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先生とうまなちゃん
第15話 あそこ迄飲んで酔っぱらう必要はなかったよ。
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楽しかったかと聞かれると、楽しかったと自信を持って言える時間を過ごせた休日が終わると憂鬱な朝がやって来る。
毎週のように気分が落ち込むのは仕方のない事なのかもしれないが、今回に限ってはいつも以上に憂鬱な気分になっているのだ。
なぜなら、イザーちゃんと一緒に出掛けている姿を多くの生徒に目撃されていたからだ。佐藤さんと三上さんのように話しかけてくる生徒も数名いたのだが、俺が気付いて視線を向けると明らかに目線を逸らしている姿を何人も目撃してしまった。
つまり、俺とイザーちゃんが一緒に買い物をしたりご飯を食べているが常に誰かに見られていたと言っても過言ではないのだ。教師が生徒と一緒にいる姿を見られたのなら問題にもなるのだろうが、イザーちゃんはパッと見は成人しているように見えるのだし何の問題も無いだろう。俺が休日に誰と一緒に過ごそうが文句を言われる筋合いなどないのだが、イザーちゃんのいない場所で俺とイザーちゃんのことでからかわれるというのは正直に言って、あまり気持ちの良いものではないのだ。
「休み明けってみんなお兄ちゃんみたいに辛そうな顔になるもんなんだね。うまなちゃんは毎日楽しそうにしてたんだけど、やっぱりあれってうまなちゃんが変わってるだけだったんだね。お兄ちゃんもいつも楽しそうにしてたような気はしたんだけど、今日はいつもとは違う感じなのかな?」
「まあ、そうなるよね。俺は別に気にしてないんだけど、昨日イザーちゃんと一緒にいたところを何人もの生徒に見られてたことを考えると少し憂鬱な気分になるよね。イザーちゃんと一緒にいるのが嫌だったって事じゃなくて、イザーちゃんのいないところでイザーちゃんの事を聞かれるのが嫌だなって思ってるだけだから。正直に言って、俺はまだイザーちゃんのことを全然知らないし、なんて言ったら良いのかわからないんだよね」
「私の事なんて気にせずに好きなように言ってくれていいんだよ。例えばだけど、私の事をお兄ちゃんの奴隷とか言ってみんなを驚かせたりしてもいいんだけど、そう言うの言いにくいって感じだったら海外からやってきた親戚の子とかでもいいんじゃないかな。お兄ちゃんが思う好きなシチュエーションを楽しんじゃっていいんだよ」
「さすがにそんな事は言えないよ。でも、栗宮院さんがイザーちゃんのことを説明してくれるかもしれないよね?」
「それは無いと思うよ。うまなちゃんは困ってるお兄ちゃんの姿を見て喜んじゃってると思うし」
栗宮院うまなは悪い子ではないと思うのでイザーちゃんが言うように、俺が困っているところを見て喜んだりなんてするとは思えない。むしろ、俺が困っているところを見かけたら積極的に助けてくれるのではないかと思っている。それくらい、誰かの助けになっている姿をよく見かけているのだ。
「俺が困っていたとしたら、栗宮院さんは助けてくれると思うよ。俺とイザーちゃんのことだったとしたら、なおさら助けてくれるんじゃないかな?」
「そうだといいんだけどね。でも、うまなちゃんはお兄ちゃんが困っているところをもっと見たいって思ってるんじゃないかな。あの夜だって、お兄ちゃんがお酒をあんなに飲む必要なんて全然なかったのに無理やり飲ませてたし。一応心配はしていたみたいだけど、それよりも酔っぱらって意識もうろうとしているお兄ちゃんを見てゲラゲラ笑ってたよ。あの姿には私も若干引いたんだけど、私の他にもいた護衛の人達も酸欠になりそうなくらい笑ってたうまなちゃんに呆れてたんじゃないかな。うまなちゃんはお兄ちゃんの事をこれっぽっちも心配してなかったと思うよ」
「ちょっと待って、俺は言われるがままに飲んでたんだけど、その必要はなかったって事?」
「うん、あそこ迄飲んで酔っぱらう必要はなかったよ。だって、せっかくお兄ちゃんがユキちゃんとお話しできるって段階まで行ったのに、お兄ちゃんがお酒に酔って潰れちゃったんだからね。ユキちゃんもせっかくこっちに来てお兄ちゃんとお話しできるタイミングだったっていうのに、うまなちゃんのせいでそれも一瞬で終わっちゃったからね。もしかしたら、お兄ちゃんにはユキちゃんの声は届いていなかったかもしれないけど、お兄ちゃんはユキちゃんがいる方をちゃんと向いていたんだからね。本当にもったいないことをしたよね」
お酒を飲んでいたこともあって記憶は曖昧なのだが、確かに俺は由貴の声を聞いたと思う。俺の記憶に残るまだ中学生だった由貴と同じ声が聞こえたと思ったのだが、それは由貴本人の声だったという事んなのだ。イザーちゃんが言うように、死んだはずの由貴と話が出来ると知っていればあそこまで無理をしてお酒を飲むことなんて無かっただろう。
そもそも、俺はお酒に強いわけではないのだからコップ一杯分だったとしても、日本酒を飲んでいる時点で記憶は曖昧なものになっていたのかもしれない。
