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先生とうまなちゃん
第26話 マネージャーが泣いてる時だけ監督は遅れて練習を見に来てたんです。
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由貴がおこなった改革の多くは野球部員たちにとって大変意義のあることになっていたのだが、自分が今まで行ってきたことをすべて否定されるような形になった監督は面白くなかったはずだ。自分の指導では今まで目立った結果も残せていなかったのに、由貴の指摘によって結果が出ているという現実は受け入れがたいものだったようだ。
だが、結果が出ている以上はソレが正しいのだと感じてはいたようで、試合に出ている部員に対しては特に何かをすることも無く由貴の提案した練習メニューをこなすように指示もしていたようだ。スタメンで活躍していた彼を含めた一軍メンバーは何の疑問も持たずに由貴の練習を無我夢中でこなしていたのだが、試合に出ていない二軍と呼ばれる部員たちは今まで以上に苛酷なトレーニングをするように指示されていたのだ。
疲労も考慮した由貴の練習メニューをこなす一軍メンバーと昔ながらの根性トレーニングを強制的にやらされる二軍メンバーの間には技術的な差はそれほど大きく離れる事は無かったのだが、体調やモチベーションの差は大きく離れてしまっていた。練習試合の無い週末に行われる紅白戦も疲労が溜まっている二軍メンバーは思うような活躍は出来ず、一軍と二軍の差は大きく開いてしまっていた。
練習試合の結果を聞いた由貴は何度も監督に意見を言ったそうなのだが、部外者である由貴の意見を完全に受け入れることは出来ず、結果の出ている一軍に限って由貴の提案を受け入れるという事になってしまった。今までずっと指導してきたと言うプライドがあるからなのか、野球も知らなそうな小娘の意見を全面的に受け入れるという事は出来なかったのかもしれない。
ただ、由貴が自ら命を絶った後には一軍も二軍も関係なく由貴の提案した練習メニューを取り入れるようになったのだが、それが良かったと言っていいのかは俺にはわからない。
「監督もユキちゃんの提案してくれたメニューが正しいんじゃないかってずっと思ってたみたいなんです。だからこそ、ユキちゃんがあんなことになった後にはすぐにソレを取り入れたと思うんですよ。こんな事を言うと、ユキちゃんは自分たちのために抗議する形で命を絶ったんだって聞こえるかもしれないですけど、ソレだけが理由じゃないと思うんですよ。これは俺の憶測でしかないんですけど、あの監督はマネージャーたちにセクハラをしてたんじゃないかって噂になってたんです。実際に現場を見たわけじゃないので証拠は何も無いですし、マネージャーたちに聞いてもそんな事はなかったって言われました。もう昔の事なんで誰も正確に覚えてないかもしれないですけど、俺たちは練習後に泣いているマネージャーとその子を慰めているユキちゃんの姿を何度か見てるんです。何があったのか聞いても答えてくれなかったんですけど、マネージャーが泣いてる時だけ監督は遅れて練習を見に来てたんです。どうしてそうなっているのかはわからないですけど、俺たちは監督がマネージャーに何かしてて練習に遅れてきたんじゃないかって噂してました」
「その時って、由貴は君たちの練習を見てたって事?」
「そうだったと思います。平日はユキちゃんが俺たち一人一人の様子を見てくれてましたから。たった一人でみんなの事を管理してくれてるのって当時も凄いことだったとは思ってたんですが、プロになった今はあの時のユキちゃんの凄さが当時思っていたよりも何倍も凄いことだったんだって実感しましたよ。二人の様子を見るだけでも大変だっていうのに、一軍メンバー全員の事を細かく見て各自に練習メニューを組んでくれてましたからね、普通はそんな事出来るはずがないんですけど、ユキちゃんって何に関しても天才だって改めて感じました」
俺の知らない由貴の姿。野球部のマネージャーの手伝いをすると聞いた時に最初に思ったのは、今まで一切野球に触れていなかった由貴がそんな事をするなんて好きな人でも出来たのかという事だった。好きな人が出来たという話は由貴の親友からも聞いたことが無かったし、由貴が残していた日記にもそんな事は一切書かれていなかった。自分で命を絶とうと考えている人間がそんなものを残すのかは疑問だが、異性に対して何かを書いているという事も無かったと記憶している。
