんは俺の事を好きだって言ってくれたし、その思いに答えたことで恋人同士になれたんだから。変な言いがかりはやめてくれよ」
「そうなんだ。君はそう思ってるんだね。でも、君とイザーちゃんは何か恋人らしいことってしたことがあるのかな?」

 恋人らしいことをしたことがあるのかと聞かれると、答えに困ってしまう。
 手すら繋いだこともないという純情を極めている俺たちの関係は健全な高校生同士のカップルと言えるのだろう。俺の周りだって似たような感じだし、何か恋人らしいことをしているという人なんて周りにはそんなにいないのだ。
 中には進んでいるカップルもいたいるするけれど、大半は俺と同じように健全な交際をしている。
 何か一歩踏み出したいという気持ちはあるのだけれど、健全な高校生カップルがその一歩を踏み出すのは勇気がいるのだ。
 例えば、俺の出した指を咥えてくれるとかそういった事をしてくれないと前へ進んでいいのか判断が出来ないのだ。

「君は知っているかわからないけど、八姫って男性に興味がない人が多いんだよ。全員がそうだとは言わないけど、中には男と一緒の空間にいるのも嫌だって人もいるからね。男ばかりで構成されている名も無き神の軍勢と敵対するのもそんな事が関係しているのかもしれないよ。男ばかりの世界になってくれた方が、サキュバスであるアタシたちにとっては住みやすい世界になると思うんだけど、あまりにも男だらけになってしまうのも困りものなんだよ。男ばっかりだと、変な男を掴む確率が上がっちゃうからね。ある程度はダメな男を間引いてもらう必要があるんだ。君みたいにこの世界の大きな影響を与えるような男は滅多にいないし、明日以降もアタシみたいなサキュバスがやってくるとは思うよ。だけど、どんな時でもアタシの事を思い出してほしいな。正直に言って、明日からやって来るサキュバスなんて出涸らしみたいなカスばかりだからね。アタシみたいにちゃんと引くことを知っているサキュバスなんてほとんどいないし、だからこそ君はどんな時でもちゃんと自分の意志を持って行動してね。たった一度しか出来ない自爆攻撃をサキュバスなんかのために使っちゃダメだよ」
「そんな事はしないと思うけど、忠告は受け取っておくよ」

「そう言ってもらえると安心するわ。でも、サキュバスは君が思っているよりも異常なのよ。君にとって都合がイイ女とは限らないからね」

 左右にお尻を振りながら歩いていくサキュバスを自然と目で追っていたのだが、本当に帰っていったことに少し驚いていた。
 あともう少し粘られてしまったら俺の理性がもたなかったかもしれないが、何事もなく終わったことにひとまず安心していた。

 俺の隣で気持ちよさそうに眠っているアスモちゃんは全く起きる気配がないのだ。俺もアスモちゃんと同じように寝ようとしたのだけれど、少しだけ外が明るくなっていた。
 このまま起きていても良いことなんて無いとわかっているので寝ようと思うのだが、俺はどうしても眠ることが出来なかった。
 何となく自分の指を見つめてはいたのだが、どこからか爽やかな柑橘系の香りがしていた。
 匂いの正体はわからないけれど、その香りは少しだけ俺の心を落ち着かせてくれたのだった。
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