それでも、由貴の声を聞いて会話が出来たのであれば、俺はどんな事でも耐えていたと思う。今更由貴が死のうと思った理由なんて聞きたいわけではないのだが向こうで楽しく過ごせているのかくらいは聞いておきたいと思った。
そう考えると、栗宮院うまなに言われるがままにお酒を飲んでいた俺も相当お人よしという事になるのかもしれない。それでもいいのだと、俺は感じていた。
毎週のように気分が落ち込むのは仕方のない事なのかもしれないが、今回に限ってはいつも以上に憂鬱な気分になっているのだ。
なぜなら、イザーちゃんと一緒に出掛けている姿を多くの生徒に目撃されていたからだ。佐藤さんと三上さんのように話しかけてくる生徒も数名いたのだが、俺が気付いて視線を向けると明らかに目線を逸らしている姿を何人も目撃してしまった。
つまり、俺とイザーちゃんが一緒に買い物をしたりご飯を食べているが常に誰かに見られていたと言っても過言ではないのだ。教師が生徒と一緒にいる姿を見られたのなら問題にもなるのだろうが、イザーちゃんはパッと見は成人しているように見えるのだし何の問題も無いだろう。俺が休日に誰と一緒に過ごそうが文句を言われる筋合いなどないのだが、イザーちゃんのいない場所で俺とイザーちゃんのことでからかわれるというのは正直に言って、あまり気持ちの良いものではないのだ。
「休み明けってみんなお兄ちゃんみたいに辛そうな顔になるもんなんだね。うまなちゃんは毎日楽しそうにしてたんだけど、やっぱりあれってうまなちゃんが変わってるだけだったんだね。お兄ちゃんもいつも楽しそうにしてたような気はしたんだけど、今日はいつもとは違う感じなのかな?」
「まあ、そうなるよね。俺は別に気にしてないんだけど、昨日イザーちゃんと一緒にいたところを何人もの生徒に見られてたことを考えると少し憂鬱な気分になるよね。イザーちゃんと一緒にいるのが嫌だったって事じゃなくて、イザーちゃんのいないところでイザーちゃんの事を聞かれるのが嫌だなって思ってるだけだから。正直に言って、俺はまだイザーちゃんのことを全然知らないし、なんて言ったら良いのかわからないんだよね」
「私の事なんて気にせずに好きなように言ってくれていいんだよ。例えばだけど、私の事をお兄ちゃんの奴隷とか言ってみんなを驚かせたりしてもいいんだけど、そう言うの言いにくいって感じだったら海外からやってきた親戚の子とかでもいいんじゃないかな。お兄ちゃんが思う好きなシチュエーションを楽しんじゃっていいんだよ」
「さすがにそんな事は言えないよ。でも、栗宮院さんがイザーちゃんのことを説明してくれるかもしれないよね?」
「それは無いと思うよ。うまなちゃんは困ってるお兄ちゃんの姿を見て喜んじゃってると思うし」
栗宮院うまなは悪い子ではないと思うのでイザーちゃんが言うように、俺が困っているところを見て喜んだりなんてするとは思えない。むしろ、俺が困っているところを見かけたら積極的に助けてくれるのではないかと思っている。それくらい、誰かの助けになっている姿をよく見かけているのだ。
「俺が困っていたとしたら、栗宮院さんは助けてくれると思うよ。俺とイザーちゃんのことだったとしたら、なおさら助けてくれるんじゃないかな?」
「そうだといいんだけどね。でも、うまなちゃんはお兄ちゃんが困っているところをもっと見たいって思ってるんじゃないかな。あの夜だって、お兄ちゃんがお酒をあんなに飲む必要なんて全然なかったのに無理やり飲ませてたし。一応心配はしていたみたいだけど、それよりも酔っぱらって意識もうろうとしているお兄ちゃんを見てゲラゲラ笑ってたよ。あの姿には私も若干引いたんだけど、私の他にもいた護衛の人達も酸欠になりそうなくらい笑ってたうまなちゃんに呆れてたんじゃないかな。うまなちゃんはお兄ちゃんの事をこれっぽっちも心配してなかったと思うよ」
「ちょっと待って、俺は言われるがままに飲んでたんだけど、その必要はなかったって事?」
「うん、あそこ迄飲んで酔っぱらう必要はなかったよ。だって、せっかくお兄ちゃんがユキちゃんとお話しできるって段階まで行ったのに、お兄ちゃんがお酒に酔って潰れちゃったんだからね。ユキちゃんもせっかくこっちに来てお兄ちゃんとお話しできるタイミングだったっていうのに、うまなちゃんのせいでそれも一瞬で終わっちゃったからね。もしかしたら、お兄ちゃんにはユキちゃんの声は届いていなかったかもしれないけど、お兄ちゃんはユキちゃんがいる方をちゃんと向いていたんだからね。本当にもったいないことをしたよね」
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そもそも、俺はお酒に強いわけではないのだからコップ一杯分だったとしても、日本酒を飲んでいる時点で記憶は曖昧なものになっていたのかもしれない。
それでも、由貴の声を聞いて会話が出来たのであれば、俺はどんな事でも耐えていたと思う。今更由貴が死のうと思った理由なんて聞きたいわけではないのだが向こうで楽しく過ごせているのかくらいは聞いておきたいと思った。
そう考えると、栗宮院うまなに言われるがままにお酒を飲んでいた俺も相当お人よしという事になるのかもしれない。それでもいいのだと、俺は感じていた。
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