そんな由貴がどうして野球部のマネージャーを手伝おうと思ったのか、由貴の親友は軽い気持ちで相談したら手伝ってくれることになった。由貴がどういう思いで手伝うようになったのかはわからないが、困っている親友を助けるという思いで手伝うようになったのかもしれない。
最初は本当に手伝うだけの由貴だったが、ちょっとしたアドバイスがきっかけで彼が活躍しだし、それが少しずつ派生してチームが強くなっていった。
どうしてそうなったのかわからないが、次に由貴と話す機会があったとしてもそんな事を聞くつもりなんて無い。
なぜ由貴はあんな結末を選んだのか聞きたいというのが本音ではあるが、そんな事を聞いてもいいのだろうかという迷いもある。
それと、由貴が過去に戻っていたのかも聞いてみたいな。
だが、結果が出ている以上はソレが正しいのだと感じてはいたようで、試合に出ている部員に対しては特に何かをすることも無く由貴の提案した練習メニューをこなすように指示もしていたようだ。スタメンで活躍していた彼を含めた一軍メンバーは何の疑問も持たずに由貴の練習を無我夢中でこなしていたのだが、試合に出ていない二軍と呼ばれる部員たちは今まで以上に苛酷なトレーニングをするように指示されていたのだ。
疲労も考慮した由貴の練習メニューをこなす一軍メンバーと昔ながらの根性トレーニングを強制的にやらされる二軍メンバーの間には技術的な差はそれほど大きく離れる事は無かったのだが、体調やモチベーションの差は大きく離れてしまっていた。練習試合の無い週末に行われる紅白戦も疲労が溜まっている二軍メンバーは思うような活躍は出来ず、一軍と二軍の差は大きく開いてしまっていた。
練習試合の結果を聞いた由貴は何度も監督に意見を言ったそうなのだが、部外者である由貴の意見を完全に受け入れることは出来ず、結果の出ている一軍に限って由貴の提案を受け入れるという事になってしまった。今までずっと指導してきたと言うプライドがあるからなのか、野球も知らなそうな小娘の意見を全面的に受け入れるという事は出来なかったのかもしれない。
ただ、由貴が自ら命を絶った後には一軍も二軍も関係なく由貴の提案した練習メニューを取り入れるようになったのだが、それが良かったと言っていいのかは俺にはわからない。
「監督もユキちゃんの提案してくれたメニューが正しいんじゃないかってずっと思ってたみたいなんです。だからこそ、ユキちゃんがあんなことになった後にはすぐにソレを取り入れたと思うんですよ。こんな事を言うと、ユキちゃんは自分たちのために抗議する形で命を絶ったんだって聞こえるかもしれないですけど、ソレだけが理由じゃないと思うんですよ。これは俺の憶測でしかないんですけど、あの監督はマネージャーたちにセクハラをしてたんじゃないかって噂になってたんです。実際に現場を見たわけじゃないので証拠は何も無いですし、マネージャーたちに聞いてもそんな事はなかったって言われました。もう昔の事なんで誰も正確に覚えてないかもしれないですけど、俺たちは練習後に泣いているマネージャーとその子を慰めているユキちゃんの姿を何度か見てるんです。何があったのか聞いても答えてくれなかったんですけど、マネージャーが泣いてる時だけ監督は遅れて練習を見に来てたんです。どうしてそうなっているのかはわからないですけど、俺たちは監督がマネージャーに何かしてて練習に遅れてきたんじゃないかって噂してました」
「その時って、由貴は君たちの練習を見てたって事?」
「そうだったと思います。平日はユキちゃんが俺たち一人一人の様子を見てくれてましたから。たった一人でみんなの事を管理してくれてるのって当時も凄いことだったとは思ってたんですが、プロになった今はあの時のユキちゃんの凄さが当時思っていたよりも何倍も凄いことだったんだって実感しましたよ。二人の様子を見るだけでも大変だっていうのに、一軍メンバー全員の事を細かく見て各自に練習メニューを組んでくれてましたからね、普通はそんな事出来るはずがないんですけど、ユキちゃんって何に関しても天才だって改めて感じました」
俺の知らない由貴の姿。野球部のマネージャーの手伝いをすると聞いた時に最初に思ったのは、今まで一切野球に触れていなかった由貴がそんな事をするなんて好きな人でも出来たのかという事だった。好きな人が出来たという話は由貴の親友からも聞いたことが無かったし、由貴が残していた日記にもそんな事は一切書かれていなかった。自分で命を絶とうと考えている人間がそんなものを残すのかは疑問だが、異性に対して何かを書いているという事も無かったと記憶している。
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