人生やり直しには代償が必要なんですが、覚悟は出来てますか?

釧路太郎

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先生とうまなちゃん

第17話 先生が好きなのは次の三種類の中でどれですか?

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 俺にお似合いの相手を勝手に決めてくれるのは別にいいのだが、その相手は良くないんじゃないかなと思う。
 みんなは俺が一人だったというのだけど、みんなが俺にお似合いな相手として挙げているのが、どこをどうとって考えてみてもイザーちゃんなのだ。

「先生とお似合いなのはやっぱり金髪のお姉さんじゃないかな。落ち着いた感じの先生にはちょっと派手な人が似合うと思うんだよね」
「それはあるかも。着物が似合う日本美人ってよりも、先生には金髪のお姉さんと合うような気がするもん」
「なんでだろう。私もそんな気がしてたかも。見た目は遊んでそうなのに、家事もしっかりできて根は真面目な人が良さそうだよね」

 俺の話をしている生徒たちは俺とイザーちゃんが一緒にいるところを見た生徒だと思う。少なくとも、佐藤さんと三上さんはあの時に俺と会話をしているのだ。当然、俺の横には金髪のイザーちゃんがいたし、四人で会話もしている。
 それなのにもかかわらず、佐藤さんも三上さんもイザーちゃんのことを全く記憶していないのだ。彼女たちの中では俺は一人で行動していたことになっているのだ。
 もしかして、イザーちゃんが言っていたことは本当で、イザーちゃんに関する記憶は消去されてしまうのだろうか。完全に記憶が消えているわけではないからこそ、俺にお似合いの女性が金髪だという事になっているのかもしれない。
 ただ、それがいったいどういう理由なのかがわからず、俺はただただ狼狽えているだけであった。

「先生って結婚する予定とかないんだよね?」
「今のところないけど。それってハラスメントにならない?」
「ならないでしょ。別に私たちはそういう意味で聞いてるわけじゃないし、先生だって別に何とも思ってないでしょ?」
「まあ、なんとも思ってはいないけど。俺以外の人にそんな事を聞いちゃダメだよ。中には気にしている人もいるんだからね」
「それくらいわかってるって。私達だって言う相手は選んでるし。先生だから言えるってこともあるんだよ」

 その後は俺の理想の結婚相手の話題で盛り上がっていたようなのだが、俺は次の授業の準備もあるため教室を抜け出した。
 生徒に好かれるのは悪い事ではないのだが、他の先生たちよりも俺に対する距離感が近いように感じている。その事は俺自身も自覚しているし、他の先生たちもわかってはいるのだ。それでも、一応節度ある距離をとるようにとやんわりと注意されてはいる。
 もちろん、俺もその事は重々承知しているので気を付けてはいるのだ。気を付けてはいても、生徒から相談事をされたりするとどうしても距離感が近くなってしまう。生徒と教師という関係以上に仲良くなることはないのだが、一部の教師や保護者からは生徒との距離感が近いと思われているのも事実なのだ。

 自分のクラスの授業が無かったことで油断していたというのは事実なのだが、昼休み前最後の授業で栗宮院うまなのクラスを担当するという事を思い出した。
 アレから栗宮院うまなと何かあったというわけではないので問題は何もないのだけど、イザーちゃんを俺のもとへと派遣した栗宮院うまなと何の連絡も取っていなかった事を思い出してどうしようもない気持ちになってしまった。お礼を言った方が良いのか、何も言わない方が良いのか、俺には答えが見つからなかった。
 授業が始まる前も授業中も特に変わった様子を見せない栗宮院うまなに違和感を覚えつつも俺は無難に授業を進めていく。いつもと何も変わらないのが逆に不自然に感じつつも、俺は午前中最後の授業を無事に終えたのだ。

「じゃあ、最後に何かわからないところがあった人は何でも聞いてくれ。みんなの前で聞くのが恥ずかしかったら昼休みでも放課後でも聞きに来てくれていいからな」
「あの、授業の事じゃなくても質問していいですか?」

 なぜこのタイミングで質問してくるのかと思いつつ、栗宮院うまなの質問にどう答えればいいのか考えてみた。
 変にごまかすのも良くないと思いつつも、何を言い出すのかわからないので俺は慎重になってしまう。
 もしかして、金曜日にお酒を買って飲んだことを聞かれたりしないだろうか。そんな事をみんなの前で言われたとしたら、俺の教師生命は終わりを迎えてしまうのではないだろうか。

 そんな俺の心配をよそに、栗宮院うまなはクラス中の視線を集めた中でとんでもない事を言い出した。

「先生が好きなのは次の三種類の中でどれですか?」

 いきなり始まる三択クイズに戸惑っているのは俺だけではなく、このクラスの生徒も大半が戸惑っているようだった。
 普段真面目な生徒会長の栗宮院うまなが突然始めたクイズはクラスの空気を一変させた。
 クイズを非難するものは誰もいなかったが、質問の時間とはいえ授業中にいきなりクイズを始めたことに対して怒った方が良いのか悩んだ末、俺は素直にクイズを受け入れることにしたのだ。俺が注意した後に、金曜の夜の事やイザーちゃんのことを出されても何も反論出来ないという事は関係ない。
 単純に、どんなクイズなのか気になっただけなのだ。

 どんなクイズなのか気になっただけなのだ。

「では問題です。先生が好きなのは次のうちどれでしょう? 一、金髪の幼女。二、金髪の美少女。三、金髪の美女。答えは来週の授業迄待ちますね」

 クラス中の視線が栗宮院うまなから俺へと向けられたのだが、俺は誰とも目を合わせることが出来なかった。
 自分の腕時計を見つめ、授業の終わりを告げる時をカウントダウンしていた。
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